光造形(SLA)3Dプリンター完全ガイド

大変革が起きている光造形3Dプリンターの世界

3Dプリンターの中で、一閣を占める光造形3Dプリンター。FDM®(熱溶解積層法)とは違い、滑らかで高精細な仕上がりができるうえに、豊富な材料(レジン)を使うことができます。

また、光造形3Dプリンターも、他の造形方式の3Dプリンターと同様、さまざまな機種が登場しています。

高価格な業務用(ハイエンド)タイプから、低価格な家庭用まで、その種類はさまざまです。

しかし、そんな光造形3Dプリンターの世界で、今大変革が起きているのです。

2006年に特許が失効して以来13年、光造形3Dプリンターの性能は今、大きく進化しようとしています。

その中でもひときわ人気の光造形3DプリンターがFormlabs社のForm2であり、その後継機であるForm3、Form3Lも大きな期待が集まっています。

Form3, Form3L, Formlabs
注目が集まるForm3とForm3L

全世界最多。5万台の出荷実績と4000万以上のプリント成功

Form2は、なんと世界最多の全世界5万台、プリントされたパーツ数は4000万以上にのぼっており、その90%以上が成功しているのです。

なぜこれほどFormlabsの3Dプリンターが人気なのか、それは単純に“高精細、滑らかな造形”ができるというだけではありません。

ここでは光造形3Dプリンター自体の特長をご紹介するとともに、弊社でも販売しおススメであるFormlabsの Form2、Form3、Form3Lについて、なぜおススメなのかという点を他の方式、他の光造形3Dプリンターとの比較をもとにご紹介します。

安価な光造形3Dプリンターにはない、圧倒的な品質と、そして60万円前後という価格帯ながら、数百万円、もしくはそれ以上の高品質を実現する秘密があるのです。

Formlabs Form2
Form2をはじめ革新的なデスクトップ3Dプリンターを世に送り出す。

3Dプリンターを導入する際には、一般的に積層ピッチなどの精度に目が行きがちですが、実際に導入してみると、失敗しないといった造形安定性や、設定がラクといった運用面の方も重要です。

その点も踏まえ、3Dプリンターを導入する際の一助になれれば幸いです。

光造形(SLA)3Dプリンターとは

光造形 3Dプリンターは、UV光が当たると固まる液体状のレジン(UV硬化性樹脂)を使った3Dプリンターです。

UV硬化性樹脂にUVレーザーを照射し、1層ずつ積層して造形モデルを作ります。光造形法は3Dプリンターの方式の中では、最も古い原理の造形方式で、業務用のハイエンドタイプから組み立て式の安価な機種まで、さまざまなタイプが登場しています。

光造形3Dプリンターの種類SLAとDLP

光造形 3Dプリンターは大きく分類すると二つの方式に分かれています。第一がステレオリソグラフィー(Stereolithography、略称SLA、SLなど)とも言われUV光をレーザービーム状にして照射し、1層ずつ固めていく技術です。

Form2 3Dプリンター SLAの造形プロセス

もう1種類が、デジタルライトプロセッシング(DLP)といわれ、プロジェクターを使い、面でUV光をあてる造形技術です。SLAとDLPの一番大きな違いは、複数の造形モデルを同時にプリントする際の造形時間です。

SLAがレーザービームを照射するのに対して、DLPは面で紫外線レーザーを照射するため、DLPの方が複数同時にプリントしても時間は変わりません。

一方、SLAの方は若干1時間が1.2時間のように増えます。ただし、FDMのように個数分の造形時間はかかりません。

光造形の歴史

光造形3Dプリンターのもっとも代表的な製法であるSLA方式は、現在世界の3Dプリンターメーカーの二大メーカーの一つ3Dsystemsの創業者チャック・ハル氏が1986年に特許を取得したものです(着想は1983年)。

このSLAの開発については幾つかのエピソードがあり、チャック・ハルが特許申請を行う3週間前に、フランスのエンジニア・化学者でもあるアラン・ル・メオーテとそのグループによって特許申請されました。

しかし、フランスのゼネラル・エレクトリック・カンパニー(現アルカテル・Alsthom)およびCILAS(レーザーコンソーシアム)によりその特許が放棄されたため、チャック・ハルの申請が認められたのです。

ちなみに特許破棄の理由は、「ビジネス視点の欠如」とのことで、のちに、アラン・ル・オメーテはこの特許放棄について、「フランスの技術革新のあり方には問題があると考えている」と発言しました。

また同時にステレオリソグラフィー(SLA)の商業的可能性については、”爆発的な可能性”を秘めていると当時のインタビューに答えていたとされ、その栄光の座を3Dsystemsに渡すことになりました。

また、光造形法では、日本の小玉秀男氏がもっとも早く開発しており、1980年に特許申請されていた経緯があります(1986年時点で審査請求期間を徒過)。その後2006年に特許が失効、さまざまな機種が開発されています。

たとえば、光造形を高速化させたCLIP製法を確立したCarbonや、MIT発のFormlabsが代表的です。Formlabsはなかでも世界一の導入実績を誇り、世界一の光造形3Dプリンターメーカーに成長しています。

光造形(SLA)3Dプリンターの原理と仕組み

光造形3Dプリンターの基本的な原理と仕組みについてSLA方式を中心にご紹介していきます。

造形の原理・仕組み

光造形(SLA)3Dプリンターの仕組みは、以下のステップで造形モデルが作られていきます。

造形モデルが作られるビルド・プラットフォームが液体のUV硬化レジンに浸かります。

Form2 造形プロセス 

レジンタンクの下からUVレーザーが照射され、レジンが硬化し1層目が作られます。1層目の積層が終了すると、ビルド・プラットフォームが上まで上がり、余分なレジンを落とします。

上に上がる際には、使っているレジンからしっかりと剥離することが求められ、安価な低価格の光造形3Dプリンターだとこの剥離でミスプリントが起きる可能性が高まります。

例えばFormlabsのForm 2やForm3、Form3Lでは、レジンタンクをスライドさせる機能を搭載することで、レジンとの密着を軽減し、剥離を高精度に行います。このステップを造形モデルが完成するまで繰り返します。

Form2 造形プロセス レジンタンクスライド

このSLAの方式は反転SLAといわれる方式で、下部からレーザービームが照射される方式です。

SLA 光造形方式

積層ピッチは、3Dプリンターの種類や仕様するレジンによって異なりますが、大体、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロンの範囲内です。積層ピッチが細かいほど、上記のプロセスが増え、造形時間も長くなります。

例えば、25ミクロンの積層ピッチだと、100ミクロンを積層するために4回分プリントしなければなりません。

サポート構造

光造形(SLA)3Dプリンターのサポート構造は、基本的にFDM®(熱溶解積層法)と同じ原理で作られます。また光造形(SLA)3Dプリンターのサポート材は、専用のサポート材などはなく、使用するレジン材料と同じもので作られます。

そのためサポート材をいかに減らすかが無駄な材料費を抑えることにつながります。また、光造形(SLA)3Dプリンターは、高精細で滑らかな仕上がりが可能なため、サポート材が少なくした方が、仕上がりが綺麗に保つことができます。\

サポート構造は、FDMと同じようにオーバーハングやブリッジなど、支える部分が求められる構造につきます。

Form2 Preform

後処理:洗浄

光造形(SLA)3Dプリンターは、プリント後に洗浄処理が必要です。レジン(UV硬化性樹脂)が液体状であることから、完成した造形モデルには余分なレジンがこびりついています。

このレジンを落とすには、イソプロピルアルコール(IPA)やエタノールなどの溶剤に浸けて洗浄を行います。洗浄時間は約10分~20分程度で、長期間溶剤につけすぎると造形物も溶けてしまう可能性があります。

また、洗浄液は汚れ具合によって定期的に交換する必要があります。

FormWash
造形後には洗浄が必要になる。

後処理:二次硬化

光造形(SLA)3Dプリンターで作られた造形物は、材料の種類によって二次硬化が必要です。光造形では、1層ずつ液体樹脂を固めて積み上げていきますが、実は層と層の間は、目に見えないレベルでは、半硬化の状態です。

二次硬化を行うことで、この半硬化の状態が完全に固まります。標準的なレジンは二次硬化は必要ありませんが、高耐熱や高耐久などのエンジニアリング用レジンは、二次硬化することで本来の物性を発揮することができます。

Form2 後処理 二次硬化
二次硬化によって更に強化できる

後処理:研磨と塗装

光造形(SLA)3Dプリンターで作られたモデルは研磨や塗装を施すことで更に仕上がりを美しくできます。例えば、透明レジンなどの材料は、サンディングなどの研磨後、クリアコートでコーティングすることで、優れた透明性を発揮することができます。

Form2 サポート除去

光造形(SLA)3Dプリンターの特長

光造形(SLA)3Dプリンターには他の造形方式とは違うさまざまな特長が存在します。

高精細・滑らかな仕上がり

光造形(SLA)3Dプリンターの最大の特長が高精細で滑らかな仕上がりができる点です。

材料が液体状のUV硬化レジンであり、UVレーザーを照射することでFDM(熱溶解積層法)のような積層跡が目立たない、滑らかな質感が表現できます。また複雑で精密な形も光造形(SLA)3Dプリンターならではの特長です。

Formlabs 光造形

高い寸法精度

光造形(SLA)3Dプリンターの特長として高い寸法精度があります。例えばFDM(熱溶解積層法)3Dプリンターは、熱可塑性樹脂を使用することから材料の種類では熱収縮によって反ったり、形状が収縮したりします。

しかし光造形(SLA)3Dプリンターでは、樹脂の温度がそこまで高温にならず、液体状という点もあり、熱収縮などの心配はありません。

光造形(SLA)3Dプリンターの代表格ともいえるFormlabsのForm2では、95%で240μm以内の正確さを誇ります。

Form2 用途

等方性

光造形(SLA)3Dプリンターの特長として等方性があります。等方性とは、どの方向でも物質的な性能はかわりません。因みに異方性とは、方向によって物質的な性質が変わることを意味します。

光造形(SLA)方式は、UV硬化性樹脂にUV光を照射して一層ずつ積層していきますが層と層の間にグリーン状態と呼ばれる見硬化層ができます。

この中間体ともいえる部分では、前の層と分子レベルで結合しているため、どの方向でも物性が変わりません。また、二次硬化することでこのグリーン層が完全に硬化し、高強度な物性が再現されます。

SLA 等方性

生産性

光造形(SLA)3Dプリンターは、複数生産する場合にも優れた特長を発揮します。例えば、1個造形する場合も、複数造形する場合もプリント時間はあまり変わりません。

これはUV光が高速で照射されるためです。FDM(熱溶解積層法)3Dプリンターであれば、ノズルの動きが加わるため、個数に比例して時間がかかりますが、SLA方式では1.1倍~1.2倍程度に増えるだけです。

そのため、バリエーションデザインや、同時に複数プリントする場合には優れた生産性を発揮します(※DLP方式は面でUV光を照射するため、1個でも複数でもプリント時間は同じです)。

Form2 スピード

光造形3Dプリンターの長所と短所

光造形(SLA) 3Dプリンターにはメリット・デメリットをまとめると以下のような点があげられます。

光造形3Dプリンターの長所

  • 造形スピードが早い
  • 精度が高い
  • 複雑な造形が可能
  • 表面が滑らか
  • 寸法精度が高い
  • 等方性を持つ
  • 生産性が高い

光造形3Dプリンターの短所

  • 耐候性が低い
  • 直射日光に当たると劣化する
  • 造形後の後処理が必要

光造形(SLA)3Dプリンターの比較

光造形(SLA)3Dプリンターにはさまざまな種類が登場していますが、ここでは安価なデスクトップFDMとの比較、更にはFormlabsの光造形(SLA)3Dプリンターがおススメの理由をご紹介します。

FDM 3DプリンターとFormlabsの比較

FDM 3DプリンターとForm2の比較

光造形(SLA)3Dプリンターが比較されるのがFDM 3Dプリンターです。この二つの3Dプリンターは樹脂を造形する代表的な方式ですが、原理や使用できる材料は全く異なります。それぞれの良さがあり、できること出来ないことがあります。大きな比較ポイントは以下の通りです。

※ここでの比較対象はFormlabs、Form2と、デスクトップタイプのFDM 3Dプリンターを想定したものとする。

左がFDM3Dプリンター、右がForm2の仕上がり

仕上がりの比較

光造形(SLA)3DプリンターとFDM 3Dプリンターの最大の違いは、仕上がりの違いです。FDMは、フィラメントといわれる糸状の熱可塑性樹脂を溶かして積み上げる方式です。

そのため、造形物は、少なからずフィラメントの積層跡が残ります。一方で、光造形(SLA)3Dプリンターは、液体のUV硬化レジンをベースにしているため、その仕上がりは滑らかで高精細な造形が可能です。

FDM vs SLA
FDMでは積層跡が表面に残るが、光造形は目立たない

寸法精度の比較

光造形(SLA)3DプリンターはFormlabsのForm2のように、95%で240μm以内の正確さを誇ります。

FDMとSLAの比較

の高い寸法精度は、高温にならず、液体樹脂ということがあげられます。その一方で、FDM(熱溶解積層法)は、材料を一度加熱して溶かして、自然に冷却して固形化させるため、熱収縮します。

例えばABSフィラメントのような収縮性が高い材料は、造形の過程で反ったりする可能性があります。寸法精度は光造形(SLA)3Dプリンターの方が優れていると言えるでしょう。

FDM 熱溶解積層法 反り
FDMは反る可能性が高い。
Form2 寸法精度
光造形法は反らない

生産性の比較(複数プリントの場合)

複数の造形モデルを一度にプリントする場合、光造形(SLA)3Dプリンターの方が、FDM(熱溶解積層法)よりも優れた生産性を発揮します。

FDMの場合、押出ノズルが移動して、材料を押し出して積み上げるため、個数分の時間がかかります。

FDM 複数プリント

例えば1個1時間であれば、10個プリントする場合には約10時間近くかかります。その一方で、光造形(SLA)3Dプリンターは、UV光レーザービームが高速で照射されるため、1個1時間であれば、10個プリントする場合でも1.1時間~1.2、1.3時間程度にしか増えません。

Form2 スピード

この生産性の高さは複数プリントする場合には光造形(SLA)3Dプリンターの方が圧倒的なスピードを誇ります(※DLP方式では面でUV光が照射されるため1個でも10個でも時間は変わりません)。

運用面での比較

光造形(SLA)3DプリンターとデスクトップタイプのFDM 3Dプリンターでは、運用面も異なります。

一般的に安価な家庭用(低価格)のFDM 3Dプリンターは、材料の種類に応じてノズルの取り換えや、温度、プリントスピードの調節などが求められ、繊細な機械です。

その一方で、光造形3DプリンターのForm2やForm3、Form3Lは、レジンの種類を変えてもレーザーの照射方法、温度、粘度などを自動で設定してくれるため、ほぼメンテナンスフリーで使うことができます。

安価な光造形3Dプリンターは、Form2やForm3のような自動設定機能が搭載されていない場合や、レジンのリコーティング機能が搭載されていないケースが多く、FDMのデスクトップタイプと同様に設定の調整などの手間がかかります。

Form2 環境
様々な運用面の手間をForm2は自動化してくれる。

なぜForm2なのか。おススメの理由

デスクトップタイプの光造形3Dプリンターはさまざまな機種が登場していますが、なぜFormlabsの光造形3Dプリンターがおススメなのでしょうか。

中でもFormlabsの代表ともいえるForm2は、全世界5万台以上の販売実績を誇り、4000万個以上ものプリント実績があります。

formlabs

高品質な造形精度

FormlabsのForm2、Form3、Form3Lの最大の特長の一つが、高品質な造形精度です。25ミクロン~100ミクロンの積層ピッチで驚くほど滑らかな質感と、高精細な造形を実現することが可能です。

また、材料ごとに自動設定が可能で、材料の特性を最大限活かした仕上がりを可能にします。

Form2 積層ピッチ
Form2の積層ピッチ。左から100ミクロン、50ミクロン、25ミクロン。ほぼ肉眼ではわからない。

ミスのない優れたプリント性

Formlabsの光造形(SLA)3Dプリンターが他の安価な家庭用(低価格)3Dプリンターと決定的に違う点が、ミスのない優れた安定性です。

MIT生まれのテクノロジーによって、プリンターに求められる機能が完全自動化されており、人間がみずから機械の調整や設定を行う必要がありません。

この自動化機能はのちに詳しくご紹介しますが、この機能によって、どんな材料を使っても、ミスのない高品質な造形をもたらしてくれます。

Form2 機能

5つの自動化機能で高品質を実現

Formlabsの光造形3DプリンターForm2、Form3、Form3Lが人気の最大の理由が完全自動化機能です。

3Dプリントに必要な5つの設定をマシーンが自動で行ってくれることで、ミスプリントを無くし、高品質で安定したプリントを実現するのです。この機能が安価なデスクトップの3Dプリンターにはない機能で、同時に産業用レベルのクオリティを保っている理由でもあるのです。

材料の自動補給

第一にFormlabsのForm2、Form3、Form3Lは、レジンの補給を自動で行ってくれます。一般的なデスクトップの光造形 3Dプリンターでは、材料であるレジンの補給は手動です。

この自動補給機能によって、造形途中でも樹脂が切れることを防いでくれます。また自動で補給してくれるため、レジンタンクから漏れるなどのヒューマンエラーを防いでくれます。

光造形3Dプリンターではビルド・プラットフォームがレジンタンクに浸かりながら積層していくため、タンクに材料を入れすぎていると、プラットフォームが使った瞬間、漏れる可能性があります。

しかし、Formlabsでは、最適な分量を随時3Dプリンター本体が計算して補充してくれるため材料切れを気にする必要はありません。

Form2 四大機能

レジンの自動加熱機能

光造形法も、材料の種類に応じた最適な温度が決まっています。レジンの温度が最適な温度に温まっていないと、ミスプリントを引き起こしたり、造形が失敗したりします。

しかし、FormlabsのForm2やForm3、Form3Lでは、レジンの種類に応じた最適な温度まで自動で加熱してくれます。これにより、その材料に最もよい温度まで加熱され、UV光による硬化が高精度になります。

Form2 造形プロセス 加熱

レジンタンクの自動スライド機能

光造形(SLA)3Dプリンターは、液体のUVレジンがたまったタンクに、ビルド・プラットフォームが浸かり、1層ずつ硬化します。

1層ごとにビルド・プラットフォームは上にあがり、余分な樹脂を落としてから、再度レジンタンクに浸かります。

一般的なデスクトップタイプの光造形 3Dプリンターでは、このプラットフォームが上がる際に、造形モデルが剥離するというミスプリントが起きる可能性があります。

しかしFormlabsでは、レジンタンクをスライドさせることで、プラットフォームとの設置面積を減らし、剥離する不具合を防いでくれます。この自動スライドの速度は、レジンの種類ごとに最適化されています。

Form2 造形プロセス レジンタンクスライド

リコーティング機能で温度と粘度の自動均一化

Formlabsの光造形3Dプリンターの機能で、業務用のハイエンド並みの機能が、リコーターによるレジンの粘度調整機能です。

光造形3Dプリンターの造形精度には、レジンの温度だけではなく粘り気、すなわち粘度も大きく影響しています。またレジンタンクの場所によって粘度と温度がむらなく統一されている必要があります。

この粘度と温度の自動均一化機能と言われえる機能(リコーティングといわれる)が搭載されているのも、Form2、Form3、Form3Lが業務用並みの精度と安定性を誇る大きな理由です。

Form2 機能

樹脂ごとに最適なUVレーザービームの照射自動設定

FormlabsのForm2やForm3、Form3Lでは、UVレーザービームのあて方もレジンの種類に応じて最適化しています。例えばゴムライクのフレキシブルレジンは非常に柔らかいため、レーザービームのあて方などをプリンター本体が自動で変更します。

このような優れた自動設定を3Dプリンター本体が行ってくれる点が、一般的な低価格の光造形(SLA)3Dプリンターと異なる点です。これにより不用意なミスプリントを防ぎ、常に安定して快適なプリントを実現してくれるのです。

Form2 造形プロセス

多彩な材料

Formlabsでは、Form2、Form3、Form3Lで使用することができる多彩な材料があります。

一般的なアクリルベースのスタンダードレジンから、ABS樹脂の特性を再現したタフレジン、ポリプロピレン(PP)を再現したデュラブル、高耐熱のハイテンプといったエンジニアリングレジンから、ロストワックス鋳造に使用できるキャスタブルワックスレジン、更には歯科用のデンタルレジンまで、1台で豊富な材料をご使用になれます。

また材料を変更しても設定はプリンターが自動で行ってくれるため、どの材料でも高品質でミスのない造形が可能です。

Form2 materila

光造形(SLA)3Dプリンターの材料:レジン(UV硬化性樹脂)

光造形(SLA)3Dプリンターの材料にはさまざまな種類が登場しています。レジン(UV硬化性樹脂)はアクリルなどをベースに作られていますが、多彩な用途に使用することが可能です。

スタンダード(標準)レジン

光造形(SLA)3Dプリンターで最も一般的な材料がスタンダードレジンです。スタンダードレジンはアクリルベースの樹脂材料で、滑らかで高精細な仕上がりができるのが特長です。

カラーはグレイ、ホワイト、ブラック、クリアの4色に加え、自在にカラー変更できるカラーキットなどが登場しています。

特徴:滑らかな表面、カラーバリエーション、その反面少し脆い

透明(クリア)レジン

光造形(SLA)3Dプリンターでは、透明なクリアレジンも利用できます。アクリルベースの材料で、造形後は半透明ですが、サンディングなどの研磨や、クリアコートによるコーティングで驚くほど高い透明度を再現できます。

特徴:高い透明性、研磨・コーティングが必要

ドラフトレジン(ラピッドプロトタイピング専用)

スタンダードレジンの中でも特別に高速プロトタイピング専用のレジンがドラフトレジンです。300μの積層ピッチで、他のレジンの4倍近い高速で造形を可能にします。

特徴:300μで高速3Dプリント。ラピッドプロトタイピング専用

ABSライク(タフ)レジン

光造形(SLA)3Dプリンターには熱可塑性樹脂であるABS樹脂の物性を再現した材料があります。ABS樹脂は強度と耐久性、耐熱性に優れており、Formlabsではタフレジンが該当します。

特徴:ABS樹脂のような強度・耐久性に優れる。二次硬化が必要。

PPライク(デュラブル)レジン

PPライクは熱可塑性樹脂であるポリプロピレンの物性を再現した光造形3Dプリンターの材料です。

Formlabsではデュラブルレジンです。ポリプロピレンの強度や靭性などを再現しスナップフィットや治具、筐体などの機能性テストに使用できます。

特徴:ポリプロピレン(PP)の強度、靭性、耐久性を再現。二次硬化が必要

ゴムライク(フレキシブル)レジン

ゴムライクは熱可塑性エラストマーの弾力性や引張強度を再現したゴムのようなレジンです。Formlabsではフレキシブルレジンです。ショア硬度80~85Aの硬さを持ち、タイヤのトレッドパターンなどと同等の柔らかさを持ちます。

特徴:ゴムのような柔軟性。二次硬化が必要

高耐熱(ハイテンプ)レジン

光造形(SLA)3Dプリンターでは、耐熱性に優れるハイテンプのレジンも登場しています。Formlabsのハイテンプレジンは、238℃まで耐熱性があり、高熱の液体や気体が通るプロトタイプや小型の樹脂金型などに利用ができます。

特徴:238℃の耐熱性。二次硬化が必要

ロストワックス鋳造用(キャスタブル)レジン

光造形(SLA)3Dプリンターでは、ジュエリーの製造などに用いられるロストワックス鋳造に使用できるキャスタブルレジンがあります。Formlabsではキャスタブルレジン、キャスタブルワックスの2種類が登場しており、鋳造に使用されるワックスモデルを作ることができます。

特徴:ワックスモデルの代替品

強化(グレイプロ)レジン

Formlabsでは、高強度で伸長性、高精度な造形ができるグレイプロレジンも登場しています。グレイプロレジンは、低変形性のエンジニアリング用のプロトタイプや治具、シリコン型などのマスターモデル、スナップフィットなどに利用が可能です。

特徴:高強度、伸長性、高精度。二次硬化、レジンタンクLTが必要

ガラス繊維配合(リジッド)レジン

リジッドレジンはガラス繊維を配合した強化レジンです。硬度と精度を高めるとともに、ガラスの光沢がある見た目が特長です。また経年劣化にも強い材料で、精密で薄型の造形モデルにも最適です。

特徴:硬度、精度に優れる。光沢のある見た目。二次硬化、レジンタンクLTが必要

シリコーンゴムライク(エラスティック)レジン

エラスティックレジンはシリコーンゴムに近い物性を持つUV硬化レジンです。シリコーンのような半透明の見た目に、ショア硬度50Aの優れた柔軟性を持つ材料です。人に触れるウェアラブル製品やプロダクトのプロトタイプに最適です。

特徴:シリコーンのような見た目、質感、半透明、ショア硬度50A。二次硬化が必要

光造形(SLA)3Dプリンターでできること・使い道

光造形(SLA)3Dプリンターは、高精細・滑らかな仕上がりという特長に加え、さまざまな特性を持つ材料が登場しています。そのため、できることや使い道も多岐にわたります。

試作品・プロトタイピング

光造形(SLA)3Dプリンターの主な用途として、試作品やプロトタイピングがあげられます。一般的に形状の確認・検証の目的では、滑らかで高精細な仕上がりができる標準タイプのスタンダードレジンが用いられます。

また、Formlabsは、プロトタイプの迅速性に特化し、通常の3倍~4倍のスピードで造形ができるドラフトレジンをリリースしています。寸法精度に優れ、綺麗な造形ができる光造形(SLA)3Dプリンターは、試作品・プロトタイピングに大きな力を発揮します。

Form2 用途 プロトタイプ
Form2の高精彩、滑らかな質感はプロトタイプ作製に最適

機能性試験用プロトタイプ

光造形(SLA)3Dプリンターでできることとして、機能性試験用のプロトタイプを作ることができます。

光造形(SLA)3Dプリンターでは、ABSの強度や物性を再現したABSライクのタフレジンや、ゴム・エラストマーの物性を再現したフレキシブルレジン、ポリプロピレン(PP)の強度、靭性を再現したデュラブルレジンなどがあります。

こうした金型で使用される熱可塑性樹脂の物性を再現することで、機能性試験用のプロトタイプに利用ができます。

ABSライクレジン

冶具・取り付け具

光造形(SLA)3Dプリンターでは、冶具や工具、取付具といった製造ラインで使用されるツール類の作成にも最適です。治具や取り付け具などは、特にその製品のみに使用するカスタマイズ性や高い寸法精度が求められるため、Form2などは最適です。

特にFormlabsのタフレジンではABS樹脂のような強度や耐衝撃性を備えており、治具や取り付け具に最適です。

ABSライクレジン

透明な造形モデルの作成

光造形(SLA)3Dプリンターでは、透明なクリアレジンを使って透明な造形モデルを作ることができます。

クリアレジンは造形後には半透明の見た目ですが、サンディングによる研磨やクリアコートによるコーティングで、優れた透明性を再現することが可能です。

高耐熱モデルの作成

光造形(SLA)3Dプリンターでは耐熱性に優れた材料を使って、高耐熱モデルを作ることができます。例えばFormlabsのハイテンプレジンは238℃の高い耐熱性を持ち、小型であれば、高温の流体や気体が触れる高耐熱モデルや、真空成形の型なども作ることができます。

3Dプリンター樹脂金型の作成

ハイテンプレジンでは高い耐熱性と耐久性を併せ持つことから、小型の3Dプリンター用樹脂金型を作ることができます。Easy Mold(イージーモールド)などの小型の射出成型機と合わせて使うことで、熱可塑性樹脂を使ったテストモデルや試験を行うことが可能です。

ロストワックス鋳造のワックスモデル

光造形(SLA)3Dプリンターでは、ロストワックス鋳造用の専用レジンがあります。Formlabsのキャスタブルレジンやキャスタブルワックスといわれる材料で、これを用いるとロストワックス鋳造(インベストメント鋳造)のワックスモデルを作ることができます。

従来ロストワックスのワックスモデルはシリコーン型で作られていましたが、3Dプリンターから直接作ることで、高精細なデザインが実現できたり、工程も大きく短縮することができます。

Form2 用途 インベストメント鋳造
ジュエリー用のキャスタブルレジンは、インベストメント鋳造のワックスモデルとして最適な性能を発揮する。

アート・フィギュア・模型

光造形(SLA)3Dプリンターは、その優れた質感、滑らかな表面や高精細な造形を活かして、アートやフィギュア、模型などの造形にも最適です。また造形後に研磨や塗装などとも相性がよく、美しい見た目が求められる造形には最適です。

Form2 用途 アート フィギュア
うつくしい滑らかな造形はアートやフィギュアにも重宝される

最終品

光造形(SLA)3Dプリンターの用途として、最終品の製造が開始されています。もちろん、作るモノによって異なりますが、厳密な強度などが求められないパーツなどはForm2などの光造形3Dプリンターで作る動きが開始されています。

Form2 Formlabs Gillet 3Dプリントシェーバー

光造形(SLA)3Dプリンターの注意点

一方、反転型の光造形(SLA)3Dプリンターには、造形が不得意な形状もあります。

アイランド形状

第一がアイランド形状といわれる形状です。アイランド形状とは、下記の図のように、積層が進むにしたがって一体型になる途中の形状のことです。

孤立した島のようになっていることからアイランド形状といわれています。この形状がなぜ不得意かというと、ビルド・プラットフォームが液体樹脂に浸かる際の圧力によってわずかに寸法精度に影響が出るためです。

筒状・円筒形

反転型のSLA 光造形3Dプリンターの最も不得意な形状が筒状や円筒形の形状です。いわゆるカップ形状といわれるもので、液体レジンに造形プラットフォームがつかる際に、空気の逃げ場所が無く、空気圧によって造形モデルがゆがんでしまうのです。

対策としては、プリント方向を斜めにするなど、空気圧の影響が出ない方向に変更する必要があります。もしくは、カップ形状の底に穴をあけ、空気の逃げ道を作ることが必要です。

まとめ

光造形(SLA)3Dプリンターは、Formlabsの登場によって飛躍的な進化を遂げています。数十万円代の価格帯で、かつての数百万円以上の3Dプリンターの高性能を実現し、安定的な3Dプリントを可能にしています。

また特許が失効し、次から次に低価格帯の光造形(SLA)3Dプリンターが登場する中、よりユーザーの視点にたった製品開発を行っている機種が当然のことながら重宝されることでしょう。

その点からすると、FormlabsのForm2と、次のモデルとして期待されるForm3、Form3Lは、産業用レベルの性能がデスクトップに利用することが出来るまさに次世代型3Dプリンターと言えるでしょう。