Form Cure完全ガイド。二次硬化の使い方から材料別設定

Form Cureとは

Form Cureは、Formlabsが提供する二次硬化専用機です。同社の光造形3DプリンターForm3に対応しており、3Dプリント後の造形物に紫外線を照射して二次硬化するための機械です。Formlabsのレジンは、UV硬化性レジンであることから、3Dプリントしただけでは完全に硬化されておらず、二次硬化さることで更に物性が向上します。

※スタンダードレジン(グレイ、ホワイト、ブラック、クリア)、ドラフトレジン、キャスタブルワックスは二次硬化は必須ではありませんが、二次硬化を行うことで物性が向上します。

今回はそのForm Cureのセットアップから使用方法、レジン材料ごとの最適な設定時間、クリーニングとメンテナンスまでをご紹介したいと思います。

二次硬化と役割

Form3のようにUV硬化レジンに紫外線を当てて造形する光造形3Dプリンターでは、層と層の間にグリーン層といわれる目に見えない半硬化層があります。

二次硬化とは、このグリーン層にUV光をあてることで、完全に硬化させる機能があります。特に高強度な材料では、半硬化層を完全に固めることで本来の物性が再現されます。

Form Cureのセットアップ:たった3ステップで完了

Form Cureのセットアップは非常に簡単です。セットアップの手順は

①箱から出す

②ターンテーブルをセットする

③電源ケーブルを接続する

で終了です。この3ステップですぐに使用できる状態になります。

また、Form CureにはUSBケーブルの差込口がついてますが、将来的にファームウェアの更新が発生する可能性に対する備えとして設置されており、通常は使用しません。

Form Cureのシリアルネーム・ファームウェアの表示方法

Formlabsの製品はいずれも、シリアル番号の代わりにシリアルネームを持っています。

シリアルネームでは、製造日や販売日、修理の履歴などのトラッキング情報やネットワーク接続時の利用状況などを把握するために使用されています。

Form Cureのシリアルネームを確認する場合には、以下の方法で表示することができます。

1.接続されている電源ケーブルを一旦抜く
2.電源ケーブルを繋ぎ直す
3.ディスプレイに「Formlabs」が表示されたら、すぐにノブを長押しする。

そうするとディスプレイにシリアルネームとファームウェアのバージョンが表示されます。

設置場所の注意点:高さスペースに注意

Form Cureを設置する際の注意点ですが、カバーを上にあげるため、Form Cure本体よりも上に約30㎝ほどスペースが必要です。

Form Cureのサイズは縦26.2 × 横26.2 × 高さ34.0 cmであることから、Form Cureを設置するには合計64cmの縦のスペースが必要です。また、平面でコンセントの位置が近い場所が最適です。

設置に際して

Form Cureはダンボールの箱に梱包されており、装置本体の上下は発泡スチロールの緩衝材で固定されています。

上部の発泡スチロール製緩衝材には、電源ケーブルなどの備品類が梱包されており、この緩衝材を取り外した後、本体を取り出します。またターンテーブルは箱の底に設置されています。

梱包材や緩衝材は、装置の保証サービスを受ける時に必要になりますので、処分せずに保管しておいてください。

Form Cureの設置環境

Form Cureが正常に運転できる推奨環境は、室温が18度から28度の間で換気の良い空間です。

Form Cureの構成

Form Cureは下記の要素で構成されており、それぞれ以下のような機能を担っています。

1.カバー:

キュアチェンバーは、二重壁で覆われており、内部は全て光が反射する鏡面仕上げが施されています。これは360度全ての方向からUV光がまんべんなく当たり、内部の熱が外に逃げないようにするためのものです。

2. ヒーター:

ヒーターではチェンバー内の温度を 100Wの加熱モジュールで80°Cまで加熱することができます。

3. LED:

LEDが13個搭載されており405 nmのUV光を照射されます。カバーが開いている時とチェンバーが加熱中の時は、二次光源の光がターンテーブルを照らします。

4. ターンテーブル:

パーツを置く回転式の台です。回転しながら、パーツを360度あらゆる面からバランスよくUV光を照射し、二次硬化させます。

5. ディスプレイ:

設定温度や時間、スタートや停止、二次硬化中の状態を表示します。

6. ノブ:

ノブを回すことで設定時間、温度などの調整、二次硬化の運転の操作(開始、休止、終了)ができます。

7. 電源:

Form Cureに電力を供給します。仕様:24 V、6 Aです。

Form Cureを使用する:3ステップで完了

さて、ここからは実際のForm Cureの使用方法についてご紹介します。Form Cureは、セッティングと同様、非常に簡単です。使用方法は以下の3ステップで完了します。

1. 乾燥させた造形パーツをセットする

Form3で造形後にIPAで洗浄し、十分に乾燥させたパーツをForm Cureの蓋をあけターンテーブルの上に置きます。

※乾燥時の注意点
十分に乾燥させないまま二次硬化してしまうと、IPAや溶解したレジンを含んだままパーツが硬化されてしまいます。そうすると結果的に、レジン本来の持つ強度や物性が十分に発揮できなくなる可能性があります。二次硬化前の洗浄と乾燥を十分行ってください。

2.二次硬化時間と温度の設定

次に二次硬化の時間と温度を設定します。回転ノブを回し、ディスプレイの時間と温度を選択し、その材料に最適な温度と時間を設定します。その後「Start(スタート)」ボタンを二次硬化が開始します。

※スタート時の注意点
スタートボタンを押すと、Form Cure内部のLEDが起動し、ヒーターが加熱を開始します。設定した温度まで加熱が完了したらターンテーブルが回転し二次硬化が開始します。

この加熱までの間に、プリントした造形モデルをそのまま入れておく必要があります。この予熱中もパーツを入れておかないと、二次硬化がしっかりされず、亀裂などが入る可能性があります。

3.パーツの取り出し

設定時間が終了すると、LEDが消えて、ヒーターが停止するのでパーツを取り出します。

※取り出し時の注意
Form Cureは100Wのヒーターで加熱するため、二次硬化終了直後はForm Cureの内部がかなり熱くなっている可能性があります。取り出しの際には十分注意して冷えるのを待ってから取り出してください。

造形モデルの形状ごとの注意点

Form3ではさまざまなモデルを作ることができますが、Form Cureで二次硬化する場合、造形モデルの形状や大きさなどによっては二次硬化前の処理が必要です。

サポートの取り外しは二次硬化前

通常二次硬化はサポート材を取り外す前に行います。二次硬化前にサポート材を取り外してしまうと、造形モデルがゆがんだりたわんだりしてしまう可能性があります。

サポートが密集している造形モデル

しかしサポートがあまりにも密集しすぎている造形モデルはサポート材で二次硬化が遮蔽され十分に造形モデルが二次硬化されない可能性があります。そのため必要に応じて、サポートを部分的に取り外し、なるべくパーツのすべての表面にUV光が確実に当たるようにします。

厚みのある造形モデル

厚みのある造形モデルを二次硬化する際には、パーツ全体を加熱するのに時間がかかるため、通常の設定温度よりも高く、硬化時間を長くする必要があります。

細かい形状の造形モデル

細かい形状の造形モデルは二次硬化前に造形モデルがたわんでしまう可能性があります。そのため造形時にサポート材を多めに設定してからプリントし、二次硬化することをおススメします。

大きくて長いパーツ

Form Cureで二次硬化できる最大サイズは高さが18.5㎝が最大となっています。

レジン材料別 二次硬化時間と温度

さてここからはFormlabsのレジン材料別の二次硬化時間と温度設定についてご紹介します。Formlabsではさまざまな特長と物性を持つレジン材料が利用できますが、材料ごとに最適な二次硬化の時間と温度は異なります。

スタンダードレジンの設定時間と温度 

スタンダードレジンは4種類のカラーバリエーションとカラーキット、ドラフトレジンがあります。スタンダードレジンは必ずしも二次硬化は必要ではありませんが、二次硬化をすることで物性が向上します。

ブラック・ホワイト・グレイ Ver.4  60度で30分

スタンダードレジンのうちの3色、ブラック、ホワイト、グレイの3つのレジンは60度の温度で30分硬化することで引張弾性率が65%向上します。また硬化時間を1時間に延長することで引張弾性率を72%向上させることができます。

クリア Ver.3 60度で15分

スタンダードレジンの中でも透明性にすぐれるクリアレジンは60度の温度で15分硬化することで引張弾性率が72%向上します。また硬化時間を30分に延長することで引張弾性率を80%向上させることができます。

カラーキット Ver.1 60度で30分

スタンダードレジンのカラーキットは60度の温度で30分硬化することで引張弾性率が65%向上します。また硬化時間を1時間に延長することで引張弾性率を72%向上させることができます。

ドラフトレジン Ver.1 0度で5分

ドラフトレジンは0度で5分という設定ですが、二次硬化は特に必要ありません。

エンジニアリングレジンの設定時間と温度

エンジニアリングレジンは二次硬化が必須の工程となっています。二次硬化を行わないと本来の物性を再現することができません。

タフレジン Ver.5 60度で60分

タフレジンはABSの強度を再現したレジンです。60度の温度で60分硬化することで引張弾性率が65%向上します。また硬化時間を2時間に延長することで引張弾性率を72%向上させることができます。

Form Cure タフレジン 二次硬化

デュラブルレジン Ver.2 60度で60分

デュラブルレジンはポリプロピレンライクの高強度なレジンです。60度の温度で60分硬化することで引張弾性率が131%向上します。

フレキシブルレジン Ver.2 60度で15分

フレキシブルレジンはショア硬度80Aの硬さを持つゴムライクレジンです。60度で15分二次硬化することで、引張弾性率が90%向上します。また硬化時間を60分に延長することで引張弾性率を116%向上させることができます。

グレイプロレジン Ver.1 80度で15分

グレイプロレジンは高精細と高強度を両立させたレジンです。80度の温度で15分硬化することで引張弾性率が78%向上します。

リジッドレジン Ver.1 80度で15分

リジッドレジンはガラス繊維を配合したレジンです。80度の温度で15分硬化することで引張弾性率が116%向上します。

エラスティックレジン Ver.1 60度で20分

エラスティックレジンはショア硬度50Aの柔らかさを持つシリコーンライクレジンです。60度で20分二次硬化が推奨です。

ハイテンプレジン Ver.2 80度で120分

ハイテンプレジンは耐熱性にすぐれるレジンです。ハイテンプレジンの場合は二次硬化によって耐熱性が100度まで、更にその後のオーブンによる160度3時間の加熱で耐熱性を238度まで高めることができます。

ロストワックス鋳造用レジンの設定時間と温度

Formlabsではロストワックス鋳造用に2種類のレジンがあります。キャスタブルレジンと、本物の蝋が配合されたキャスタブルワックスレジンです。

キャスタブルワックスレジンは二次硬化は必ずしも必要ではありませんが、二次硬化することで焼失性がUPします。

キャスタブルレジン Ver.2 60度で4時間

キャスタブルレジンは60度で4時間の二次硬化が必要です。硬化時間を長くすると、鋳造性能が向上する場合がありますが、鋳造の成功は、部品の形状と鋳造プロセスに大きく依存します。

キャスタブルワックスレジン Ver.1

キャスタブルワックスレジンは二次硬化は必要ありません。

Form Cure使用上の注意点

Form Cureは100Wのヒーターを使用して最大80度まで加熱する機能があります。そのため二次硬化終了後には造形モデルや内部のターンテーブルが非常に熱くなっている可能性があります。

また、二次硬化中に蓋を開けると二次硬化は停止しますが、内部が熱くなっているため開けないでください。

Form Cureのメンテナンスとクリーニング

Form Cureを正常に使用いただくために、以下の点を推奨します。

IPAの洗浄と十分な乾燥

Form Cureで二次硬化を行う前には、十分にIPAで洗浄を行い、余分なレジンを洗い落とした上、乾燥をしっかりと行ってください。乾燥時間は少なくとも30分以上乾燥させるとIPAがなくなります。

ターンテーブルと取り付け部分のクリーニング

造形モデルに余分なレジンがついていた場合には、ターンテーブルやターンテーブルの取付部分に付着する可能性があります。その場合にはIPAを使ってターンテーブルとその下のベース表面をクリーニングし十分に乾燥させてください。

まとめ

Form CureはForm3やForm2でプリントした造形モデルを手軽に二次硬化してくれる自動ツールです。設定もモデルをセットしボタンを押すだけ、たった2ステップで二次硬化を完了してくれます。

特にForm3のエンジニアリングレジンは二次硬化することでその材料本来の強度や柔軟性が発揮されるため必須のツールといえます。

自動洗浄機のForm Washとあわせて導入いただくことで、試作や製品開発の現場がより効率的にスピーディになることでしょう。