3Dプリンターの基礎知識
3Dプリンターに関する疑問
3Dプリンターという言葉は広く知られるようになってきましたが、そもそも3Dプリンターはどんな技術で、どんなことができるのか?といった疑問があるかと思います。
また3Dプリンター関連の言葉は専門的な用語が多く、ものづくりになじみがない方からすると、そもそも言葉がわかりにくく、とっつきにくいという印象を持たれるかと思います。
そこで今回は3Dプリンターの基礎知識というテーマで、3Dプリンターの基本の基からご紹介したいと思います。
そもそも3Dプリンターとは?
そもそも3Dプリンターとは、どのような技術なのでしょうか?
一般的にプリンターというと、オフィスや家庭で使用する紙のプリンターをイメージされる方も多いかと思います。
しかし、3Dプリンターは、プリンターといっても全く異なる原理、方法の技術です。3Dのデータから直接物体を作れるため、なんとなくのイメージでプリンターと呼ばれていますが、わかりやすく言うと
“物体を重ねて作る方法”
といったほうがいいかもしれません。
例えば、ちょっと乱暴なたとえですがレゴブロックなどをイメージするといいかもしれません。ブロックを一つずつ積み重ねて形にすれば、いろいろな形を作ることができます。
3Dプリンターは、この重ねて作る技術、積層造形のことを指しています。海外では、3Dプリンターという言葉よりもadditive manufacturing(追加して製造する)といわれています。
3Dプリンターはこれまでの技術と何がちがうの?
それでは、3Dプリンターは、これまでのものを作る技術とどのような点が異なるのでしょうか?
上記で3Dプリンターは重ねて作ることをご紹介しましたが、これまでのものをつくる技術も簡単にご紹介しましょう。
金型
わたしたちの身の回りにあるさまざまな製品は、その大半が金型量産によってつくられています。金型量産とは、型を使ってモノを大量に作る技術です。
例えば、型に溶けたプラスチックを流し込んで固めると、型の形通りにものを作ることができます。
このように世の中にある大半のプラスチック製品が金型でつくられています。
切削
もうひとつものを作る技術の一つが切削です。切削とは削って作る方法です。プラスチックのかたまりをドリルで削って形にします。
切削では1点ものなどの加工で使用される技術です。
鋳造
金属を溶かして、型に流し込んで冷やして固める技術です。古い時代には仏像などをつくる技術として現代では指輪などの宝飾品を作る方法で鋳造が使用されています。
3Dプリンターが違う点
上記でご紹介した作り方と比べて3Dプリンターはどのような点が異なるのでしょうか?
次のような点が挙げられます。
型をつくるよりもはるかに低コストでものを作れる。
金型をつくる場合、どんなに小さいものでも1個あたり100万円単位で費用がかかります。一方で3Dプリンターでは1個作れば作った分の材料費しかかかりません。
積層するため形状の自由度がたかい。
金型や切削では、形状の制限があります。しかし3Dプリンターでは積み上げながら形にしていくため、形状の自由度が高いです。
大がかりな設備がいらない。
3Dプリンターでは、基本的にパソコンと3Dプリンターがあれば物を作ることができます。金型量産や切削加工機のような大掛かりな設備はいりません。
3Dプリンターでどんなことができるの?
次に実際に3Dプリンターを使うとどのようなことができるのでしょうか?ここでは3Dデータから物体を3Dプリントすることでできることをまとめました。
アイデアを形にする機会が増える
3Dプリンターが普及すると、アイデアを形にする機会が増えます。これまで製品やモノのアイデアを思いついても、形にするまでには多額の費用と時間がかかりました。しかし3Dプリンターがあればより低コストで、素早く形にすることができます。
好みに合わせたカスタマイズができる
これまでの金型をつかったものづくりでは、形状が少しでも違えば、その形の型を作る必要がありました。しかし3Dプリンターではデータから直接作ることができるため、ユーザーの好みに合わせたカスタマイズができます。より細かいニーズにこたえることができます。
試作から最終品まで一貫して3Dデータから作ることができる
製品をつくるときには、必ずテストの試作を作り、検証や修正を加え、何度も試行錯誤したのちに最終品まで仕上げます。3Dプリンターがあればこうした試作や製品化までを一貫して行うことができます。
在庫を持たない・最小限のオンデマンド製造
3Dプリンターでは、在庫を持たない、もしくは最小限にしたオンデマンド製造も可能です。注文があってから3Dプリンターで作ったり、保守メンテナンスなどのサービスパーツをデータで管理し、オンデマンドで製造するという方法もあります。
サプライチェーンの変革(製造拠点のローカル化)
また3Dプリンターをいろいろな場所に配置し、データをクラウド上で共有すれば、現場で3Dプリントし、組み立てるといった製造拠点のローカル化を行うことができます。従来の製造体制からは違う分散製造が可能です。
3Dプリンターで何がつくれるの?
このように3Dプリンターを使うと、いろいろなことができますが、実際にどのようなモノを作ることができるのでしょうか?
どんな方法があるの?
3Dプリンターには積み上げるという点は共通していても、さまざまな方法があります。ここでは、3Dプリンターのいろいろな造形方式についてご紹介します。
FDM方式
FDM方式は、フィラメントといわれる糸状のプラスチックをノズルを通して、溶かしてつみあげる方法です。
光造形方式
光造形方式はUVレジンという液体の樹脂に紫外線を照射して、1層ずつ固めて積み上げる方法です。
PolyJet方式
Polyjet方式は光造形と同種の紫外線で固まる液体樹脂を使用します。インクジェットのように噴霧し紫外線をあてながら固めていきます。
レーザー焼結法
レーザー焼結方式は粉末状の樹脂材料にレーザービームをあてて焼き固めて物体にしていく造形方式です。
この4種類が3Dプリンターのつくる方法ですが、これ以外にもこの4種類をベースに派生した作り方があります。
“積み上げる”という基本原理を中心にさまざまなアプローチが開発されています。
どんな材料が使えるの?
3Dプリンターではいろいろな材料が登場しています。大きく分けるとプラスチックと金属ですが、ここではプラスチックを中心ご紹介します。
フィラメント材料
FDM方式専用の材料です。一般的に私たちの身の回りで使用されている工業用のプラスチックで、加熱すると柔らかくなり、冷えると固まるという特性を持っています。
糸状の形状をしており、ノズルを通して積層します。種類は非常に豊富で、強度が高いものや熱に強いもの、紫外線につよいものなど多数あります。
レジン材料
光造形方式専用の材料です。もともと液体で、紫外線が当たることで固まります。ハンドメイドのレジンと同じ物性で、アクリルがベースになっています。さまざまな配合によって強度に強いものや熱に強いもの、鋳造で使えるものなど多数登場しています。
UV硬化性樹脂
PolyJet方式専用の材料です。こちらもUVレジンと同じ物性でもともと液体です。インクジェットのように吹き付けながら形にするため、いろいろな色を配合したり、質感を変えたりすることができます。
パウダー材料
レーザー焼結法式専用の材料です。ナイロンなどが中心で、粉末状です。レーザービームで焼き固めるため非常に高強度で精度の高い造形ができます。
いくらから買えるの?
3Dプリンターはいろいろな価格帯が登場しています。最も安い3Dプリンターですと1台数万円から購入することができます。一番高いと1億円近い金額になり、もはや生産設備に近くなります。その違いはどのような点にあるのでしょうか?
価格の違いとは?
3Dプリンターの価格の違いは主に以下のポイントです。
①造形サイズ サイズが大きくなれば値段も高くなります。 |
②使える材料 使える材料が多いほど、機械としての安定性が求められ高くなります。 |
③品質 仕上がりや強度、精度などが良いものは高くなります。 |
④自動化 プリントするための設定などが自動化されているほど高くなります。 |
基本的に「値段はうそをつかない」ということで価格に比例した性能になります。
10万円以下の
3Dプリンター
基本的にシンプルな機能になります。使える材料も1種類から2種類程度で、造形サイズも小さいです。「とりあえず何とか形にできる」というレベルで自動化機能などはありません。またミスプリントや調整なども自分で行わなければなりません。
30万円~50万円代の
3Dプリンター
30万円以上~50万円代の3Dプリンターになると、そこそこ自動化されていて、材料も複数使用できる機種が登場しています。ただメーカーの機種によって異なるので、自動化レベルと対応材料の2点を確認する必要があります。この2点は3Dプリンターに最も求められる機能である“安定性”に直結しているためです。造形サイズはいずれも小さいです。
50万円~100万円代の
3Dプリンター
50万円以上から100万円代の3Dプリンターでは、自動化されていて複数の材料に対応したデスクトップ型が登場し始めています。またエンプラ系などの高強度の材料が使えるようになっています。
100万円~500万円代の
3Dプリンター
100万円~500万円代の3Dプリンターになると、これまでの価格帯にプラスして造形サイズの大きさや強度・精度面のさらなる向上が挙げられます。より大きいものやより最終品レベルのものが作れ、用途が広がります。
500万円以上の
3Dプリンター
500万円以上の3Dプリンターになると、精度や強度などがより高くなり、試作の領域を超えて製造や小ロット生産が可能になります。
どんな問題点や課題があるの?
3Dプリンターにはどんな課題や問題点があるのでしょうか?まだまだ開発途上の技術であることから、これまでの加工技術に比べていくつかの点で課題が残ります。
サポート材
3Dプリンターならではですが、造形する際に物体を支えるサポート材がつきます(レーザー焼結は除く)。3Dプリンターは積み上げて重ねながら形にしていくため、形によって支えないと作れない部分があります。これを支えるのがサポート材です。サポート材は水や溶剤で流せるものもありますが、除去の跡や除去の手間などがかかります。
見た目
3Dプリンターで作られたものの見た目は、市場に出ている量産品と比べると見劣りがします。造形方式によっては積層の跡が残ってしまったり、サポート材の跡が残ってしまったりします。そのため3Dプリント後には研磨や塗装などの二次加工が必要の場合もあります。
精度
3Dプリンターで作られたものは、金型量産などと比べると精度が出にくいです。1個ずつ重ねて造形するため、厳密な意味で型のように毎回同じにすることはできません。また積み上げるという特性上、プリントする方向によって造詣物にかかる圧力が異なり、精度が変わります。
安定性
3Dプリンターの課題の一つが安定性です。3Dプリンターは、物体を化学変化させながら形にしてくため、その物体の特性を完全にコトンロールすることが必要です。このコントロールが素材の種類、作る形状、造形方式によってさまざまで、どの形状も必ず高品質に仕上げるにはそれなりの技術力が求められます。安定性は向上してきていますが、さらなる広がりが必要です。
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