3Dプリンターの造形方式とは
3Dプリンターにはさまざまな造形方式があります。造形方式とは、どのようなアプローチで物体を積層するかという方法です。3Dプリンターの基本原理は積層造形(ものを積み上げてつくる)ですが、このアプローチが造形方式によってことなります。
そこで今回は3Dプリンターの造形方式別の特長と選び方をご紹介します。
3Dプリンターの造形方式一覧
造形方式 |
概要 |
特長 |
価格帯 |
注意点 |
FDM方式 |
フィラメント形状のプラスチック材料をノズルを通して溶かして積層する。 |
ABSやナイロンなど本物の熱可塑性樹脂が使用できる。 |
数万円~30万円 30万円~100万円 100万~200万円 200万円~500万円 500万円以上 |
機種・価格帯でできるできないが明確に分かれている。 形状によって反りが発生する |
光造形方式 |
液体のUV硬化レジンに紫外線を照射して硬化する。 |
高精細で滑らかな造形ができる。 |
数万円~30万円 30万円~100万円 100万~200万円 200万円~500万円 500万円以上 |
メーカー・機種で安定性が異なる。自動化されているかがポイント。 液体なため光学窓などの汚れに注意。 |
レーザー焼結法 |
粉末のナイロンパウダーにレーザービームを照射して焼き固める。 |
高精度で高強度の造形ができる。 サポート材が付かない。 |
500万円~ |
造形後のパウダー除去に後処理機、場合によっては設備が必要。 |
PolyJet方式 |
UV硬化性樹脂を噴霧しながら紫外線をあてて固める方式。 |
高精細で滑らかな造形ができる。フルカラーでマルチマテリアルも可能。 |
500万円~ |
ノズルが詰まりやすいので定期的なメンテナンスが必要。 |
FDM方式の3Dプリンター
FDM方式の3Dプリンターは3Dプリンターの造形方式の中でも最もポピュラーな造形方式です。ストラタシスが開発した製法で、フィラメントといわれる糸状のプラスチックを加熱したノズルを通して溶かして積層するタイプです。

FDM方式の3Dプリンターの特長
FDM方式の3Dプリンターの最大の特長が本物の熱可塑性樹脂が使用できる点です。金型量産で使用されているABSやナイロン、ポリカーボネートなどが使用できます。機種によっては強度がある造形物を作ることができます。

FDM方式の3Dプリンターの注意点
FDM方式の3Dプリンターの注意点が「反り」です。フィラメントを一度加熱して溶かして、冷えて固まるため、材料が熱収縮を起こして反ってしまいます。この反りを抑える機能がある3Dプリンターは比較的高価格帯になります。

FDM方式の3Dプリンターで作れるもの・適しているもの
作れるもの |
材料 |
価格帯 |
試作・モックアップ |
PLAフィラメント |
10万円以上~ ほぼすべての価格帯で作れる。 |
機能性試作(強度・高耐熱) |
ABSフィラメント PCフィラメント ナイロンフィラメント エンプラ系 |
30万円以上~ 造形物の大きさによっては“反り”が発生する可能性あり。庫内温度・プレートの加熱機能が必要。 |
治工具 |
ABSフィラメント PCフィラメント ナイロンフィラメント エンプラ系 |
30万円以上~ 造形物の大きさによっては“反り”が発生する可能性あり。庫内温度・プレートの加熱機能が必要。 |
最終品・パーツ |
ABSフィラメント PCフィラメント ナイロンフィラメント エンプラ系 |
30万円以上~ 造形物の大きさによっては“反り”が発生する可能性あり。庫内温度・プレートの加熱機能が必要。 その場合は500万円以上の機種が必要。 |
FDM方式の3Dプリンターが作れない・向いていないもの
作るのが向いていないもの |
理由 |
模型・フィギュアなど |
積層跡が目立つため滑らかな表面を表現するのが難しい。パテ埋め、研磨などの後加工が必要。 |
細かくて精密なもの |
FDM方式の最適な積層ピッチは0.2mmや0.1mm。積層跡が残るため、 |
透明なもの |
積層跡が目立つため透明な造形物をつくるのは難しい。 |
FDM方式の3Dプリンターのメーカー
メーカー名 |
概要 |
価格帯 |
Creality 3D |
低価格ブランド。シンプルにPLAでの試作 |
1台数万円~10数万円程度 |
FLASHFORGE |
低価格から工業用まで。機種と用途で選べる。 メンテナンスが楽で高安定性。 多彩なフィラメント材料 |
1台4万円~150万円まで |
PLAとABS、TPUが使用可能。 |
30万円~ |
|
PLAのみ。積層跡が目立ちにくい |
40万円~ |
|
メンテナンスが楽で高安定性。 多彩なフィラメント材料 |
50万円~ |
|
ハイエンド機の代表。高強度&高安定性の3Dプリンター |
500万円~ |
光造形方式の3Dプリンター
光造形方式の3DプリンターはFDM方式と双璧をなす代表的な造形方式です。UV硬化レジンに紫外線を照射することで形ににします。用途がFDM方式とは違うものに向いています。

光造形方式の3Dプリンターの特長
光造形方式の最大の特長が高精細と滑らかな造形ができる点です。材料が液体がベースなため、きれいな表面だったり細かいディティール、さまざまなテクスチャなどの表現が可能です。

光造形方式の3Dプリンターの注意点
光造形方式の3Dプリンターの注意点は、材料が液体であることから、レジンが垂れるなどによって光額窓などが汚れてしまうのに注意が必要です。

光造形方式の3Dプリンターで作れるもの・適しているもの
作れるもの |
材料 |
価格帯 |
試作・モックアップ |
硬質アクリル材料 |
10万円以上~ ほぼすべての価格帯で作れる。 |
機能性試作(強度・高耐熱) |
ABSライク PPライク PETライク 高耐熱レジン |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
治工具 |
ABSライク PPライク PETライク 高耐熱レジン |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
フィギュア・模型・ミニチュア等 |
硬質アクリル材料 |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
3Dプリンター樹脂型 |
高耐熱材料 |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
型のマスターモデル (真空成形用、シリコン型用) |
硬質アクリル材料 |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
ジュエリー等の鋳造用ワックスモデル |
ワックス専用レジン |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
透明な造形物 |
透明材料 |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
最終品・パーツ |
硬質アクリル材料 ABSライク PPライク 透明など |
30万円以上~ 機械としての安定性が求められる。 |
光造形方式の3Dプリンターが作れない・向いていないもの
作るのが向いていないもの |
理由 |
大型の造形物 |
1メートルなどを超す大型の造形物を作るのには向いていない。 |
光造形方式の3Dプリンターのメーカー
メーカー名 |
概要 |
価格帯 |
FLASHFORGE |
DLP方式のシンプルな光造形 |
30万円~ |
自動化による高い安定性。1台で15種類以上の材料に対応 |
30万円~ |
|
RayShape |
DLPの高速造形機。多彩な材料が使用できる。 |
100万円~ |
3Dsystems |
ハイエンド機の代表。中価格帯よりも高精度でかつ高強度。多彩な材料が資料可能。 |
300万円~ |
レーザー焼結方式の3Dプリンター
レーザー焼結方式の3Dプリンターは装置としては高額ですが、精度、仕上がり、強度などの面で優れた性能を持ち、ランニングコストも比較的安いため、最終品製造や小ロット生産の場で真価を発揮します。

レーザー焼結方式の3Dプリンターの特長
レーザー焼結方式の特長はいくつかの点が挙げられます。ナイロンパウダーを使用するため高強度で靭性がある造形物を作ることが可能です。また、サポート材が付かずに造形ができるので、精度などが出しやすいです。また平面ではなく体積で造形を行うため一度に複数パーツの3Dプリントができます。

レーザー焼結方式の3Dプリンターの注意点
レーザー焼結方式の3Dプリンターの注意点は、材料がパウダーであることから粉塵対策が必要な点です。後処理機は必須でパウダーのリサイクルなども可能です。

レーザー焼結方式の3Dプリンターで作れるもの・適しているもの
作れるもの |
材料 |
価格帯 |
試作・モックアップ |
ナイロン |
500万円~ |
機能性試作(強度・高耐熱) |
ナイロン |
500万円~ |
治工具 |
ナイロン |
500万円~ |
最終品・パーツ |
ナイロン |
500万円~ |
レーザー焼結方式の3Dプリンターが作れない・向いていないもの
作るのが向いていないもの |
理由 |
模型・フィギュアなど |
パウダー状でざらざらしているため向いていない。造形後に研磨を施せばつるつるになる。 |
透明なもの |
材料が黒か白が基本なため不可。 |
レーザー焼結方式の3Dプリンターのメーカー
メーカー名 |
概要 |
価格帯 |
Fuse1で高強度ナイロンで造形ができる。 |
500万円~ |
PolyJet方式の3Dプリンター
PolyJet方式はストラタシスと合併したObjet社が開発した造形方式です。光造形と同系統のUV硬化性樹脂をインクジェットのように噴霧し、そこに紫外線を照射して固める方式です。

PolyJet方式の3Dプリンターの特長
PolyJet方式の最大の特長が高精細さと滑らかさ、さらには一定の精度です。インクジェット状に液体レジンを噴霧するため、14ミクロンなどの超微細なレベルで積層が可能です。また材料を配合しながら造形できるため、機種によってはフルカラー&マルチマテリアルで3Dプリント可能です。

PolyJet方式の3Dプリンターの注意点
PolyJet方式の3DプリンターはUV硬化性樹脂が液体状で硬化していくため、ノズルの先端が固まってしまい、つまりやすくなります。定期的なメンテナンスが必要です。
PolyJet方式の3Dプリンターで作れるもの・適しているもの
作れるもの |
材料 |
価格帯 |
試作・モックアップ |
硬質アクリル材料 |
500万円~ |
機能性試作(強度・高耐熱) |
ABSライク PPライク 高耐熱レジン |
500万円~ |
治工具 |
ABSライク PPライク PETライク 高耐熱レジン |
500万円~ |
3Dプリンター樹脂型 |
ABSライク |
500万円~ |
型のマスターモデル (真空成形用、シリコン型用) |
硬質アクリル材料 |
500万円~ |
透明な造形物 |
透明材料 |
500万円~ |
フルカラー&マルチマテリアル |
硬質カラー材料 透明材料 |
500万円~ |
PolyJet方式の3Dプリンターが作れない・向いていないもの
作るのが向いていないもの |
理由 |
最終品・パーツ |
熱可塑性樹脂の物性を再現しているため、最終品などのパーツには規格上適していない。 |
PolyJet方式の3Dプリンターのメーカー
メーカー名 |
概要 |
価格帯 |
PolyJetシリーズ。 |
500万円~ |