3Dプリンターでフィギュアを作るために最適なデータとは?

高まる3Dプリンターでのフィギュア制作のニーズ

初めまして!
「デジタルものづくりを支援するi-MAKER」に所属する3Dモデリングマスターの「Z造形師」です!
どうぞよろしくお願い致します。

3Dモデリングをマスターしている方でも、3Dプリンター用のデータを作成する方法を熟知している方はまだまだ少ない状態だと思います。
そこで、皆様に3Dプリンター用の3Dデータが作れればもっとフィギュア制作が楽しめる!との思いから、この講座が生まれました。
これから、3Dプリンターでフィギュアをより美しく失敗なく造形するための、完成形モデルの修正加工や分割についてご説明します。

公開配布キャラを3D化しよう!

 今回のテーマは「3Dプリンターでフィギュアを作るために最適なデータとは?」に焦点をあてています。
そのため「ゼロからデータを作る」のではなく、すでに「公開配布されているゲームキャラクター」をもとに「3Dプリンターで出力できるデータ」に改良する過程を詳しく説明した講座になります。

その過程で、3Dプリンターに適したフィギュアデータ作りを学べるように構成されています。
まさに「フィギュア制作 基礎講座」ですね。

3Dプリンターのデータは簡単に入手できる!?

現在はキャラクターの3Dモデリング制作をゼロからしなくても、例えば「VRoid Studio」でカスタマイズ制作したり、「ニコニ立体」で配布されていたりと、3Dキャラクターデータを手にする機会が非常に多いですね。
こうした3Dデータを利用することで、3Dプリンターに最適なフィギュアデータは、コツさえわかれば自分で簡単に作れますよ!
3D初心者も中級者もこの講座で学んで、ぜひ楽しい「フィギュア制作」を満喫してください!

VRoid Studioとは

VRoidStudio

人型キャラクターの3Dモデルを半自動で作成できるWindows・Mac用アプリケーションです。 どなたでも無償で利用できます。
作成した3Dモデルは3DCGアニメやゲーム、VR/ARコンテンツ内でアバターとして利用するなど、商用・非商用を問わず、さまざまな用途に活用できます。

VRoid Studio

ニコニ立体とは

ニコニ立体

3DCG投稿共有サービスで、ユーザーが作成した3Dモデルを投稿、鑑賞、共有できる3Dプラットフォームです。
投稿された3Dモデルは360度どこからでも鑑賞する事ができ、投稿者が許可すれば誰でもダウンロードしてMMD、3DCGアニメやゲーム、VR/ARコンテンツ内でアバターとしてなど利用する事が出来ます。

ニコニ立体

完全立体でないと3Dデータは3Dプリントできない!?

ただ、これらのデータをそのまま使って3Dプリンターでフィギュア化できるかと言うと、残念ながらほぼできません。
それはなぜかと言いますと、一般に配布されている3DCGデータは見た目は立体ではありますが、個別のパーツ単位で見るとそれぞれが「完全立体」では無いためです。

例えば、服や髪の毛がペラペラの板状態だったり、腕と服の接合部に穴が開いていたり、靴の中に足が入っているけど実際に3Dプリントすると足が入らない、などなどです。

事例サンプル:今回は「ハッカドール2号」を見本に3Dフィギュア化!

今回は、 株式会社ディー・エヌ・エーさまのキャラクター「おんだ式ハッカドール2号」を利用させて頂き、詳しく説明させて頂こうと思います。

© 2015 DeNA Co.,Ltd.

今回このモデルを使うことにした理由は、髪の毛に関して「完全立体」に近い作りをされていた点です。
その他のパーツも部分的に調整すれば使える要素が多く、初歩的な改良講座には最適と判断しました。
 でも初歩的と言えども、この基礎講座のボリュームはかなりのものです。
それぞれの作業は簡単ですが、3Dプリンター用のデータ改良の道のりはけっこう長いものです。
その「ハッカドール2号」講座の道程で、必ず役に立つ発見がたくさんあると思いますよ!

ハッカドール2号 3Dプリンターフィギュア化講座」で学べるポイント

この「ハッカドール2号 3Dプリンターフィギュア化講座」で学べるポイントをご紹介しておきましょう。

①配布されている3DCGキャラクターモデルを加工修正して、3Dプリンター用のデータに改良する方法が学べる
②3Dプリンター用のデータを作成するための「考え方」「視点」を学ぶことができる
③加工ソフトである「Blender」および「Zbrush」においての、改良に特化した機能を集中して学ぶことができる
④「Blender」と「Zbrush」との使い分けしながら、その例を学ぶことができる
⑤初歩の方でも理解できるように、BlenderとZbrushの基本的な操作方法も飛ばさずに網羅している

などなど、フィギュア化へのあれこれが満載です。

もちろん読者層は、CG初心者から中級者を想定していますので、かなり懇切丁寧に記述しています。
同じことの繰り返しをモノともせずに記述しています。

フィギュア制作に使用する3DCGソフト

 ここで初心者の方のために、ここで利用するソフト「Blender」と「Zbrush」に関しての基本情報をお伝えしておきます。

「Blender」

Blender

 無料の3DCG総合ソフトで、今回はモデリング機能のみを利用しています。バージョン2.8以降とても使い勝手の良いソフトに仕上がっています。
基本的に「ポリゴン」ベースの、俗に言う一般的な3DCGソフトです。
専門書やネット情報がたくさん出回っているので、学習環境はかなり良好です。

Blender

「Zbrush(Pro)」

Zbrush

 こちらは有料のソフトですが、一般的な3DCGソフトの弱点を根本的にくつがえす「スカルプト」ベースの次世代型のソフトです。
このソフトの登場で3DCGの表現力が、格段に豊かで精細なものになったといっても過言ではありません。また、3DCG人口の増加にも一役買っているようです。
 今回は「スカルプト」ブラシ機能は利用しませんが、その基本性能を流用しています。

こちらも情報はたくさん出回っていますが、用語が一般の3DCGソフトと違ったり概念の違いから習得差がでやすいソフトでもあります。
たとえば一般では3Dソフト内で作成した物自体を「オブジェクト」と呼びますが、Zbrushでは「ツール」と呼びます。
その「ツール」を構成する各パーツを「サブツール」と呼ぶなど特徴があり、なれるまでに少々時間が必要かもしれませんね。

Zbrush

3Dプリンター用のデータ作成の流れ

目次とも連動しますが、おおまなか3Dプリンター用のデータの作成手順をご紹介しておきます。

1)3Dプリンター出力を考えてモデルをチェックする

まず最初に配布モデルを細かくチェックして、3Dプリンターで出力できる状態かどうかの確認を行いましょう。その上で、どこを改良する必要があるかを確認していきます。

ここで見落とすと後で困りますので、入念に確認をおこないます。

2)3Dプリンター出力のための分割計画を考える

次に、3Dプリンター出力をおこなう際の分割計画を考察していきます。こちらでは特に、造形後の塗装である「塗装着彩」を考慮して分割をする方法を学んでいきます。

ここで考慮する点は「色の境界線が不自然にガタガタにならないか?」、「塗装着彩作業しやすいか?」という点になります。
着彩の出来の良し悪しで、フィギュアの品質はおおきく左右されます。
この「色の塗りかた」は、また別に「色彩講座」でお伝えしたいと考えています、お楽しみに!

3)3Dデータの「穴埋め」と「サブディバイド」作業

穴埋め(穴閉じ)

「穴埋め(穴閉じ)」とは、分割して穴ができたり元々穴が開いているパーツの、その穴を埋めてしまう作業を意味します。
この作業をすることで「完全立体」になり、3Dプリンター出力がきれいにできるようになります。

穴が開いている状態は立体として不完全な状態のため、このままでは3Dプリンターで出力することができません。
また、自動穴埋め機能等を利用したとしても、フィギュアの3Dプリントに最適な完全立体にすることは難しいものです。 

サブディバイド

「サブディバイド」とは「サブディビジョン」とも呼ばれる機能です。
モデリングをする際にポリゴンの板が細かくなるほどに、なめらかにはなりますが微妙な調整が困難になります。
逆にポリゴンの板が大きければ調整はしやすいのですが、当然面はカクカクになってしまいます。
この相反する問題を解決した機能がこの「サブディバイド」です。

 左のポリゴンが大きいモデルで調整し、サブディバイドのレベルを上げて右側のモデルで仕上がりを確認し、また左のモデルのレベルに戻って調整して、、、を繰り返す作業スタイルになります。

今回の「ハッカドール2号」も元のモデルはポリゴンが粗い方ですが、これに「サブディバイド」機能を働かせて、なめらかな仕上がりの3Dプリンター出力用のモデルに改良していきます。

上図の左側は粗いポリゴン状態、右側は細かいポリゴン状態です。
一見同じように見えますが、近づけば(アップすれば)なめらかさの違いがはっきりと見て取れます。

4)3Dプリンター向け 分割・接合箇所の加工

 各パーツを「穴閉じ」して「完全立体化」し、「サブディバイド」して「なめらかな仕上げ状態」にしたら、いよいよ分割箇所の接合加工に取りかかります。

 ここでは「ブーリアン」という機能を多用することになります。
「ブーリアン」とは、メッシュ(ポリゴンの集合体)同士を重ね合わせたり、切除したりできる機能です。

このブーリアンを応用してフィギュアの分割部分の接合加工をおこないます。

このような内容で、解説を進めたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

この章のまとめ 

3Dプリンターで出力する3Dデータとは、完全な立体であることが条件です。
ゲームや映像向けに作成されたフィギュアなどは、完全立体ではないために多数の改造が必要になります。
その工程を、これからご説明していきます。