【289℃耐熱】High Temp Resin活用ガイド|
Formlabs金型・耐熱試験

光造形(SLA)方式の3Dプリンターを運用している皆様の中で、「耐熱性」が足りずに実用試験を諦めた経験はありませんか?
一般的なスタンダードレジンや、ある程度の強度を持つTough系レジンでも、熱変形温度(HDT)は50℃〜60℃前後のものが多く、熱湯やエンジンルーム内のような高温環境には耐えられません。

そこで今回ご紹介するのは、Formlabsの材料ライブラリの中で最も高い熱変形温度(HDT)を誇る「High Temp Resin(ハイテンプ)」です。

High Temp Resinと他レジンの熱変形温度比較チャート
一般的なレジンと比較して圧倒的な耐熱性能を誇ります

スペック上の数値は非常に優秀ですが、実は「造形」や「洗浄」に少しコツがいる、いわば玄人向けの材料でもあります。
本記事では、カタログスペックだけでなく、私たちが日々の出力業務で培った「失敗しないための運用ノウハウ」を交えて解説します。

1. High Temp Resinの実力と用途

まずは、このレジンがどれほど熱に強いのか、具体的なスペックと適した用途を見ていきましょう。

圧倒的な耐熱性能(HDT)

High Temp Resinの最大の特徴は、他の追随を許さない熱変形温度(HDT)の高さです。以下にバージョンごとのスペックをまとめました。

バージョン レジン名称 熱変形温度(0.45 MPa) 特徴
V1 High Temp (FLHTAM01) 289°C 圧倒的な耐熱性(※在庫状況は要確認)
V2 High Temp (FLHTAM02) 238°C バランス調整された現行バージョン
参考 Grey Resin (スタンダード) 約 50°C〜60°C 一般的な試作用途

一般的なABSライクなレジンが60℃付近で軟化し始めるのに対し、High Temp Resinは200℃を超えても形状を維持します。これは、プラスチックというより、ガラスやセラミックに近い耐熱特性と言えます。

現場で選ばれる「適した用途」と「不向きな用途」

この材料は「熱に強い」反面、「柔軟性がない」という極端な特性を持っています。適材適所での運用が成功の鍵です。

判定 具体的な用途例 推奨理由・注意点
◎ 推奨 簡易金型(モールド) 射出成形の試作型として、高温の溶融樹脂に耐えられます。
◎ 推奨 マウント・ハウジング 自動車のボンネット内や、温風が当たる箇所のセンサー固定などに。
◎ 推奨 流体・ガスのテスト 高温の空気や液体を流す試験用パーツとして。
× 不向き スナップフィット 柔軟性が全くありません。ツメを曲げようとすると即座に折れます。
× 不向き 衝撃がかかる部品 「硬い」ですが「脆い」ため、落下やハンマー等の衝撃には弱いです。

■ プロの所感

High Temp Resinの質感は「ガラス」をイメージしてください。非常に硬く、熱にも強いですが、無理な力を加えるとパキッと割れます。リビングヒンジやスナップフィット(パチンとはめる構造)を作りたい場合は、設計自体をネジ止め等に変更する必要があります。

2. 販売店の技術ノート:失敗しないための3つの鉄則

ここからは、実際にForm 4や従来機でHigh Temp Resinを運用する際に、私たちが特に気をつけているポイントを「技術ノート」として公開します。マニュアルにはさらっとしか書かれていない部分もありますが、ここが成功率を左右します。

① 造形設定:「直付け」は絶対に禁止

通常、ビルドプラットフォームにモデルを直接配置する「直付け(ラフトなし)」は、造形時間の短縮やレジン節約に有効です。しかし、High Temp Resinでは必ずサポート材を付けてください。

  • 理由1(密着不良): High Temp Resinは初期層の定着がシビアです。ラフト(土台)をしっかり生成し、その上にモデルを配置しないと、造形中に脱落するリスクがあります。
  • 理由2(取り外し時の破損): 造形物は非常に硬くて脆いため、ビルドプラットフォームからスクレーパーで無理に剥がそうとすると、モデル自体が割れてしまうことがあります。
3Dプリンターのサポート材構造図

② タンクの消耗:曇りをこまめにチェック

High Temp Resinは、造形時の「剥離力」が必要な材料です。特に、Form 2やForm 3/3+(LFS方式)で使用する場合、レジンタンク(レジンを入れるトレイ)への攻撃性が高く、タンク底面の弾性層が早く曇る傾向があります。
標準レジンタンクを使用している場合は、定期的に透明度を確認し、造形品質が低下する前に早めの交換をおすすめします。
※最新のForm 4 レジンタンクは耐久性が向上していますが、それでも他のレジンに比べると消耗品としての管理が重要です。

③ 洗浄管理:これが最大の落とし穴!「6分ルール」

High Temp Resinの失敗事例で最も多いのが、「二次硬化後にひび割れ(クラック)が入る」という現象です。これを防ぐための鉄則があります。

■ 割れを防ぐポイント

1. 洗浄液への浸漬は合計6分以内
洗浄機(Form Wash等)での洗浄時間は、短めに設定してください。洗浄液に長く浸けすぎると、レジンが溶剤を吸って膨張し、内部応力が発生します。

2. 二次硬化前の完全乾燥
洗浄が終わったら、すぐに二次硬化機(Form Cure等)に入れず、必ず完全に自然乾燥させてください。洗浄液が残留した状態で光や熱を与えると、急激な反応でクラックが入ります。

  • 洗浄:Form Washで5分(またはバケツ洗浄で短時間)
  • 乾燥:エアブローで洗浄液を飛ばし、最低30分〜1時間は自然乾燥
  • 二次硬化:推奨温度・時間でしっかりと(※HDTを最大化するために必須です)
Form 4で造形されたHigh Temp Resinの金型モデルサンプル

コラム:金型製作のリードタイムを短縮するヒント

High Temp Resinの主な用途である「簡易金型(モールド)」製作において、生産性をさらに高めるための組み合わせをご紹介します。

Form 4 との組み合わせで真価を発揮

金型設計は一発で決まることは稀で、何度も「設計→造形→成形テスト→修正」のサイクルを回す必要があります。
ここで、最新機種Form 4が役立ちます。独自の造形技術LFD(Low Force Display)と強力なLEDパネルにより、従来のForm 3+と比較して2〜4倍以上のスピードで造形が完了します。
「朝一番に設計データを投入し、お昼には金型が完成。午後から射出成形テストを行い、夕方には修正版の設計に入る」といったスピード開発が現実のものとなります。

コスト管理には「洗浄液 3D Medsupo」

金型のような大きなパーツや、多数の耐熱治具を造形する場合、洗浄液の消費量も馬鹿になりません。
弊社オリジナルの「洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)」は、IPAと同等の洗浄力を持ちながら、コストパフォーマンスに優れた製品です。

頻繁に液交換が必要なヘビーユーザー様のランニングコスト削減に貢献します。(※ただし、High Temp Resin使用時は、Medsupoであっても「浸漬時間は短く」というルールは変わりませんのでご注意ください)

まとめ

High Temp Resinは、Formlabs製品の中で最も耐熱性に優れた、プロフェッショナルなエンジニアのための材料です。

  • 最高289℃(V1)/ 238℃(V2)の耐熱性: 簡易金型や熱流体テストに最適。
  • 造形の注意点: 柔軟性がないためスナップフィットは不可。必ずサポート材を使用する。
  • 洗浄の鉄則: 溶剤への浸漬は「合計6分以内」厳守。二次硬化前に完全乾燥させることで割れを防ぐ。

この3点を押さえれば、今まで金属加工や外部委託に頼っていた耐熱パーツの内製化が可能になります。
「さらに詳しい技術仕様を知りたい」「Form 4での造形精度を確認したい」という方は、ぜひ下記の窓口よりお声がけください。専門スタッフが貴社の用途に合わせた最適な構成をご提案いたします。

皆様からの技術的なご質問や、サンプル作成のご依頼をお待ちしております。

出典:Using High Temp Resin

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