3Dプリンター用UVレジンとは
3Dプリンターの樹脂材料は大きく分けると2つの種類に分類することができます。主にFDM方式と光造形方式の材料です。今回ご紹介する3Dプリンター用UV硬化レジンは、光造形方式の材料として多くのユーザーに使用されています。
UV硬化レジンは、その名前の通り、紫外線があたることで物体に固まる特性を持つレジンで、種類も非常に豊富です。
特に滑らかで高精細な仕上がりが特長な上、さまざまな用途に対応した種類が登場しています。そこで今回は3DプリンターのUVレジンについてその特徴から種類、選び方、応用まで余すところなくご紹介します。
UV硬化レジンの形状と特長
UV硬化レジンの形状はベースが液体状になっています。アクセサリづくりなどに使用されるレジンと基本は同じで、紫外線があたることで固まるという特性を持っています。FDM方式のフィラメントとは違い、積層跡が目立たず、滑らかで高精細な仕上がりが特長です。

形状 |
液体 |
造形の仕組み |
紫外線があたることで固まる |
素材 |
アクリル系、ポリウレタン系など |
特長 |
高精細&滑らかな仕上がり |
対応3Dプリンター |
光造形方式(SLA、DLP)など |
用途 |
試作、高強度試作、鋳造用ワックスモデル、最終品等 |
3Dプリンター用UVレジンの種類と選び方
3Dプリンター用のUVレジンはさまざまな種類が登場しています。ここではUV硬化レジンの代表的な種類と特長についてご紹介します。
種類 |
特長 |
スタンダードタイプのレジン |
3Dプリンター用UVレジンの代表的な材料。アクリルベースで、硬質な材料。カラーはグレイやホワイト、ブラックなど |
透明(クリア)のレジン |
透明(クリア)は高い透明性を発揮。FDM方式では実現できない透明な質感を出せる。 |
高強度タイプのレジン |
引張強度や曲げ強度などが強化された高強度タイプのレジン。ABSやPPなどの物性を再現した強度がある。 |
ゴム・シリコーンライクのレジン |
ポリウレタンをベースに、ゴムの物性を再現した柔軟性がある材料。ゴムやシリコーンなどさまざまな柔らかさがある。 |
高耐熱タイプのレジン |
耐熱性が強化されたレジン。100℃から200℃近い耐熱性を持つ。 |
高硬度タイプのレジン |
表面の硬さが強化されたレジン。ガラス繊維やセラミック、ABSなどが配合され硬くて滑らか |
鋳造用ワックスレジン |
ジュエリーなどのロストワックス鋳造に使用することができるワックス配合レジン。 |
スタンダードタイプのレジン
スタンダードタイプはUVレジンの中でも最もオーソドックスな材料です。アクリルベースの材料で、グレイ、ホワイト、ブラックといった単色のレジン材料です。特長は滑らかで高精細な仕上がりができます。
用途:模型、フィギュア、試作・プロトタイプなど


透明(クリア)レジン
透明(クリア)もUVレジンの代表的な材料です。アクリルベースの材料で、硬化すると高精細でかつ透明、半透明な仕上がりが特長です。後加工を施すことでさらに透明性を高めることができます。
用途:透明な試作・プロトタイプなど


高強度タイプのレジン
高強度タイプのレジンは通常のレジンよりも引張強度や曲げ強度、耐衝撃性を強化したレジン材料です。工業製品で多用されるABSやポリプロピレン(PP)、PE(ポリエチレン)などの物性を再現しており、高強度パーツ、機能性プロトタイプに最適です。
用途:ABSやポリプロピレン、PEなどの高強度材料の試作、パーツ、スナップフィット、治工具など




ゴム・シリコーンライクのレジン
ゴム・シリコーンライクの材料は柔軟なゴムやシリコーンの硬度を再現した材料です。ショア硬度80Aやショア硬度50Aのように柔らかさが決められている材料です。造形すると柔軟性があり、柔らかい質感が表現できます。また種類によっては引裂き強度も高いレジンがあります。
用途:ゴム・シリコーン製品の試作・プロトタイプ、ゴムパーツなど


高耐熱レジン
一般的にUVレジンは耐熱性が低く高いものでも70℃程度しかありません。高耐熱レジンは耐熱性が100度から200℃あたりまで強化された材料です。造形後に二次硬化やオーブンでの加熱を行うことで耐熱性が発揮されます。
用途:耐熱性が求められる試作・プロトタイプ、金型の試作など


高硬度タイプのレジン
高硬度タイプのレジンは表面の硬さが強化されたレジン材料です。主にガラス繊維やセラミック、ABSなどが配合された材料で、硬くて滑らかな質感が再現されたレジン材料です。また見た目も綺麗な仕上がりが特長です。
用途:硬さが求められる試作・プロトタイプなど


鋳造用ワックスレジン
鋳造用ワックスレジンはロストワックス鋳造で使用されるワックスモデルが作れるレジンです。本物の蝋が配合されている材料で、高い消失性を持ちます。ワックスレジンを使用することで、ダイレクトにデータからワックスモデルを作ることで鋳造の工程を効率化します。
用途:鋳造用ワックスモデルの造形


3Dプリンター用UVレジンのメーカー
3Dプリンター用UVレジンのメーカーは主に二つの種類に分かれています。第一が3Dプリンター本体のメーカーが出しているその機械専用のレジンです。第二がレジンメーカーが出しているレジンです。
ここではメーカーについてご紹介する前に、それぞれの特長について簡単にご紹介しましょう。
3Dプリンターメーカーが提供するレジン
3Dプリンターメーカーが出しているレジンは、基本的にそのメーカーの機械でしか使用することができません。その機械専用に材料が配合されているため、3Dプリンター本体の性能と連動していることが多く、その機械以外の3Dプリンターで使用すると造形がうまくいかないケースがあります。
メリット |
対応3Dプリンターのためにレジンが設計されているため、造形安定性が高く、失敗が少ない。また3Dプリンターの造形パラメーターがレジン用にプログラムされ高品質な造形ができる。 |
デメリット |
他の3Dプリンターでは使用することができない。 レジンの価格が高い傾向にある。 |
種類 |
非常に豊富。1台で10種類~18種類近く使用できる。 |
代表的メーカー |
Formlabs、3Dsystems |
他の3Dプリンターとの互換性 |
無 |
価格帯 |
2万円~4万円程度 |
レジンメーカーが提供するレジン
レジンメーカーが提供するレジンの特長は安価で、他社の3Dプリンターにも使用することができます。ただしその反面造形に対する品質が担保されないケースが多く、造形を安定させるための設定もユーザー自身で探る必要があります。
メリット |
他社性が使用できるいろいろな3Dプリンターに使用することができる。価格が安価 |
デメリット |
品質が担保できない。造形に関するパラメーターが最適化されておらず、使用する3Dプリンターによってはうまく造形できないケースが多い。 |
種類 |
基本的にスタンダードタイプが中心。 |
代表的メーカー |
ELEGOO、ANYCUBIC、PHOTONなど |
他の3Dプリンターとの互換性 |
あり |
価格帯 |
2000円~ |
3Dプリンター用UVレジンの価格
上記でご紹介した、3Dプリンターメーカーが提供する専用レジンか、レジンメーカーが提供するレジンかで価格帯が大きく異なります。Formlabsや3Dsystemsなどその3Dプリンターに最適化された専用レジンは価格帯が高くなる傾向にあり、その一方でどの3Dプリンターでも使用できる他社性レジンは、安価になる傾向にあります。
なぜ価格帯が異なるのか?
例えば、Formlabsのスタンダードタイプのグレイレジンは1リットルあたり20,680円(税込み)の価格になります。その一方で、ELEGOOのグレイレジンは1リットルあたり3499円(税込み)、ANYCUBICは1リットルあたり4,798円(500gで2,399円)になります。価格帯が4倍から6倍異なっています。
この価格の違いの最大の根拠は安定性と品質の違いです。
FormlabsのレジンはFormlabsの3DプリンターForm2とForm3に最適化されており、①レジンの温度、②レジンの粘り、③レーザーの当て方がその材料が正しく、綺麗に安定して造形できるために最適化されています。
その一方で、ELEGOOやANYCUBICのレジンは、造形のパラメーターは機種ごとでユーザーが探らなくてはなりません。
そのため低価格な他社3Dプリンターも使用できるレジンでは、形状や大きさによってプリントできる出来ないがあり、安定性も保証されません。
ミスプリントに費やす時間や、形状ごとのプリント設定を探る時間など労力と時間をかけることが苦にならない場合には安価なため良いかと思います。
レジンメーカー① Formlabs
レジンのメーカーであり、光造形3Dプリンターのメーカーとして圧倒的に有名なのがFormlabsです。レジンの種類も非常に豊富で、1台の3Dプリンターで18種類近いレジンが使用することができます。Formlabsの特長は3Dプリンター内部にレジンごとにプリントパラメーターがあらかじめプログラムがされており、高い安定性と高品質を両立している点です。例えばレジンを変えるのも簡単で、カートリッジとトレイであるタンクを交換するだけで誰が使用しても同じ高クオリティを実現できます。

特長 |
1台で18種類近いレジンが使用可能。パラメーターの調整が不要で、誰でも簡単に使用できる |
種類 |
18種類:グレイ、ホワイト、クリア、ブラック、プロトタイプ専用高速レジン、高耐熱、ABSライク、PPライク、PEライク、ガラス繊維配合、セラミック配合、ゴムライク、シリコーンライク、鋳造用ワックスレジンなど |
価格帯 |
18,800円~37,800円(税別 1リットル) |
レジンメーカー②:ELEGOO
ELEGOOは低価格タイプの光造形3Dプリンターのメーカーでレジンも販売しています。主にアマゾンでの販売が主流でレジンの種類は4種類~5種類(カラー違い)でスタンダードタイプが中心です。

特長 |
他社製3Dプリンターでも使用できる。非常に安価 |
種類 |
4種類~5種類ほど。スタンダードタイプでカラー違い。 |
価格帯 |
1999円~4000円程度(税別 0.5リットル) |
レジンメーカー③:ANYCUBIC
ANYCUBICも低価格タイプの光造形3Dプリンターのメーカーでレジンも販売しています。こちらもELEGOOと似ておりアマゾンでの販売が中心です。種類もスタンダードタイプの色違いが中心で数種類です。

特長 |
他社製3Dプリンターでも使用できる。非常に安価 |
種類 |
4種類~5種類ほど。スタンダードタイプでカラー違い。 |
価格帯 |
2000円~4000円程度(税別 0.5リットル) |
3Dプリンター用UVレジンの強度は?
UVレジンでよく質問される一つがポイントの一つが強度です。UVレジンは一般的に工業製品で使用されるケースがほぼないため(工業製品はFDMの材料である熱可塑性樹脂が中心、ABSやポリカーボネート、ポリプロピレンなど)、強度が弱いのではないかという質問がございます。
UVレジンは確かにスタンダードタイプのアクリルベースの材料は欠けやすい部分があります。ただレジンの種類によっては非常に高強度な材料が登場しています。それが上記でご紹介したABSライクやPPライク、PEライクといった高強度系のレジンです。
一定の強度が求められる造形物を作る場合にはこうした材料を使用されることをお勧めします。ただ高強度のレジン材料が安定して使用できる光造形3Dプリンターは限定されています。
ABSライクレジン
ABSライクレジンは熱可塑性樹脂の代表格でもあるABS樹脂の強度、耐衝撃性を再現したレジン材料です。スタンダードタイプよりも引張強度に優れており強度が求められる造形物や治工具などに最適です。
レジンの代表例:Formlabsタフ2000レジン (21,800円・1リットル税別)
対応3Dプリンター:Form3、Form3L、Form2


PPライクレジン
PPライクレジンも熱可塑性樹脂で多用されるポリプロピレンの曲げ強度、耐衝撃性を再現したレジン材料です。ABSライクレジンよりもさらに折り曲げが可能であり柔軟性をもっています。スナップフィットや高強度パーツ、治具に使用できます。
レジンの代表例:Formlabsタフ1500レジン (21,800円・1リットル税別)
対応3Dプリンター:Form3、Form3L、Form2


PEライクレジン
PEライクレジンはポリエチレン系の高強度材料の物性を再現した材料です。ABSライクとPPライクの中間に位置する柔軟性を持ち、ほどよい強度と耐衝撃性をもっています。
レジンの代表例:Formlabsデュラブルレジン (21,800円・1リットル税別)
対応3Dプリンター:Form3、Form3L、Form2


3Dプリンター用UVレジンの使い方と注意点
3Dプリンター用UVレジンは液体に紫外線を照射することで硬化し形にしていきます。使い方は簡単で3Dプリンターのトレイにセットして使用します。ただし使用するうえで何点か注意点があります。
紫外線を避ける
UVレジンは紫外線があたると固まる物性を持っているため、3Dプリンターを使用しない場合には必ず紫外線が当たらない場所で保管しましょう。光造形3Dプリンターの本体カバーが外部の紫外線を遮蔽する機能を持っていのでそのまま保管できます。またFormlabsなどのメーカーでは使用途中のレジンもタンクに紫外線遮蔽ケースが付属しているためそのまま保管が可能です。

プラットフォームの交換に気を付ける
光造形3DプリンターはUVレジンがたまったタンク(トレイのようなもの)にプラットフォームが下がってきてレジンにつかり、下からレーザービームが照射されて1層ずつ硬化します。そのためレジンを変える際にはタンクを交換しますが、プラットフォームに前のレジンがこびりついているため、IPAやエコタールで洗浄が必要になります。前のレジンがついたまま造形を開始してしまうと、異なる物性を持つレジンが混ざってしまい造形ミスを起こします。

洗浄液のつけすぎに注意
光造形3Dプリンターでは造形後に造形物に未硬化のUVレジンが付着しています。この未硬化レジンを除去するためにIPAやエコタールにつけておきますが、決められた時間以上を付けてしまうと、造形物が溶けてしまう可能性があります。つける目安は20分前後です。

3Dプリンター用UVレジンの洗浄液
3Dプリンター用UVレジンは造形後に洗浄を行う必要があります。洗浄といっても造形物にこびりついた余分な未硬化のレジンを落とす工程で、アルコールなどの溶剤につけることをいいます。主にIPA(イソプロピルアルコール)や、エタノール、メタノールなどに20分程度つけるだけで余分なレジンが流れ落ちます。

第二種有機溶剤に該当しないエタコールがおススメ
洗浄液は基本的に第二種有機溶剤に該当するケースが多いのですがエタコールのように第二種有機溶剤に該当せずIPAなどと同等の洗浄力を持つ溶剤もあります。


3Dプリンター用UVレジンの研磨
UVレジンは造形後の研磨にも最適です。特に光造形3Dプリンターは造形する過程の特徴からサポート材がついてしまう場合があります。サポート材は造形後にニッパーやカッターなどで切り落としますが、削除した後にサポート材の痕が残ってしまいます。このサポート材の痕をなくすためには研磨が必要です。
研磨ではいくつかの方法があり、サンドペーパーなどのやすりを使って研磨してもいいですし、ブラスト研磨機などを使用する場合もあります。

サンドペーパーでの研磨
サンドペーパーを使用して研磨する場合には番手順に研磨を行います。例えば200番手の粗目のやすりでサポート跡を取り除き、その後徐々に番手を細かくしていきます。400番手、500番手、600番手、のように。研磨の際のポイントは、番手を順番に挙げていくやり方が最も効率的にやすりがけを施すことができます。番手を飛び越してしまうと逆に時間がかかります。
番手を粗目から徐々に引き上げれば1回の番手にかける時間は短くなり効率化できます。

3Dプリンター用UVレジンの塗装
UV硬化レジンは塗装性にも優れています。水性、油性、両方の塗装にも対応しており綺麗に仕上げることができます。特に造形後に表面を研磨し下地を塗った後に塗装すると塗装ノリもよくなります。

3Dプリンター用UVレジンの透明性を上げる方法
透明(クリア)なUVレジンは造形が完了すると半透明の仕上がりで完全な透明ではありません。これは層と層の積層跡が微妙に残っているためです。透明性をさらに発揮するためには二つの方法があります。それがコーティングと研磨です。

コーティングで透明性UP
コーティングでは透明なコーティング材を塗ることで透明性を驚くほど向上させることができます。水性、油性などさまざまなコーティング材がでていますが、水性の方が手軽です。おススメは UVコーティングができる透明なコーティング材で筆で塗っても、つけても透明性が向上します。ベストは3度塗りか4度塗りを行います。



研磨で透明性UP
研磨することで透明性をUPすることも可能です。積層の粗が研磨によって消えるため透明になります。こちらも番手を粗目の200番手などから初めて徐々に上げ、最後にコーティングを行うと透明性が高まります。

3Dプリンター用UVレジンのゴムに塗装する方法
UVレジンに限らずゴム材料は塗装することが難しい材料です。一般的な塗料だと塗装後に固まってしまいゴムの柔軟性に対応できずひび割れなどが発生してしまいます。しかしゴム専用塗料を塗ることでゴムの表面を変え、さらに耐候性、耐久性も向上させることができます。



3Dプリンター用UVレジンの耐候性・耐久性をUPする方法
UV硬化レジンで造形されたものは耐候性が弱いとされています。その理由はレジンそのものが紫外線があたることで硬化してしまうためです。造形後も紫外線に当たると硬化がどんどん進み、黄色くなったり、ひび割れなどが起きる可能性があります。しかしUVコーティングを施すことで耐候性を向上させ紫外線による劣化やひび割れを防止します。また耐久性も向上します。
コーティングというと大変のようなイメージがありますが、表面に塗布しぬるだけでコーティングが完了する簡単なコーティング材もあります。


まとめ 進化が止まらない
UVレジンは樹脂材料の3Dプリンターの中でも一角を占める代表的な材料です。その種類は年々増え続け、FDM方式と比べて高精細で滑らかな質感が再現できるのが特徴です。また、従来から強度、耐候性、耐久性が心配されてきましたが、新材料の登場やコーティング材、塗料との組み合わせでこうした不安要素も払しょくされつつあります。是非レジンと光造形3Dプリンターを使ってモノづくりをアップグレードされてみてはいかがでしょうか。
ご不明な点やご質問などお気軽にi-MAKERにお問い合わせください。