3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンとは
光造形3Dプリンターの材料にはESD（静電気放電）専用のレジン材料が利用できます。ESDとは、Electro-Static Dischargeの略で、帯電した静電気が放電する現象のことです。ESDレジンは、この静電気を散逸させることで放電を防ぎ、電子部品や回路基板を保護する機能がある材料です。特に電子機器の筐体や治工具などのために開発されたレジン材料です。
ESD（静電気放電）用レジンが使える光造形
3Dプリンターとは？
ESD（静電気放電）用レジンが使える光造形3Dプリンターは限定されています。代表的なメーカーがFormlabsの機種になります。
| メーカー | 機種 | 特徴 |
|---|---|---|
| Formlabs | Form3＋、Form3、Form3B＋、Form3B、Form3Lなど | SLA方式。高精度かつ滑らかな仕上がり |
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンの特長
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンの最大の特長が静電気を散逸させる機能です。また電子部品の製造現場を想定していることから、高い強度と靭性、耐久性も備えています。
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンの特性
高い引張強度
耐衝撃性
ABSライクとPPライクの中間
高精細
継ぎ目のない滑らかな質感
細かい複雑な造形
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンでできること
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンは静電気散逸性に加え、強度と靭性、耐久性を持っていることから、電子機器の組み立て、電子部品の基板実装の現場でさまざまなことができます。
ESD対策
ESD（静電気放電）用レジンを電子機器の製造現場などに取り入れることによって、予期せぬ静電気放電を防ぎ、開発中の回路基板等の損傷を防ぐ効果があります。また、筐体に触れる治工具などをESDレジンで作ることで蓄積した静電気放電による基板ショートなども防げます。
電子機器の製造現場の効率化
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンは静電気散逸が求められる電子機器の製造現場の効率化に期待されます。筐体などの試作品や組み立て用治具、検査治具など、電子機器に静電気の放電を防止することで生産ラインをより効率化します。
ESD用治具、固定具のリードタイムを短縮
ESD対策のための治工具を作る際に、ESD（静電気放電）レジンを使用するとリードタイムを大幅に削減することができます。従来静電気放電用の治工具はアルミなどの金属切削加工で作られていましたが3Dプリントでは数時間から数日で作ることが可能です。
ESD用治具、固定具のコスト削減
ESD用レジンは治工具のコストも削減します。アルミの削り出しなどの金属加工に比べてESDレジンの3Dプリントは低コストな上、必要な材料分しか消費しないためコスト削減効果があります。
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンで作れるもの
3Dプリンター用ESD（静電気放電）レジンでは、電子機器の製造現場の治具、固定具、トレイなどさまざまなものが作れます。
電子機器用の治具、固定具、トレイなど
ESD（静電気放電）用のレジンで作れるものの代表的な存在が電子機器、基板実装の現場などで使用される治具や固定具、保管用トレイなどです。静電気を散逸させるその物性から安心して作業ができます。
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンの種類
ここでは代表的な3Dプリンター用のESD（静電気放電）用レジンとして代表的なものをご紹介します。
| レジン名 | メーカー | 耐候性 | 方式 |
|---|---|---|---|
| ESDレジン | Formlabs | ◎ | SLA |
| ESD-T | RAYSHAPE | △ | DLP |
ESDレジン
ESDレジンは静電気散逸性に加え、治工具に最適な強度、耐衝撃性、耐久性を備えているレジンです。
ESDレジンのスペック
容量：１リットル
対応3Dプリンター：Form3＋、Form3，Form2、Form3L、Form3Bなど
ESD-T（RAY SHAPE)
RAYSHAPEのESD-Tレジンは、その優れた静電気散逸性能により、高い保護性能を提供します。このレジンは、電子コンポーネントを静電気による損傷から効果的に保護することができます。ESD-Tレジンを使用することで、信頼性の高い電子コンポーネントを製造することができます。
ESD-Tレジンのスペック
容量：
対応3Dプリンター：shape1シリーズ、P200シリーズ、P400シリーズ
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンの仕上げ
3Dプリンター用ESD（静電気放電）用レジンは、造形後に洗浄と二次硬化が必要です。
洗浄
光造形は造形後には造形物に余分なレジンがこびりついているため、IPA(イソプロピルアルコール)やエコタールなどで洗浄する必要があります。
洗浄時間はメーカーごとにことなっていますが、だいたい10分から20分程度です。洗浄後はIPAがなくなるまで十分に乾燥を行います。
環境にやさしい洗浄液とお手軽洗浄サービス（オプション）
樹脂製品の洗浄に使用される洗浄液は、環境に配慮されたものや効率的な洗浄が行えるものが用意されています。また、お手軽な洗浄サービスも利用可能です。
3Dメディカルクリーン 17.7L
3Dメディカルクリーン 17.7Lは、エタコール同様毒性が低く、臭いが少なく有機則に該当しない洗浄液です。また廃液の回収もセットで行い産業廃棄物処理の手間をなくします。
3Dメディカルクリーン 4L
3Dメディカルクリーン 4Lは、エタコール同様毒性が低く、臭いが少なく有機則に該当しない洗浄液です。また廃液の回収もセットで行い産業廃棄物処理の手間をなくします。
エタコール
エタコール７は、Form3等の光造形機で造形されたモデルの洗浄に使用されるIPAに変わる環境対応高純度エタノール溶剤です。洗浄液は基本的に第二種有機溶剤に該当するケースが多いですがエタコールのように第二種有機溶剤に該当せず、IPAなどと同等の洗浄力を持つ溶剤もあります。
二次硬化
UV硬化レジンと光造形（SLA）3Dプリントで作られた造形物は、層と層の間に完全に固まっていないグリーン層といわれる中間層が存在します。
二次硬化は完成した造形モデルに一定の温度で紫外線を照射することで行います。二次硬化を行うことで、層と層の間の中間層が完全に固まり、強固な物性が再現されます。
メーカーごとに専用の二次硬化機があります。
FormCure(Formlabs）
Form Cureはプリント後に造形モデルを二次硬化してくれる自動二次硬化ツールです。
回転式のターンテーブルと、３６０度を覆うミラー仕上げで、造形モデルに全方位で４０５nmのLED光が照射。ボタンを押すだけで二次硬化を自動的に行います。
FormCure L(Formlabs）
FormCure Lは、プリント後に造形モデルを二次硬化してくれる自動二次硬化ツールです。
回転式のターンテーブルと、反射する内部キャビティによってUV光がすべての表面に到達して一定の硬化制度を実現し、Form 3LやForm 3BLで作られた大型の造形物も安定して二次硬化可能です。
まとめ：最終品製造をもたらす可能性
3DプリンターのESD（静電気放電）用レジンは、静電気を散逸させる機能に加え、高い引張強度、耐衝撃性、耐久性によって、電子機器関連、基板実装周りの治具、固定具、プロトタイピングなどさまざまな用途で活躍します。
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