Form3・Form3LのLFSテクノロジー
新たな次世代型3Dプリンターとして高精細・滑らかさが特長のForm3とForm3L。これまでの光造形3Dプリンターと比べて、どのような特長があり、どのような進化を遂げているのでしょうか?
本稿では、Form3/Form3Lの造形技術であるLFSテクノロジーについてその特長やメリット、これまでの光造形法との違いについてわかりやすくご紹介します。
LFSテクノロジーの意味
LFSテクノロジーはLow Force Stereolithographyの略です。Stereolithographyは光造形法の一つでもあるSLA方式のことで、LFSとは、造形中に造形モデルにかかる荷重力(Force)を低く(Low)抑えることで、高精細で滑らか、正確な造形を実現する3Dプリント方式のことです。
LFSテクノロジーの仕組み
それではLFSテクノロジーの仕組みについて、わかりやすくご紹介します。従来のSLA方式や、DLP方式とどう異なっており、どのような特長があるのかを二つの特長から解説いたします。
荷重力とは
LFSテクノロジーの仕組みをご紹介する前に、まず光造形3Dプリンターの荷重力に関する影響についてご紹介します。
LFSはこの荷重力を低くすることで、正確で高精細な造形を実現していることから、荷重力が加わる他の光造形3Dプリンターはどのような影響があるのでしょうか。
反転式の光造形3Dプリンターは、液体状のUV硬化レジンが浸されたタンクに、プラットフォームがつかり、UV光が当たることで1層ずつ硬化され形になります。
光造形3Dプリンターはこの硬化プロセスを繰り返し行うことで1個の物体を作り上げますが、プラットフォームが液面から上がる過程で剥離力がかかり、縦方向に形状が伸びる傾向にあります。
LFSを実現する二つの機能
LFSテクノロジーは二つの機能によって縦方向にかかる荷重を低くし、正確で高精細な造形を実現します。
ライト・プロセッシング・ユニット(LPU)
LFSを実現する第一のテクノロジーがForm3からユニット化されたライト・プロセッシング・ユニット(以下LPU)です。
LPUは紫外線を照射するレーザー機関部が組み込まれたユニットで、UVレーザーが常に垂直に照射されます。
LPU内では、ガルバノメーターが高密度レーザービームをY方向に配置し、空間フィルタを通過させ、フォールドミラーとパラボリックミラーに指示して、ビルドプレートに垂直なビームを一貫して照射します。
Form2ではレーザー機関部が3Dプリンター本体に組み込まれており、直接レーザービームをミラーに反射させて照射していました。そのため、レーザーが当たる場所によって、垂直に当たらず、斜めに当たり精度が一定ではありません。
またレーザースポットのサイズもForm2の120ミクロンから85ミクロンに小さくなり、より高密度で造形が可能になります。
フレキシブルレジンタンク
LFSを実現する第二の要素がフレキシブルレジンタンクです。フレキシブルレジンタンクはその名前の通り、レジンタンクの底に柔らかいフィルムが貼っており柔らかい伸び縮みするようになっています。
レジンタンクの底が伸び縮みすることによって、LPUでレーザービームが照射されビルドプラットフォームを引き上げる際に、造形モデルにタンクの底面が張り付くことで、剥離力を抑える効果があります。これにより縦方向に引き延ばされる力を極力抑え、正確な造形を実現します。
LFSテクノロジーの6大メリット
ここではLFSテクノロジーがもたらす6つのメリット・特長についてご紹介します。
細かい高精細ディティールと滑らかな仕上がり
LFSテクノロジーの最大の特長が細かい造形が可能な高精細ディティールと滑らかさの向上です。85ミクロンのレーザースポットで常に垂直にレーザーが照射されることによって、XYの平面の造形精度は25ミクロンを実現しました。
Z軸の積層ピッチは使用する材料によって異なりますが25ミクロン~300ミクロンで設定が可能です。
100ミクロンの積層ピッチがスタンダードですが、層と層のピッチ合わせが正確にできることから造形モデルの形状によっては成形品のような仕上がりを実現しました。
この滑らかさとディティールはLFSテクノロジー以外では高額でハイエンドなインクジェット3Dプリンターしかありません。
正確さと精度
LFSテクノロジーの特長の一つが造形モデルの正確さです。LPUによってレーザーがどの垂直に当たることと、フレキシブルレジンタンクによる剥離低減によってデータ通りの正確な造形が可能です。
また、複数造形モデルをプリントする場合にもLPUがレーザーの照射を垂直に保ったまま移動するため、どの場所で3Dプリントしても同じ精度で造形が可能です。
透明性の向上
LFSテクノロジーに進化することで、クリアレジンの透明性も向上しました。25ミクロンのXY解像度に加え、剥離力を抑えた層間密着性によって層と層のピッチ合わせがより正確になり、滑らかな質感が再現されます。
(Formlabsの内部テストではForm 2と比較して約10倍も剥離力が軽減されていることが示された)
これにより表面の仕上げと部品の透明度が向上しました。
サポートの取り外しやすさ
サポート材は3Dプリンターにとって重要な要素です。特にこれまでの3Dプリンターでは大量のサポート材がつき、造形後の後処理が大きな手間の一つです。
光造形3Dプリンターは、サポート材と造形に使用する材料が同じものを使用するため、サポート材を少なくすることもランニングコストを抑える上で重要です。
LFSテクノロジーでは、より細かい造形ができることから、サポート材が従来のForm2に比べて少ない本数で造形ができます。
また、サポート材と造形物の設置面も取り外しがしやすいライトタッチを実現。サポート材の跡をあまり残すことなく取り外すことができます。
等方性
LFSテクノロジーによる3Dプリントは等方性があります。等方性と異方性とは方向による強度の違いのことを指し、等方性が縦からも横からもかかる力に対して同じ強度を持つのに対し、異方性とは縦方向と横方向からの強度が違うことを指します。
SLAやLFSの光造形3Dプリンターで作られた造形物は等方性を持っています。LFSテクノロジーでも1層ずつ液体から硬化を重ねて物体になりますが、分子レベルでX、Y、Z面の違いがありません。
水密性
LFSテクノロジーによって3Dプリントされた造形物はソリッドでも内部構造がある形状でも優れた水密性を発揮します。水密性とは、圧力が加わった際に、密閉した液体が外部や内部に洩れない性質のことを指します。
この水密性の高さによって空気や流体の流れを制御し、機能や検証ができるプロトタイプを作ることが可能です。
LFSテクノロジーの幅広い用途
上記で挙げたような6つの特長から、LFSテクノロジーを採用したForm3、Form3Lは、幅広い用途に使用することが可能です。
高速プロトタイピング
LFSテクノロジーの高密度でキメの細かい3Dプリントによって、プロトタイピングがより高品質に高速に実現できるようになりました。
プロトタイプ専用のドラフトレジンを使用することで層と層のピッチ合わせが正確になったことにより300ミクロンでも比較的綺麗な造形が可能です。より素早く、より正確なプロトタイプが実現可能です。
透明な光学モデルや流体構造モデル
透明性のUPの部分でもご紹介しましたが、LFSテクノロジーによって表面精度が向上したことから透明性もアップしています。そのため光学モデルや流体構造などを確認するためのモデルに最適です。
製造関連
LFSテクノロジーによる高密度な造形と高強度な材料が組み合わさることで製造分野においてさまざまな用途で使用が可能です。
ABSの強度を持つTough 2000やポリプロピレンの靭性があるTough 1500、ポリスチレンライクのデュラブルでは、治具や小ロットパーツの生産にも役立ちます。
教育関連
LFSテクノロジーの特長の一つが高い再現性と正確さです。またForm3の高い安定性によって教育現場での幅広い3Dプリントを可能にします。データ通りに造形可能な性能と幅広い用途に対応した材料がさまざまな研究開発に役立ちます。
エンターテイメント
LFSテクノロジーによって滑らかさや高精細が増すことで、高い表面仕上げを求められるフィギュアなどのエンターテイメントに最適です。グレイレジンやホワイトレジンの滑らかさとディティールに加え、LFSの正確さが幅広い作品作りに役立ちます。
ジュエリー鋳造
LFSテクノロジーによってジュエリー鋳造用のキャスタブルワックスレジンも進化をとげています。特に造形モデルとサポート材との設置面が従来とは違い、より小さく少なくすることが可能になりました。
特に微細で細かい造形が求められるジュエリー用のタッチポイントはサポート材が取れた跡が残らないような仕上がりが求められます。よりタッチポイントの形状が微細になることで、後処理の手間が無い、高品質な造形が可能になります。
まとめ
LFSテクノロジーは新たな光造形3Dプリンターの造形技術として、3Dプリンターに求められる安定性と正確性、高品質な造形を実現しました。
またForm3とForm3Lでは1台でさまざまな材料を使用できることから、高い汎用性を提供します。新たなLFSテクノロジーの仕上がりを体験したい方は、是非無料プリントサービスをお申込みください。