3Dプリントされた6階建てのアパートが登場

3Dプリンターで家やアパートを作る取組

3Dプリンターは製品開発の試作品製造として、またはパーツ製造として使用され始めているが、その利用拡大が盛んになりつつある。ローカルモーターズとアメリカのオークリッジ国立研究所が巨大な高速3Dプリンターを使い、自動車のボディを3Dプリントする取組が開始されているが、今度は中国で、家やアパートなどの建築物を3Dプリンターで作る取組が公開されている。

この取組を行なうのは、中国の建設のための新素材の研究開発を行なっているハイテク企業WinSun Decoration Design Engineering Co(Yingchuang)。90以上もの中国国内の特許を取得しており、世界で初となる3Dプリントの家を昨年3月に公開、そして今度はとうとう6階建てのアパートの3Dプリントに成功している。

昨年2014年の3月の発表以降、既に10棟の3Dプリントホームの建設に成功しており、業界関係や、その他の産業界から一躍注目を集めている。本日は中国のハイテク企業WinSun Decoration Design Engineering Co(Yingchuang)が構築した6階建ての3Dプリントアパートをご紹介。

パーツごとに3Dプリントし組み立てる製法

今回WinSunが公開した6階建の3Dプリントアパートは蘇州工業区に作られたもので、1100平方メートルの広さ。基本的なCAD図面から巨大な3Dプリンターを駆使し、特許済みのインクで3Dプリントしている。このインクは、建築材料として使用に耐えうるもので、コンクリートとガラス繊維、砂、そして特殊な硬化剤が配合されたインクである。

また、建築資材としては、柔軟性を併せ持つ素材で強い地震に対しても耐性があるものだ。基本的な製造方法としては、家の壁面を各パーツに分け3Dプリントして製造していく。また窓やドアのスペースは別途確保しておき、3Dプリントされた各パーツと一緒に組み立てるという仕組みだ。

また、壁内にはビームカラムとスチールテッキンを配置し、家としての建築基準を満たす構造体に仕上げているとのこと。WinSun社によると、この3Dプリンターで建築物を作った場合、従来の一般的な方法と比べ30%短い施工時間と、材料も60%抑えることが可能。

まとめ 建築デザイナーが手動する製法

この3Dプリンターで家を組み立てる方法は、新たな建築方法として期待が集まっている。従来の製法とは違い、コスト短縮につながるだけではなくこれまでの建設、請負業者の人たちの怪我などのリスクも軽減することができるためだ。基本は家の各パーツをコンクリート配合の特殊な建築資材で作り、そのパーツを組み立てるというシンプルな仕組みだが、単なる機械で作った無機質な剥き出しな建築物ではない。

例えばベースとなるパーツ類は3Dプリントで自動化して作り、周囲の外装や内装はしっかりとデザインされることで建築物としての価値を発揮することができる。そのため、WinSun社は多くの建築デザイナーとパートナーシップを結んでおり、より付加価値の高い建築デザインとそれをカタチにした建築物を提供できるようにしている。

ちなみにそのデザイナーは、フランス、ギリシャ、日本、レバノン、中国などさまざま。ちなみにパートナーである日本の建築デザイナーは日本でも多くの建築物を手掛ける磯崎新氏だ。このように、WinSun社の取組はCADの扱いに長けてきたデザイナー主体の建築が中心でそれをカタチにするために3Dプリンターが開発されたとみられる。