3Dプリンターでフックを作る方法
3Dプリンターで作れる便利な小物として挙げられるものがフックです。フックはものをひっかけるための道具で、服や帽子などの衣類をかけるものなど、さまざまなものをかけておくことができる便利な小物です。
こうしたフックは多数の種類が市販されていますが、3Dプリンターを使えばお手軽にオリジナルのフックやカスタマイズしたフックを作ることができます。
今回は3Dプリンターで作る便利小物特集第二弾としてフックをご紹介します。
3Dプリントフックの形状
3Dプリンターで作ることができるフックはいろいろな形を作ることが可能です。
フックの3Dデータ
フックの3Dデータは基本的に壁にネジで止めるタイプの形状になっています。また挟み込むタイプのフックもあります。初めに3Dデータを用意する必要があります。STL形式かOBJ形式の3Dデータがあれば3Dプリントが可能です。
3Dモデリング
フックの3Dデータを作るにはFusion360のような3DCADソフトがおすすめです。操作も簡単で初心者にもやさしいCADソフトです。
フリーの3D素材を利用する
フリーの3Dデータから素材をダウンロードする方法もあります。無料で利用できる3Dデータサイトが複数存在します。例えばThingiverseなどの無料3Dデータサイトで「hook」などと検索すると複数無料データがダウンロード可能です。
光造形3DプリンターForm3+で造形
フックは光造形3Dプリンタ―のForm3+で造形を行います。Form3+は高精細で滑らかな造形ができるうえに高い安定性を持っている3Dプリンターです。
レジンの選択
まず初めにどのレジンでプリントするか選択を行います。今回プリントするフックはものをかけたりはさんだりすることから一定の強度が求められます。
Form3+では3種類のタフ2000、タフ1500、デュラブルといった3種類の高強度レジンがありますが、今回はデュラブルを選択します。
デュラブルを選択した理由
Formlabsの高強度レジンは3種類ありますが、それぞれ特長や使い勝手などが微妙に異なります。デュラブルはその3種類の中でもプリントが最もしやすい点、また強度が程よく割れにくく硬さもちょうどよいという特長があります。
ご参考までにタフ2000はデュラブルよりも硬いです。またタフ1500はデュラブルよりも柔らかくしなります。この2種類はレジンとしての粘性も柔らかいためデュラブルよりもプリント時間が長くなる傾向にあります。
専用ソフトウェアPreformでプリント設定
専用ソフトウェアPreFormでプリント設定を行います。PreFormはFormlabsのスライスソフトで、簡単に設定が可能です。今回のフック類はいろいろなパターンがあるので一度にプリントを行います。
プリント方向を設定
フックはほとんどの種類が形状的にサポートを付けない直付けでもプリントが可能ですが、より形状を綺麗に仕上げるためにサポート材を付けてプリントします。直付けでプリントした場合のデメリットとして、サポート材がつかない反面、縦方向へのプリント圧力が加わり横に膨張する可能性があります。
サポート材の設定
サポート材はこの方向に合った形で自動生成を行いますが、側面などの余分な部分は可能な限り減らしてプリントを行います。
積層ピッチ
積層ピッチはデュラブルのデフォルトである100ミクロンでプリントを行います。
ビルドプラットフォームから取り外す
光造形3Dプリンターでは、ビルドプラットフォームにしっかりと造形モデルがくっついています。Form3の場合はラフトとビルドプラットフォームの設置面が真空状態になっており専用工具を使用して取り外します。
専用工具の中でも取り外しやすいのがヘラとハンマーです。スクレイパーは小型の造形物には最適ですが、今回のフックの場合、精密な形状や細かい部分などが折れないように、造形物が飛ばないように取り外しを行います。
まずラフトとプラットフォームの間にヘラをあてます。
次に軽くハンマーでヘラをたたきます。この際、加える力はほんの軽くで大丈夫です。ヘラが少しでも入れば、そこから空気が入り込み、真空状態が無くなり簡単に造形物が取れます。
洗浄
造形物の取り外しができた後は、エタコールで洗浄を行います。洗浄にはIPA(イソプロピルアルコール)やエタノールなどがありますが、第二種有機溶剤に該当しないエタコールがおすすめです。
※IPAでもエタコールでもレジンが溶けだしてしまうと産業廃棄物扱いになります。
仕上げキットを使用する場合
仕上げキットを使用する場合、各バスケットに10分ずつ、合計20分程度ひたしてください。洗浄時間はエコタールの濃度によって異なります。洗浄が続き汚れている場合には少し長め、もしくは別途、エタコールで拭き取ってください。
FormWash(自動洗浄機)を使用する場合
FormWashでは、自動で攪拌してくれて洗浄完了後、引き上げてくれます。こちらも20分程度洗浄を行ってください。
乾燥
エコタールで洗浄後は乾燥をおこなってください。乾燥時間は1時間程度あれば十分です。
サポート除去
さてここからはサポートの除去を行ってまいります。サポート材は手でも取り外すことができます。サポート材はすぐにとりはずさないで、造形後に、造形モデルを十分乾燥させるとサポート材は簡単に取り外しが可能です。
またなるべく造形物を傷つけないように、ニッパーを使う方法もあります。
FormCureで二次硬化
デュラブルはFormCureで二次硬化が必要です。デュラブルでは60℃で60分間二次硬化を行います。
これにより引張強度が131%向上します。
二次硬化の意味
光造形3Dプリンターはプリントした直後だと層と層の間に目に見えない半硬化層があります。二次硬化することでこの半硬化層が固まります。
仕上がりとコスト・リードタイム
それでは各フックの仕上がりとコスト、リードタイムなどをご紹介しましょう。
フックAタイプ
ねじ止めして壁に取り付けるタイプのフックです。シンプルな構造で割れなどの心配もなさそうです。
積層ピッチ | 100ミクロン |
レイヤー数 | 870層 |
造形時間 | 3時間22分 |
材料使用量 | 28.13ml |
材料費 | @613円 |
フックBタイプ
小型のフックで服などをひっかけるタイプのフックです。
積層ピッチ | 100ミクロン |
レイヤー数 | 678層 |
造形時間 | 2時間4分 |
材料消費量 | 8.67ml |
材料コスト | @189円 |
フックCタイプ
挟み込むタイプのフックです。こちらもねじ止めしてクリップのように挟み込みます。
積層ピッチ | 100ミクロン |
レイヤー数 | 417層 |
造形時間 | 1時間30 分 |
材料消費量 | 13.4ml |
材料コスト | @292円 |
まとめ
3Dプリンターで高強度な材料を使用すれば、フックは実用的なものとしてすぐに使用することができます。形状や使用する場所にこだわりがある場合には3Dプリンターで作れる便利な小物としておすすめです。