3Dプリンターの初期導入コストとは。造形方式別の項目と価格

3Dプリンターを導入するにあたって

3Dプリンターは3D CADデータから直接物体を作ることで、ものづくりの可能性を大きく広げてくれる機械です。ただし機種や価格帯によって初期導入に必要な項目がことなってきます。

また3Dプリンターの価格はさまざまで、どこにどのようなものが必要で、いくらなのかという価格に関する不明点が数多く存在します

そこで本稿では3Dプリンターの初期導入コストという観点から、一番初めに導入するために必要なコスト項目と大まかな価格、商品の値段についてご紹介します。

実際には3Dプリンターの機種や材料ごとで異なっているため、各機種別で詳細を確認する必要がありますが、大まかな費用感や、どういう費用が掛かり、価格はいくらなのかという点が明らかになれば、導入に向けた準備も進めやすくなるかと思います。

初期導入で必要なもの

3Dプリンターを導入するにあたり必要なもの、必要なコストは3Dプリンターのサイズや製法、使用する材料によってさまざまです。またどの3Dプリンターでも絶対に必要なものとしてパソコンがあります。

ここではまず3Dプリンターをはじめて導入する際に必要なものを一覧化しました。詳しい説明に入る前に、この一覧表を見てもらうことで大まかなコスト感をつかんでいただけます。

初期導入で必要なもの一覧表

3Dプリンターを初めて導入する際には、基本的に以下のような項目が初期導入で必要になります。3Dプリンターの種類ごとに必要・不必要が異なります。

それでは次に造形方式・種類別に大まかな初期導入に必要なものとコスト感をご紹介します。

項目概要価格の特長と傾向
3Dプリンター本体3Dプリンター本体です。プリンター本体に加え基本的に各付属品が含まれます。価格は、造形サイズや対応材料の種類、造形方式によってことなります。基本的に価格と性能は比例します。
材料造形するための材料です。種類や容量は機種・材料メーカーごとに異なります。3Dプリンターの種類によって、他社製の材料も使用可能です。材料の価格は、材料の機能や用途でことなります。単純な形のみを出すのみの用途であれば安いです。また機種ごとに異なります。
PCプリント設定を行うためのスライスソフトを使用するためのパソコンです。OSやスペックなどは3Dプリンターごとに異なります。パソコンの価格はハードディスクやグラフィックボードのスペックでことなります。5万円~数十万円程度です。
台・机3Dプリンターを置くための台です。3Dプリンターのサイズによって大きさは異なります。台は3Dプリンターのサイズや機種で異なります。デスクトップタイプなら一般的な机で、ハイエンド機なら専用の台などが必要な場合があります。
付属品造形に必要な付属品(プラットフォームや、ノズル、トレイ等)です。基本的に3Dプリンター本体に含まれますが、材料の種類などによって追加で必要な場合があります。付属品の価格は3Dプリンターの機種や製品でことなります。価格はおおよそ数千円~数万円の範囲です。
後処理用機器造形後の洗浄やサポート除去を行うための後処理用機器です。3Dプリンターの種類や機種ごとに必要な場合があります。後処理用機器の価格も種類によってことなります。メーカー純正品から市販品まで機種ごとにことなります。
例)光造形法:二次硬化機など、
後処理溶剤後処理に必要な溶剤です。サポート材を除去したり造形後の洗浄を行うための溶剤です。3Dプリンターは後処理に溶剤を使用するケースがあります。後処理用の溶剤の価格は数千円~数万円程度です。
例)光造形3Dプリンター:IPA洗浄液など
送料3Dプリンター納品時にかかる送料です。3Dプリンターが大型の場合、送料や設置費用も高額になります。送料の値段は、機種の大きさでことなります。
大型のハイエンド機の送料の価格は高くなり、デスクトップタイプは送料の値段が本体に含まれているケースもあります。
年間保守費用3Dプリンターの年間保守費用です。メーカーや機種ごとにバラバラで3カ月から1年は本体価格に無償保証が含まれているケースや、初年度から必要になる場合があります。年間保守費用の価格帯は、3Dプリンター本体の価格に比例します。ハイエンド機であれば価格が高くなり、デスクトップタイプは本体価格に含まれているケースがあります。
トレーニング費用3Dプリンターの種類によっては技術指導やトレーニングが必要な場合がありその場合は費用がかかります。トレーニング費用の価格や高額なハイエンド機では高くなり、デスクトップタイプはトレーニングがついていないケースがあります。
上記の表は大まかな目安です。詳しい価格や必要な項目は個別の機種ごとに異なります。

熱溶解積層法(FDM/FFF)3Dプリンターの初期導入コスト

FDM方式は、別名FFF方式といわれ熱可塑性樹脂であるフィラメントを押し出して積層し、造形物を作るタイプです。FDMはもともとストラタシスが開発した技術ですが、現在特許が失効したことで、価格帯は1台数万円~数千万円まで非常に幅広いです。初期導入コストの値段は大きさ、価格帯などによって異なります。

価格帯材料の価格付属品・後処理機送料年間保守費用等
50万円以下価格:低
1,000円代から数千円程度
3Dプリンター本体の価格に含まれるケースが多い3Dプリンター本体に含まれるケースが多い。
価格の目安:約5,000円~10,000円程度
本体価格に含まれるケースが多い
50万円以上~500万円価格:中~高
数千円~数万円
3Dプリンター本体に含むケースが多い3Dプリンターとは別途発生。
機種のサイズに比例する。
別途必要。
3Dプリンター本体の価格に比例する。
500万円以上価格:高
数万円~
3Dプリンター本体とは別にサポート除去などの後処理機が必要3Dプリンターとは別途発生。
機種のサイズに比例する。
別途必要。
3Dプリンター本体の価格に比例する。
上記の表は大まかな目安です。詳しい価格や必要な項目は個別の機種ごとに異なります。

FDM(熱溶解積層法)3Dプリンター本体の価格

100万円以下のデスクトップタイプは3Dプリンター本体に基本となる材料などが含まれているケースが多く、初期導入が済んでしまうケースがほとんどです。100万円以上のハイエンド機になるとさまざまな付属品や保守費用が必要になり、送料もかかります。

フィラメント材料

FDM方式・FFF方式の材料はフィラメントといわれる熱可塑性樹脂の材料が必要です。価格帯は材料の種類やメーカーの種類によって異なりますが、1㎏あたり2千円程度~数万円程度と非常に幅が広いです。特性が高いもの、強度や耐熱性が高い材料の方が高額になります。
100万円以上のハイエンド機になると材料費は数万円になります。その分高機能で安定性が高くなります。

送料

送料は3Dプリンターのサイズによって異なります。安価なデスクトップタイプであれば送料の価格が本体に含まれているケースもあります。値段は数千円~1万円程度です。大型になるにつれ、送料の価格は上がり数万円から数十万円と本体サイズに比例します。

後処理機:サポート除去用

FDM方式・FFF方式の3Dプリンターはサポート材の除去を行う後処理機が必要な場合があります。サポート材専用の材料を使用する場合には超音波洗浄機やリモネンなどのサポート除去するための設備が必要になります。安価なデスクトップタイプの場合だとサポート材が造形材料と同一なため後処理機は必要ありません。

後処理溶剤

サポート材を使用するタイプの3Dプリンターだとリモネンなどのサポート除去用の溶剤が必要になります。

フィラメント保管

FDM/FFF方式のフィラメント材料は、湿度に弱く、空気中の水分を容易に吸収します。吸湿したフィラメントは造形に影響を与え、反ったり、詰まったりします。そのためプリントする前に十分に乾燥させた状態で使用することが必要です。フィラメントを吸湿するためのPolyBoxのような保管庫や高温処理で湿度を乾燥させる保管庫などがあると常に高品質の造形が可能です。

乾燥剤

フィラメントを吸湿するのに使用する乾燥剤が必要です。乾燥剤は3Dプリンター用材料専用の乾燥剤などが登場しており、1,000円から利用することができます。十分に吸湿することで、常に高品質な造形が保てます。

アニール処理機

フィラメント材料を高温で加熱することで歪みをとるための機械です。フィラメント材料でもエンジニアリングプラスチックやスーパーエンプラなどは造形後にアニール処理が必要になります。アニール処理機は1台数十万円になります。

年間保証

ほとんどのFDM/FFF方式の3Dプリンターで、3カ月から1年の無償保証が本体に含まれています。保証期間後は、延長保証料か次年度の年間保証料が別途かかります。年間保証料も3Dプリンターの大きさや価格帯に比例します。数万円からハイエンド機であれば数百万円になります。

光造形(SLA/DLP)3Dプリンターの初期導入コスト

光造形方式はFDM方式と並ぶプラスチックの3Dプリンターです。日本ではForm3Form3Lが圧倒的な人気を誇っています。光造形3Dプリンターは材料が液体であることから、3Dプリンター以外に洗浄や二次硬化を行うための後処理機が必要になります。

価格帯材料の価格付属品・後処理機送料年間保守費用等
30万円以下価格:低
1,000円代から数千円程度
洗浄液などが必要3Dプリンター本体に含まれるケースが多い。本体価格に含まれるケースが多い
30万円以上~300万円価格:中~高
数万円
3Dプリンター本体とは別に、洗浄機や二次硬化機が必要なケースが多い。3Dプリンターとは別途発生。
機種のサイズに比例する。
初年度本体価格に含まれるケースが多い。
3Dプリンター本体の価格に比例する。
300万円以上価格:高
数万円~
3Dプリンター本体とは別にサポート除去などの後処理機が必要3Dプリンターとは別途発生。
機種のサイズに比例する。
別途必要。
3Dプリンター本体の価格に比例する。
上記の表は大まかな目安です。詳しい価格や必要な項目は個別の機種ごとに異なります。

光造形3Dプリンター本体

光造形3Dプリンターの本体も1台数万円から数百万円まで幅広い価格帯があります。ただ光造形3Dプリンターは機械本体が安価でも、洗浄や二次硬化などの後処理機が必要になります。

UV硬化レジン材料

光造形方式の材料はレジンといわれる液体のUV硬化材料です。価格帯は材料の種類やメーカーの種類によって異なりますが、1リットルあたり数千円~数万円程度になります。特性が高いもの、強度や耐熱性が高い材料の方が高額になります。

送料

送料は3Dプリンターのサイズによって異なります。安価なデスクトップタイプであれば送料は数千円~1万円程度。大型になるにつれ、数万円から数十万円と本体サイズに比例します。

後処理:洗浄機

光造形方式の3Dプリンターは造形後にIPA(イソプロピルアルコール)やエタノールなどで洗浄するための後処理機が必要な場合があります。材料が液体のレジンになっており造形物の表面にべたべたついている余分なレジンを落とすのに使用します。

基本的には上記の溶剤につけておくだけなので、容器であれば問題ありません。また専用の洗浄機をメーカーが出している場合があります。

後処理溶剤

造形後のレジンを洗い流す溶剤が必要です。一般的にはIPA(イソプロピルアルコールが代表的ですが、第二種有機溶剤に該当しないエコタールやエタノール、メタノールといった溶剤が必要です。価格帯は一斗缶(約14L)で1万円以下になります。ただ後処理溶剤は洗浄後なレジンが溶けだしてしまうため、産廃扱いになります。

年間保証

ほとんどの光造形方式の3Dプリンターで、3カ月から1年の無償保証が本体に含まれています。保証期間後は、延長保証料か次年度の年間保証料が別途かかります。年間保証料も3Dプリンターの大きさや価格帯に比例します。数万円からハイエンド機であれば数百万円になります。

インクジェット3Dプリンターの初期導入コスト

インクジェット方式はUV硬化レジンを積層するタイプの3Dプリンターです。ストラタシスのPolyJetタイプが代表的で、3Dプリンターの中ではハイエンド機の扱いになり高額です。

価格帯材料の価格付属品・後処理機送料年間保守費用等
300万円~5,000万円価格:高
数万円代から
洗浄液やサポート除去用の高圧洗浄装置などが必要発生する。3Dプリンター本体のサイズに比例して価格が変わる。本体価格とは別途必要。3Dプリンター本体の価格帯に比例
上記の表は大まかな目安です。詳しい価格や必要な項目は個別の機種ごとに異なります。

3Dプリンター本体

インクジェットタイプの3Dプリンターの本体価格は1台数百万円~数千万円になります。価格帯によって使用できる材料やできることが異なります。

UV硬化性樹脂材料

インクジェット方式の材料はUV硬化性樹脂になります。基本的には光造形3Dプリンターと同様の材料で、紫外線で固まる特性を持っています。価格帯は1㎏あたり数万円になり、光造形用のレジンの約倍の価格になります。

送料

送料は3Dプリンターのサイズによって異なります。最も安価な機種でも100kgを超えるため、数十万円がかかります。送料は本体のサイズによって異なります。

後処理機:サポート除去用

インクジェット方式の3Dプリンターはサポート材の除去を行うためにウォータージェット機が必要になります。光造形3Dプリンターとは違い、水で落とせる専用サポート材を使用するため、高圧洗浄機で簡単に除去することができます。ウォータージェット機は大きさによって異なりますが、1台数十万円程度になります。

年間保証

インクジェット方式の3Dプリンターは本体に1年の無償保証が含まれています。保証期間後は次年度の年間保証料が別途かかります。年間保証料も3Dプリンターの大きさや価格帯に比例します。数十万円からハイエンド機であれば数百万円になります。

SLSレーザー焼結3Dプリンターの初期導入コスト

SLSレーザー焼結方式はナイロンなどの粉末材料にレーザーをあてて焼結させて造形するタイプの3Dプリンターです。従来数千万円のハイエンドな機種でしたが、最近ではFormlabsのFuse1のように数百万円クラスの低価格帯が登場しています。

価格帯材料の価格付属品・後処理機送料年間保守費用等
500万円以下価格:低
グラム当たり11円程度
粉末除去装置などが必要発生する。3Dプリンター本体のサイズに比例。本体価格とは別途保守契約必要。
年間25万円~
2000万円以上価格:高粉末除去装置に加え、防塵・防爆対策が必要発生する。3Dプリンターが大型なため高額本体価格とは別途保守契約が必要。高額
上記の表は大まかな目安です。詳しい価格や必要な項目は個別の機種ごとに異なります。

3Dプリンター本体の価格

SLSレーザー焼結3Dプリンターの本体価格は低価格クラスで1台数百万円~500万円程度、高価格くらすで数千万円になります。価格帯によって使用できる材料やできることが異なります。

粉末材料:ナイロン、TPU、金属等

SLSレーザー焼結法の材料はパウダー材料になります。ナイロン粉末が中心となっており、ナイロン11やナイロン12、ガラス繊維配合の高強度ナイロンなどがあり、さらにはTPUや金属材料が使用できます。低価格クラスのレーザー焼結3Dプリンターではナイロンが中心で、ハイエンドクラスのレーザー焼結3Dプリンターは上記のようなさまざまな種類が使用できます。

送料

送料は3Dプリンターのサイズによって異なります。最も安価な機種でも100kgを超えるため、数十万円がかかります。送料は本体のサイズによって異なります。

後処理機:粉塵処理、防塵&防爆対策

SLSレーザー焼結方式の3Dプリンターは造形後に粉末で覆われているため粉末を除去して集め使用済み粉末を再利用するための後処理機が必要です。後処理機は100万円以上の価格帯で低価格なSLSレーザー焼結3Dプリンター用になります。一方、ハイエンドなSLSレーザー焼結3Dプリンターでは、防塵&防爆対策が必要になり建物そのものの改築なども必要になる可能性があります。

年間保証

SLSレーザー焼結方式の3Dプリンターは本体の製品保証以外に導入後の保守メンテナンス契約が必要になります。保守契約は3Dプリンター本体の価格に比例しており、安くて数十万円、高いと数百万円の価格になります。

初期導入に共通で必要なもの

3Dプリンターの種類に関係なく、初期導入時に共通で必要なものがあります。

パソコン

STLかOBJ形式の3Dデータを開きプリント設定を行うためのスライスソフトを使用するパソコンが必要になります。パソコンは3Dモデルを開くため、その3Dプリンターのソフトウェアが対応したスペック(OSのバージョン、グラフィックボードのバージョン等)を選ぶ必要があります。

スライスソフトウェア

3Dプリンターで3Dプリントするためにはプリント設定を行うためのソフトウェアが必要です。このソフトウェアは3Dプリンターのメーカーごとに異なっており、基本的に無償で利用ができます。CADソフトなどで設計したデータをSTLかOBJ形式(一部CADでそのまま利用可能もあり)で開き、プリント方向や積層ピッチなどを設定します。

台・机

デスクトップタイプの3Dプリンターを使用する場合には台や机などが必要になります。基本的に使用する3Dプリンターのサイズが収まる大きさで水平であれば問題ありません。

UPS無停電電源装置(あれば可)

3Dプリンターは電源ケーブルをコンセントにさして使用しますが、停電時などに備えてUPS無停電電源装置を設置しておくと安心です。UPSは停電などによって電力が断たれた場合にも電力を供給し続けてくれるため、造形が途中で止まることがありません。

3Dプリンターは積層しながら形にしていくため、途中で止まってしまうと、それまでの造形がすべて無駄になってしまいます。UPSの価格は1台1万円程度~数十万円まで幅広くあります。

追加であるとより便利なもの

3Dプリンターは3Dデータから直接造形物を作ることができますが、見た目や仕上がりは、金型成形に及びません。それは1層ずつ積層しながら造形していくという特性を持っているため、微妙な積層跡が残ってしまうためです。そのため造形後に後加工を施すことで、より高品質な仕上がりが可能です。

サンドペーパー

材料の種類によっては造形後にサンドペーパーで磨くことも可能です。サンドペーパーは1枚数百円から可能です。

研磨機

サンドブラストなどを使用した専用の研磨機を使用するとより効率的に表面の仕上がりを綺麗にすることができます。研磨機は1台数百万円程度になります。

塗料・下塗り・コーティング材

研磨した後は下塗りや塗装を施すことで造形物の見た目を綺麗に仕上げることができます。

まとめ

3Dプリンターの初期導入コストについてご紹介してまいりましたが、作りたいもののレベル・クオリティによって初期導入時に必要なものも異なります。単純にデータから形にするだけであれば、安価なデスクトップタイプの3Dプリンター1台からで造形が始められます。

ただ、用途や精度、仕上がりによって初期導入時のコストは大きくことなります。このあたりの価格の違いについては「3Dプリンターの価格の違い」で詳細にご紹介しておりますので、是非そちらをご参照ください。
また、3Dプリンターごとの詳細な初期導入費用が知りたい方は是非お問い合わせください。