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Formlabs製品ガイド

Formlabs Elastic 50A Resin解説|シリコン同等の柔軟性・造形設定のコツ

i-MAKER 研究室 編集部 | 公開 2025.12.15 更新 2026.04.15 読了 約8分

Elastic 50A Resinで造形された柔軟な3Dプリントパーツ

今回は、Formlabsの材料ライブラリの中でも特にユニークで、かつ「使いこなせれば開発プロセスが劇的に変わる」と評判のElastic 50Aについて解説します。

これまで、ゴムライクな柔軟パーツの試作といえば、金型を起こしてシリコンを流し込む「注型」が一般的でした。しかし、この方法はコストも時間もかかります。「1個だけ形状を確認したい」「硬さを確かめたい」というニーズに対し、3Dプリンターでシリコン同等の弾性を持つパーツを造形できるのが、このレジンの最大の魅力です。

本記事では、メーカー公式情報の翻訳だけでは伝わりにくい、現場で実際に運用しているからこそわかる「造形のコツ」や「失敗しないためのポイント」を重点的にご紹介します。

Elastic 50A Resinとは?:シリコン代替としての実力

Elastic 50Aは、その名の通り「ショア硬度 50A」の物性を持つ、エラストマー(弾性)材料です。Formlabsのレジンの中で最も柔らかく、曲げ、伸び、圧縮に対して非常に高い柔軟性を示します。

対応機種は幅広く、最新のForm 4 / Form 4Bはもちろん、従来のLFS方式であるForm 3シリーズや、大型機のForm 3Lなどでも使用可能です。

Elastic 50A Resinで造形された柔軟な3Dプリントパーツ
シリコンのような柔軟性を持つElastic 50A Resin

1. 硬さと質感のイメージ

「ショア50A」と言われてもピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。身近なもので例えると、以下のような硬さです。

  • Elastic 50A: 輪ゴムや、柔らかめのシリコンパッキンに近い感触。
  • Flexible 80A: タイヤのトレッドや、靴のソールに近い硬めのゴム。

Elastic 50Aは「グニャッ」と曲がり、手を離すと素早く元の形状に戻る「エネルギーリターン」の高さが特徴です。

2. 他の柔軟レジンとの違い

よく比較される「Flexible 80A」との違いを、以下の表にまとめました。

特性 Elastic 50A Flexible 80A
デュロメーター(硬度) 50A(非常に柔らかい) 80A(硬めのゴム)
質感・用途 シリコンゴムの代替 天然ゴム、TPUの代替
破断伸び 160%(よく伸びる) 120%
引裂強度 高い 標準的
色・外観 クリア(透明) クリア(透明)

特筆すべきは引裂強度の高さです。繰り返しの屈曲や伸縮が行われるパーツの場合、Elastic 50Aの方が亀裂が入りにくく、耐久性に優れています。また、透明度が高いため、内部流路の確認が必要な流体解析モデルや、手術シミュレーション用の臓器モデル(心臓や血管など)にも適しています。

3. 現場での活用イメージ

私たちがサポートさせていただいているお客様の中では、以下のような用途で活用されています。

  • ウェアラブルデバイス: 腕時計のバンドや、肌に直接触れるパッド部分の試作。
  • ロボットハンド: 対象物を傷つけずに把持するための、ソフトグリッパーの先端部。
  • 特殊効果(Prop): 映画やCM撮影で使用される、演者が怪我をしないための「柔らかい小道具」。
  • 医療機器開発: カテーテルの挙動確認や、生体模倣モデル。

【技術ノート】販売店が教える「失敗しない」造形テクニック

ここからは、実際にForm 4やForm 3+でElastic 50Aを運用している技術担当の視点で、カタログスペックには載っていない「現場のノウハウ」をお伝えします。

このレジンは非常に柔らかいため、通常の硬質レジン(グレーレジン V5など)と同じ感覚で設定すると、造形失敗や寸法精度の低下を招くことがあります。以下のポイントを必ず押さえてください。

1. サポート材の設定は「密度高め」が鉄則

Elastic 50Aは、造形中にモデル自体が自重や剥離力で揺れ動いてしまいます。そのため、モデルを支えるサポート材の設定が極めて重要です。

  • 孤立したサポートを避ける: 20mmを超える長さのサポートが1本だけで立っている状態は非常に危険です。造形中にサポート自体がたわみ、モデルがズレてしまいます。
  • トラス構造(筋交い)を活用する: Formlabs専用ソフトウェア PreFormにて、手動でサポート同士を繋ぐトラスを追加するか、サポート密度を高めに設定して、ジャングルジムのような強固な構造を作ってください。
  • 断面積が大きいパーツへの対策: ビルドプラットフォームに近い位置に配置し、太いサポートでしっかりと固定します。

2. 設計時の注意点(壁厚)

メーカー推奨値では「最小壁厚 400ミクロン」とされていますが、これはあくまで「造形できる限界値」です。

■ ここがポイント

実用的な自立性を保ち、造形後の洗浄・二次硬化の工程で破損させないためには、最低でも600ミクロン、可能であれば800ミクロン以上の厚みを確保することを強く推奨します。

3. 【最重要】二次硬化は「水に沈めて」行う

ここがElastic 50Aの運用の最大のキモです。通常のレジンはそのままForm Cureに入れますが、Elastic 50Aは「水中で」二次硬化(ポストキュア)を行う必要があります。

  • なぜ水に沈めるのか?:
    このレジンは空気中の酸素に触れていると、表面の重合反応が阻害され、いつまでもベタつき(タック)が残ってしまいます。酸素を遮断して本来の機械的特性を引き出すために、水没が必要です。
  • 具体的な手順:
    1. 透明なガラス容器やタッパーに水を張ります。
    2. 洗浄・乾燥が完了した造形物を水に沈めます(気泡が入らないように注意)。
    3. 容器ごとForm Cureの中に入れ、推奨温度・時間で硬化させます。

これを怠ると、いつまでも表面がヌルヌルしたり、簡単に裂けてしまう弱いパーツになってしまいますので、必ず実施してください。

Form 4によるElastic 50Aの実機検証とサンプル造形
Form 4実機によるElastic 50Aの造形サンプル

【検証・サンプルについて】

「自社のデータで、この柔らかさが再現できるか確認したい」「サポート除去後の表面品質を見たい」というご要望にお応えし、弊社では実機を用いた造形サンプルテストを行っております。お気軽にご相談ください。

コラム:柔軟素材のワークフロー最適化

Elastic 50Aのような特殊レジンを扱う際、「造形時間がかかる」「洗浄液の管理が大変」といった課題に直面することがあります。ここでは、生産性をさらに高めるためのヒントをご紹介します。

Form 4 との組み合わせで「待ち時間」を解消

従来のSLA方式では、Elastic 50Aのような高粘度レジンの造形には時間がかかりました。しかし、最新機種Form 4に搭載された新技術「LFD(Low Force Display)」は、この課題を解決しています。

Form 4では、積層ピッチ100ミクロン設定であっても、従来の数倍のスピードで造形が完了します。「夕方にデータをセットして、翌朝確認する」しかなかった試作が、「午前中に造形して、午後には検証する」というサイクルに短縮可能です。

洗浄液 3D Medsupo でコストと品質を両立

軟質レジンは、洗浄液(IPAなど)を吸いやすく、長時間浸けすぎると膨潤(ふやけて大きくなること)してしまいます。また、レジン成分が溶け出した洗浄液は劣化が早く、頻繁な交換が必要です。

そこで私たちがおすすめしているのが、洗浄液 3D Medsupoです。

  • コストパフォーマンスに優れた運用: IPAと同等以上の洗浄力を持ちながら、ランニングコストを抑えることが可能です。
  • 軟質レジンの洗浄フロー: 3D Medsupoで予備洗浄を行い、仕上げに少量の新しい溶剤でリンス(すすぎ)を行うことで、膨潤を最小限に抑えつつ、表面のベタつき原因となる未硬化レジンをきれいに落とすことができます。

まとめ

Elastic 50A Resinは、3Dプリンターでゴムライクなパーツを作るための強力な選択肢です。最後に重要なポイントを3つにまとめます。

  • シリコン同等の柔らかさ: 非常に柔軟で、引裂強度も強いため、ウェアラブルや医療モデルに最適です。
  • サポートは「過保護」に: 柔らかさゆえに揺れやすいため、Formlabs専用ソフトウェア PreFormで密度を高め、トラス構造で補強してください。
  • 二次硬化は「水中」で: 表面のベタつきをなくし、本来の強度を出すために、必ず水に沈めた状態でForm Cureにかけてください。

「実際に触って硬さを確かめたい」「Form 4での造形スピードを知りたい」「洗浄液 3D Medsupoの使用感を試したい」といったご興味をお持ちの方は、ぜひ私たち販売店にお声がけください。
皆様の用途に合わせた最適な機材構成と、運用ノウハウをご提案させていただきます。

出典:Using Elastic 50A Resin

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i-MAKER 研究室 編集部

株式会社アイ・メーカーが運営する、ものづくり情報サイト「i-MAKER 研究室」の編集部。3Dプリンター・光造形・洗浄の現場に10年以上携わる経験をもとに、実機検証と取材を軸とした記事を制作しています。

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