Blenderで髪の毛を立体化する

Blenderで髪の毛の「穴閉じ」「サブディバイド」作業 

それでは3DプリンターのForm3でフィギュアを造形するために、さらにモデルを修正していきましょう!

今までご紹介したBlenderやZbrushでの「服や靴」を「穴埋め」「サブディバイド」したり「トポロジー編集」した数々の技法を駆使して、ここからは少々忍耐を持ってすべての3Dデータのパーツを「完全な立体化」になるように作業を進めて行きましょう。

Blenderで「穴閉じ」を行う場合、基本的に穴の開いた部分の「エッジ」を選択して「F」キーを押して穴を閉じていきます。
うまく穴閉じするコツは、エッジを選択する場所を変えたり、エッジのポイントのマージ忘れ(二重のポイント)などに注意しながら、黙々と作業を進めていきましょう。

ここでは髪の毛の代表的なパーツをピックアップして、ご紹介していきたいと思います。
 ハッカドール2号の細々したすべてのパーツに対して記事を書きますとページ数が膨大になってしまう事と、同じような内容が重複してしまいますのでそこそこ省略させていただきますが、重要なエッセンスは余すところなくお伝えします。

今回はBlender単体での作業でハッカドール2号の「髪の毛」の「穴埋め」や「サブディバイド」していきたいと思います。
復習もかねて、いろいろな手法をより一層マスターしてみてください。

Blenderで髪の毛を「穴閉じ」する

それでは、まず髪の毛の構造を見てみましょう。

 このようにハッカドール2号の髪の毛は、大きく分けて4つのグループ構造になっています。
このうち特に「前髪グループ」は複数のパーツで構成されています。

ではまず初めに、エッジを選択後に「F」キーを押し進めば、それで「穴閉じ」が済んでしまう3Dデータをチェックしていきましょう。
この時の注意点ですが「穴閉じ」だから「単に穴を閉じれば良い」のだとは、思いこまないでください。
より一層3Dデータを見つめて観察してくださいね。

 前髪のパーツを見本に「穴閉じ」作業を考えていきましょう。
前髪の状態をよく観察しますと、穴閉じが必要な部分に関してはほぼ平面状態で、立体感に乏しい作りになっていました。
これをそのまま穴閉じしても薄すぎて、これでは3Dプリントしたらすぐに折れてしまうでしょう。

ですので、ここは穴閉じ作業の前にポイントまたはポリゴンを移動させて、平面的な部分を立体的に加工してから、穴閉じするようにしてください。

ポイントの移動作業はまず対象のモデルを選択してから、左上のモード切り替えパネルを「編集モード」に切り替えてください。
それから「編集モード」すぐ右隣にある「頂点選択」または「辺選択」ボタンを押して、移動ツールで個別に移動させてください。
Shiftを押しながら選択すると複数を選択できますので、こちらも併用してください。

今回の立体化は、単純にポイントを移動させて厚みをつけただけの作業です。
じっくりと見て探すと、けっこう厚みのない箇所が多数見受けられますね。

ロングヘアーの場合は、幸いなことに毛先の先端部分は立体的に閉じていて、穴あき箇所は頭頂部の一か所のみでした。
いろいろな場所のエッジを選択しながら「F」キーを押して、穴埋め作業を試行錯誤しながら進めましょう。

後ろ髪はそのままでは加工がしにくいので、少々加工をして行きたいと思います。

と言いますのも、この「後ろ髪」に付いている「前髪」の「輪っか部分」は、図のように別の「前髪グループ」にかくれて見えないのです。

そのためこの「後ろ髪」についている隠れて見えない「前髪の輪」を、適度な位置で削除することにしました。

 またこの「後ろ髪」ですが、ほぼ全体が板ポリゴンで一部毛先のみ立体的になっている状態です。
この毛先の立体部分ですが、逆に使いにくいので立体部分も削除しました。

そしてBlenderの「ソリッド化(厚みをつける)」機能で、少し厚みをつけました。
「ソリッド化」機能を設定する準備をしましょう。

左上のモード切り替えパネルを「編集モード」に切り替えてください。
それから「編集モード」すぐ右隣にある「面選択」ボタンを押してください。
そしてマウスをドラッグアンドドロップして、必要な面を選択してください。
Shiftを押しながら選択すると追加選択でき、クリックで個別に選択/解除できますので、こちらも併用してください。

それではBlenderの「ソリッド化(厚みをつける)」機能を設定します。
右下のパネルよりスパナマークの「モディファイアプロパティ」を押して、「モディファイアを追加」ボタンから一覧を表示して、「ソリッド化」を選択します。
そうしますと一見変化はありませんが、実際にはソリッド化(厚みをつける)されています。

では移動マニュピレーターを動かしてみてください。
選択した箇所に厚みがついていることがよくわかります。
ここで設定した厚みの基準は、耳周辺の毛の厚みを意識して決めています。

このすこし厚みをつけた「後ろ髪」を「頭」を表示しながら後ろから見ると、頭と後ろ髪の間に結構大きな「すき間」が見られます。
そのためこの「すき間」を埋めるために、この「後ろ髪」を「頭」にめりこんで引っ付くように、毛先以外を選択してもう一度「ソリッド化」機能で厚みをつけましょう。

後ろ髪の「毛先」は残した状態で「後ろ髪」を選択し、先ほどと同じく「ソリッド化」機能をかけてください。

このように「後ろ髪」が「頭」に密着した状態にすることができました。

それでは最後に「ポニーテールグループ」ですが、立体と思っていたら先端部分に穴が開いていました。
しかも面倒なことに毛先が分岐しています。

ここはポニーテールの毛先のエッジを選択して「F」キーを推し進める単純な穴閉じ作業ですが、先端から或いは根元から選択するエッジを変えて試行錯誤して穴を閉じていきましょう。

 このような要領で、髪の毛のすべてのパーツの穴埋めを行っていきます。
量が多いですが練習だと思って忍耐をもって継続してください、応援しています!

Blenderで髪の毛を「サブディバイド」する 

3Dデータを分割する予定のZbrushに持ち込んだ時点でサブディバイドしても良いのですが、簡単な形状の分割箇所の場合はBlender側でサブディバイドしてしまって完了させても良いですね。

Blender或いはZbrushでもそうですが、「サブディバイド」する時の注意点は「スムージングをかけながら元の形状をどこまで守るか?」だと思います。

 この「元の形状を守る」とは、特にエッジ部分に多く見られる課題点です。
結論から申しますと「クリース」機能を設定して、エッジの形状を保護していきます。
ですがBlenderでのエッジの「クリース」設定が、けっこう微妙繊細で少々コツ必要です。
 例として、靴とブーツのジョイント部分を参考にクリース調整をしてみましょう。

上の画像に見られる、奥のブーツの足首ジョイント部分の先端形状を見てください。
鋭角な形状が守られていますね。
ところが画像の手前のブーツの足首ジョイント形状は、赤線のクリースが設定されているにも関わらずスムージングがかかって丸みをおびてしまっています。

なぜこのような違いが出るのかと申しますと、ほんの少しのエッジの選択で変わるものなのです。
その違いを、画像で比較してみましょう。

 ↑ 奥のブーツのクリース選択箇所
↑ 手前のブーツのクリース選択箇

※注意点:この図の手前のブーツは、「サブディバイド」がかかっていない時点のものです

このように先端部分のほんの小さなエッジ1本が選択されているか否かだけで、形状の保護される結果がずいぶん変わってきます。
 このブーツのほかにも、ほんの少し違うエッジの選択で形状が変わってしまう所はかなりたくさん見受けられます。
 エッジの選択を少し変えるだけで鋭角を調整できますので、ぜひ試行錯誤してより良い結果を見つけてください。

↑ 首の装飾部分
↑ ブーツ/腕の装飾部分

 この「穴埋め」「サブディバイド」作業は、Blender単体でもZbrush単体でも、BlenderとZbrush併用でも自由自在です。
ルールは特にありませんので、きれいにかつ3Dプリントしやすくできあがればそれが正解です。

この章のまとめ

今回はBlenderで髪の毛の「穴閉じ」「クリース設定」「サブディバイド」を進めてみました。
「穴閉じ」「クリース設定」に関してはけっこう職人技的な部分が多く、ちょっとした工夫で思い通りになったりならなかったりするものです。
職人的な知恵と申しましょうか、これも忍耐から得る経験値だと思います。