光造形3Dプリンターの強度とは?タフレジンV2の実力と用途別の選び方
■ この記事の重要ポイント
- 光造形の高強度レジンは3種類(ABSライク・PPライク・PEライク)。Formlabsタフレジン V2で破壊靭性が従来比3〜10倍に向上
- タフ2000 V2(ABS相当)・タフ1500 V2(PP相当)・タフ1000(HDPE相当)を用途別に使い分けることで、射出成型品に迫る機能性パーツを造形可能
- 高強度レジンの造形後は洗浄・二次硬化が必須。3DMedSupoならIPAと同等の洗浄性能で廃液回収まで一括対応
目次
光造形3Dプリンターの強度とはどのぐらい?
光造形3Dプリンターでも、高強度レジンを使えばABS・PP・HDPEに匹敵する強度を実現できます。
一般的に光造形3Dプリンターの材料はアクリルベースで「欠けやすく脆い」というイメージがありますが、近年は高強度レジンの登場により状況が大きく変わっています。
Formlabsのタフレジンシリーズを使えば、FDMやFFF方式の3Dプリンターで使われるABS・PP・HDPEと同等の強度特性を持つ造形物を作ることが可能です。しかも光造形ならではの高精細な表面品質を維持したまま、機能性パーツやプロトタイプを制作できます。
強度が高い造形物がつくれれば、ものづくりの用途は一気に広がります。機能性パーツから高強度なプロトタイプ、繰り返しの使用に耐えるアッセンブリモデルまで、3Dデータからオンデマンドで製作可能です。
強度の定義 — 引張強度・衝撃強さ・破壊靭性の違い
「強度」には複数の指標があり、用途に応じて重視すべき項目が異なります。
レジン材料の強度を評価する際に確認すべき主要指標は以下の通りです。
| 指標 | 意味 | 単位 | 重視する用途 |
|---|---|---|---|
| 引張強度 | 引っ張って破断するまでの力 | MPa | ハウジング、構造パーツ |
| 破断点伸び | 破断するまでどれだけ伸びるか | % | ヒンジ、スナップフィット |
| アイゾッド衝撃強さ | ハンマーで叩いて破壊するまでの力 | J/m | 落下衝撃を受ける部品 |
| 破壊靭性 | 亀裂が入っても割れにくい度合い | J/m² | 長期使用する機能部品 |
| 曲げ弾性率 | 曲げに対する硬さ(剛性) | GPa | 変形してはいけない精密部品 |
| HDT(熱変形温度) | 荷重下で変形し始める温度 | ℃ | 高温環境で使う部品 |
レジン選定では「引張強度が高い=最適」とは限りません。スナップフィットには伸び率、繰り返し使用には破壊靭性、治工具には曲げ弾性率と、パーツに求められる機能に応じて指標を選ぶことが重要です。
光造形の高強度レジンは3種類 — ABSライク・PPライク・PEライク
光造形3Dプリンターの高強度レジンは、再現する熱可塑性樹脂の物性によって3つのカテゴリに分かれます。
ABSライクレジン(タフ2000レジン)
金型成型やFDM/FFFで代表的な高強度樹脂であるABSの物性を再現したレジン材料です。引張強度と剛性が最も高く、耐熱性にも優れます。ハウジング、エンクロージャー、治工具、メカニカルコネクターなど、変形してほしくない剛性が求められるパーツに最適です。
PPライクレジン(タフ1500レジン)
ポリプロピレン(PP)の物性を再現した材料で、剛性と柔軟性のバランスが特長です。折り曲げても割れにくい靭性を持ち、衝撃強度にも優れます。バネ、スナップフィット、ヒンジ、コネクタなど、繰り返し応力がかかる部品に向いています。
PEライクレジン(タフ1000レジン / デュラブルレジン)
ポリエチレン(PE)やHDPEの物性を再現した材料です。伸び率が最も高く(最大180%)、繰り返し曲げや摩耗に対する耐久性に優れます。Formlabsの新材料タフ1000は従来のデュラブルレジンから破壊靭性5倍、伸び率2倍に進化しています。
【2026年最新】タフレジン V2で何が変わった? 破壊靭性3〜10倍の進化
Formlabsはタフレジンシリーズをフルリニューアルし、Form 4シリーズの技術を活かしたV2世代を投入しました。最大の進化ポイントは破壊靭性の飛躍的向上です。
V2世代ではForm 4シリーズの新しい光学システムに最適化された配合により、従来のV1と比べて破壊靭性が3〜10倍に向上。さらに耐熱性・耐クリープ性・外観品質もすべて改善されています。

- タフ2000 V2:破壊靭性が従来比3倍(305 J/m²)、HDT 70℃に向上
- タフ1500 V2:破壊靭性が従来比10倍に向上、PP相当の柔軟性を維持
- タフ1000(新材料):HDPE相当、伸び率180%、Ross flex疲労試験10万サイクル超
- 全V2レジンはForm 4/4B/4L/4BL専用設計(マットな仕上がりで表面品質も向上)
タフ2000 V2・タフ1500 V2・タフ1000の強度スペック比較
3つのタフレジンの物性値を一覧で比較します。用途に応じて最適な材料を選定してください。
| スペック | タフ2000 V2 (ABSライク) |
タフ1500 V2 (PPライク) |
タフ1000 (HDPEライク) |
|---|---|---|---|
| 引張強度 | 50 MPa | 33 MPa | 24 MPa |
| 破断点伸び | 79% | 51% | 180% |
| 曲げ強度 | 65 MPa | 39 MPa | — |
| アイゾッド衝撃強さ | 40 J/m | 67 J/m | — |
| 破壊靭性 | 305 J/m² | — | 3,200 J/m² |
| HDT(熱変形温度) | 70℃ | — | — |
| 相当する熱可塑性樹脂 | ABS | PP | HDPE |
| 対応プリンター | Form 4シリーズ | Form 4シリーズ | Form 4シリーズ |
※数値はFormlabs公式テクニカルデータシートに基づく。測定条件により結果が異なる場合があります。
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用途別の選び方 — どのタフレジンを選べばいい?
用途が決まれば最適なレジンは自動的に絞られます。以下の用途別ガイドを参考に選定してください。
| 用途 | 求められる物性 | 推奨レジン |
|---|---|---|
| ハウジング・エンクロージャー | 高剛性・耐熱性 | タフ2000 V2 |
| 治工具・メカニカルコネクター | 高剛性・耐摩耗 | タフ2000 V2 |
| スナップフィット・バネ | 柔軟性・衝撃耐性 | タフ1500 V2 |
| ヒンジ・繰り返し折り曲げ部品 | 高伸び率・疲労耐性 | タフ1000 |
| 移動組立品・可動部品 | 耐摩耗・高伸び率 | タフ1000 |
| 高温環境(70℃以上)で使うパーツ | 高HDT | タフ2000 V2 |
| 高強度プロトタイプ(全般) | 総合的な強度 | タフ2000 V2 |
高強度レジンが使える光造形3Dプリンター一覧
すべての光造形3Dプリンターで高強度レジンが使えるわけではありません。専用の光学系・レジンタンク・温度制御が必要です。
注意:10万円以下の汎用光造形機では使用できません
高強度レジンは材料メーカーとプリンターメーカーが共同で最適化した専用設計です。非対応機で使用すると硬化不良や強度不足が発生します。
| 機種 | タフ2000 V2 | タフ1500 V2 | タフ1000 | タイプ |
|---|---|---|---|---|
| Form 4 | ✓ | ✓ | ✓ | デスクトップ |
| Form 4B | ✓ | ✓ | ✓ | デスクトップ(歯科) |
| Form 4L | ✓ | ✓ | ✓ | 大型 |
| Form 3/3+ | V1のみ | V1のみ | — | デスクトップ |
| Form 3L | V1のみ | V1のみ | — | 大型 |
V2世代のタフレジンはForm 4シリーズ専用設計です。Form 3シリーズではV1(従来版)が引き続き使用可能ですが、V2の大幅な物性向上の恩恵を受けるにはForm 4シリーズへのアップグレードが必要です。
二次硬化で強度はどれくらい上がる?
二次硬化(ポストキュア)は高強度レジンの性能を最大限引き出すために必須の工程です。
3Dプリンター内での造形時はUV光による硬化が完全ではなく、層と層の間に未硬化レジンが残ります。二次硬化を行うことで、これらの中間層が完全に重合し、スペックシート通りの物性が発現します。
Formlabs Form Cureを使えば、材料ごとの推奨温度・時間を正確に管理でき、引張強度が20〜40%向上するケースがあります(当社テスト済み)。高強度レジンの場合、二次硬化をスキップすると本来の強度の60〜70%しか発揮できないため、必ず実施してください。
高強度レジンの洗浄方法と注意点
高強度レジンの造形後は、サポート除去→洗浄→二次硬化の順で後処理を行います。洗浄は最終強度に直結する重要な工程です。
洗浄にはIPA(イソプロピルアルコール)が一般的に使用されますが、IPAは第2種有機溶剤に該当し、消防届出や有機則対応が必要です。IPA廃液の処理も産業廃棄物として適切に行う必要があります。
洗浄の詳しい手順は「光造形の洗浄完全ガイド」で解説しています。

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光造形とFDMの強度はどう違う? 方式別の比較
光造形(SLA)とFDMでは強度の出方が根本的に異なります。FDMは等方性が低く積層方向に弱い一方、光造形は等方性が高く方向による強度差が小さいのが特長です。
| 比較項目 | 光造形(SLA) | FDM/FFF |
|---|---|---|
| 等方性 | 高い(方向差が小さい) | 低い(Z軸方向に弱い) |
| 表面品質 | 高精細・滑らか | 積層痕が残る |
| 耐熱性 | 材料依存(タフ2000 V2: 70℃) | ABS: 100℃+、PC: 140℃+ |
| 引張強度(ABS相当) | タフ2000 V2: 50 MPa | ABS: 40-50 MPa |
| 後処理 | 洗浄+二次硬化が必須 | サポート除去のみ |
| 強みを活かせる用途 | 精密部品、嵌合検証、見た目重視のプロトタイプ | 大型パーツ、耐熱部品、低コスト量産 |
光造形は等方性の高さと表面品質で優位ですが、後処理工程が必要です。一方FDMは後処理が簡単で耐熱性に優れます。「精度と強度の両立」を求めるなら光造形、「耐熱性とコスト」を重視するならFDMが適しています。
FDMの詳しい解説は「ABSフィラメント完全ガイド」をご覧ください。
高強度造形を成功させるチェックリスト
高強度レジンの性能を最大限引き出すために、以下のチェック項目を確認してください。
造形前〜後処理までのチェックリスト
- ☐ 用途に合ったタフレジンを選定したか(上記用途別表を参照)
- ☐ 対応プリンター(Form 4シリーズ)を使用しているか
- ☐ PreFormで材料プロファイルを正しく設定したか
- ☐ サポート設計は荷重がかかる面を避けているか
- ☐ 造形後の洗浄工程を適切に実施したか(洗浄時間の過不足に注意)
- ☐ 洗浄後10分以上の乾燥時間を確保したか
- ☐ 二次硬化の温度・時間を材料別の推奨値で設定したか
- ☐ 最終検査で寸法精度・表面品質を確認したか
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よくある質問(FAQ)
光造形3Dプリンターで金型並みの強度は出せますか?
高強度レジンを使えばABSやPPに近い物性を実現できます。特にタフ2000 V2は引張強度50MPa・破壊靭性305J/m²でABS相当の強度を発揮します。ただし射出成型品と完全に同等ではないため、最終製品には用途に応じた検証が必要です。
タフ2000・タフ1500・タフ1000の違いは?
硬い順にタフ2000(ABS相当)→タフ1500(PP相当)→タフ1000(HDPE相当)です。タフ2000 V2は硬度と耐熱性が最高。タフ1500 V2は柔軟性と強度のバランス型。タフ1000は伸び率180%で繰り返し曲げに最強。上記の用途別表で最適な材料を選定してください。
二次硬化で強度はどれくらい上がりますか?
引張強度が20〜40%向上するケースがあります(当社テスト済み)。層間の未硬化レジンが完全に重合し、スペックシート通りの物性が発現します。高強度レジンでは二次硬化をスキップすると本来の60〜70%の強度しか出ません。
すべての光造形3Dプリンターで高強度レジンは使えますか?
いいえ。タフレジン V2はForm 4シリーズ専用設計です。10万円以下の汎用機では使用できません。Form 3シリーズではV1(従来版)が使用可能です。
高強度レジンで造形した後の洗浄はどうすればいいですか?
IPAまたはIPA代替洗浄液で洗浄します。3DMedSupoはIPAと同等の洗浄性能を持ちながら非危険物で、廃液回収まで一括対応します。詳しくは「光造形の洗浄完全ガイド」をご覧ください。
まとめ
光造形3Dプリンターは「脆い」というイメージはもう過去のものです。
Formlabsのタフレジン V2シリーズにより、ABS・PP・HDPEに匹敵する強度を光造形の高精細な仕上がりと両立できるようになりました。
- 硬さ・耐熱性重視 → タフ2000 V2(ABSライク)
- 柔軟性と強度の両立 → タフ1500 V2(PPライク)
- 繰り返し曲げ・最高靭性 → タフ1000(HDPEライク)
- 洗浄は3DMedSupoでIPA不要・廃液回収まで一括対応
レジンの選定や導入のご相談は、3Dプリンター専門店i-MAKERにお気軽にお問い合わせください。
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