進化するデスクトップタイプのFDM 3Dプリンター
3Dプリンターの進化は日進月歩で行われている。2009年に特許が失効して以来、数多くのデスクトップタイプが登場するFDM® 3Dプリンター。
FDM(熱溶解積層法)はストラタシスが開発した造形技術で、金型で使用される熱可塑性樹脂を使って形にできる3Dプリント技術だ。これまであまた多くのデスクトップタイプが登場してきたが、基本的にはオリジナルであるストラタシスの性能を超えることはできなかった。
熱可塑性樹脂は熱の温度によって柔らかくなったり、硬くなったりする素材だが、その形状変化をコントロールすることは難しく、ノズル詰まりや、“反り”などの不具合を引き起こすケースが多い。
こうしたことから安価なデスクトップ3Dプリンターはその信頼性を失いつつあったが、特許切れからもうすぐ10年を迎えようとするなか、徐々に進化しつつある。
今回ご紹介するTiertime UP300は、デスクトップでありながらプロシューマ―用の性能を備えた新たな新型だ。
高品質デスクトップUP シリーズ
UP300は、これまでUp Box+や、Up mini2などのすぐれたデスクトップ3Dプリンターを提供してきたTiretime社が新たにリリースした新型だ。因みに弊社で販売しているAFINIA H800+とAFINIA H400+は、Tiretime社のOEM版でカラーリングが異なるだけである。
UPシリーズは、低価格なデスクトップタイプ3Dプリンターとして、唯一といっても過言ではないほど、造形が綺麗なのが特長である。
通常安価なデスクトップのFDM 3Dプリンターは、対応している材料も1種類(PLA フィラメントがほとんど)で、造形のクオリティも積層跡が残り綺麗ではない。しかし、UPシリーズは、こうした低価格デスクトップの常識を打ち破る性能を誇ってきた。そしてその最新版ともいえる存在がUP 300なのだ。
UP 300の特長
それではUP300の特長についてご紹介しよう。プリンターのサイズや造形サイズは、前回のUP BOX+と同じだ。造形サイズは205×255×225mmのプリントボリュームをほこり、UP BOX+同様、かなり大きな造形物をつくることが出来る。しかし、今回は従来のUP BOX+とは一味違う改良点が施されている。
交換可能な3種のプリントヘッド ポリウレタンまで対応
その最大の特長が交換可能な3種類のプリントヘッドだ。従来のUP BOX+は1種類であったが、UP300では、フィラメントの種類に応じて3種類に分けられている。第一がPLAフィラメントのプリントヘッドで、第二がABS専用のプリントヘッドだ。そして第三がTPU、熱可塑性ポリウレタン専用のプリントヘッドである。
これまでの安価なデスクトップタイプのFDM(熱溶解積層法)3Dプリンターの弱点は、ノズルの温度やうごきを細かくコントロールできない点にあった。PLAフィラメントとABSフィラメントではノズルに求められる温度やプリントスピードなどが細かく異なる。
従来のUP Box+でも温度設定は可能であったが、専用のプリントヘッドを使用することで、ノズル詰まりを防止し、その材料ごとに最適な造形が可能となる。
特に、TPU(熱可塑性ポリウレタン)の場合は、素材そのものが柔らかいことから、柔軟性を保った形で、一定の形状を作り上げることは困難であったが、専用プリントヘッドの登場によって、より正確にプリントが可能となった。
また、3種類のプリントヘッドには、フィラメントがノズルに正しく供給されるのを助け、過度に加熱されるのを防ぎ、ノズル詰まりを防止する防止用PTFEチューブの搭載や、空気の流れをコントロールし、モデルを冷却し造形精度を高めるファンダクトスイッチ(PLA用は無し)を搭載し更なる高品質で安定性がある造形を実現している。
0.05mmからの高解像度と高品質にする仕組み
UP300は、従来のUP BOX+から高解像なプリントが可能であったが、今回は、0.05mmから0.4mmまで、なんと8種類の積層ピッチからプリントレベルを選択することが可能。更に造形を安定させるプレート温度は100℃まで対応しており、しっかりと積層間を密着させ美しい仕上がりを実現することが出来る。
また材料の種類ごとに応じて細かくソフトウェアを設定可能で、それに対応してノズルもハードが自動で最適化してくれる。更に活性炭によるHEPAフィルターを搭載、プリント中の樹脂の気になるにおいを防いでくれる機能を持つ。
UP300 3Dプリンタースペック
- 押出機:シングルタイプ 3種類に対応(PLA,ABS,TPU)
- ノズル径:0.2mm、0.4mm、0.5mm(TPU)、0.6mm
- 押出機の最高温度:299℃
- 押し出し機の最大移動速度:200mm /秒
- XYZ精度 :7,7,1.5ミクロン
- 接続性:USBケーブル、Wi-Fi、LAN、USBスティック
- 表示:4.3 “フルカラーLCDタッチスクリーン
- ビルドボリューム:205×255×225mm(8インチ×10インチ×8.8インチ)(XYZ)
- 印刷されるオブジェクトの精度:±0.1mm / 100mm
- レイヤー解像度:0.05 / 0.1 / 0.15 / 0.2 / 0.25 / 0.3 / 0.35 / 0.4mm
- ビルドプレートの最高温度:100℃
- キャリブレーションとレベリング:自動
- ビルドプレートの表面:パーフ(Perf)ガラスまたはフレックスガラス、加熱
- 対応フィラメント:ABS、ABS +、PLA、TPUなど
- フィラメントの直径:1.75mm
- フィラメントスプールの互換性:500〜1000g
- ソフトウェア UPスタジオバージョン2.5以上
- 対応OS:Windows 7(SP1)以降(32ビットおよび64ビット)、Mac OS 10.10
- ハードウェア要件:OpenGL 2.0
- 機械寸法:500x523x460 mm
- 正味重量:30kg
- 電源入力:110〜240VAC、50〜60Hz、220W
まとめ
低価格のデスクトップ3Dプリンターは、特許切れによって多くの新機種が登場しているがその多くが不具合が多い。ノズル詰まりや失敗など安定性が悪く、精度もいまいちである。
その最大の原因が、熱可塑性樹脂のコントロールのむずかしさだ。熱可塑性樹脂の物性は極めてデリケートであり、微妙な温度やノズルの動き、湿度などの外的環境によって、造形精度が大きく変わる。
そのような中において、最新型のUP300は、ノズルの付けかえによって樹脂ごとに最適なプリント設定を実現している。デスクトップタイプはこれからさらに進化し続けていくことだろう。
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