ジュエリー製造で真価を発揮するForm2
デスクトップでありながら高精彩で安定した造形が可能なFormlabs社のForm2。
FDM方式や他の光造形方式など、数多くのデスクトップタイプ3Dプリンターが存在する中で、Form2は容易に使用でき、高精彩な仕上がりと共に多様な樹脂材料が使えるのが特長の一つだ。
その中でも特異な存在がキャスタブルレジンだ。キャスタブルレジンは、ジュエリー製造用の樹脂材料で、インベストメント鋳造の工程と、ジュエリー製作の幅を大きく広げてくれる画期的なレジンである。
本日はそんなキャスタブルレジンとForm2を使い、ハンドメイドのジュエリー開発を行う「天然石の店 コオリネコ」の椿氏にお話しを伺った。
ジュエリーの企画開発から、製造工程において、3Dプリンターを最大限有効活用し、ものづくりの幅を広げている。
天然石の加工からロストワックス鋳造まで工房で行う
「天然石の店 コオリネコ」の椿氏は、天然石を使った一点物のジュエリーを、企画からデザイン、石の選定から加工、鋳造まで一貫して行っている。
また、ジュエリー製造の過程において必要な治具を自ら設計し、Form2を使って造形し使用するなど、幅広い使い方を取り入れている。椿氏の手掛けるジュエリーは、天然石を基調にしている。
指輪からネックレスまで天然石の独得な文様をベースにデザインされた精緻で美しいデザインが特長的だ。
ちなみに天然石とは人工的に作られたものではなく、自然に採取された鉱物で、水晶やアメジストなど、その種類は多岐に渡っている。
銀粘土から発展したジュエリー加工
もともと椿氏は、天然石をベースに周囲のシルバーの部分は銀粘土を使い作っていた。銀粘土とは銀に水と結合剤を配合した粘土状の素材で、粘土細工を作るように銀製のアクセサリを作ることが出来る。
棒状の銀粘土を使って形を作り、手で模様などをつけ成形を行う。成形後は乾燥させ高温で焼結することで結合剤が焼失し純粋な銀になるという仕組みだ。
その後、研磨などの後処理を行い仕上げていく。しかし銀粘土を使ったアクセサリの造形は、手軽だが複雑で精緻なデザインを作ることは難しい。本格的なジュエリーを作るためにはやはり彫金技術が必要になる。
手によるワックスモデルの限界
その後、製造方法に鋳造を取り入れより精密なデザインを手掛けるようになった。インベストメント鋳造は、別名ロストワックス鋳造といわれ、ロウでベースとなるジュエリーのデザインを作り、それを石膏で固めた後に焼成する。
その際に焼失したロウの部分に溶けた金属を流しこみ冷却させて形にするという手法(ロスワックス鋳造の詳しいプロセスは「3Dプリントで進化する鋳造機メーカー。吉田キャスト」をご参照ください)。
しかし、デザインを形にするのはロウ型を手で削り形にするのが一般的だ。下記はロストワックス鋳造用のロウ型の材料。ブロック状や筒状のロウを削り、それを一つ一つ手作業で仕上げなければならない。
Form2とキャスタブルレジンの導入。デジタルの真価とは
これが一般的な現在までのロスワックス鋳造だが、「天然石の店 コオリネコ」の椿氏はここにForm2とキャスタブルレジンを使いこなしている。Form2のキャスタブルレジンを使うことで、鋳造やジュエリー開発がどのように変わるのだろうか。
天然石の形状に完璧にフィットさせる高精彩
椿氏が手掛けるジュエリーは、シルバー部分に加工された天然石がはめられているのが特長だ。天然石を削り出し、そこに対してシルバー部分をぴったりと当てはめる高精彩さが求められる。
Form2で作り出したワックスモデルでは下記の写真のように、天然石を完璧にフィットさせることができる。この緻密で高精彩な仕上がりはForm2ならではだ。
キャスタブルレジンでジュエリー鋳造のスピードアップ
「Form2を使うようになって、ジュエリー開発の幅が一気に効率化できました。これまではデザインなどを形に落とし込む際も、手でワックスモデルを削りださなければいけませんでした。
そのため思うような形を再現するまでかなりの時間がかかっていました。しかし、Form2とキャスタブルレジンであれば、デザインをCADで起こしてからわずか1日で形にすることが可能です」と椿氏は語っている。
バリエーションデザインも手軽にできる
また、ワックスモデルを手で削り出すのとは違い、Form2のキャスタブルレジンを使うことでデザインの幅も大きく広がったという。「例えば、Form2のキャスタブルレジンではデザインバリエーションが容易に作ることが出来ます。これは従来の手で削り出す手法では大変な労力が必要でした」。
下記のジュエリーのように、天然石があるバージョンと無いバージョンなど、デザインや製品開発の幅が広がることになる。
品質をより追求し完成度を手軽に高められる
更に、Form2のキャスタブルを使うことで、デザインやアウトプットの精度も従来よりもはるかに向上したという。
「以前は、ワックスモデルを加工するのに時間がかかってしまい、鋳造をしてできた完成品を見ても妥協していた部分がありました。しかし、キャスタブルレジンなら、修正や改良したワックスモデルをわずか数時間で作成できるので、品質や仕上がりによりこだわれるようになりました。」
「特にワックスモデルでの細さと、実際の鋳造品で全くイメージが異なることがよくあります。そうした場合の、微妙な調整、繊細さの表現などもForm2を導入してからできるようになりました」。
ものづくりでは、CADデータ状で見ていたものと、実際にアウトプットしたものでは、雰囲気や質感などが大きく異なるのが一般的だ。特にワックスモデルと金属の重厚感は大きく異なる。
天然石の治具も作り出す
「天然石の店 コオリネコ」の工房では、ジュエリー製造のためのさまざまな工具が存在する。鋳造機はもちろんのこと、研摩などの後加工、天然石を削り出す専用の機械や、石に穴をあける機械など、この工房でシルバー部分の加工から天然石の加工まで行うことが出来る。
この工房の治具においてもForm2が有効的に使われている。天然石はジュエリーに使用する際には、そのままの状態ではなく表面にファセットカットを施す。
椿氏はこのファセットカットの治具をForm2とスタンダードレジンを使ってオリジナルのものを作りだしている。この治具はもともとベースとなるものがあるが、加工できる面体は限定されていたものだ。
椿氏は更なる面体加工のバリエーションを増やせるようにForm2とスタンダードレジンで作り出し作品の幅を広げている。
まとめ デジタルとアナログが融合した工房
「天然石の店 コオリネコ」では、ジュエリーのデザインから製造まで、すべてを工房で行っている。シルバーの部分はロストワックス鋳造で、そして天然石の加工では削り出しや穴あけ、ファセットカットまで、天然石の特性を活かして加工する。
ここでは従来からある加工機に加え、Form2と3DCADソフトを使いこなすことで、効率性と完成度の両方を高めることに成功している。デジタル技術を使いこなすことで、従来のアナログでは表現できなかった精密さや完成度を実現し、更には製作プロセスを大幅に向上させることに成功した。
更に、天然石の加工の場面では治具の製造にもForm2を活用している。ものづくりの“デジタル化”の最大の効果は、「高付加価値」と「効率化」だが、「天然石の店 コオリネコ」の取組は、ジュエリー製造の分野でそれを体現していると言えるだろう。
Form2は現在、Form3、Form3Lの登場によって生産中止となっております。Form2の次世代機であるForm3、Form3Lをお求めください。
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