ロが解説!PPライクな決定版「Tough 1500 Resin」の特性とForm 4出力のコツ

今回は、数あるFormlabsのエンジニアリングレジンの中でも、特に製品開発の現場で「使い勝手が良い」と評価の高いTough 1500 Resin」について解説します。

「Tough 1500」は、一般的なプラスチック素材であるポリプロピレン(PP)に匹敵する特性を持っており、スナップフィットやヒンジなど「動き」のある試作には欠かせない材料です。

しかし、その柔軟性ゆえに、造形や後処理にはいくつかの「コツ」が必要です。本記事では、カタログスペックだけでは分からない、現場レベルでの運用ノウハウや注意点を含めて詳しくご紹介します。

1. なぜ「Tough 1500」が選ばれるのか?(ポリプロピレンライクな特性)

製品開発において、ポリプロピレン(PP)は非常にポピュラーな素材です。食品容器から自動車部品まで幅広く使われていますが、その理由は「割れにくい」「繰り返しの曲げに強い」という点にあります。

Formlabsの「Tough 1500 Resin」は、光造形(SLA)方式でこのPPの特性を再現するために開発されました。

「1500」という数字の意味

製品名の「1500」は、この材料の引張弾性率(1500MPa = 1.5GPa)を表しています。
引張弾性率とは、簡単に言えば「物質の変形のしにくさ(剛性)」を示す数値です。この数値が高すぎれば硬くて脆くなり、低すぎれば柔らかすぎてフニャフニャになります。

「1500MPa」という数値は、「硬すぎず、柔らかすぎない」絶妙なバランスを意味しており、力が加わると適度にしなり、その後に素早く元の形に戻る「弾力性(Resilience)」を実現しています。

Tough 1500で造形したスナップフィット部品のサンプル
適度な柔軟性を持つTough 1500の造形サンプル

Toughファミリー 3兄弟の比較

Tough系レジンには、硬さの異なる3つの種類があります。どれを選ぶべきか迷われる方のために、それぞれの特性を比較表にまとめました。

レジン名称 剛性・感触 相当するプラスチック素材 特徴・主な用途
Tough 1000 柔軟(ソフト) ABS(柔軟寄り) シリコーンほどではないが、手で容易に曲げられる柔軟性。高い伸び率を持つ。
Tough 1500 バランス(ミディアム) ポリプロピレン(PP) 繰り返しの曲げに強く、素早く復元する。スナップフィットやヒンジに最適。
Tough 2000 高剛性(ハード) ABS(高強度) 非常に硬く、曲がりにくい。強い力がかかる治具や、変形させたくない筐体向け。

このように比較すると、Tough 1500は「柔軟性と剛性のいいとこ取り」をした材料であることが分かります。

具体的な活用シーン

現場では、以下のような「動き」や「嵌合(かんごう)」を伴う部品の試作で特に重宝されています。

  • 繰り返しの脱着が必要なコネクタ:割れることなく、何度も付け外しが可能です。
  • スナップフィット:「パチン」と嵌める爪の部分。適度にしなるため、折れずに機能します。
  • リビングヒンジ:蓋と本体が一体になった容器の蝶番部分など。
  • 治具・固定具:金属部品を固定する際、Tough 1500自体が適度に変形して衝撃を吸収するため、ワーク(製品)を傷つけにくいというメリットがあります。

2. 販売店の技術ノート:運用上の注意点と成功のコツ

ここからは、実際に私たちが運用する中で蓄積した「現場のノウハウ」をお伝えします。カタログには載っていない、躓きやすいポイントを中心にご紹介します。

① バージョンアップによる「臭い」の変化に注意

現在流通している最新版は「Tough 1500 Resin V2」です。V1と比較して機械的特性や造形安定性が向上していますが、一点だけ注意が必要な変化があります。それは「臭気」です。

V2になり、配合変更の影響で以前よりも特有の臭いが強くなっています。人体への安全性に問題はありませんが、長時間作業する部屋では気になられる方もいらっしゃるかもしれません。
運用の際は、換気扇を回す、あるいは脱臭機を併用するなど、換気の良い環境で使用することを強く推奨します。

② 造形設定:直立はNG!必ずサポート材を付ける

Formlabs専用ソフトウェア PreFormでデータをセットアップする際、ビルドプラットフォームへの「直立(直造形)」は避けてください。

Standardレジン(グレーレジン V5など)であれば、底面を平らにして直接プラットフォームに造形することもありますが、Tough 1500は柔軟性が高いため、以下のリスクがあります。

  • 剥離時の変形: 造形中、レジンタンク(レジンを入れるトレイ)から層が剥がれる際の抵抗に負けて、形状が歪む可能性があります。
  • 寸法の狂い: 初期層(ラフト)の圧縮の影響を受けやすくなります。

■ 成功の鉄則

  • 必ずサポート材を生成する。
  • モデルの下にラフト(土台)がある状態で出力する。

③ 二次硬化の重要テクニック:「サポートは付けたまま」

これが最も重要なポイントです。洗浄が終わった後、すぐにサポート材を外したくなりませんか?
Tough 1500に関しては、二次硬化(ポストキュア)が終わるまでサポート材を外してはいけません。

■ 理由

Tough 1500は、二次硬化で紫外線と熱を加えることで本来の強度を発揮しますが、硬化中はまだ熱によって柔らかい状態です。この時にサポート材がないと、自重や熱収縮によって予期せぬ「反り」や「歪み」が発生してしまいます。

サポート材は、二次硬化中のモデルを「矯正」し、正しい形状に留めておく役割も果たします。寸法精度を出すためには、「洗浄 → サポート付きで二次硬化 → 冷却 → サポート除去」の順序を徹底してください。

④ 皮膚接触用途と洗浄液の選び方

ウェアラブルデバイスのバンドなど、肌に触れる部品を試作する場合、未硬化レジンによる肌荒れを防ぐため、完全に洗浄してヌメリを取り除くことが何より重要です。

メーカー公式にはIPA(イソプロピルアルコール)が推奨されていますが、有機則や臭気の問題から、現場の運用では安全に使える洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)」への置き換えが進んでいます。

  • 高い洗浄力: IPAと同等の溶解力を持ち、複雑な形状でも未硬化レジンを強力に除去します。
  • 安全性: 毒性や刺激臭が少なく、試作評価を行うユーザーの作業環境を改善します。

※厳密な医療機器認証(ISO規格等)に準拠したデータが必要な場合に限り、公式規定の通りIPAをご使用ください。

3. コラム:強度とスピードを両立させるワークフロー

最後に、Tough 1500のポテンシャルをさらに引き出し、試作業務を効率化するためのヒントをご紹介します。

Form 4 × Tough 1500 で試作サイクルを加速

従来のLFS方式(Form 3+等)では、Tough系のような粘度の高いレジンは造形に時間がかかる傾向にありました。
しかし、最新の Form 4 は、新技術 LFD(Low Force Display) 方式を採用しており、LEDパネルとリリーステクスチャの組み合わせによって、エンジニアリングレジンでも驚異的な造形スピードを実現しています。

「夕方にデータを投入して、翌朝確認する」のではなく、「午前中に出して、昼過ぎには機能評価を行う」といったスピード感での開発が可能になります。

洗浄工程のコストダウンには「洗浄液 3D Medsupo」

Tough 1500のような高機能レジンを多用すると、気になるのが洗浄液(IPA)の汚れです。粘度があるため洗浄液が劣化しやすく、頻繁な交換が必要になるとランニングコストがかさみます。

そこで、コストパフォーマンスに優れた洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)」の併用をご提案しています。

特徴 洗浄液 3D Medsupo 一般的なIPA(イソプロピルアルコール)
洗浄力 ◎(IPAと同等以上の溶解力)
コスト ◎(優れたコストパフォーマンス) △(相場変動の影響を受けやすい)
特記事項 有機則非該当タイプもラインナップ 火気厳禁、有機則該当

IPAと同等の洗浄力を持ちながらコストを抑えられるため、Tough 1500のようにしっかりとした洗浄が必要なレジンには特におすすめです。

まとめ

本日は「Tough 1500 Resin」について、その特性と現場での運用ノウハウを解説しました。

  • 特性: ポリプロピレン(PP)ライクな「剛性」と「柔軟性」のバランスが良く、スナップフィットや可動部に最適。
  • 運用: 反りや歪みを防ぐため、必ず「サポート材」を付けた状態で「二次硬化」を行うのがプロの鉄則。
  • 効率化: Form 4 による高速造形や、洗浄液 3D Medsupo の活用で、試作のリードタイムとコストを削減可能。

「自社の製品開発にTough 1500が合っているか相談したい」「Form 4の実際のスピードを見てみたい」という方は、ぜひお気軽に私たちにご相談ください。専門スタッフが貴社の課題に合わせた最適な構成をご提案いたします。

下記のボタンより、技術的なご質問やサンプルのご依頼をお待ちしております。

出典:Using Tough 1500 Resin

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