3Dプリンターでフィギュアが作れる3Dデータのチェック方法

3Dプリント前の主要なモデルチェックポイントとは?

 まずこのフィギュア「ハッカドール2号」のモデリングされた3Dデータで、現状としてどこまで3Dプリントが造形可能かを検証します。

チェックポイントとしては、以下の4点です。

チェックポイント1:髪の毛が完全立体の3Dデータか検証

ゲーム・映像向けの3Dモデルによっては、髪の毛のポリゴンを「板状」に配置しているものがあります。
「厚みのある完全な立体物」でない場合は、3Dプリンターで造形できませんので、修正が必要です。

また髪の毛がたとえ立体でも完全立体ではなく、厚みが薄すぎる場合も3Dプリンターでまともに造形できません。
さらに頭部と髪の毛との間に空間が多数できていては、たとえ3Dプリントができても固定位置に安定して3Dプリントできずにズレてしまうでしょう。

※一例ですが、簡単に3DCGキャラクターが作成できて人気の「VRoi3D Stu3Dio」で作成された髪の毛は、立体ではあるのですが髪の厚みが最大設定でも薄く、3Dプリンターで出力するためにはBlen3DerやZbrush等のモデリングソフトで髪の毛の厚みを修正する必要があります。
また、髪の毛と頭部は、何らかの形で密着している必要があります。

チェックポイント2:フィギュアの眼の3Dデータを検証

フィギュアが大型あるいはリアル系であれば眼も造形して着色しますが、小型フィギュアやアニメ系の場合の眼は、「デカールシール」での表現が中心になります。
そのため眼が無いつるつる状態で3Dプリントすることとなりますが、そのように3Dデータが処理されてますか?

また眼の「デカールシール」を貼るための、元となる眼の画像データも必要となります。

デカールを制作する詳細は、のちほどご紹介いたします。

チェックポイント3:フィギュアの服の3Dデータの検証

「えり」や「スカート」の3Dデータ検証

「えり」や「スカート」の3Dデータが、穴が開いていなくて、しかも板ポリゴンではなく厚味がついた完全な立体になっていますか?

「身体」と「服」の3Dデータ検証

 「身体」と「服」の3Dデータがどちらも存在していて、二重になっていませんか?
服の内部に身体があると、それは3Dプリントする場合には不要な3Dデータとなりますので削除しておきましょう。
そうしないと、きれいに安定した状態で3Dプリンターで出力ができません。

 ↑服の内側に不要な腕の3Dデータが残っている見本

「服」 全般の3Dデータの検証

3Dデータの服の「そで口」や「首もと」ですが、図のようにポリゴンの裏側が見えていませんか?
この服はペラペラな板の筒状で、上下に穴がぽっかりと開いていて空洞ですね。
3DCGアニメーション映像やゲームソフトなどを作る場合なら、これで十分に正解なのです。
ですが3Dプリントで出力する場合は、このままだと造形されずに失敗してしまいます。

また、スカートのウエスト部分に注目してください。
服装と身体とが接合していますか?

服装と身体が接合していないと、服装は支えがないために、希望する位置に定着せずにズレた場所に引っ掛かった状態になります。

それではおさらいしましょう。
服を3Dプリンターで出力する基本的な考え方として、

①3Dデータすべてにおいて、3Dプリンターで出力してプラスチックが造形し強度が保てる「ある程度の厚み」が必要なこと

②現実では身体が服の中にあるわけですが、3Dプリンターで造形する時には「服はプラスチックのかたまりになり、中に身体は存在しない」状態になる

と言う点を念頭に置いてください。
特別な目的がない限りは、外から見えない服の内部には体を残しません。

また、服の「くび元」「そで口」「ウエスト部」などの現実では口の開いている部分に関しても、特別な目的が無い限り、違和感が出ないようにしながら3Dデータを完全立体にして行きます。

「開いた」「閉じた」3Dデータとは何か

                                          ↑閉じた3Dデータ       ↑開いた3Dデータ

完全立体として成立している3Dデータを「閉じている」と言い、ポリゴンのどこかに穴が開いている3Dデータを「開いている」と言います。業界用語です。
もちろん映像やゲーム用のフィギュアデータの場合は、「開いている」状態で問題はありませんので、常に「閉じている」状態にしなければならないわけではありません。

ですが3Dプリンターで出力するならば、必ず「閉じている」状態にしてください。

チェックポイント4:3Dプリントした後の塗装の検討

 ここでのチェックポイントは、3Dプリント用の3Dデータ作成というよりも、そのあとの塗装段階のこともよく考えておく必要があるということです。

 「ハッカドール2号」をよく見ると、服などにデザイン的なラインが入っていたりしますが、身長20~30cmのフィギュアの靴や服のラインは非常に細くなってしまいます。
これを筆で「描けるのか?」ということも考えて、さらには「描き」でなくて「マスキング」して塗るあるいは吹き付ける、または「テーピング」ではどうか?など作戦を練っておく必要があります。
髪などは、エアブラシでグラデーション塗装などが定番です。

せっかく美しくモデリングして3Dプリンターできれいに出力しても、塗装仕上げが「雑」となっては残念な結果となってしまいます。

「ハッカドール2号」を塗装で仕上げる場合、ピンクのラインはマスキング併用で何とかできそう(ただしピンクの単色塗装)ですが、ピンクの靴は現状ではのっぺらぼうで、俗に言う「塗装のアタリ(目印)」が無く苦労しそうであること、前後計8個の緑ボタンのピンク部分は筆では塗り込み困難であろうこと、などが懸念されるところです。

ですので足の3Dデータは、ピンクの靴と白いソックス部分に段差をつけて立体感を出しながら、塗装しやすいアタリとしてしまうのが良さそうです。
また緑ボタンは塗装しやすく分割するのかなども考慮しながら、工夫をしていきたいと思います。

この章のまとめ 

3Dデータを最初に細かく完全立体かチェックできれば、失敗することが格段に減ります。
完全立体をチェックする眼を持つことが、楽しく3Dプリントするためのポイントでもあるのです。
ある意味、地味な作業ですがとても大切な作業なのです。