3Dデータをどのように分割出力するかを考察する
それでは3DプリンターのForm3でフィギュアを造形するために、さらにモデルを修正していきましょう!
ハッカドール2号の3Dデータ各パーツの「穴埋め」が完了しましたら、次は3Dプリントで出力するための「分割」について考えていきましょう。
※「サブディバイド」でのなめらかにする細分化に関しては、ここまでですべて完了している必要はありません。
まず今回のハッカドール2号の身体の分割仕様としては、だいたい以下のように考えています。
髪の毛の分割に関しては少々複雑になるので、身体の分割をご説明したのちに、詳しくお話ししたいと思います。
おおむね以下のような順序で、これから詳細な分割方法を解説していきたいと思います。
①身体の中でも、簡単な分割で済む箇所
②身体の中でも、比較的複雑な分割になる箇所(太もも周辺と首回り)
③複雑な分割になる箇所(髪の毛)
分割作業には「ブーリアン」機能を使いますが、Zbrushのブーリアンは特に安定性に定評があるため、こちらを中心に作業を進めたいと思います。
もちろんBlenderでも可能な作業ですので、状況や好みに合わせて作業可能です。
いずれにしましても、Blender単体での作業終了後は全3DデータをZbrushへインポートすることになります。
このインポート時の要領をご説明します。
まずBlenderにて、出力するすべてのハッカドール2号のパーツを表示して、選択状態にしましょう。
そして、メニューの「ファイル/エクスポート/FBX」を選択してください。
パネルが出現しますので、「選択したオブジェクト」にチェックをいれて、「FBXをエクスポート」ボタンをクリックしてください。
ZbrushにFBX形式でインポートすると、Blenderでのレイヤー構造をそのまま保持して取り込まれます。
また各パーツの位置関係も保持されていますので、非常に連携が良い状態ですぐに3Dプリント向けの分割作業が開始できます。
ここで更にこのハッカドール2号の3Dデータを、作業しやすいようにZbrush内部的に「最適化」しておきましょう。
「Zプラグイン/スケールマスター/スケールユニファイ」を選択して、最適化しましょう。
これはどういう事かと申しますと、Zbrush内部での最も安定したサイズが内部的な「2」という数値になるのですが、インポートしたデータはこの数値が適当になっていて操作しにくかったり安定性にかける挙動がでたりします。
その状態をリサイズして安定した状態にしてくれる機能が「スケールユニファイ」なのです。
それでは、3Dプリント用の分割データ作成に取り掛かりましょう!
身体の中でも、簡単な分割で済む箇所
まず手始めに、身体の中でも今回は比較的簡単に分割作業ができそうな箇所を見ていきましょう。
分割が簡単な作業で済みそうな箇所としましては、
1)腕と肩の接合部の分割
2)胸と服の接合部の分割
3)服と装飾8点の接合部の分割
4)ひざとブーツの接合部の分割
5)靴と足の接合部の分割
となります。
では順次作業を進めていきましょう。
腕と肩の接合部の分割
まずハッカドール2号の3Dデータの「腕」から見ていきましょう。
分割に先立って「結合統合」しておいたほうが良いパーツ同士があれば結合統合しておきます。
今回は、「腕」と「上腕のフリル状の飾り」は結合統合しておいたほうが良さそうです。
ここで結合統合の考え方と言うか手法なのですが、まず結合統合したいパーツを「1レイヤー」にまとめてしまいます。
1レイヤーにまとめても実際は完全に結合し統合しているのではなく、別々のパーツとして1レイヤーに入っている、という状態です。
そしてその次の段階なのですが、方法は2つあります。
ひとつ目の方法は、このままにしておく方法です。
1レイヤー内部で別々のパーツであったとしても、3Dプリント用のスライサーソフトに取り込めば自動的に一体化してくれるのです。
ふたつ目の方法は、Zbrush内でブーリアン結合で完全に一体化して、Zremesherなどをかけて結合部分を美しく仕上げる方法です。
手間をかけたくないのであればひとつ目の方法が楽ですが、結合部分の仕上がりがどうなっているのか?の確認が3Dプリント用のスライサーソフトに取り込むまでできません。
そのため、結合部分がフィギュアの見えない箇所などの場合はまだ良いのですが、表面のよく見える箇所等の場合は確認できないのは困りますね。
なにごとも美しい仕上げを確認して進めることを心がけたいところです。
そのためこの講座では、ふたつ目のZbrush内でブーリアン結合で完全に一体化して、Zremesherなどをかけて結合部分を美しく仕上げる方法で進めます。
「見えない所でも美しく」を心がけて、仕上げをしていきたいと思います。
「腕」の結合
では「腕」の結合を、先ほどの考察に基づいて完璧におこなってみましょう。
ここではZbrushの「ブーリアンの加算」機能を利用していきます。
まず、Zbrushのレイヤーを見ていきましょう。
「右腕のフリル」と「右腕」の2レイヤーのパーツをブーリアンで結合させます。
ブーリアンする手順としては、
①該当する最上段のレイヤーの左上側の小さな矢印をクリックして「←START」に変える
②そのレイヤーの下のレイヤーにある同じく小さな矢印右横の「ブーリアンの仕上がり」アイコンを選択して指定する。
今回は加算マークをクリック。
③このままだと「右手フリル」レイヤー以下のすべてのレイヤーとブーリアン結合してしまうので、その下のレイヤー(今回は「左手」の矢印)をクリックして、2レイヤーのみのブーリアンになるように制限をかける。
④その後に右側のツールパネルで「サブツール/ブーリアン」ボタンを押して「ブーリアン」を実行すると、結合されたツールが新しく別データとして自動生成されます。

ブーリアンが完了したら、元の3Dデータのレイヤー「←START」関連をもとの「小さな矢印」等に忘れないうちに戻しておきましょう。
⑤右手だけでなく左手も同じようにブーリアンで結合してから、新しくブーリアンされたツールが作成されたのを確認して保存しておきましょう。
⑥新たに作成された左右の腕ツールに「Zremesher」をかけて、ポリゴンを整えておきましょう。
この章のまとめ
穴埋めや厚みをつけた3Dデータをもとに、今回は分割に関しての準備や考え方をまとめました。
まずZbrushで「腕と肩」の3Dデータを分割するために「腕」の3Dデータを結合したところまでで次回に引き継いでの講座となります。
これからが長丁場になりそうですが、引き続きよろしくお願いいたします。
