「ハッカドール2号」フィギュアの3Dデータ分割計画
それでは引き続いて、具体的にモデルを使って作業してみましょう!
※今回は、基本をマスターするためにポーズ無しでの作業を行うこととします。
今後のコンテンツ展開ではいろいろなポーズをモデルにつけながら、作成した3Dデータを3Dプリントする講座を開講しますのでお楽しみに!
それではまず最初に、モデルを3Dプリンターで出力する時に、3Dデータ上での「分割」をどうするか考えていきましょう。
もちろん、完全立体でさえあれば、分割せずに一体化したまま出力することもあります。
例えば、白一色のフィギュアが必要な場合ならば、わざわざ分割する必要はありません。
その場合は3Dプリンターで破綻なく出力できるように、モデルの3Dデータの「厚み」を中心に検証して、完全立体に修正すれば大丈夫です。
※厳密に言うと、3Dプリンターで出力した時にモデルを支えるために付ける「サポート材」によってはどうしても分割が必要な場合もあるのですが、ここでは考えないこととします。
ところが、多色の塗分けを予定したフィギュアの場合には、分割して出力する必要性も出てきます。
分割しないと着色作業ができない、またはきれいに塗分けができないなどの支障が発生する場合があります。
そこで今回のモデルを「配色」と「塗装効率」を考慮して、どう分割するのがベストか考えていきましょう。
比較的簡単な箇所の3Dデータを分割
最初に、比較的簡単な箇所の分割を考えます。
第①図に赤枠で囲った箇所は、それぞれ独立した分割パーツとして修正をかければ良いものです。
第②図では、服装部分の分割を考えます。
こちらでは、2つの分割パターンが考えられます。
胸の上の肌部分を、含めるか、含めないか、が検討課題です。
3Dデータを背中方向から見ると、服と肌部分の塗装がライン状に並んで複合交差していて、服と肌部分を分割しておいたほうがた塗装しやすそうに見受けられます。
しかしながら3Dデータの分割をおこなうのは、できるだけ見えない箇所だけにしたほうが賢明です。
なぜならば3Dプリンターはまだまだ高精度とはいかず、金型のように寸分の狂いもなく分割面が合致することは期待できないからです。
ですのでこの胸周辺は身体の重要な見える位置なので、3Dプリンターで出力したものに継ぎ目を造らないBタイプでいきましょう。
次に「えり」部分の分割を検討します。
まず胸の上の肌部分は首とはつながっているのですが、首部分に「えり」があります。
そのため胸部分と首は、えりをうまく使って分離してしまいます。
「えり」に関しましてもこの「ハッカドール2号」モデルでは、二重の「えり」の特殊仕様になっています。
一体化しても良さそうですがラインの塗装を考えると、今回は「えり」も分割して出力することにしました。
えりの分割面も外からは見えにくいので、特に問題はないと思います。
「下半身」の3Dデータを分割
それでは、今回最も分割に頭を悩ませる部分である「下半身」「頭部」について、順を追って考えてまいりましょう。
まず下半身部分の分割に関してですが、「ガーターベルト」があることで少々ややこしい感を受けます。
このガーターベルトですが、太もも上のヒモの部分を、太ももの肌と分離するか一体化するかが考えところです。
結論から申しますと、ガーターベルトと太ももを一体化して3Dプリント出力したほうが無難だと判断しました。
もちろん分離する必要があるケースもありますから、その場合はガーターベルトを太ももと分割したパーツにして装着するので、さらにもう一手間が必要となります。
頭部の3Dデータを分析
最後に、頭部の3Dデータについて検討します。
まず眼に関しましては、3Dプリンターで出力造形するのではなく、サイズ的にデカールを貼る仕様としましょう。
そのため、のちほど眼を削除してデカールを貼りやすい状態に3Dデータを修正します。
髪の毛に関しましては、まずポニーテール状の髪の3Dデータを、頭の髪の毛から分離します。
次に顔の部分を非表示にして、髪の毛の3Dデータの構造を分析しましょう。
「ハッカドール2号」モデルの3Dデータの髪の毛の構造を分析したところ、大きく分けて4パーツでの構造でした。
まずはポニーテール部分、そしてロングヘアーの後ろ髪部分、側面と後頭部下の髪の毛部分、前髪部分、となりした。
さらに、1点ずつ3Dデータの分析をしていきましょう。
ロングヘアーの後ろ髪部分は、ロングヘアー先端部分は立体になっていますが、頭部あたりにはポリゴン開口部の穴が見受けられます。
つまりまだ完全な立体には、なっていないということです。
側面と後頭部下の髪の毛の3Dデータでは、基本的に一部のパーツは立体ではありますが、開口部の穴が開いている、または板ポリゴンが多用されているものが散見されていました。
これも完全な立体には、なっていません。
最後に前髪の3Dデータです。
こちらも開口部の穴が見られ、不完全な立体です。
「頭部」の3Dデータを分割
ここで誤解して欲しくない点は、ゲームや映像の3Dデータとしては何ら申し分のない仕上がりのものであるという点です。
そのデータを3Dプリンターで出力するということ自体が、まったく別次元の作業なのです。
つまり3Dプリンターで出力するということは、出力するという目的感をはっきりと持った上で3Dプリンターでの出力仕様や条件を知ったうえで、3DCGモデリングに当たらなければ簡単にはできないことなのです。
その仕様や条件を知っていただくことが、今回のこのコンテンツ記事の目的でもあります。
そのため今回のような、もともとゲームや映像用に作成された3Dデータの場合は、かなりの修正が必要になると思われます。
ですがどうか、美しく失敗のない3Dプリンター出力ができるフィギュア制作を目標に、その過程を楽しんでください。
スミマセン、それでは話を元に戻します。
これら複数のパーツを再構成して、3Dプリンター出力後に組み立てやすいセットにまとめてしまいましょう。
今回は、
に再構成します。
ここからは以上の分析結果を元に、実際にBlenderやZbrushを使った具体的な方法を記述してまいります。
「板ポリゴンを完全立体ポリゴンにする」
「穴あきポリゴンの穴をなくす(閉じたオブジェクトにする)」
「分割をどうするか考える」
これが、キーワードです!
この章のまとめ
美しく塗装されたフィギュアを作りたいなら、3Dデータをどう分割するか考えておく必要があります。
塗装自体の技術も必要ですが、分割して効率的に塗装する計画を練ると、より楽しく3Dプリント出力できて完成の想像もできるようになります。
そう考えると、分割もとても大切な作業なのです。