Form3の洗浄。仕上げキットを使う

Form3の洗浄。高品質な仕上がりを実現する仕上げ

Form3は、造形後の後処理によって、高品質な仕上がりを実現することが可能です。それがデスクトップタイプのFDM 3Dプリンターと、Form3との違いです。基本的に、後処理の流れは、洗浄、二次硬化(スタンダードレジン以外の樹脂は必要)、サポート除去という流れです。

Form3の仕上げキットを使って洗浄する

Form3の洗浄は、二つの方法で行うことができます。第一が付属の仕上げキットを使った洗浄です。そして、第二の方法が、FormWash(別売り)を使った洗浄方法です。ここでは付属の仕上げキットを使った洗浄方法をご紹介します。

洗浄がなぜ必要か

Form3で造形モデルのプリントが完了した後は、まずは洗浄を行います。Form3は液体状の光硬化性樹脂を使って造形を行うことから、造形終了後も造形モデルに余分は液体樹脂が周りについています。

そのため、そのままの状態ではモデルは使用することができず、造形モデルを洗浄し、余計な液体樹脂を取り除く必要があります。

洗浄は必須の工程で、このプロセスを踏まないと、美しい仕上がりや、正確な樹脂の特性が再現されない恐れがあります。ここでは二つの洗浄方法についてご紹介しましょう。

仕上げキットの付属品

付属の仕上げキットには以下の内容が含まれています。また、付属の仕上げキット以外に、別途用意するものがあります。仕上げキットは、造形モデルを浸しておくためのリンスステーションと呼ばれる容器と、治工具から成り立っています。下記がその正式名称と用途です。

1. リンスステーション

二つの容器を入れる土台で成り立っています。それぞれ、二つの容器(リンスバケツ)にイソプロピル・アルコール(IPA)を入れ、各10分ずつ造形モデルを浸して、余分な樹脂を溶かすのに使用します。専用のバスケットに入れることで、造形モデルの出し入れが簡単です。

2. リンスバケツ

イソプロピルアルコール(IPA)を充填して使用する2つのバケツです。各10分ずつ浸します。

3. リンスバスケット

リンスバスケットは、それぞれのリンスバケツに造形モデルを移す際に使用します。このバスケットは造形モデルがバケツの中に落ちるのを防いでくれます。また、造形モデルを取り出す最にも、イソプロピル・アルコールを切るのに仕えます。

4. リンスボトル

リンスボトルは、イソプロピル・アルコールを充填し、洗浄し切れていない部分や、内部の部分を洗浄する際にかけて使用します。

5. 仕上げトレイ

仕上げトレイは、造形モデルを取り外す際や、乾燥を行う際の受け皿となるトレイです。樹脂やIPAが落下して室内を汚すのを防いでくれます。また、部品やツールを置く場所を提供します。

6. ピンセット

樹脂タンクから不要な硬化物を慎重に取り除くのに使用します。

7. スクレーパー

スクレーパーは、ビルドプラットフォームから部品を取り除くのに使用することができ、硬化した材料用の樹脂タンクを慎重に洗浄して検査することもできます。

8. 除去ツール

除去ツールは、造形モデルを取り外すのに使用します。ビルドプラットフォームと造形モデルの間に差し込み圧力をかけて、簡単に取り外すことができます。

9. 治具

仕上げキットの特長的な存在が治具です。この治具は、Form3から取り外されたビルド・プラットフォームを固定し、スクレイパーなどのヘラで取り出すための道具です。取り付ける部分が、ちょうどビルド・プラットフォームの取り付け部分にはめられる形状になっており、取りはずすのに最適な構造をしています。

10. フラッシュカッター

フラッシュカッターは造形モデルからサポート材を取り除くのに使用します。

11. 使い捨てニトリル手袋

プリントを取り出して完成させるときは、手袋を着用してください。

12. イソプロピル・アルコール(IPA)※別売り

イソプロピル・アルコール(IPA)は、仕上げキットの二つの容器や、ボトルに入れるために使用する洗浄剤です。イソプロピル・アルコール(IPA)は樹脂を溶かし、除去するための溶剤で、自前で用意する必要があります。

イソプロピル・アルコール(IPA)は地元の薬局やオンラインストアなどで購入することができます。こちらは濃度90%以上のものを使用します。

イソプロピルアルコール(IPA)は樹脂のクリーンに必須です。

※イソプロピル・アルコール(IPA)は可燃性が高く取り扱いには注意が必要です。また廃棄する際には産業廃棄物扱いになるため、専門の業者などをお住まいの自治体にお問い合わせください。

13. その他の備品 ※別売り

そのほか、ペーパータオルや、アクリルクリーナー、新しい厚手のクリーニングシート(PEC PAD)などがあると便利です。

仕上げキットのセッティング

仕上げキットは、リンスステーションの二つの容器に、別売りで購入したイソプロピル・アルコール(IPA)を十分な量を注ぎます。片方の容器には、リンスバスケットを挿入します。仕上げキットのセッティングはこれでOKです。

仕上げ用キットの使い方(所要時間:約35分)

それでは実際に仕上げ用キットを使った洗浄の仕方をご紹介します。手順は簡単です。造形が終了後、ビルド・プラットフォームをForm3から取り外し、治具に固定、造形モデルを取り出し、イソプロピル・アルコール(IPA)が入った仕上げ用キットに入れるだけです。

1. イソプロピル・アルコール(IPA)を二つの容器に注ぎ、仕上げ用キットに容器をセットします。

2. 造形が終了したら、ビルド・プラットフォームを取り外します。

3. ビルド・プラットフォームを治具に取り付けます。

4. ビルド・プラットフォームをつけた治具の前に、仕上げ用トレイを置きましょう。この仕上げ用トレイは、液体樹脂が垂れたりするのを防ぎます。

5. ビルド・プラットフォームと造形モデルの間に、スクレイパーか取り外し用ツールを差し込み、てこの原理で剥がします。サポートの土台にエッジがついているので、スクレイパーの先端を入れてヘラでこそぎ取ります。真空状態になっていますので空気を入れてあげると簡単に外れます。またはがれにくい場合は専用のフラッシュカッターでつまんで取ります。

6. 取りはずした造形モデルをリンスバスケットに置きます。

7. 一次洗浄:イソプロピル・アルコール(IPA)が注がれた仕上げ用キットの片方の容器にバスケットごと入れ30秒間揺らして、余分な樹脂を除去します。

8. 10分間バスケットごと浸します

9. 二次洗浄:次に一次洗浄の容器からバスケットごと取り出し、もう一つの容器に入れ、更に10分間浸します。

10. その後仕上げ用キットからバスケットごと取り出し、付着したイソプロピル・アルコール(IPA)が気化するまで約10分間乾燥を行います。

11. 十分乾燥した後はサポート材を取り外し完成。必要に応じて研磨や塗装などの後加工を行い終了です。

※注意点

イソプロピル・アルコール(IPA)は樹脂を溶かす効果があります。そのため、10分間以上浸けるとイソプロピル・アルコール(IPA)がモデルに染み込みすぎてしまい、劣化したり、変形したり、割れてしまう可能性があります。

特に薄い造形モデルだと10分間で柔らかくなったり溶けたりします。モデルの形状やサイズによってイソプロピル・アルコール(IPA)に浸ける時間は短くするなど調整してください。

イソプロピル・アルコール(IPA)の交換

洗浄のために用いるイソプロピル・アルコール(IPA)は消耗品です。Form Washでも仕上げ用キットでも、長期間イソプロピル・アルコール(IPA)で洗浄を行っていると、樹脂が溶け出し段々と濁ってきます。

この樹脂が混ざり濁ったイソプロピル・アルコール(IPA)で洗浄を行っていると、液体樹脂のべたべたが取れず、洗浄効果が落ちます。

そのため定期的にイソプロピル・アルコール(IPA)の状況を確認し、適切なタイミングで新しいイソプロピル・アルコール(IPA)に変えるか、継ぎ足して濃度を高める必要があります。

また、イソプロピル・アルコール(IPA)は気化しやすい物質なため、自然と気化して蒸発すると分量が減少し、更にイソプロピル・アルコール(IPA)の濃度が低下します。

イソプロピル・アルコール(IPA)の廃棄

洗浄能力が低下し、交換したイソプロピル・アルコール(IPA)を廃棄する際には、注意が必要です。

イソプロピル・アルコール(IPA)は粘性が低くて難分解性である性質をもち、土壌汚染や地下水汚染を起こすため、産業廃棄物扱いになっており、廃棄は専門業者に依頼しなければなりません。廃棄する際には、お近くの地方自治体などに問合せください。

まとめ

Form3は、仕上げキットの洗浄を丁寧に行うことで、造形モデルがより綺麗になり、二次硬化や研磨、塗装などの後処理がやりやすくなります。

わずか20分間洗うだけでの非常に簡単な工程なため、必ず行いましょう。また別売りのFormWashを使用すればこの洗浄工程は更に簡単になります。