Fuse 1ユーザー事例Tessy Plastics社:生産ラインのパーツを3Dプリント製造

Fuse 1での生産ラインパーツの3Dプリント製造

Fuse 1の日本での販売開始が6月1日から始まりましたが、既にFormlabsがある米国では導入が広がっています。生産ラインのパーツをFuse 1でプリントしたTessy Plastics社の事例をご紹介しましょう。

Fuse 1がいかに従来のモノづくりを変え、低コストで最終品の、しかも生産ラインのパーツが作れるかを示す事例です。

Tessy Plastics社とは

Tessy Plastics社は、射出成形を中心に、医療や製薬、消費財といった各業界のメーカーから受託加工を請け負う会社で、自動アセンブリのカスタムソリューションの開発と提供に特化した米国企業です。

同社は米国と中国に3カ所工場を持ち、製品の設計、開発、工具の設計、製造、医療用自動化システムの設計、製造、プラスチックの射出成形や複雑な医療機器や消費財のアセンブリなどを提供しています。

社内には射出成形の量産設備以外に、3Dプリンターを多数導入しており、ストラタシスのPolyJet 3DプリンターやFDM 3Dプリンタ―、さらにはFormlabsのForm 2を2台導入しています。

Fuse 1でのプリント事例1:生産ラインの
ベルトプーリー(滑車)機構

Tessy Plastics社がFuse 1でプリントしているパーツの一つが生産ラインに取り付けるためのベルトプーリー機構です。ベルトプーリー機構とは、ベルトを回転させる滑車のことで、ベルトを保持する精密さと同時に動力を円滑に伝え回転させる耐久性も求められます。

このFuse 1によるベルトプーリーは、メーカーからの急な設計変更の際に、迅速に3Dプリントを行って対応したもので、スピーディに生産設備の変更に対応することが出来ている事例です。

仮にFuse 1が無い場合には、この変更を行うには金型から作り直さなければならず、大幅な遅れが予測されました。この緊急時にTessy Plastics社はFuse 1での3Dプリントを決定し、数日後には実際に出力し生産ラインへの実装が可能になり大幅なダウンタイムを無くすことに成功しています。

取付後は3週間たってもプーリーは新品同様の状態を保っており耐久性も問題なく動いている状況です。Tessy Plastics社のエンジニアは次のようにのべています。

「先週プリントしたカスタムプーリーは機能的な部品として生産ラインで正常に動いています。工作用の真空装置の内部に非常にデリケートなスプラインがあるのですが、コア部から成形したパーツのネジを外している間も問題なく維持できました。」

Fuse 1でのプリント事例2:カスタム取付具の
3Dプリント

Tessy Plastics社はさらに、カスタム取付具の3DプリントにもFuse 1を使用しています。Tessy Plastics社の請け負っている加工の一つに、空気圧継手いわゆるチューブ継手の加工があります。チューブ継手とは、流体経路があるチューブや機器などに取り付け可能で着脱できるパーツのことです。

Tessy Plastics社では、チューブ継手のゴム部分の着脱を作業員がスクリュードライバーを使用して行っていましたが、作業に手間取ったり、作業員が指を怪我したり、誤ってゴムチューブを傷つけたりする課題がありました。

同社では、この作業の効率を上げ、さらには怪我がしにくいカスタムツールの3DプリントをFuse 1で行っています。現場作業員たちからの意見をもとに複数の種類の取り付けツールをデザインしFuse 1で3Dプリントし、実用化を果たしています。

これにより作業員が指を怪我することもなく、また製品であるチューブを傷つけることなく作業が円滑化することが出来ています。実際、この3Dプリントカスタムツールの実用化によって1個当たり$20–$30の交換部品代を節約することに成功しました。

さらに、Fuse 1でこのカスタムツールを作ったとしても材料コストは1グラム当たり@11円の低コストで、かつ繰り返しの取り付け作業に耐えられる耐久性を持っています。

Fuse 1でナイロン3Dプリントを内製化する
メリットとは?

Tessy Plastics社はFuse 1を導入することでどのようなメリットを得ているのでしょうか?

現在、多くのSLSレーザー焼結3Dプリンターが1台2,000万円を超えるハイエンド機種で、おおくの企業がレーザー焼結でのプリントを外注に依存しているのが現状です。

しかし外注でSLSレーザー焼結を利用した場合、値段が高く、また納期もかかるのが現状です。
またSLSレーザー焼結法で作れる造形物は、他の造形法式(FDMや光造形、インクジェット)では強度、精度の面から作ることが難しく、金型か切削加工でしか代替することができません。

こうした点から従来のSLSレーザー焼結法の4分の1程度の低コストで導入できるFuse 1は多くのメリットをもたらします。

リードタイムの短縮

Tessy Plastics社の事例にみられるようにFuse 1での内製化はリードタイムの大幅な短縮を実現します。仮に、同社がFuse 1を導入していなかった場合、上記で挙げたようなベルトプーリー機構の設計変更には、これほどスピーディに対応することが出来ませんでした。

金型で作成するか、外注するかのどちらかで、いずれにせよ期間で2週間~1カ月程度のダウンタイムが発生します。この期間、生産ラインは停止することになり、恒常的に生産していることが求められる受託加工会社にとっては生産停止を意味します。

コストの大幅な削減

同時にFuse 1での内製化では大幅なコスト削減が期待できます。金型量産で仮にパーツを作る場合、どんなに小さいパーツでも百万円単位の投資が必要になります。また他のレーザー焼結加工に外注した場合にも高くなるでしょう。

しかしFuse 1では材料費が非常に安く、1g当たり@13円~15円程度の費用です。これは他の3Dプリントと比較した場合にも低コストで、FormlabsのForm 3やForm 2のレジン材料と比較しても安価です(スタンダードレジンは1g当たり@18円)。

生産数に限りがある小ロットやカスタムパーツなどの生産には最適なコスト構造であり、同時にそのカスタムツールを作ることによる効率化は計り知れません。

Fuse 1で最終品のカスタム小ロット製造を可能に

Tessy Plastics社は、Fuse 1を自社に取り入れることで、低コストとスピーディなモノづくりを実現しています。特にFuse 1による高強度&高精度な造形は、さまざまなパーツのカスタム製造を可能にし、これまで以上に設計や開発の柔軟性を向上させます。

さらにデータからダイレクトに最終品レベルが作れる機能によって、サプライチェーンを強化します。Fuse 1はデジタルによるモノづくりの自動化を象徴する3Dプリンターとして多くの可能性を秘めています。