Form2事例 竹中工務店のオープンイノベーション「ミライのたてもの工務店」

 一般的に3Dプリンターの役割として注目されているのが、リードタイムの短縮やコスト削減などの、生産プロセスの効率化だ。しかし、それと同時に、大きく期待されているのがオープンイノベーションでの利用である。

竹中工務店は、Form 2とコンピュテーショナル・デザインを使うことで、建築設計の現場にさまざまな活用方法を見出している。今回は二つのデジタル技術で、新たな挑戦を行う竹中工務店の「ミライのたてもの工務店」とForm 2の利用方法について竹中工務店設計本部コンピュテーショナルデザイングループの石津氏にお話しを伺った。

限られたデザインフェーズをスピードアップ

 竹中工務店は2016年に設計本部内にコンピュテーショナル・デザインの導入を支援するチームを設置し、建築設計の分野で新たな試みを始めている。またFormlabsの光造形(SLA)方式3Dプリンター「Form 2」を導入し、さまざまな活用を開始している。

Form 2では、主に設計の意匠や道具づくりでの利用を行っている。特に活躍しているのが、建築では欠かすことができない模型の作成だ。

「現在Form 2は、実プロジェクトでの使用とともに ロボットアームを使ったプロジェクト、エンドエフェクターの自作などで、さまざまな用途で利用されています。特に、建築模型によるデザインの検証で大きな力を発揮しています」。(石津氏)
 建築模型はスタイルフォームやスタイル模型などと言われ、スチレンボードなどの断熱材をカッターで切り手作業で作るのが一般的であった。しかし、Form 2であれば、設計データからダイレクトに作ることができる。

従来は外注によって2週間ほどの期間をかけて作っていたが、Form 2に切り替えることで、さまざまなメリットがあるという。

「これまでは、外注だと模型ができるまで2週間かかっていました。また、模型が上がっても1回目だとうまくいかず、デザインの検証なども限られた時間しか使うことが出来ませんでした。しかしForm 2を導入したことで、デザイン検証の繰り返しを短縮することができ、チーム内での検証もでき、改善がより早くなりました」と石津氏は語る。

  現在、竹中工務店では大阪にもForm 2を導入しており、設計やプロジェクトに向けて使われている。特に、設計・施工の全工程からみると、デザインのフェーズは非常に短くなる。形だけのデザインではわずか1週間から2週間で決めなければならない。

予算と限られた期間の中で、最大限よりよいデザインにするために検証を行わなければならない。この検証を従来の手作業からForm 2の試作に切り替えることで、スピードを圧倒的に早め、最終段階の模型に至るまでの精度をより向上させることができたという。

Form 2とリジッドレジンの高精細モデルがデザインを広げる

 外注する際のコストやリードタイムの短縮も大きいが、3Dプリンターとコンピュテーショナル・デザインが合わさることで、従来では実現できなかったさまざまな可能性が登場している。それがデザインの新たな挑戦だ。

3Dプリンターが登場することで、これまで実現することが難しかった意匠やデザインが可能になる。ちなみにコンピュテーショナル・デザインとは、建築物のデザインを、構造などを踏まえて自動でシミュレーションできる手法のこと。 これによって、これまで作ることが難しかった複雑な形状やディテールをアウトプットすることができる。

「これまで3Dプリンターやレーザーカッターが無かった時代には、複雑なデザインや意匠を検討するために、粘土を手でこねて作っていました。粘土でつくられたものを実際に作ろうとすると、かなりハードルが高い。しかし、3Dプリンターでアウトプットされた物理的なモデルだと、社内も施工者の関係者も、みな作ってみたいと思う。難しいけれど新たなデザインに挑戦したいというマインドになります」。(石津氏)

  実際に、意匠検討を行う際に、Form 2で造形モデルをプリントすることで社内のさまざまな人間がデザインの検討に参加するようになったという。

「3Dの画面ではなく、実物としてデザインを目の当たりにできるため、あらゆる世代の人が、デザインプロセスに参加するようになりました。Form 2は、まさに社内のマインドを変える新たなコミュニケーションツールとして機能しています」。(石津氏)

また、コンピュテーショナル・デザインだと多数のバリエーションを出すことができ、 小さな違いのデザインでも手軽に3Dプリントすることができる。一度に数千パターンものデザインができるが、代表的なものに絞ってForm 2とリジッドレジンで出力している。

もともと建築で作られる模型は白模型であることから、ホワイトで細かくて薄いディテールが出せるには、ガラス繊維が配合されているリジッドならではだと言えよう。Form 2の高精細なモデルがより発展的な議論を生んでいる。

オープンイノベーションのプラットフォーム「ミライのたてもの工房」

これまでご紹介したような、Form 2とコンピュテーショナル・デザインを軸にした取組は、新たなオープンイノベーションのプラットフォームへと動き始めている。それが、竹中工務店が新たに立ち上げた「ミライのたてもの工房」だ。

「ミライのたてもの工房」は、コンピュテーショナル・デザインや3Dプリンター、AIやBIMなど、これからのデジタルテクノロジーによって、今後の建築がどう変わるかということを検証する、新たなオープンイノベーションのプラットフォームだ。ものを作るためのテクノロジーが進化すれば、それによってデザインも新たなカタチに変化していく。

「従来の伝統的な手法に加え、建築の分野ではコンピュテーショナル・デザインが浸透してきています。また、デジタルを基軸にした、BIMや3Dプリンティングなどのテクノロジーも注目されてきました。

作られ方が変われば、これまで合理的であった形が変わり、基準も変わってきます。今は模型で使用していますが、未来は、新たな造形手法が建築自体にも及ぶため、これまで安いとされてきた形自体が変わるかもしれません。将来的には建築のデザインが変わってきます」。

「ミライのたてもの工務店」では、第一弾のプロジェクトとして、石津氏が手がけたコンピュテーショナル・デザインでデザインされたパラメトリックシェルが登場している。

このデザインは自然界の形状をモデルにして、パラメーターを変更することで、形状を変化させる試みだ。このシェルは貝殻の螺旋をベースにして、造形空間設計でどのように活用されるかの取組である。



Form 2とガラス繊維配合のリジッドレジンでプリントされた造形モデル
デザイン・モデリング:石津優子氏
モデル印刷協力:デジタルファクトリー株式会社

まとめ 社外にも広がるオープンイノベーションの開発

 「ミライのたてもの工務店」は、Form 2でプリントしたパラメトリックシェルと、第二弾である「曲げながらつくる強くて軽い構造シェル」が登場している。そして、今後も第三弾、第四弾と未来の建築に関わるプロジェクトが始まるとのことだ。

また、オープンイノベーションの取組としては、社内だけではなく、社外にも広がりを見せつつある。大学間協定によって他の大学と所属を超えた、開発プロジェクトも動き出している。

「Form 2は、新たなアイデア創出のコミュニケーションツールとしての役割を担い始めています。こんなに簡単に使える、ということが、建築に参加する、さまざまな人の意識を変え始めています。『ミライのたてもの工務店』はよりオープンなものとして、今後も建築に関わっているすべての人に、コンピュテーショナル・デザインや3Dプリンターによって簡単に、身近になっているということを感じてもらいたい」と、デジタルが建築に及ぶす影響と、今後の未来について石津氏は語ってくれた。

2019.3.15 投稿者:i-maker

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