
【徹底解説】ABSライクの決定版「Tough 2000 Resin」は何が変わった?V2の進化と活用術
今回は、Formlabsのエンジニアリングレジンの中でも、特に機械設計や生産技術の現場で指名買いの多い「Tough 2000 Resin(タフ2000レジン)」について深掘り解説します。
製品名にある「2000」という数字は、この素材の引張弾性率(2000MPa)を表しています。これは、製造業で最も一般的であるABS樹脂とほぼ同等の数値です。つまり、「ABSで作ったときと同じような感覚で使える」ことを目指して開発されたレジンです。
現在は改良版である「V2」に切り替わっていますが、「具体的に何が変わったのか?」「どう使いこなせばいいのか?」といったご質問をよくいただきます。本記事では、カタログスペックだけでなく、現場での運用ノウハウを交えて解説します。
Tough 2000 Resinの正体:なぜ「ABSライク」なのか
Tough 2000 Resinは、Formlabsが展開する「Tough & Durableファミリー」の中で、最も高い剛性(硬さ)と強度のバランスを持った材料です。
一般的なスタンダードレジンと比較して、「割れにくい」「曲がりにくい」という特徴があり、以下のようなエンジニアリング用途に最適です。
- 機能評価プロトタイプ: 最終製品がABSの場合、非常に近い挙動で検証が可能です。
- 治具・固定具: 力がかかっても変形しにくいため、生産ラインでの使用に耐えられます。
- 後加工への適性: 造形後にドリルで穴を開けたり、タップ(ネジ切り)加工を行っても、クラック(ひび割れ)が入りにくい粘り強さを持っています。
V2での進化ポイント(V1との違い)
現行の「V2」では、旧バージョンから以下の点が大きく改良されています。
| 項目 | 進化の内容 | 現場でのメリット |
|---|---|---|
| 耐熱性の向上 | 熱たわみ温度(HDT)が上昇 | 高温になる環境下や、摩擦熱が発生する可動部でも変形しにくくなりました。 |
| 外観の改善 | 色味がより濃い「ダークグレー」に変更 | 射出成形品に近い落ち着いた色合いになり、クライアントへのプレゼンモデルとしての質感が向上しました。 |
| 靭性の向上 | 破壊靭性がアップ | さらに粘り強くなり、衝撃が加わった際の破損リスクが低減しています。 |
推奨される用途・推奨されない用途
万能に見えるTough 2000 Resinですが、特性を理解して使い分けることが重要です。
- 推奨: スナップフィット(パチンと嵌め込む筐体)、高い応力がかかる治具、機能確認用の試作全般。
- 非推奨: 4000サイクル以上の繰り返し負荷がかかる部品(バネやヒンジなど)。
※繰り返し曲げ伸ばしする用途には、より柔軟で疲労強度が高いポリプロピレン(PP)ライクの「Tough 1500 Resin」が適しています。
【販売店の技術ノート】現場視点での運用アドバイス
ここからは、カタログには載っていない、私たちが日々サポートを行う中で蓄積した「運用のコツ」をお伝えします。
1. 迷ったらここを見る!Tough 1500との使い分け
お客様から最も多くいただく質問が「Tough 2000とTough 1500、どっちを選べばいいの?」というものです。どちらも高強度レジンですが、明確な性格の違いがあります。
| レジン名称 | 特性のイメージ | 向いている用途 | 選定のキーワード |
|---|---|---|---|
| Tough 2000 | ABS相当(硬い) | 変形させたくないケース、剛性が必要な治具 | 「カッチリ」「硬さ」「ドリル加工」 |
| Tough 1500 | PP相当(しなる) | 繰り返し曲げるヒンジ、振動吸収が必要なパーツ | 「しなり」「バネ性」「割れにくさ」 |
■ 選定のポイント
「形を保ってほしいなら2000、曲げても戻ってほしいなら1500」と覚えておくとスムーズです。
2. 失敗しないための「洗浄・乾燥」プロセス
エンジニアリングレジンはスタンダードレジンに比べて粘度が高く、造形物の表面に未硬化のレジンが残りやすい傾向があります。
- 洗浄: IPA(イソプロピルアルコール)または洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)を使用し、表面のヌルつきがなくなるまでしっかり洗浄してください。ブラシ等で細かい隙間を洗うのも有効です。
- 乾燥(※最重要): 洗浄後、すぐに二次硬化(ポストキュア)に入れてはいけません。溶剤が染み込んだ状態で光や熱を与えると、表面荒れやクラックの原因になります。最低でも10分以上、可能であれば30分程度自然乾燥させ、完全に溶剤を飛ばしてください。圧縮空気(エアダスター)の使用も効果的です。
3. サポート材除去のタイミング
Tough 2000は硬度が高いため、二次硬化「後」にサポート材をニッパーで切ろうとすると、その衝撃でモデル本体が欠けてしまう(えぐれてしまう)ことがあります。
- コツ: 二次硬化を行う「前」、モデルがまだ少し柔らかい状態でサポート材を除去するのがベストです。
もし二次硬化後に行う場合は、ヒートガンやお湯でモデルを少し温めると、刃が入りやすくなり欠けを防げます。
【コラム】高粘度レジンを使いこなす!「Form 4」と「洗浄」の最適解
最後に、Tough 2000 Resinのような「高性能だが粘度が高いレジン」を、さらに効率よく運用するためのヒントをご紹介します。
「Form 4」なら高粘度レジンでも爆速
従来のSLA方式では、Tough 2000のような粘り気の強いレジンは、造形ごとの剥離動作に時間がかかり、プリント時間が長くなる傾向がありました。
しかし、最新機種「Form 4」では、この課題が劇的に改善されています。 Form 4独自の造形技術「LFD(Low Force Display)」では、LEDパネルによる強力な面露光と、レジンタンク底面のリリーステクスチャ(微細加工)により、高粘度レジンであっても抵抗を極限まで減らして剥離します。
これにより、これまで一晩かかっていたようなエンジニアリングレジンの試作が、数時間で完了するケースも珍しくありません。「ABSライクの試作を、午前中に設計して午後イチで手にする」といったスピード感が実現可能です。
ランニングコストを下げる「洗浄液 3D Medsupo」
Tough系レジンは洗浄が重要とお伝えしましたが、しっかり洗えば洗うほど、洗浄液はすぐに汚れてしまいます。IPAのコストや保管・廃棄の手間に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
そこで推奨しているのが、「洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)」です。 IPAと同等の高い洗浄力を持ちながら、コストパフォーマンスに優れた製品です。特にForm 4の導入で造形個数が増え、洗浄頻度が上がっている現場では、この洗浄液に切り替えるだけで大幅なコストダウンにつながります。
まとめ
本日の解説の要点は以下の3点です。
- Tough 2000 Resin V2は、ABS樹脂相当の剛性を持ち、ドリル加工なども可能なプロフェッショナル向け素材です。
- V2への進化で耐熱性と外観品質が向上し、最終製品に近いプレゼンテーションが可能になりました。
- 性能をフルに発揮させるには、未硬化レジンの入念な洗浄と、二次硬化前の完全乾燥が不可欠です。
私たちは販売店として、単にプリンターやレジンをお届けするだけでなく、お客様の作りたいものに合わせた最適な「機種・材料・運用フロー」をご提案しています。
「この形状ならどのレジンが適しているか?」 「Form 4と洗浄液 3D Medsupoを導入した場合のコストシミュレーションが見たい」
こうした技術的なご相談や、実機での検証依頼がございましたら、ぜひ下記よりお気軽にお声がけください。経験豊富なスタッフが、貴社の課題解決をサポートいたします。

