【プロ解説】Formlabs Durable Resin
(PPライク)の特性とコツ

光造形(SLA)方式の3Dプリンターを導入されるお客様から、最も頻繁にいただくご相談の一つが「割れにくい素材はありませんか?」というものです。
特に、日常的に目にするプラスチック製品のような「粘り」や「柔軟性」を求めている場合、一般的なスタンダードレジンでは強度が不足することがあります。

そこで今回は、Formlabsのエンジニアリングレジンの中でも、特に「ポリプロピレン(PP)」の物性を忠実に再現した「Durable(デュラブル)について徹底解説します。

Form 4 / Form 4L をはじめ、Form 3+ や Form 3L などの従来機でも使用可能なこのレジンは、試作開発の現場において「必須」とも言える重要なマテリアルです。メーカー公式情報をベースに、私たち販売店が現場で培った「使いこなしのコツ」や「注意点」を加えてご紹介します。

Formlabs Durable Resinで造形された柔軟性のある白いパーツ
PPライクな柔軟性を持つDurable Resin

なぜ「Durable(デュラブル)」が重要なのか?

世の中にあるプラスチック製品を見渡してみてください。
タッパーなどの食品保存容器、シャンプーボトルのキャップ、自動車のバンパー、歯ブラシの柄など、数え切れないほどの製品がポリプロピレン(PP)や高密度ポリエチレン(HDPE)で作られています。

これらは「曲げても白化して粘る」「衝撃に強い」「表面が滑らか」という特性を持っています。
もし、これらの製品の試作を、硬くて脆い素材で行ったらどうなるでしょうか?スナップフィット(パチンと嵌める機構)を試した瞬間に爪が折れてしまい、検証になりません。

Durable(デュラブル)は、まさにこの「PPライク」な挙動を光造形で再現するために開発されました。最終製品と同じような感触で、機能試験を行うためには欠かせない材料なのです。

Durable(デュラブル)の基本特性とTough 2000との違い

Durableの主な特性は以下の3点です。

  • 高い伸び率と耐衝撃性:破断伸び率は約55%。強い力を加えても簡単には折れず、グニャリと曲がりながら耐えます。
  • 低摩擦(ローフリクション):表面が非常に滑らかで、摩擦係数が低いため、滑りやすさが求められる部品に適しています。
  • 優れた疲労耐性:繰り返しの曲げ伸ばしに強く、ヒンジのような動きに耐えられます。

よくある疑問:Tough 2000 との使い分けは?

Formlabsには「高強度・耐久」カテゴリーに、Tough 2000(旧Toughレジン)という人気素材があります。どちらも「強い」レジンですが、その性質は明確に異なります。

特性項目 Durable(デュラブル) Tough 2000
模倣するプラスチック ポリプロピレン(PP) ABS樹脂
主な質感 柔らかく、粘りがある 硬く、剛性が高い
引張弾性率 1.0 GPa(柔軟) 2.2 GPa(高剛性)
破断伸び率 55%(よく伸びる) 48%(伸びるがコシがある)
表面の摩擦 低い(滑りやすい) 普通
後加工 研磨しにくい ドリル加工・研磨が容易
最適な用途 スナップフィット、ヒンジ、容器 治具、筐体、機能部品

■ 選び方の基準

「パチン」と嵌めて、少し変形させたいなら Durable
「ガチッ」と固定し、変形させたくない(でも割れてほしくない)なら Tough 2000

現場での活用シーン:Durableが輝く3つの形状

具体的な設計において、Durableは以下のようなシーンで真価を発揮します。

1. スナップフィットと片持ち梁

リモコンの電池蓋や、組立筐体の爪部分など、一時的に部材がたわんで元に戻る機構です。
Durableは変形に強く、割れる前に大きく伸びるため、何度も着脱を繰り返す試作に最適です。さらに、組み立てをスムーズにするためにドライヤー等で温めると、より柔軟になり破損リスクを下げることができます。

2. リビングヒンジ

シャンプーのキャップやウェットティッシュの蓋に見られる、部品そのものが薄くなって蝶番(ヒンジ)の役割を果たす構造です。
一般的なレジンでは数回の開閉で破断しますが、Durableであれば十分な回数の開閉テストに耐えられます。

3. 摺動(しゅうどう)部品・ボールジョイント

Durable特有の「低摩擦」な表面は、部品同士が擦れ合う箇所に最適です。
例えばボールジョイントの受け側や、回転軸のブッシュなどに使用すると、スムーズな動きを実現できます。

【技術ノート】販売店が教える「運用のコツと注意点」

ここからはカタログスペックには書かれていない、私たちが実際に運用して気づいた「現場のリアル」をお伝えします。Durableは非常に優秀なレジンですが、少し「クセ」があります。

ポイント:研磨(やすりがけ)にはコツがいる

Durableの長所である「低摩擦(滑りやすい)」という性質は、後処理の段階では短所になります。
サンドペーパーで積層痕を消そうとしても、表面がヌルヌルと滑ってしまい、ペーパーの目がすぐに詰まってしまうのです。

  • 対策: 無理にヤスリで削ろうとせず、デザインナイフやキサゲ、スクレーパーを使って「削ぎ落とす」ように処理するのがおすすめです。
  • 仕上げ: 滑らかな面が必要な場合は、研磨後にミネラルオイル等を薄く塗布すると、透明感と艶が出ます。

注意点1:熱には非常に弱い

Durableの熱変形温度(HDT @ 0.45 MPa)は 約41°C です。これはエンジニアリングレジンの中でもかなり低い数値です。
夏の車内や、直射日光の当たる窓際への放置は厳禁です。自重で変形します。
洗浄機の設定温度が高い場合も歪みの原因になります。常温での洗浄を推奨します。

注意点2:微細造形よりも「塊」向き

粘り気が強いレジンのため、非常に微細なエンボス加工や、直径0.5mm以下の穴などは、スタンダードな「グレーレジン V5」などに比べると潰れやすい傾向があります。
造形前の「Formlabs専用ソフトウェア PreForm」での設定時、微細なディテールよりも全体の強度を重視した向きに配置することをお勧めします。

【コラム】ワークフロー最適化のヒント

粘るレジンには「確実な洗浄」が不可欠。
Form 4 と 洗浄液 3D Medsupo の活用

Durableのような高機能レジンを使いこなすには、造形後の「洗浄」が品質を左右します。
特にスナップフィットの隙間やヒンジの薄い部分に未硬化のレジンが残っていると、設計通りの精度が出ないばかりか、ベタつきが残り続けてしまいます。

Form 4 での造形メリット
最新機種 Form 4 は、従来のLFS方式とは異なる「LFD(Low Force Display)」技術を採用しています。
レジンタンクの底面に施された「リリーステクスチャ」により、Durableのような粘度の高いレジンでも、フィルムへの張り付き(剥離力)を抑えながら高速に造形可能です。これにより、失敗のリスクを大幅に低減できます。

洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)の活用
Durableは洗浄しても表面のヌメリが取れにくい場合がありますが、弊社が推奨する「洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)」を使用することで、この問題を解決できます。

  • 高い洗浄力: 複雑な形状の奥に入り込んだ未硬化レジンも強力に除去します。
  • 安全性とコスト: 引火性の高いIPA(イソプロピルアルコール)を大量に備蓄する必要がなく、非該当(消防法上の危険物に該当しないタイプ)の運用も可能です。
  • リンス効果: 洗浄後のベタつきを抑え、Durable本来のサラッとした質感に仕上げやすくなります。

「造形は速くなったけれど、後処理に時間がかかっている」という方は、ぜひ洗浄液の見直しもご検討ください。

まとめ

本日はポリプロピレン(PP)ライクの万能素材「Durable(デュラブル)」について解説しました。要点は以下の3つです。

  • Durableは「PP素材」の代替: 柔軟性、耐衝撃性、低摩擦性を持ち、割れにくい試作に最適です。
  • 適材適所: ガチッとした剛性が欲しいなら「Tough 2000」、粘りと滑りが欲しいなら「Durable」と使い分けましょう。
  • 加工の注意点: 熱に弱くやすりがけが難しいため、ナイフ処理や適切な洗浄プロセス(Medsupoの活用など)が成功の鍵です。

弊社では、今回ご紹介した「Form 4」本体はもちろん、各種レジンの選定相談、そして後処理を効率化する「洗浄液 3D Medsupo」まで、光造形をトータルでサポートしております。
「自分の作りたい部品にはどのレジンが合うのか?」「Durableのサンプルを触ってみたい」など、技術的なご質問がございましたら、お気軽に私たちプロフェッショナルにご相談ください。

専門スタッフが最適なソリューションをご提案いたします。

出典:Using Durable Resin

\ IPA廃液の処理にお困りではありませんか? /
3D Medsupo製品と回収のイメージ

3D Medsupo(メドサポ)

非有機溶剤で「毒性なし・臭いなし」。さらに「廃液回収サービス付き」だから、面倒な産廃処理の手間とコストをゼロに。
★ キャンペーン中 今なら使用済みのIPA廃液も回収します!

Form 4 / 4L 導入のご相談

「実機で機能を確認したい」「造形サンプルの依頼」「お見積り」など
専門スタッフが丁寧にお答えします。