Form3取材。東京大学の最大640%の伸縮性を持つ3Dプリンテッドばね型電子デバイス

Form3とエラスティック50Aで3Dプリンテッドばね型デバイスを実現

3Dプリンターの革新的な点が、これまでにない形状を作れる点です。3Dプリンターはアディティブ・マニュファクチャリングといわれるように、薄い層を積層して形にする技術です。

0.1mmや0.2mm、場合によっては0.025mmのような非常に薄い層を積み上げることで、金型量産や、切削加工では実現できなかった複雑な形状を作り出すことができます。今回ご紹介する東京大学工学部が造形した「最大640%の伸縮性を持つばね型電子デバイス」も従来の加工方法では実現が難しかった形状です。

この3Dプリントされたばね型デバイスは、形状によって磁場の値が変わることで形状や長さを知ることができ、将来的にはロボットなどの可動部分への使用が期待されます。東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 横田研究室 特任研究員 奥谷 智裕氏(以下、奥谷氏)にForm3エラスティック50Aで実現したばねデバイスについてお話を伺いました。

エラスティック50Aとは?

エラスティック50 Aは、Formlabsのレジンの中でも最も柔軟性に優れ、柔らかい造形物が作れる材料です。フレキシブル80Aがタイヤのトレッドに近い硬さであれば、エラスティック50Aは、シリコーンに近い物性を持っている材料です。

その一方で、エラスティック50Aはその柔軟性から造形が難しく、形状によってはプリントが失敗することがあります。今回奥谷氏が開発した3Dプリンテッドばね型デバイスは、50回以上の試作を繰り返して実現したものです。

流路径1.8mmに液体金属を注入した新たな電子デバイス

奥谷氏が開発した3Dプリンテッドばね型デバイスは、19~76mmの長さを持つばね構造で、内部が中空になっています。

このばねの線径が4mmで、中空の流路径が1.8mmもの細さを実現しており、内部に液体金属が流し込まれています先端部分に電気の配線を接続すれば、電子デバイスとして使用することが可能です。

左側が液体金属が流し込まれたもの

通常、電子回路といえば多層プリント基板が一般的なイメージですが、この3Dプリンテッドばねは、エラスティック50Aの伸縮性と液体金属によって、伸縮性を持った電子デバイスの可能性を実現しました。ちなみに液体金属は「ガリウムとインジウムの割合が75.5対24.5の合金は室温で液体を保ったままにできます」(奥谷氏)とのこと。

3Dプリンターで50回以上の試作

エラスティック50Aは完成が非常に柔らかい素材なため、造形もとてもゆっくりで形状によっては、積層が非常に難しい材料です。この形状を実現するまで奥谷氏は50回以上もの試作を行いました

「この形状を実現するまで、ばねの構造だけではなく、内部の流路や伸びなど、さまざまな条件を指定し、さらにうまくきれいに造形ができる形状を見つけるまで、50回以上の試作を繰り返しました」(奥谷氏)。

エラスティック50Aで作られたさまざまな試作。

ばねの線径が4mmで、中空の流路径が1.8mmの調整が行われた

特に液体金属を流し込む流路を実現することが課題でした。「3Dプリントを行うと、内部の流路に未加工のレジンが入り込んでしまうため、そのレジンを取り除くことが課題でした。特に最適な流路径を見つけることが課題で、薄いのを挑戦すると内部のレジンを取り除く圧力で破裂してしまいます。結果として1.8 mmが最適なサイズであることが試作によって実現しました」(奥谷氏)。

引張試験で最大640%伸縮性を実現

またフレキシブル系の材料ではばね構造の戻りが悪く、「エラスティック50Aの柔軟性が今回のばね構造には最適な柔軟性を発揮しました」とも奥谷氏は語っています。

「このばねの伸縮性に対しては、50センチ幅まで引っ張ることができる装置で10回~20回以上の引張試験を繰り返し行い、引っ張って戻す際にどのくらいの力がかかるか検証を行っており、ばねの巻き数の調整も行いました。また、繰り返しの引張試験を行ったところエラスティック50Aのばねは、作った長さに対して、640%近くまで伸ばすことが可能です」(奥谷氏)。また、ばねが破損するまでの引張を加えるなら、900%近くまで伸ばすことが可能とのことです。

伸ばした状態でLEDが光るデモ

ロボティクス分野での利用可能性

3Dプリンテッドばね型デバイスは、伸縮性を保ったまま電気を通すことができるためロボット可動部などでの使用可能性があると奥谷氏は語っています。

内部に液体金属が通っていることで形状が変わっても電気の量は変わらず通すことができます。「抵抗値すなわち、電気がどれぐらい流れるかという値は、内部が液体金属なためばねが伸びた状態でも収縮した状態でも変わりません」(奥谷氏)。

ただその一方で、磁場の値が変わるといいます。「このばねでは、電流が流れると、抵抗値は変わりませんが、磁場の値が変わります。これにより伸縮・圧縮時のばねの長さを磁場の値から図ることが可能です」(奥谷氏)。

(写真キャプション)
写真はLCRメーターという磁場の値(インダクタンス)を測る機械で計測したもの。
ばねが伸びているときの磁場の値が401nH、ばねが収縮しているときの磁場の値が465nH

Form3とエラスティックを使用した東京大学の本研究論文は下記で参照可能です。
3D Printed Spring-Type Electronics with Liquid Metals for Highly Stretchable Conductors and Inductive Strain/Pressure Sensors”

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2022.4.21 投稿者:i-maker

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