インクジェット3Dプリンターの価格帯と選び方

インクジェット方式の価格帯

インクジェット方式は3Dプリンターの代表的な造形方式の一つです。光造形の上位機種という位置づけです。材料は光造形と同様に液体のUV硬化性樹脂を使用します。

光造形法が面で1層ずつ硬化して積層していく手法ですが、インクジェット方式はその名の通り、インクジェットで噴霧しながら積層していきます。インクジェット方式の特長として光造形より滑らかで高精細な仕上がりができます。さらにはサポート材が専用の材料を使用するため造形後の後処理などが簡単です

光造形とインクジェットの違い

インクジェット方式はいわば光造形法の上位機種という位置づけで、主に次のような違いが挙げられます。

造形方式 光造形 インクジェット
積層方法 レジンをトレイにためて紫外線レーザービームを照射し1層ずつ積層する 樹脂をインクジェットのように噴霧しながらヘッドから紫外線を照射し積層する
仕上がり 滑らかで高精細だが、形状によって積層跡が残る 滑らかで高精細・一部フルカラーも可能
サポート材 造形材料と同じ。サポート除去の跡が残る 水溶性サポート材。サポート除去の跡は残らない。
価格 数万円~400万円程度 400万円~5,000万円

※注意点

基本的にインクジェット方式は光造形法の上位機種、高価格層という位置づけになるかと思います。光造形ではサポート材を除去した跡が残ってしまい、より高い滑らかさ精度が必要な場合にはより高額なインクジェット方式になります。

インクジェット 方式価格一覧表

上記指標項目を加えた光造形・インクジェット 3Dプリンターの価格表になります。インクジェット方式は基本的に300万円以上からになります。また年間保守料などもかかります。

500万円以下のインクジェット3Dプリンターおすすめ機種

300万円以上の価格帯になると光造形よりもインクジェット方式にシフトします。インクジェット方式はより綺麗でサポートなどの後処理が簡単になります。

Objet 30 Objet 30 Prime
造形方式 PolyJet PolyJet
造形サイズ 294×192×148(mm) 294×192×148(mm)
対応材料 UV硬化性樹脂(8種類) UV硬化性樹脂(12種類)
特長 高精細&滑らか。簡単な後処理。高い安定性 高精細&滑らか。簡単な後処理。高い安定性
製品保証 無償保証:1年
次年度以降年間保守料
無償保証:1年
次年度以降年間保守料
本体価格(税別) 4,100,000円 5,700,000円

ストラタシス Objet 30/Objet Prime

ストラタシスObjet 30とObjet Primeは、インクジェット3Dプリンターの中でも最も低コストで導入ができる3Dプリンターです。最小14ミクロンの積層ピッチで、インクジェットで噴霧されることから継ぎ目のない滑らかで高精細な造形が可能です。

また1台でObjet 30は8種類、Objet Primeは12種類とさまざまな用途に対応できる材料が使用できます。最終品さながらのプロトタイプから高強度な治工具、高耐熱モデル、ゴムライクなど、高品質な造形が可能です。また、Objet 30とPrimeはサポート材も専用の水溶性サポート材に対応しており、造形後の後処理も水による高圧洗浄が可能です。

1000万円以上のインクジェット3Dプリンターおすすめ機種

インクジェットタイプの3Dプリンターは、Objet シリーズ以上のスペックだと1000万円以上の価格帯になります。フルカラーやマルチマテリアル、大型などより高度なモノづくりに対応したラインナップです。

J55 J826Prime J850 Prime J850 Pro Objet1000
造形方式 PolyJet PolyJet PolyJet PolyJet PolyJet
造形エリア 1,174(㎠) 255×252×200(mm) 490×390×200(mm) 490×390×200(mm) 1000×800×500(mm)
対応材料 UV硬化性樹脂
(5種類掛け合わせ)
UV硬化性樹脂(11種類かけあわせ) UV硬化性樹脂
(11種類かけあわせ)
UV硬化性樹脂
(8種類)
UV硬化性樹脂
(7種類)
特長 フルカラー47万色・テクスチャー・パントーンカラー フルカラー54万色・テクスチャー・パントーンカラー フルカラー54万色・テクスチャー・パントーンカラー フルカラー54万色・テクスチャー・パントーンカラー 大型&高精細を両立
製品保証 無償保証:1年
次年度以降年間保守料
無償保証:1年
次年度以降年間保守料
無償保証:1年
次年度以降年間保守料
無償保証:1年
次年度以降年間保守料
無償保証:1年
次年度以降年間保守料
本体価格(税別) 12,600,000円 23,100,000円 48,200,000円 4,100,000円 45,900,000円

J55

J55は、フルカラーで初の小型化、オフィス型を実現した3Dプリンターです。最大で47万色のカラー表現が可能で、色見本で知られるパントンカラーにも対応した3Dプリンターです。従来の3Dプリンターとは違い、新たに回転式のプラットフォームを搭載することで、最大で1,174㎤の造形サイズまで作ることが可能です。

CADデータを直接取り込むことができる専用ソフトウェアGarbCAD Printでは、3D上で作成したテクスチャもそのまま出力できます。サポート材は水溶性サポート材に対応しており、造形後の後処理もウォータージェットで簡単に除去可能です。

J8シリーズ

J55のさらに上位機種になるのがJ8シリーズです。J826Prime、J850 Prime、J850 Proの3種類のラインナップを持ち、フルカラー&マルチマテリアルに対応しています。J8シリーズは最大54万色のフルカラーが表現可能で、さらには硬さや柔らかさも調整ができます。

さらに、ABS樹脂の物性を再現した高強度なデジタルABSが使用することができ、治工具などから樹脂金型まで1台で幅広い用途に対応しています。J55同様、CADデータからそのままプリント設定可能な専用ソフトGrabCad printに対応しており、テクスチャなどの表現も簡単にプリントすることができます。

Objet 1000

Objet 1000は大型造形に特化したインクジェット3Dプリンターです。最大造形サイズが1000×800×500(mm)で、大型かつ滑らかで高精細な造形が可能です。材料は硬質材料からゴムライクの柔軟性があるもの、さらには高強度なデジタルABSまで多彩な用途に対応した材料で、1台で本物そっくりのプロトタイプから治工具、樹脂金型まで使用できます。

インクジェット3Dプリンターのランニングコスト

インクジェット3Dプリンターのランニングコストは基本的に材料と次年度以降の年間保守費用になります。

材料費:UV硬化性樹脂

インクジェット3DプリンターではUV硬化性樹脂が材料になります。機種ごとで使用できる材料がことなりますが、1グラムあたり@38円~71円程度になります。
光造形3Dプリンターの材料費が1グラム当たり@3円~30円程度に比べて高価格になります。その分、仕上がりが高精細で多用途に使用ができます。

年間保守費用

インクジェット3Dプリンターは次年度以降、年間保守費用が発生します。3Dプリンターの価格帯によって異なりますが、最安のObjet 30で75万円、フルカラーの上位機種ですと100万円以上かかります。

まとめ

インクジェット3Dプリンターの価格は、ほかの造形方式の3Dプリンターに比べて高価格のラインナップになります。造形サイズ、材料の種類、表現の幅、仕上がりの綺麗さ、精度など多くの点で他の造形方式よりも高品質な表現が可能です。

その一方で、最安値でも初期導入コストで400万円から、ハイエンド機になると1,000万円を超え、ランニングコストも高くなります。頻繁に最終品さながらの仕上がりが求められる造形物を作るのであれば、最適だといえるでしょう。