Fuse 1ユーザー事例Partial Hand Solutions社:医療用人工装具の3Dプリント

Fuse 1で医療用人工装具の3Dプリント製造

Fuse 1のユーザー事例として、医療用の人工装具の3Dプリントを行っている事例をご紹介しましょう。Fuse 1とナイロン材料の最大の特長が、高強度と高精度、そして低コストという点が挙げられます。

医療用人工装具は患者さんごとに最適な形状が異なっており、カスタム3Dプリント製造の真価が最も発揮される分野です。

Fuse 1はこうした点でも従来の3Dプリントに比べて優れたメリットを発揮します。今回はPartial Hand Solutions社の事例からご紹介します。

Partial Hand Solutions社とは

Partial Hand Solutions社は、2007年創業の米国の人工装具メーカーです。アメリカでは怪我をした現役軍人や一般の方向けにカスタマイズされた人工装具を提供しています。特に人工装具の分野で課題となるのが耐久性とカスタマイズです。

人工装具は体の一部として日常生活で使用されることから、様々な動きに耐えられる耐久性が求められます。また同時にその人の体に最適化されたカスタマイズ性が求められます。

Partial Hand Solutions社では、人工装具の製造に3Dプリンターが有効なのではないかと考え、導入の検討を行っていました。FDM(熱溶解積層法)や光造形法式などを検討するなかで、SLS、レーザー焼結法が最も人工装具に適した造形方式であると考え導入を検討しました。

しかし、従来のレーザー焼結法の3Dプリンターは非常に高額で、導入コストも2,000万円を超え、ランニングコストも高くなります。そこで選んだのがFuse 1です。

中小企業に最適な低コストのレーザー焼結機

Fuse 1は3Dプリンター本体と後処理機のFuse Sift、その他の付属品を含めても初期導入コストで500万円程度の価格です。またランニングコストもナイロンパウダーは1グラム当たり@13円程度、年間保守費用もベーシックで248,000円から導入が可能です。

こうした低い初期導入コストとランニングコストはPartial Hand Solutions社のような中小企業にとって最適な価格帯です。

Fuse 1でのプリント事例1:Mフィンガー(義指)の
可動部を改善

Partial Hand Solutions社がFuse 1で製造している代表的なプロダクトがMフィンガーといわれる義指です。この義指はもともとアフガンから帰還した軍人のために開発されたもので、製品のクオリティで最もポイントとなる部分が間接の稼働部分です。

Fuse 1のレーザー焼結3Dプリントでは、稼働部分もそのままつながった状態で一体プリントすることが可能で、機能的な接合部分を実現しました。

従来は外注に頼っており、個別に製造したパーツを組み立てるアッセンブリの工程がありましたが、Fuse 1での内製化に切り替えることでコストとリードタイムを大幅に短縮することが可能になりました。

ビルドチャンバー内には、義指が160本分プリントすることが可能で、製造時間は約2日間で済みました。まさに小ロットのオンデマンド製造に最適な3Dプリンターです。

Fuse 1でのプリント事例2:カーボンファイバーの置き換えソケット

Partial Hand Solutions社はさらに、既存のパーツ製造をFuse 1での3Dプリントに置き換えを始めています。それがカーボンファイバーソケットの置き換えです。義指用のソケットをカーボンファイバー製で作っていましたが、カーボンファイバーはコストが高いことや加工が労働集約型になり時間がかかることが課題でした。

しかしチタンとFuse 1によるナイロン3Dプリントに切り替えることで、より低コストでスピーディなソケット製造が可能になりました。さらに、さまざまな幅広い種類のソケットを作ることが可能になり、患者ごとのカスタマイズや特殊な患者のニーズに応えらえる微調整したソケットの3Dプリントが実現しています。

Fuse 1でのプリント事例2:大型の人工肘を3Dプリント

Partial Hand Solutions社では大型の人工肘も3Dプリントしています。特に子供用の人工装具で3Dプリンターが真価を発揮します。人工装具は大人用に作られていることが多く、子供用人工装具の数は、少ないのが現状です。Partial Hand Solutions社では、子供用に人工肘と人工肩をFuse 1とナイロンで3Dプリントしています。

Fuse 1でナイロン3Dプリントを内製化する
メリットは?

Partial Hand Solutions社はFuse 1を導入することでどのようなメリットを得ているのでしょうか?

ここでもPartial Hand Solutions社はコストメリットと設計の自由度、そして生体適合材料としての最終品としての使用を上げています。

コストの大幅な削減

Partial Hand Solutions社は義肢を内製化することでコストの削減に成功しています。

例えば、Fuse 1では材料費が非常に安く、1g当たり@13円~15円程度の費用です。これは他の3Dプリントと比較した場合にも低コストで、FormlabsのForm 3やForm 2のレジン材料と比較しても安価です(スタンダードレジンは1g当たり@18円)。

Partial Hand Solutions社のマシュー氏は次のように語っています。「最初は、ナイロンのパウダーは高価な素材に見えましたが、1回のプリントで製作できるフィンガーの数をベースに1パーツ当たりの製造単価を計算してみると、当初の予想以上に採算性が高いことが分かりました。」

リードタイムの短縮:数週間から数日に

もう一つコストの削減とともに大きなメリットがリードタイムの短縮です。義指の製造でも設計からわずか2日で最終品レベルの製造が可能になりました。

従来の射出成形による金型量産と比べてはるかにリードタイムが短くなっています。マシュー氏は「今では、2日間待てば、ビルドプラットフォームにいっぱい詰まったモデルのプリントがすべて完了します。射出成形したパーツが委託業者から届くのを何週間も待っていた頃とは雲泥の差です。」と述べています。

設計の自由度:サポート不要の造形が可能

義肢などは人体に装着することから、耐久性とともに軽量化が求められます。軽量化の中でも象徴的なのがトポロジー最適化などの中空にした形状の最適化です。しかし、中空や特殊な薄型の形状は一般的な3Dプリンターではサポート材がついてしまいます。

しかしFuse 1では、サポート材を付けることなく、オーバーハングやブリッジといった形状もプリント可能になります。より患者さんに寄り添った最適化された形状がオンデマンドで作れるのです。

エンドユースの実績:生体適合材で射出成形レベルの強度

Fuse 1で作られるナイロンの造形物は、射出成形で量産されたパーツに匹敵するレベルの機械的特性を持っています。またハイエンドのSLS 3Dプリンターに比べても遜色はありません。

豊富な後処理

Fuse 1で作られた造形物は、塗装やメッキなどとの相性が高いです。Partial Hand Solutions社でも実際に造形後に特殊な溶剤で造形物の表面を塗装し、より滑らかな質感を表現しています。中身は軽量&高強度であり、さらに外装を施すことで最終品としてのクオリティをさらに向上させることが可能です。

Fuse 1小型から大型まで幅広い最終品製造

Partial Hand Solutions社はFuse 1を導入することで、高度なカスタマイズ性が求められる義肢の3Dプリント製造を効率化しています。コストの削減だけではなく、従来の金型量産から比べてリードタイムをはるかに縮めることに成功しました。

また、従来の素材を置き換えることで強度や耐久性を保ったまま、よりユーザーに最適化された製品開発を実現しています。Fuse 1の最終品製造が新たなものづくりの未来を開いています。