FDM 3Dプリンターの表面を滑らかにする5軸ヘッドを搭載した多機能工作機

FDMタイプの弱点、積層の粗を改善する開発

一般的なFDM、溶融堆積モデリング技術による3DプリンターはXYZの座標軸を用いてプリントする技術だ。XYZとは立体をあらわす方法で、Xが横方向、Yが縦方向、Zが奥行を示す。FDMタイプの3DプリンターはこのX軸、Y軸、Z軸の三つを基準に正確な位置を調整し、ノズルのヘッドが下から上に樹脂を積み上げていく。

この方法の一番の問題点は押出ノズルの方向と動きが常に限定されているという点にある。樹脂が出るノズルの向きは上から下に向いており樹脂を堆積させて物体を作らなければならない。

そのため溶されて積み上げられた樹脂と樹脂の間に積層を表す線が出てしまうのだ。この積層の線はプリンターの積層ピッチによって異なるが、一般的な低価格モデルのFDMタイプは積層ピッチが粗いため、プリントされた物体は仕上がりが美しくない。同じ階層ごとに樹脂を形作っていく方法ならば液体のエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンを使った紫外線硬化性樹脂の光造形タイプの方がはるかに仕上がりが滑らか。

そのため最近では価格帯も同じぐらいの光造形3Dプリンターが注目されつつある状況だ。しかし、ここにきてこれまでのFDMタイプの3Dプリンターの概念を変える新たな5軸ヘッドを搭載した3Dプリンターの開発が行われつつある。

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5軸で動くFDMヘッドの3Dプリンター開発

新たなFDM技術の開発を行なうのはイギリスロンドンに本拠を置く企業5AXISMAKER。通常のFDMノズルの動きを一般的なXYZの3軸から、5軸に変えるという画期的な開発だ。

現在キックスターターで資金調達を行なう準備に入っており、目標金額は7万ポンド(約1240万円)。現在3Dプリンターでの5軸動作は実験中とのことで細かいスペックなどは公開されていない。しかし、これが完成することで従来のFDMタイプの弱点であった表面加工の粗さが改善されることになる。

5軸でヘッドを動かすことができれば、単純な上から下に積み上げるだけではなく、積層後の表面テクスチャーをさまざまな方向から整えることができる。

これによりFDMタイプの積層による粗さをなくし美しい仕上げをもたらしてくれることが可能だ。もしFDMタイプの3Dプリンターで綺麗な仕上がりができれば、今続々と登場しつつあるさまざまな素材のフィラメントが使用できることになり、低価格モデルの市場シェアでは再び注目されるだろう。

5AXISMAKER の5軸ヘッド

5AXISMAKERの動画

5軸専用ソフトウェア

ヘッドの付け替えで5つの機能を搭載

この5軸加工機5AXISMAKERは、3Dプリンター以外にもヘッドを付け替えることでそのほかの工作機械として使用することが可能だ。3Dプリンター以外には、CNCミリング、ウォーターカッター、ワイヤーカッター、タッチプローブの4つの機能を持つ。

最近は3DプリンターだけではなくCNCミリングやレーザーカッター機能を搭載するなど工作機の多機能化が進んでいるが、5軸で動くヘッドは5AXISMAKERのものが初めてだ。ちなみに現在の開発状況ではCNCミリングがほぼ最終に近い状態で動作しているが、それ以外の機能は実験中の模様。とりわけ3Dプリンターの映像は一瞬しかないが5軸の動きはしていない。

CNCミリング

タッチプローブ(物体測定/3Dスキャン)

3Dプリンター(現在5軸動作を実験中とのこと)

ウォータージェットカッター(金属や石のカット)

ワイヤーカッター(彫刻用など)

5AXISMAKERスペック

  • CNCミリング切削ボリューム:400×400×400mm(非常に簡単にカスタマイズ可能)
  • XYZスピード:5000mm/min(X,Y) 2500mm/min(Z)
  • スピードC、B軸:20rmp(C)  20rmp(B)
  • 機械サイズ:600×600×600mm
  • 重量:30キロ

※ミリング以外のスペック・機能は公開待ちの状況

まとめ

3Dプリンターとその他の工作機械を一緒にするオールインワン工作機の開発が目覚しい。基本的に3Dプリンターを中心に、切削加工であるミリングやレーザーカッター、スキャニング機能を搭載しているものが多い。

こうした1台でいくつもの工作機能を搭載した機種は完全試作に特化していることから、3Dプリンターとしての性能自体を見るとあまりいいとは言えない。一つ一つの機能を向上させるよりも多機能化を図り幅広い試作に対応することを目的にしているためだ。しかし、今回ご紹介した5AXISMAKERでは5軸の動きというこれまでにない機能から、3Dプリントの仕上げは他の試作機よりも精度が高く表現できるかもしれない。

開発中の動画では3Dプリントの動きは発表されておらず、現在実験中とのことなので何とも言えないが、もしFDMで5軸ヘッドの動きができれば、この多機能工作機以外に従来からの低価格モデルの3Dプリンターにも反映することができるだろう。FDMの弱点である積層の粗をなくし、美しい表面仕上げを表現することで、再び低価格3Dプリンターの主力ラインとして注目される可能性が高い。

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