導電性インクで電気を通す物体を作る3Dプリンター。ElectroUV3D

電子回路やエレクトロニクスのオンデマンド製造

3Dプリントという技術は、適用できる材料のバリエーションによって大きく進化させることができるといった面白さがある。一般的にはプラスチックや金属といった物質が主流だが、さまざまな素材でデジタルデータから1個単位で自由に作ることができれば、世の中に革新を与える機会が増えることになる。

従来の一定量を見込み、初回からかなりのコストがかかる従来の製造技術とは違い、3Dプリントできる素材が増えれば、製品開発のスピードを大きく向上し、優れたアイデアを具現化するチャンスが増えることになる。こうしたイノベーションの拡大はひとえに造形技術と素材の拡大に依っていると言えるだろう。

とりわけ、多くの企業や研究機関が開発に取り組んでいるのがエレクトロニクスのオンデマンド製造だ。電子回路を1枚単位で製造するプリント基板や、物体に直接電子回路を描く開発などを目指している。その目指す方向は完全なるエレクトロニクスパーツのダイレクト・デジタル・マニュファクチャリグと言えるだろう。

例えばこれまで何度がご紹介してきたが、多層プリント基板を1枚単位で3DプリントするイスラエルのNano Dimensionや、物体に電子回路を組み込むVoxel8などの新たなデジタル製造技術の開発が動き始めている。そのような中、新たに導電性インク用樹脂を使った導電性パーツのオンデマンド製造を可能にするマシーンが登場した。本日は導電特性を持つオブジェクトを製造できる3DプリンターElectroUV3Dをご紹介しよう。

ElectroUV3D

導電性インクとUV樹脂の融合で電気を通す物体を3Dプリント

今回、導電性オブジェクトを製造できる3DプリンターElectroUV3Dを開発したのは、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に基盤を置く3Dプリント技術の専門機関、ChemCubed だ。開発にあたっては、Direct Color Systems(ダイレクトカラーシステムズ)というUVインクジェットプリンターのアメリカのメーカーと協力している。Direct Color Systemsは、以前からデスクトップタイプのUVインクジェットプリンターを製造販売しているメーカーで、同社はこの分野で業界最高品質をほこっている。

ちなみにUVインクジェットプリンターとは紫外線を照射し一瞬でインクを乾燥させプリントするプリンターのこと。既に金属やプラスチック、セラミックやガラスなどにプリントできるUVインクジェットプリンターや基板処理に使用するモデルなどが発売されている。今回開発された3DプリンターElectroUV3Dは、そんなUV硬化技術に裏打ちされたモデルであり、導電性インクとUV硬化樹脂を紫外線を使用して堆積硬化させることができるというものだ。

このシステムでは、低温焼結により導電性インクを樹脂に堆積させることが可能で、言うなれば導電性の物体と、電気を通さない絶縁性の物体両方を生成できる。その厚さはなんと3インチ(7.6センチ)から4インチ(10.1センチ)ほどまで物体を生成でき、この機能により、1枚単位で機能する電子回路がプリントできたり、多層プリント基板の上に直接回路をプリントすることができるといった画期的なもの。

下記はこのElectroUV3Dの機能を端的に表した写真だが、導電性インクの層と、硬い低層二つで構成される簡易的なLEDライトの装置になる。バッテリーの上の部分が押された時に電池と導電性部分が接触し、電気が通ってLEDが光る仕組みだ。

導電性インクとUV硬化樹脂で3Dプリント
簡易的なLEDライト

また、このElectroUV3Dのもう一つの特徴は、柔軟な電子回路基板を3Dプリントすることができる。下記の動画は柔らかいRFID(無線通信でやり取りする電子回路)をこのElectroUV3Dで3Dプリントする様子を映したもの。

ElectroUV3Dで3Dプリンター動画

ElectroUV3Dプリンタスペック

  • オンデマンドインクジェットヘッド搭載:8チャネル、180ノズル
  • 密度:5060×1440 dpi
  • 造形速度:1時間10分(203mm×254mm、1440×720 dpiの条件)
  • 造形速度2:3時間6分(254mm×610mm 1440×720 dpiの条件)
  • 最大プリントサイズ:254mm×610mm、254mm×457mm
  • プリント厚さ:381mm、152mm、102mm、51mm
導電性インク UV硬化樹脂 3Dプリンター ElectroUV3D
折り曲げできるフレキシブルな基板

まとめ 品質の重要さを保つ

エレクトロニクスの3Dプリントは続々と進化していくだろう。今回ご紹介したElectroUV3Dや、イスラエルのNano Dimensionのように電子回路が描かれた基板が1枚単位でプリントすることが可能になれば、エレクトロニクスの試作はより高速化される。これで回路が試作されれば、あとは電子部品をはんだ付けして機能を確認するだけだ。

一点、電子回路の製造には、はんだ付けとともに電子部品やプリント基板そのもの精度なども問われることになる。まずは第一弾としてデジタルデータからのダイレクト製造を可能にし、第二弾には精度を担保されることが望ましい。現在アメリカが中心となって行っているエレクトロニクスの3Dプリントは、そお遠くない将来、現実のものとなるだろう。

そうなった場合、ものづくりにおいて機械が行う部分と人間が行う部分の役割が今とは大きく異なることになる。ただし肝心な点は、いくらテクノロジーが進化するとは言え、人のために価値を与えるというものづくりの本質は変わらないし、同時に従来の製造技術を超える品質を達成させなければならない。そうした点から言うと、精密さと品質管理が高度に要求されるエレクトロニクスの分野では、現在の製造技術の持つ品質管理といった部分を忘れてはならないのである。

エレクトロニクスの3Dプリントはこちらの記事もどうぞ

はんだ付けの重要性についてはこちらの記事をどうぞ

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。