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光造形3Dプリンター

Formlabs Japan取材|新レジンとオープンマテリアルで変わる光造形

i-MAKER 研究室 編集部 | 公開 2026.04.01 更新 2026.04.15 読了 約15分

この記事の重要ポイント

  • Formlabs Japanが新体制のもと、ショールーム定期開放や新レジン投入で日本市場を本格化
  • 新タフレジン3種類(Tough 1000 / 1500 V2 / 2000 V2)が熱可塑性プラスチックに匹敵する性能を実現
  • オープンマテリアルモードで水洗いレジンなどサードパーティ製材料にも対応
  • IPA代替洗浄液「3DMedSupo」との連携で洗浄工程の課題を解消

Formlabs Japanが新体制のもと、日本市場での展開を本格化させています。エンジニアリング用途に対応する新レジンの投入、ショールームの定期開放、純正以外のレジンにも対応するオープンマテリアルモードと、新たな動きが相次いでいます。今回は、Formlabs株式会社のカントリーマネージャー竹村大輔氏(以下、竹村氏)と、マーケティングマネージャーの岸本毅氏(以下、岸本氏)にお話を伺いました。

Formlabs Japanショールーム外観と竹村氏・岸本氏
Formlabs Japanショールーム前にて。左:竹村大輔氏、右:岸本毅氏

新体制でスタートしたFormlabs Japanと日本市場の動き

日本の3Dプリンター市場は、昨今横ばいで推移してきたと言われています。3DCADや3Dスキャナーの市場も同様にフラットな状態が続いてきました。そのような状況の中、Formlabsは前年度比約20%の成長を記録しています。

2025年7月、竹村氏がカントリーマネージャーに着任し、岸本氏がマーケティングを統括する体制が整い、日本での更なる展開を開始しています。

Formlabs Japan カントリーマネージャー竹村大輔氏
Formlabs Japan カントリーマネージャー 竹村大輔氏

その一つが、昨年12月から再開された月1回のショールーム開放イベントです。ショールームにはForm 4やForm 4L、粉末焼結方式のFuseシリーズなど複数の実機が常設されており、多種多様なレジンで造形されたサンプルも展示されています。日中は1対1の個別相談やお悩み相談の時間を設け、夕方には軽食を交えたユーザー同士の交流会を実施するという構成です。

Formlabs Japanショールームに展示されたForm 4とForm 4L
ショールームに常設されたForm 4・Form 4Lの実機展示

「既存のお客様や、興味をお持ちの方を月1回お招きして、実機に触っていただきながら、ざっくばらんにコミュニケーションする場を作っています」(竹村氏)

展示会やウェブだけでは伝わりにくい「実際に使ってみてどうか」という実感を、同じ立場のユーザーから直接聞ける。こうした場が定期的に設けられるようになったことで、Formlabsの日本市場におけるコミュニケーションが変わりつつあると岸本氏は話します。

Formlabsショールームに展示された多種多様な造形サンプル
ショールームに展示された多種多様な造形サンプル

新たなタフレジン3種類の登場 ― 熱可塑性プラスチックに匹敵するエンジニアリング材料

新体制のもとで注目されている動きの一つが、タフレジンシリーズの刷新です。Formlabsは2025年末、エンジニアリング用途に対応する新しいタフレジンファミリーとして、Tough 1000レジン、Tough 1500レジン(V2)、Tough 2000レジン(V2)の3種類を発表しました。

「タフレジン」とは、強度や耐衝撃性に優れたエンジニアリング系のレジン材料です。これまではタフ2000、タフ1500、デュラブルの3種類がラインナップされていましたが、今回3種類すべてがバージョンアップしています。

「今回のバージョンアップで、それぞれのレジンは身近な工業製品に使われている熱可塑性プラスチックに匹敵する性能を目指して設計されています」(岸本氏)

Formlabs Japan マーケティングマネージャー岸本毅氏
Formlabs Japan マーケティングマネージャー 岸本毅氏

補足すると、熱可塑性プラスチックとは、加熱すると柔らかくなり冷えると固まる一般的なプラスチックのことで、HDPEやABSなど工業製品で広く使われている素材です。3Dプリント用レジンがこれらに匹敵する性能を持つことは、試作だけでなく実際の機能部品としての使用に道を開くことを意味しています。

3種類はそれぞれ性格が異なり、用途に応じた選び方が可能です。

タフレジン3種類(Tough 1000・1500・2000)の造形サンプル展示
タフレジン3種類の造形サンプル。左からTough 1000(ポリエチレン相当)、Tough 1500(ポリプロピレン相当)、Tough 2000(ABS相当)

Tough 1000レジン ― 「壊れにくさ」が求められる部品に

Tough 1000レジンは、高密度ポリエチレン(HDPE:ポリタンクや食品容器に使われる丈夫なプラスチック)に匹敵する延性と耐衝撃性を持つ材料です。引っ張った際に元の長さの180%まで伸びてから破断する(破断伸び180%)という粘り強さがあり、衝撃に対しても13.1Jの耐性を発揮します。この数値はHDPEを上回ります。

繰り返し噛み合うギア機構のパーツ、落下や衝撃が加わる可能性のある治具・固定具、ボールジョイントのような低摩擦の可動部品など、「壊れにくさ」と「滑らかな動き」が同時に求められる部品に適しています。従来のDurableレジンと比較して、耐熱性、耐クリープ性(長時間の荷重で変形しにくい性質)、寸法精度も向上しました。

Tough 1500レジン(V2)― 曲げて戻す動きがある部品に

Tough 1500レジン(V2)は、ポリプロピレン(PP:ペットボトルのキャップや食品パッケージに使われるプラスチック)に匹敵する剛性と靭性のバランスを持つ材料です。硬さと柔軟性が両立しており、「曲げても折れず、元に戻る」特性を活かせます。

ラッチ(カチッと留まる爪)、フレクシャー(弾性変形を利用した板バネ構造)、ヒンジ(蝶番のような回転構造)、バックルやセルフタッピングねじ用のボスなど、繰り返し曲げ戻しが発生する部品の製作に向いています。

Tough 2000レジン(V2)― 頑丈さと耐熱性が求められる構造部品に

Tough 2000レジン(V2)は、ABS樹脂(レゴブロックや家電製品の筐体に使われるプラスチック)に匹敵する強度と剛性を持つ、シリーズ中で最も硬い材料です。V1からの改良により、破壊靭性(ひび割れに対する抵抗力)が3倍に向上し、耐傷性やマットな表面品質も改善されています。

0.45 MPaの荷重たわみ温度が70°Cと高温にも耐え、4MPaの荷重下で2週間後もクリープひずみが1.3%にとどまります。頑丈な治具・固定具、保護シェル、スナップフィット(パチンとはめ込む方式)のエンクロージャ、耐熱・耐クリープ性が求められる構造部品など、「長時間力がかかっても変形しにくい」部品に適しています。

Tough 1000 レジン
HDPEライク
Tough 1000 レジン
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Tough 1500 V2 レジン
PPライク
Tough 1500 V2 レジン
商品ページ →
Tough 2000 V2 レジン
ABSライク
Tough 2000 V2 レジン
商品ページ →

3種類の比較

従来のタフレジンV1では、造形時の「反り」(造形中や硬化後にパーツが設計通りの形状を維持できず変形する現象)が課題として指摘されていました。エンジニアリング用途では機械的強度を確保するためにレジンの組成が特殊になり、この傾向が出やすくなります。

「前回のバージョン1では製造現場での試作での活用に使えるレベルでしたが、今回は『工業製品に匹敵する』という評価に変わりました。高強度なパーツや機能性の造形を求める日本のお客様にもやっとご紹介できるところまで来たと思います」(岸本氏)

パートナー企業からも「バージョン1と比べると思った以上に反らない」というフィードバックが寄せられています。ただし、粘性の高いエンジニアリング系レジンでは造形に一定のコツが必要な点は変わらないと竹村氏は話します。これはFormlabsに限らず同種のレジンに共通する特性であり、パートナー企業のサポートを活用しながら運用ノウハウを蓄積していく形が推奨されます。

なお、タフレジン3種類それぞれの詳しい造形レポートと性能比較については、別途シリーズ記事として連載予定です。実際の造形手順やコツ、仕上がりの違いを実物写真とともにお伝えしていきます。

竹村氏と岸本氏の対談の様子
新体制について語る竹村氏(左)と岸本氏(右)

オープンマテリアルモード ― 水洗いレジンなどサードパーティ製材料への対応

Form 4 / Form 4Lで提供されている「オープンマテリアルモード」は、Formlabs純正以外のレジンを使用できる機能です。波長405nmに対応する光硬化性レジンであれば、サードパーティ製の材料を使って造形することができます。

「『Formlabsは純正レジンしか使えない』という声をいただきますが、オープンマテリアルモードを始めたことで更なる選択肢の幅が広がっています」(岸本氏)

竹村氏がForm 4を紹介する様子
Form 4を紹介する竹村氏
Form 4本体の正面クローズアップ
Form 4本体のタッチパネル

この機能によって広がる選択肢の一つが、「水洗いレジン」と呼ばれるカテゴリーの材料です。たとえば日本製の低アレルゲン水洗いレジン「エキマテ」は、造形後の洗浄を水道水と台所用洗剤だけで行える材料です。一般的な光造形レジンではIPA(イソプロピルアルコール)などの有機溶剤で洗浄する必要がありますが、エキマテの場合はそれが不要になります。洗浄廃液も国内のほとんどの地域で下水に流すことができ、アレルゲン物質や発がん性物質(ベンゼン、アンチモン等)を含まない設計のため、安全性にも配慮されています。

オープンマテリアルモードでこうした水洗いレジンを使えば、IPA不要・廃液処理不要の環境で光造形を運用できます。教育現場で生徒が安全に使える環境を整えたい場合や、自宅やオフィスで光造形を行いたいプロメイカーにとって、導入のハードルを大きく下げる組み合わせです。

なお、オープンマテリアルモードはForm 4 / 4L だけでなくForm 3 / 3L でも利用可能です。「最新機だけの限定機能」と誤解されることもありますが、Formlabs の幅広いモデルで使える機能だと竹村氏は補足します。

???? Open Material Modeを使って造形する(SLA)
(「要件/Open Material Modeが有効なプリンター」の項目をご参照ください。)

3DMedSupoとの洗浄ソリューション ― IPA課題の解消と市場形成

光造形3Dプリンターの普及を考えたとき、避けて通れないのが洗浄工程の課題です。造形後に表面の未硬化レジンを除去する「洗浄」には一般的にIPAが使われますが、IPAは「有機溶剤中毒予防規則」の対象であり、使用する事業所では年2回の特殊健康診断や作業環境測定が義務付けられます。レジンが溶け込んだ使用済みIPAは産業廃棄物として処理が必要で、そのコストと手間が現場の負担になっています。

この課題に対する具体的なソリューションが、非有機溶剤系洗浄液「3DMedSupo(メドサポ)」です。三協製薬株式会社が製造し、Formlabs株式会社でも推奨の洗浄液として評価が進んでいます。

3DMedSupoはエタノール系の洗浄液で、IPAと同等の洗浄力を持ちながら有機溶剤中毒予防規則の対象外です。つまり、IPAで必要だった特殊健康診断、作業環境測定、産業廃棄物としての廃液処理がすべて不要になります。使用済みの廃液は三協製薬が無料で回収し、リサイクルを経て別の用途の資源として再利用されるため、廃棄コストもかかりません。導入実績は300社以上にのぼります。

Formlabs製品との相性も確認されており、Form 4 / Form 4Lはもちろん、Form 3シリーズ、純正の自動洗浄機Form Washにもそのまま使用可能。スタンダード系レジンからタフ系、歯科用レジンまで、メーカーや成分を問わず対応しています。

「光造形をもっと広めるにはどうしてもIPAの課題がある。そこを取り払うことも含めて、Form 4やForm 4Lと3DMedSupoの組み合わせはベストです」(岸本氏)

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Form 4 / Form 4Lの進化と広がる導入実績

Form 4 / Form 4Lでは、造形方式が従来のレーザー方式(LFS)から「LFD(Low Force Display)」方式に刷新されました。レーザーが1点ずつなぞる方式から、60個(Form 4Lは145個)の高出力LEDで面全体を一括照射する方式に変わったことで、造形スピードは従来機の平均2〜4倍に向上しています。Form 4は最大造形サイズ200 × 125 × 210mm、XY解像度50μm。Form 4Lは353 × 196 × 350mmと約5倍の造形サイズで、複数に分けていた大型モデルも一度に造形できます。

装置本体も従来機から大幅にコンパクトになり、オフィスや研究室など限られたスペースへの設置が容易になりました。消耗品コストはForm 3L比で約40%削減。レジンカートリッジを装着するとICチップが材料を自動認識し、最適な設定でプリントが始まるため、複雑な操作は不要です。

こうした装置の進化と豊富なレジンラインアップによって、Formlabsの導入実績は試作にとどまらず広がりを見せています。

笑顔で語る竹村氏と岸本氏
Formlabsの成長と日本市場の可能性について語る竹村氏(左)と岸本氏(右)

Fuse シリーズとサポートレス造形 ― 粉末焼結で国内トップクラスの実績

Formlabsは光造形だけでなく、「粉末焼結(SLS)」方式の3Dプリンター Fuseシリーズも展開しています。粉末焼結方式とは、粉末状のナイロンなどの樹脂にレーザーを照射して焼き固めることで立体物を造形する方式で、Formlabsは国内の出荷台数ベースで約半数のシェアを持っています。

最大の特長は「サポートレス一体造形」が可能な点です。光造形やFDM(フィラメントを溶かして積み上げる方式)では、張り出しや中空構造のある部品を造形する際に「サポート材」と呼ばれる補助構造が必要になります。サポート材は造形後に取り除く必要があり、形状によっては分割して造形し、後から組み立てるという手間が発生します。

SLS粉末焼結Nylon12で造形されたパーツの展示
SLS粉末焼結Nylon12で造形されたパーツ
SLS粉末焼結で造形されたハニカム構造のエンクロージャ
ハニカム構造のエンクロージャ(SLS造形)

粉末焼結方式では、未焼結の粉末が造形物を支える役割を果たすため、サポート材が不要です。内部に複雑な流路を持つノズルや、一体で造形したいメカニカルな可動構造など、従来は分割せざるを得なかった形状をそのまま造形でき、設計段階での自由度が大きく広がると岸本氏は説明します。

Fuse粉末焼結で造形されたラティス構造パーツ
Fuse粉末焼結で造形された複雑なラティス構造

さらに、造形後の仕上げとして「蒸気熱処理」の装置も提供されています。蒸気によって造形品の表面を微細に溶かし、粉末焼結特有の粉っぽい質感を低減する処理です。塗装・染色・メッキの密着性が向上し、試作段階から複数の仕上げバリエーションを作り分けることができます。

SLS粉末焼結で造形されたコントローラー筐体の各種仕上げバリエーション
SLS造形品の各種仕上げバリエーション(塗装・メッキ・セラコート等)
SLS粉末焼結パーツの造形情報と仕上げサンプル(参考資料)
SLS粉末焼結パーツの造形情報(参考資料)

実際に、Formlabsの粉末焼結で造形したパーツを最終製品として販売しているケースもあり、3Dプリンターの用途がプロトタイピングからエンジニアリング、さらには最終品の製造にまで広がっていることを示しています。

SLS粉末焼結で製造されたAXIS製の最終製品パーツ
SLS粉末焼結で製造されたAXIS製の最終製品
SLS粉末焼結で製造された最終製品のクローズアップ
最終製品パーツのクローズアップ
AXIS Tactical Rack System ― SLS粉末焼結による最終製品の展示事例
AXIS Tactical Rack System ― SLS粉末焼結による最終製品の展示事例(参考資料)

まとめ ― 新体制・新材料・新しい運用環境が揃った現在のFormlabs

新体制のもとでの日本市場への注力、タフレジンV2を含むエンジニアリング材料の進化、オープンマテリアルモードによる運用の柔軟化、3DMedSupoとの連携による洗浄課題の解消、粉末焼結でのサポートレス一体造形と最終品製造への展開。これらの動きが一体となって、光造形3Dプリンターの活用環境が整いつつあります。

Formlabs Japanのショールームイベントは月1回開催されており、実機の体験と個別相談が可能です。また、2026年4月には名古屋ものづくりワールドにも出展予定で、オープンマテリアル対応レジンや医療用途、水溶性犠牲型レジンなどの展示が予定されています。

Form 4

Form 4はLFD方式を採用した光造形3Dプリンターで、従来機(Form 3)比で平均3.5倍の造形スピードを実現しています。最大造形サイズは200 × 125 × 210mm、XY解像度50μm。オープンマテリアルモードにより純正以外のレジンにも対応しています。

3DMedSupo(3Dメディカルクリーン)

3DMedSupoは、IPAに代わる非有機溶剤系の洗浄液です。IPAと同等の洗浄力を持ちながら有機溶剤に該当せず、特殊健康診断・環境測定・産業廃棄物処理が不要です。廃液の無料回収サービス付きで、導入実績は300社以上。Formlabs全機種、全レジンに対応しています。

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i-MAKER 研究室 編集部

株式会社アイ・メーカーが運営する、ものづくり情報サイト「i-MAKER 研究室」の編集部。3Dプリンター・光造形・洗浄の現場に10年以上携わる経験をもとに、実機検証と取材を軸とした記事を制作しています。

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