職能大・新家教授が実践する3Dプリンター×真空成形の活用術
■ この記事の重要ポイント
- 光造形3Dプリンター「Form 3」と卓上真空成形機「FORMART 2」を組み合わせることで、試作から少量生産まで効率的に実現できる
- 金属加工のスペシャリストが3Dプリンティングを活用し、農業用アシストスーツの開発サイクルを大幅に短縮
- 有規則の適用を受けない洗浄液「3DMedSupo」の導入で、洗浄・後処理工程の安全性と効率が向上
3Dプリンターは一般的に、単体で使うということが想定されていますが、その他のツールと組み合わせることで、その真価をさらに発揮します。例えば、光造形の滑らかな仕上がりは、真空成形機のマスターモデルとして使用することで、さまざまな用途に使用することができます。本記事では、厚生労働省の省庁大学校である、職業能力開発総合大学校(The Polytechnic University of Japan、以下、職業大〈PTU〉)のForm 3と卓上型真空成形機の新たな活用方法についてご紹介します。

職業大(PTU)は、ものづくり分野の指導員を育成する国内唯一の機関であり、高度な工作機械による金属加工から最先端のデジタルファブリケーションツールを取り揃えています。今回は、職業大(PTU)で福祉工学ユニットを率いる新家寿健教授(以下、新家先生)にお話を伺いました。

金属加工のスペシャリストによる、3Dプリンティングの導入
新家先生は、技能五輪の審査も務められる金型や金属加工のスペシャリストで、早い段階から3Dプリンティングを研究開発に取り入れられています。新家先生の取り組みとして代表的な存在が、農業用アシストスーツの開発です。これは、東京農工大学との共同開発で進められているアシストスーツで、農薬散布などの農作業をする際に重く、扱いにくく作業者の負担になっていたツールの軽量化を果たしたものです。

新家先生は、このアシストスーツの開発に、従来は金属加工とABSなどの削り出しでパーツを作っていましたが、3Dプリンティングを活用することで、より軽量で動きやすく、作業者の負担になりにくい開発につなげています。開発にあたっては、Formlabsの光造形3DプリンターForm 3と、ABSライクで高強度なレジンであるタフ2000を使用。削り出しに比べて材料コストを抑え、より最適化した試作開発を実現しています。




「材料のロスを減らせるだけでなく、複雑な内部構造や嵌合(かんごう)のチェックが即座にできます。夜間に造形し、翌朝には検証する。このスピード感は、削り出し加工だけでは実現できませんでした。金属加工の設備が充実している職業大(PTU)だからこそ、3Dプリンターで試作し、最終的に強度が必要な部分は金属で加工するといった、適材適所の判断が瞬時に行えるのです」(新家先生)
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Form 3とFORMART 2を組み合わせた、石鹸型の製作
今回ご紹介するのは、職業大(PTU)のオープンキャンパスで取り組まれた事例で、Form 3と卓上型真空成形機FORMART 2を使って、デジタルものづくりをより身近に感じてもらう取り組みです。

FORMART 2は、型があれば手軽にPETやHIPSなどのシートを使って真空成形ができるツール。素材に合わせて自動で温度調整を行い、一瞬で型に合わせたシートを成形します。このプロジェクトでは、厚生労働省の職業訓練キャラクター「ハロトレくん」の型をForm 3とクリアレジンを使って造形し、真空成形シートと流し込みができる石鹸を使って、デジタルファブリケーションツールを組み合わせることで、誰でもカスタマイズ石鹸ができるプロセスを構築しました。


「真空成形は、原型の表面にあるわずかな段差や傷まで忠実に拾い上げます。FDM(熱溶解積層)方式では積層痕が目立ち、型としての仕上げに多大な研磨工程を要しますが、Form 3とクリアレジンの組み合わせなら、そのまま真空成形の原型として使用できるレベルの平滑性が得られます。」(新家先生)

「また、3Dプリンターで原型を1つ作れば、FORMART 2を使って1分以内で1つの型を成形できます。これにより、オープンキャンパスのような多人数を対象とした場でも、効率的な配布や体験が可能になりました。3Dプリンターを『最終物を作る道具』としてだけでなく、『量産のための金型・治具を作る道具』として位置づける。これは、実際の金型製作の発想そのものです」(新家先生)




3DMedSupoで実装を支える洗浄&後処理工程の改善
光造形3Dプリンターの運用において、洗浄工程の効率化は重要な課題です。職業大(PTU)では、従来使用していたIPA(イソプロピルアルコール)の代替として、洗浄液「3DMedSupo」を導入しています。3DMedSupoは、廃液回収サービスが一体となった光造形3Dプリンター洗浄液で、IPAのような有機溶剤とは違い、臭いと毒性が低く、有規則(有機溶剤中毒予防規則)の適用を受ける必要がありません。

IPAを研究室で使用するには、局所排気装置の設置や、防毒マスクの着用など、さまざまなハードルがありますが、3DMedSupoでは、こうした有規則で求められる管理や設備は必要ありません。
また、廃液回収サービスは追加費用がなく利用できることから、洗浄液を適切なタイミングで交換することが可能で、3Dプリント後の後処理の品質も保つことができます。


新家先生は、樹脂と混じり合った洗浄液の廃棄や管理の負担が、3DMedSupoの導入によって軽減されたと述べています。
「以前は廃液管理がとにかく大変で、樹脂が混ざった洗浄液の処理に苦慮していました。3DMedSupoは専用の回収システムがあり、メンテナンス性が格段に向上しました。臭気も抑えられ、安全な環境を整えることができました。後処理という泥臭い部分をテクノロジーで解決することも、デジタルものづくりの定着には不可欠です」(新家先生)
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まとめ:工学的な基礎とデジタルツールの融合
金属加工や工作機械に精通している新家先生が、3Dプリンターや真空成形機といったデジタルツールを柔軟に取り入れている背景には、ものづくりの選択肢を広げるという狙いがあります。
「例えば、型から製品を抜くための『抜き勾配』の設計や、空気を抜くための穴の配置。これらは金型製作の基本ですが、デジタルでも同じです。職業大(PTU)では、フライス盤や旋盤による金属加工の基礎を教えています。それに加えて、デジタルツールを使った際に『なぜ造形が失敗するのか』『どこを補強すべきか』を論理的に判断できる。デジタルは魔法ではなく、工学を具現化する強力なツールといえるでしょう」(新家先生)

職業大(PTU)では、伝統的な金属加工技術と、これらのデジタルツールを組み合わせることで、開発サイクルの短縮や材料コストの削減といった実利を生み出しています。最後に、新家先生はこれからのものづくり教育について展望を語りました。
「2次元の図面を読み解く力は重要ですが、今の学生にはまず『自分の考えが形になる』という成功体験を先に与えたい。3Dプリンターならそれが可能です。形になったものを見て、触れて、失敗することで、『なぜここでは厚みが必要なのか』『なぜ抜き勾配が必要なのか』という工学の本質に自ら気づいていく。デジタルツールは、ものづくりへの関心を深める最適なツールです」(新家先生)


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