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Formlabs製品ガイド

【Form 4対応】HDPE相当の強靭素材「Tough 1000 Resin」特徴と運用術

i-MAKER 研究室 編集部 | 公開 2025.12.16 更新 2026.04.15 読了 約9分

【Form 4対応】HDPE相当の強靭素材「Tough 1000 Resin」特徴と運用術

本日は、Form 4 / Form 4L ユーザーの皆様にとって待望のニュースをお届けします。これまでForm 4のエコシステムでは選択肢が限られていた「高靭性・低摩擦」カテゴリーにおいて、ついに「Tough 1000 Resin(タフ1000レジン)」が正式に対応しました。

「Tough 1000」という名称は、この素材の引張弾性率が約1000MPa(メガパスカル)であることに由来しています。これはFormlabsが提供するTough系レジンファミリーの中で最も柔軟性が高く、伸びに強いことを意味します。

これまでForm 3シリーズで愛用されていた方も多いこの素材が、最新機種 Form 4 の超高速造形に対応したことで、試作開発のサイクルが劇的に加速します。本記事では、メーカー公表のスペック解説に加え、私たち販売店が実機で検証して感じた「運用上の注意点」や「失敗しないためのコツ」を詳しく解説します。

1. Tough 1000 Resinの概要とメリット

Tough 1000 Resinは、単に「柔らかい」だけの素材ではありません。産業用途で求められる「強さ」と「しなやかさ」を両立したエンジニアリングレジンです。

HDPE(高密度ポリエチレン)相当の機械的特性

最大の特徴は、HDPE(高密度ポリエチレン)に近い挙動を示す点です。HDPEは、皆様の身近にあるポリタンクやバケツ、まな板などに使われる素材で、衝撃に強く、割れることなく変形するという特徴があります。Tough 1000 Resinは、このHDPEと同様に高い耐衝撃性と延性を備えています。

  • 繰り返しの曲げに強い:繰り返し負荷がかかるヒンジやバネ構造。
  • 割れずに粘る:強い力が加わっても、パキッと割れずにグニャリと曲がって耐える。

POMのような低摩擦・自己潤滑性

もう一つの大きなメリットは、表面の滑らかさです。Tough 1000 Resinで造形されたパーツは、デルリン(POM)と同等の潤滑性を持ちます。POMは機械部品のギアや軸受けによく使われる素材ですが、それと同様に「相手の部材を摩耗させず、スムーズに動く」特性があります。

  • 活用イメージ:ギア(歯車)、ボールジョイント、スライド機構などの「摺動(しゅうどう)部品」。

Durable Resin との違いは?

これまで「割れにくい素材」として使われていたDurable Resin(デュラブルレジン)と比較して、Tough 1000 Resinは何が違うのでしょうか?以下の比較表をご覧ください。Durableの弱点であった「熱」や「クリープ(長時間の負荷による変形)」に対する耐性が大幅に向上しています。

特性 Tough 1000 Resin (二次硬化後) Durable Resin (参考) 優位性
主な代替素材 HDPE (高密度ポリエチレン) PP (ポリプロピレン) より剛性感のある素材へ
熱変形温度 55.3℃ (@0.45 MPa) 低め 耐熱性が向上
耐クリープ性 高い 低い 長期間変形しにくい
表面特性 低摩擦・滑らか 滑らか 同等の滑り特性を維持
剛性 (弾性率) バランス型 (~1000MPa) 非常に柔らかい 形状安定性が高い
Formlabsタフ系レジン Tough 1000 / 1500 / 2000 の性能比較レーダーチャート
タフ系樹脂ファミリーの比較チャート。Tough 1000は最も伸び(Elongation)が高い。
Tough 1000 ResinとDurable Resinの負荷耐久テスト比較
Tough 1000 Resin(右)は負荷に耐えて変形するのに対し、Durable Resin(左)は割れてしまっています。

実際の検証画像(上図)をご覧ください。左側の Durable Resin(V2) は、強い負荷によって限界を超え、素材が割れてしまっているのが確認できます。

一方、右側の Tough 1000 Resin は、同じ負荷がかかっても割れることなく、素材が柔軟に変形して衝撃を受け止めていることがわかります。

これは、Tough 1000 ResinがHDPE(高密度ポリエチレン)のように極めて高い「耐衝撃性」と「伸び」を兼ね備えていることの証明です。強い力が加わった際、Durable Resinでは耐えきれずに破損してしまうようなシーンでも、Tough 1000 Resinであればその粘り強さで機能を維持できる可能性が高いと言えます。

2. 【販売店の技術ノート】Form 4 での運用テクニック

ここからは、カタログスペックには載っていない、私たち販売店が現場で検証した「リアルな運用ノウハウ」をお伝えします。Form 4 で Tough 1000 Resin を使う場合、従来のForm 3とは異なる注意点があります。

Form 4 の高速造形との相性

Form 4 の造形方式であるLFD(Low Force Display)は、Tough 1000 Resinのような粘度の高いレジンと非常に相性が良いです。レジンタンク(レジンを入れるトレイ)の底面に施された「リリーステクスチャ」のおかげで、粘り気のある素材でもスムーズに剥離でき、Form 3(従来のLFS方式)と比較して数倍のスピードで造形が完了します。

【重要】ビルドプラットフォームへの「張り付き」に注意

ここが今回、最もお伝えしたいポイントです。Tough 1000 Resinは、その強靭な素材特性ゆえに、Form 4 ビルドプラットフォームに対して非常に強力に密着(接着)するというクセがあります。

何も対策せずに造形すると、造形終了後にスクレーパーを使ってもパーツが剥がれず、無理に力を入れると以下のトラブルを招く恐れがあります。

  • パーツのラフト(土台)底面が白化・変形する。
  • 薄いパーツだと、剥がす際の力で歪んでしまう。
  • 最悪の場合、ビルドプラットフォーム表面を傷つける。

プロが教える「張り付きすぎ」防止対策

このリスクを回避するために、以下の手順を必ず実施してください。

  • 造形前のプラットフォーム拭き上げ(定着力の調整)
    メーカー推奨手順では「アセトン」による拭き上げが案内されていますが、アセトンは揮発性が高く有害性も懸念されるため、環境によっては使用が難しい場合があります。そこで弊社では、より安全な代替案として「洗浄液 3D Medsupo」での拭き上げを推奨しています。造形開始前にビルドプラットフォームの金属面をMedsupoで拭き、液残りが内容にウエス等でしっかり乾拭き(または乾燥)させてください。これにより表面状態が整い、初期層の過度な化学的結合(食いつきすぎ)を抑制し、適度な定着力にコントロールすることが可能です。
  • 専用プラットフォームの用意
    複数のレジンを使い回しているプラットフォーム(特に表面に細かい傷が多いもの)は、レジンが傷に入り込んでさらに取れにくくなります。Tough 1000 Resinを使用する場合は、可能な限り専用の新品に近いビルドプラットフォームを用意することを強く推奨します。
  • 取り外しは慎重に
    Form 4 ビルドプラットフォームフレックス(フレキシブルな板)を使用している場合でも、急激に曲げず、端からゆっくりと空気を入れ込むように剥がしてください。
Form 4で造形したTough 1000 Resinのスナップフィット・ヒンジ機構サンプル
Tough 1000 Resinの造形サンプル。

3. ワークフロー最適化のヒント:洗浄と後処理

最後に、Tough 1000 Resin の性能を100%引き出し、かつ作業効率を落とさないための「洗浄・後処理」のポイントをご紹介します。

粘度の高いレジンには「洗浄液 3D Medsupo」がおすすめ

Tough 1000 Resin のような高機能レジンは、一般的なレジンに比べて粘度が高く、造形後のパーツ表面にベタつきが残りやすい傾向があります。この洗浄工程で手間取ると、せっかくForm 4で高速造形してもトータルの作業時間は短縮されません。

そこで私たちが推奨しているのが、洗浄液 3D Medsupo(スリーディーメドサポ)」の活用です。

  • 高い洗浄力:粘度の高い未硬化レジンも素早く溶解し、複雑な形状の隙間に入り込んだレジンもしっかり洗い流します。
  • コストパフォーマンスに優れた運用:IPA(イソプロピルアルコール)に比べて揮発性が低いため液剤が長持ちし、ランニングコストを抑えられます。
  • 快適な作業環境:有機則(有機溶剤中毒予防規則)に非該当で、特有の刺激臭が少ないため、オフィス環境でも安心して使用できます。

二次硬化前の「乾燥」が品質の鍵

Tough 1000 Resin の特性(特にHDPE相当の強度)を確実に出すためには、二次硬化(ポストキュア)前の乾燥プロセスが非常に重要です。

  • しっかり洗浄:洗浄液 3D Medsupo 等で未硬化レジンを完全に除去する。
  • エアブロー:表面に残った洗浄液を圧縮空気で吹き飛ばす。
  • 30分間の自然乾燥:メーカー推奨として、二次硬化の前に少なくとも30分間、常温で自然乾燥させてください。

この「待ち時間」を惜しんで濡れたまま二次硬化してしまうと、本来の強度が出なかったり、表面が荒れる原因になります。Form 4 の生産性が高いからこそ、後処理は焦らず丁寧に行うのが成功の秘訣です。

まとめ

今回の Tough 1000 Resin の Form 4 対応は、試作だけでなく実部品の製造を検討されているユーザー様にとって非常に大きなアップデートです。

  • 実用的な素材特性:HDPE相当の粘り強さと、POMのような低摩擦性を持ち、可動部品に最適です。
  • 従来のDurable Resinより高性能ですが、ビルドプラットフォームへの張り付きが強いため、「洗浄液 3D Medsupo」等を用いた事前の拭き上げ対策が必須です。
  • トータルバランス:Form 4 の高速性と「洗浄液 3D Medsupo」による効率的な洗浄、そして適切な乾燥時間を組み合わせることで、真価を発揮します。

「自分の作りたいパーツが Tough 1000 に向いているか相談したい」「Form 4 と Medsupo の使用感を実際に見てみたい」という方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。プロのスタッフが最適な構成をご提案させていただきます。

出典:Using Tough 1000 Resin

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i-MAKER 研究室 編集部

株式会社アイ・メーカーが運営する、ものづくり情報サイト「i-MAKER 研究室」の編集部。3Dプリンター・光造形・洗浄の現場に10年以上携わる経験をもとに、実機検証と取材を軸とした記事を制作しています。

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