光造形3DプリンターForm3レビュー【球体編:グレイレジン】

光造形3Dプリンターで、球体を3Dプリントするとどうなるのか?
どこまで綺麗で滑らかな球体に仕上がるのか?

光造形3Dプリンターでの球体の3Dプリント方法と、それによる仕上がりの精度や比較検証を調査します。

基本の形を3Dプリンターでプリントしながら、綺麗な球体を3Dプリントする方法を知っていきましょう。

1. 3Dプリントする球体の内容と使用するソフト

こちらが、今回3Dプリントをした球体になります。

球体サイズ

サイズが27mmの球体で検証をしていきます。

使用する
光造形3Dプリンター

今回使用する3DプリンターForm3は、反転方式の光造形3Dプリンターです。

使用する3Dプリントソフトウェア

PreFormは、直観的に使えるForm3/Form3L専用ソフトウェアです。
プリント方向、サポート材の設定、レイアウトなどワンクリックで設定が可能。またサポート材1本単位から細かい設定も簡単にできます。プリント設定を簡単にできる優れた無料ソフトウェアです。

光造形3Dプリンター用材料

光造形3Dプリンター用の材料は、Form3専用スタンダードレジンのグレイレジンを使用します。

3Dプリンター用 硬質スタンダードレジン

硬質スタンダードレジンは、光造形3Dプリンターにおいて最も一般的に使用されるレジンです。多様な用途に対応できる汎用性が高く、プロトタイピングから模型、フィギュアまで幅広い分野で活用されています。このタイプのレジンは、適度な強度と耐久性を持っており、扱いやすさとコスト面でも手頃な価格であるため、初心者から熟練者まで幅広く利用されています。

3Dデータと3Dソフト

今回、ソフトウェアPreFormでプリントする球体の3Dデータは、Blender(ブレンター)を使用して作製しています。
※Blenderは、3Dモデリングができる統合3DCGソフトです。オープンソースソフトウェアとなっており、無償で提供されているため、誰でも公式サイトからダウンロードできます。

2. Dプリントの注意点と検証したい内容

球体の3Dプリントの方法

SLA方式とは、レジンタンクにたまった液体にビルドプラットフォームがつかり、下からレーザービームが照射されて一層ずつ積層されていく造形方法です。


サポート材を付けている球体が、反転方式の吊り下がった状態でプリントされているところ

そのため、すべての造形物が釣り下がった状態で積層されていきます。
特に球体はプリント方向がすべて同じなため、ビルドプラットフォームに直接造形物をつけることが出来ません。
注意点として、必ずサポート材を付けなくてはいけません。

サポート材の設定に関してはこの後説明していきます。

<検証1> 3Dデータのポリゴンの違いは造形表面にあらわれるのか?

ポリゴン数が異なる3つの球体(S, M, Lサイズ)を使用して、ポリゴン密度が3Dプリントの表面仕上げに与える影響を調査します。

S ポリゴン 少ない

サイズ : 横割50ポリゴン × 縦割100ポリゴン (5,000枚)
データサイズ : 2.8MB

M ポリゴン 中間

サイズ : 横割200ポリゴン × 縦割400ポリゴン (80,000枚)
データサイズ : 43.0MB

L ポリゴン 多い

サイズ : 横割800ポリゴン × 縦割1600ポリゴン (1,280,000枚)
データサイズ : 686.7MB

ポリゴンの密度が少ない→中間→多いと変化しています。
ポリゴン数が多ければ多い程、より表面が滑らかな球体になっているのがわかります。
この違いが、造形表面にどのように影響していくのかを検証していきます。

<検証2> サポート設定の違いによって造形の仕上がりがどこまで変わるのか?

Form3の専用ソフトウェアPreFormのサポート設定には方法がいくつかあります。

1.ワンクリックプリント

ワンクリックプリントで設定した場合
※球体の側面にもサポート材が付いてしまっています。

2.手動プリント

手動プリントで設定した場合
※球体の側面に付いていたサポート材を、手動で減らしています。
造形の表面にサポート材跡の影響が出ないように、できるだけ底面のみにサポート材がくるようにしています。

サポートを減らす場合、曲面のため、サポートを下手に少なくすると造形物がビルドプラットフォームに貼り付かずに落下する危険性があります。

球体の場合のサポート材の付け方は、少し難しいかもしれませんが、この2種類で、造形の仕上がりの影響にどのような変化が出るのかを検証していきます。

<検証3> 積層ピッチの違いによる造形表面の影響は出るのか?

積層ピッチの違いが、球体表面の滑らかさにどの程度影響を与えるのかを検証していきます。
積層ピッチは、樹脂の種類によって選択できるサイズが異なります。

4つの異なる積層ピッチ(160ミクロン、100ミクロン、50ミクロン、25ミクロン)を使用して、それが3Dプリントの表面仕上げに与える影響を調査します。

積層ピッチのイメージ図

3. Dプリントする球体のパターン

今回の検証内容をまとめると、次のようなパターンで球体を3Dプリントしていくことになります。
積層ピッチが、160ミクロン・100ミクロン・50ミクロン・25ミクロンで、各6パターンずつ3Dプリントしていきます。

パターンポリゴンプリント設定サポート位置
1少ないワンクリック側面と下
2中間ワンクリック側面と下
3多いワンクリック側面と下
4少ない手動下のみ
5中間手動下のみ
6多い手動下のみ

4. 球体の3Dプリント結果

まず、今回3Dプリントした積層ピッチの違う4種類のプリント内容をお伝えしていきます。
こちらの表では、積層ピッチの違い別にプリント時間、レイヤー数、材料のボリューム数、材料コストが分かります。
※1回のプリントで同時に、積層ピッチの同じ球体を6パターンプリントしています。

積層ピッチポリゴンプリント時間レイヤー数ボリュームTotal材料コスト1個あたりの
材料コスト
160ミクロン6パターン2h14m212層74.46ml6個=1,816円1個=219円
100ミクロン6パターン3h43m340層75.42ml6個=1.418円1個=236円
50ミクロン6パターン5h37m620層75.35ml6個=1,416円1個=236円
25ミクロン6パターン12h30m1211層75.04ml6個=1,411円1個=235円

積層ピッチの違いによって、プリント時間とレイヤーの層が大きく違ってきます。
他の造形の場合にも言えますが、プリントする造形の使用用途に合わせて、プリント時間、造形の精度、材料コストとのバランスもみてプリント設定を決めていく必要があります。それでは、実際にプリントした球体の精度等を見ていきましょう。

検証1:ポリゴン密度の違いによってプリントの仕上がりが造形表面にどのように影響していくのか

<結果>

積層ピッチ造形表面への影響
160ミクロン表面にはほとんど影響しない
100ミクロン表面にはほとんど影響しない
50ミクロンポリゴンが少ない場合のみ表面に少し影響する
25ミクロンポリゴンが少ない場合のみ表面に少し影響する
  • 160ミクロンと100ミクロンは、ポリゴンが多い、中間、少ない場合の造形表面の違いはほぼ見られなかった。
  • 積層ピッチが厚い場合はポリゴンの密度の違いは表面にほとんど影響しない。

例 / 160ミクロン ポリゴン少なめ   ポリゴンの形は全くわからない   積層跡が目立つ

例 / 25ミクロン ポリゴン少なめ   ポリゴン

検証2: サポート設定の違いによって造形の仕上がりがどこまで変わるのか?

<結果>

積層ピッチの種類別に結果を見ていきます。3Dプリントする球体が全部で6パターンあります。サポート設定は2種類で検証しています。
表面の仕上がり、高精細、精度、サポート跡に注目して見ていきます。

積層ピッチ160ミクロン 

  • ワンクリックプリントと手動の場合では、造形の精度にほぼ違いはないが、手動で側面のサポート材を減らした場合、プリント自体が失敗した球体があった。
  • 側面の一部のみ、滑らかに造形できていた。
  • サポート材を外した跡は、サポートを減らした分、手動の方が側面に影響が出ていない。
ワンクリックプリント
手動プリント
側面は滑らか
※プリント失敗
※プリント失敗

積層ピッチ100ミクロン

  • ワンクリックプリントと手動の場合では、造形の精度にほぼ違いはない。
  • 側面は滑らかに造形できている。
  • サポート材の跡は、手動の方が影響は少ない。
ワンクリックプリント
手動プリント
側面は滑らかにできている

積層ピッチ50ミクロン

  • ワンクリックプリントと手動の場合では、造形の精度にほぼ違いはない
  • 全体的に滑らかできれいな球体に造形できている。
  • サポート材の跡は、手動の方が影響は少ない。
ワンクリックプリント

積層ピッチ25ミクロン

  • ワンクリックプリントと手動の場合では、造形の精度にほぼ違いはない
  • 全体的にとても滑らかで、とてもきれいな球体に造形できている。
  • サポート材の跡は、手動の方が影響は少ない。
ワンクリックプリント
手動プリント
全体的に滑らかできれいな球体

積層ピッチ別に、結果を表にまとめました。
表面の仕上がり、高精細、精度、サポート跡の項目でそれぞれ結果をまとめています。

積層ピッチ160ミクロン

パターンポリゴンプリント設定サポート位置サポート位置高精細/ディテール精度/寸法
サポート跡・タッチポイント
1少ないワンクリック側面と下側面一部が滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ
2中間ワンクリック側面と下側面一部が滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ
3多いワンクリック側面と下側面一部が滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ
4少ない手動下のみ※プリント失敗△  ふつう※プリント失敗目立つ/サポート
少なめ
5中間手動下のみ※プリント失敗△  ふつう※プリント失敗目立つ/サポート
少なめ
6多い手動下のみ※プリント失敗△  ふつう※プリント失敗目立つ/サポート
少なめ

積層ピッチ100ミクロン

パターンポリゴンポリゴンサポート位置表面仕上がり高精細/ディ
テール
精度/寸法等サポート跡・タッチポイント
1少ないワンクリック側面と下側面滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ
2中間ワンクリック側面と下側面滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ
3多いワンクリック側面と下側面滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ
4少ない手動下のみ側面滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ
5中間手動下のみ側面滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ
6多い手動下のみ側面滑らか△  ふつうほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ

積層ピッチ50ミクロン

パターンポリゴンプリント設定サポート位置表面仕上がり高精細/ディテール精度/寸法等
サポート跡・
サポート跡・タッチポイント
1少ないワンクリック側面と下全体滑らか○  きれいほぼ寸法通り目立つ
2中間ワンクリック側面と下全体滑らか○  きれいほぼ寸法通り目立つ
3多いワンクリック側面と下全体滑らか○  きれいほぼ寸法通り目立つ
4少ない手動下のみ全体滑らか○  きれいほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ
5中間手動下のみ全体滑らか○  きれいほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ
6多い手動下のみ全体滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ

積層ピッチ25ミクロン

パターンポリゴンプリント設定サポート位置表面仕上がり高精細/ディテール精度/寸法等サポート跡・タッチポイント
1少ないワンクリック側面と下全体とても滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ
2中間ワンクリック側面と下全体とても滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ
3多いワンクリック側面と下全体とても滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ
4少ない手動下のみ全体とても滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ
5中間手動下のみ全体とても滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ
6多い手動下のみ全体とても滑らか◉  とてもきれいほぼ寸法通り目立つ/サポート少なめ

サポート設定の他に、サポート跡の結果を見ていきます。
こちらがサポート材を外した状態です。

ワンタッチプリントの場合
手動プリントの場合

手動の方が、サポート材を減らした分影響は少なくなっていますが、
サポート跡が目立ちます。

ニッパーとヤスリを使用してサポート跡を一つずつ研磨していきます。

研磨後

サポート跡が目立たなくなり、きれいな球体になりました。

サポート設定や、後処理についてはこちらをどうぞ。

検証3: 積層ピッチの違いによる造形表面の影響は出るのか?

<結果>

積層ピッチの種類別に結果を見ていきます。3Dプリントする球体が全部で6パターンあります。
サポート設定は2種類で検証しています。
積層表面の仕上がり、積層跡具合の項目でそれぞれ見ていきます。

積層ピッチ160ミクロン

  • 表面の仕上がりは、サポートの設定方法に限らず、積層跡が上半分に目立つ側面は一部のみ滑らか。とに、頂点の円形状の跡が大きく目立ち、段差になっている

積層ピッチ100ミクロン

  • 表面の仕上がりは、サポートの設定方法に限らず、積層跡が上部に少し目立つ側面は滑らか
  • 160ミクロンよりは、頂点の円形状の跡が小さくなっているが、段差になっている。

積層ピッチ25ミクロン

  • 表面の仕上がりには、サポートの設定方法に限らず、積層跡がほとんど無くなっているとても滑らかな球体
  • 頂点の円形状の跡はほとんど無くわからない。

積層ピッチ別に、結果を表にまとめました。

積層ピッチ160ミクロン

パターンポリゴンプリント設定サポート位置表面の仕上がり積層跡具合
1少ないワンクリック側面と下頂点に4mmの円形段差あり跡が目立つ/上半分
2中間ワンクリック側面と下頂点に4mmの円形段差あり跡が目立つ/上半分
3多いワンクリック側面と下頂点に4mmの円形段差あり跡が目立つ/上半分
4少ない手動下のみ頂点に4mmの円形段差あり跡が目立つ/上半分
5中間手動下のみ頂点に4mmの円形段差あり跡が目立つ/上半分
6多い手動下のみ頂点に4mmの円形段差あり跡が目立つ/上半分

積層ピッチ100ミクロン

パターンポリゴンプリント設定サポート位置表面の仕上がり積層跡具合
1少ないワンクリック側面と下頂点に2mmの円形段差あり跡が少し分かる/上のみ
2中間ワンクリック側面と下頂点に2mmの円形段差あり跡が少し分かる/上のみ
3多いワンクリック側面と下頂点に2mmの円形段差あり跡が少し分かる/上のみ
4少ない手動下のみ頂点に2mmの円形段差あり跡が少し分かる/上のみ
5中間手動下のみ頂点に2mmの円形段差あり跡が少し分かる/上のみ
6多い手動下のみ頂点に2mmの円形段差あり跡が少し分かる/上のみ

積層ピッチ50ミクロン

パターンポリゴンプリント設定プリント設定表面の仕上がり積層跡具合
1少ないワンクリック側面と下頂点に1.5mmの円形段差あり跡が上のみ
2中間ワンクリック側面と下頂点に1.5mmの円形段差あり跡が上のみ
3多いワンクリック側面と下頂点に1.5mmの円形段差あり跡が上のみ
4少ない手動下のみ頂点に1.5mmの円形段差あり跡が上のみ
5中間手動下のみ頂点に4mmの円形段差あり跡が上のみ/目立つ
6多い手動下のみ頂点に1.5mmの円形段差あり跡が上のみ

積層ピッチ25ミクロン

パターンポリゴンプリント設定サポート位置表面の仕上がり積層跡具合
1少ないワンクリック側面と下頂点の段差が全く気にならない跡がほぼ無し
2中間ワンクリック側面と下頂点の段差が全く気にならない跡がほぼ無し
3多いワンクリック側面と下頂点の段差が全く気にならない跡がほぼ無し
4少ない手動下のみ頂点の段差が全く気にならない跡がほぼ無し
5中間手動下のみ頂点の段差が全く気にならない跡がほぼ無し
6多い手動下のみ頂点の段差が全く気にならない跡がほぼ無し

5. 3Dプリント 球体編 まとめ

光造形3Dプリンター Form3で球体をきれいに3Dプリントする方法

*とにかく滑らかで精度の高い球体を作りたい

  • ポリゴンの多い3Dデータを使用
  • 積層ピッチ  25ミクロン
  • サポート設定  手動 (サポート材を減らす)
    ※但し、プリント時間が長い

*精度は普通でプリント時間を短く作りたい

  • ポリゴンの多い3Dデータを使用
  • 積層ピッチ  50ミクロン
  • サポート設定  手動 (サポート材を減らす)

今回の検証の場合は、こちらの設定のプリント方法をおすすめします。
ぜひ球体や曲面の3Dプリントの参考にしていただけたらと思います。

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