3Dプリンターの価格の違いとは?選ぶ基準

3Dプリンターを選ぶ基準とは?

3Dプリンター選びの一番の課題の一つがわかりにくい“価格帯”です。一言で3Dプリンターといってもその種類は多岐にわたっており、価格帯もさまざまです。

特に造形方式、材料の種類、メーカーなどが多数にわたっており、なぜその価格なのか?という点がわかりづらい状況です。そこで本記事では、3Dプリンターの価格の違いについて、なるべく切り口を明確にしてご紹介し、3Dプリンターを導入する際の判断基準として役立てていただくよう指標を設けました。

今回は、3Dプリンター選びで最も気になる「価格」の判断基準についてご紹介します。

3Dプリンターの価格帯は数万円~5000万円以上

まず初めに3Dプリンターの価格帯ですが、現在3Dプリンターの価格帯は非常に幅広く、1台数万円から5000万円以上、ランニングコストも含めると1億円を超えるものまであります。この価格帯は大きく分類すると、以下のような形になります。

数万円~50万円以下
50万円~300万円
300万円~1000万円
1000万円~5000万円以上
3Dプリンターの大まかな価格帯

3Dプリンターを選ぶ指標・基準

この価格帯の違いはいくつかの指標で分けることができます。

1. 安定性
2. 品質
3. 材料の種類
4. 造形サイズ
5. 保守・保証

この5つの基準一つか、もしくはこの基準の組み合わせによって、価格帯が異なります。

例えば、ざっくり価格帯ごとの特長をいうと、

10万円以下の3Dプリンターは
造形サイズ:小使用できる材料:1種類×安定性:低

5000万以上の3Dプリンターは
造形サイズ:大×使用できる材料:10種類×安定性:高×年間保守有

ただ上記はあくまでもざっくりした例えなので詳しくは各機種ごとに確認が必要ですが、一つの判断基準として、上記の指標を持っていると3Dプリンターが選びやすくなります

この項目の違いによって、どういうものが作れるのか、試作品だけではなく、最終的な用途で使用するものも作れるのか、など用途が変わってきます。上記の切り口で価格帯の違いをご紹介したいと思います。

※注意点

1点注意しなければならない点があります。それが“造形テクノロジーの進化”です。3Dプリンターに関する多くの特許が2000年代に入ってから失効することで、開発が一気に進み低価格化が進みました。

多くのメーカーが従来からある造形テクノロジーをベースにしていますが、中には一部のメーカーで低価格でありながらも高い安定性と品質を実現するメーカーも登場しています。

ただ現在はこの低価格で優れた機種と単純に製法特許のみを利用した機種とが混在しているため、非常に選ぶのがわかりにくくなっています。

本記事ではこうした新たな造形テクノロジーを持つメーカーも踏まえ、各造形方式別に、価格の違いについてご紹介します。

3Dプリンターの安定性

3Dプリンターを選ぶ判断基準の一つとして、安定性は最も重要な項目の一つです。安定性が高ければミスが少なく、造形精度も高くなり、かつ業務に対する影響も少なくて済みます。

3Dプリンターにとっての安定性とはどのような点を指すのでしょうか。それは層と層を正確に、しっかりと密着させるという点に集約されます。3Dプリンターは、別名積層造形といわれ、他の加工技術と全く異なる手法で物体を形成します。また、素材の特性を変化させながら形にしていくため、いかに変化の影響を少なくして正確に積層していくかが鍵になります。

安定性がワークフローに与える影響

3Dプリンターの安定性は実はビジネスのさまざまな面に影響を与えます。安定性が高いと失敗する確率が低くなります。それにより、造形の中断時間が無くなり、材料の無駄がなくせます。

また造形が安定しているとピッチ合わせが正確になり、反りやゆがみが少なくなり、データ通りの形状を作ることができます。正確な造形は試作回数を削減し、時間とコストを減らすことができます。

例えば、1回の造形時間が数十時間で、材料コストが1万円かかる場合、途中まで積層がうまくいっていても、最後に積層がうまくいかなかったり、反ってしまったりするとそのプリントにかけていた時間と材料費は全て無駄になってしまいます。

安定性が高い3Dプリンター

安定性が高い機種として、主に以下のような機種があります。下記の3Dプリンターは、数多くの3Dプリンターのなかでも高い安定性を誇り、ミスプリントや失敗が少ない機種になります。

メーカー名 造形方式 価格帯 代表的機種
Formlabs 光造形 26万円~207万円 Form2Form3Form3Lなど
Formlabs レーザー焼結法 500万円~ Fuse1
Raise 3D FFF方式 49万円~107万円 Raise E2Raise Pro2Raise Pro2 Plus
MarkForged FFF方式、連続繊維強化方式 67万円~ Onyx、OnyxPro、Mark2、Xシリーズ
ストラタシス FDM方式 200万円~ F120、F170、F270、F370など
上記はI-MAKERがお勧めする独断で選んだ安定性が優れる機種です。

品質

3Dプリンターの価格を図る指標として品質が挙げられます。品質は、作りたいものによって異なりますが、以下の項目が挙げられます。

造形精度

3Dプリンターは1層ずつ積み上げながら形にしていくため、金型成形のような寸法精度は出ません。その時々の造形条件が微妙に異なることから、1個ずつ微妙に異なります。

造形精度は造形方式や価格帯によって大きく異なります。例えば、FDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターは、価格帯によって安定性もですが造形精度がかなりことなります。

また、精度はプリント方向によっても変わります。さらに3Dプリンターではデータ通りにどのレベルまで造形できるかが機種や造形方式、材料で大きく異なってきます。どの材料で、どのレベルまで作ることができるのかは一つの判断基準になります。

メーカー名 造形方式 価格帯 代表的機種
Formlabs 光造形 26万円~207万円 Form2、Form3、Form3L
Formlabs SLS
レーザー焼結
500万円~ Fuse 1
ストラタシス FDM方式 200万円~ F120、F170、F270など
ストラタシス PolyJet方式 400万円~ Objet30、J55など
上記はI-MAKERがお勧めする独断で選んだ安定性が優れる機種です。

強度

3Dプリンタ-を選ぶ基準として強度が挙げられます。この強度は材料の種類や機械の種類で異なります。層と層がどれだけ正確に位置合わせができるかによって、また層ごとの密着度によって強度も異なります。たとえ同じ材料でも使用する3Dプリンターで強度も厳密には異なります。

メーカー名 造形方式 対応材料 価格帯 代表的機種
Formlabs 光造形 タフ2000、タフ1500、デュラブル 26万円~207万円 Form2、Form3、Form3Lなど
Raise3D FFF ABS、PC、ナイロン、カーボンファイバー配合ナイロン等 49万円~107万円 Raise E2、Raise Pro2、Raise Pro2 Plus
Markforged FFF方式、連続繊維強化方式 ナイロン、カーボンファイバー強化ナイロン、ガラス繊維強化ナイロン 67万円 OnyxPro、Mark 2など
Formlabs SLS
レーザー焼結
ナイロン12、ナイロン11 500万円~ Fuse 1
ストラタシス FDM方式 ABS、PC、カーボンファイバー配合ABS 200万円~ F120、F170、F270など
上記はI-MAKERがお勧めする独断で選んだ安定性が優れる機種です。

滑らかさ・精細さ

3Dプリンターは滑らかさや精細さも判断基準の一つです。特に外観の見た目が求められるモックアップやコンセプトモデルなどは滑らかな質感が表現できる光造形3Dプリンターやインクジェット3Dプリンターが最適です。一方FDMタイプの3Dプリンターは積層跡が残ってしまうため、滑らかさが要求される造形には不向きです。

メーカー名 造形方式 価格帯 代表的機種
Formlabs 光造形 26万円~207万円以上 Form2、Form3、Form3L
ストラタシス インクジェット方式 400万円~ Objet30、J55
上記はI-MAKERがお勧めする独断で選んだ安定性が優れる機種です。

材料の種類

使用できる材料の種類も3Dプリンターの価格に影響を与えています。材料によってできること、できないことが異なります。高強度や高耐熱などの特長のある材料は使用できる機種などが決まっています。また、3Dプリンターのレベルによって使用できる材料、使用できない材料が決まっています。

材料の価格は3Dプリンターの価格帯に比例します。高価格帯の3Dプリンターは材料も造形が安定するために専用に作られているためです。

造形サイズ

造形サイズも3Dプリンターの価格に影響を与えています。一般的に大きいサイズが作れる3Dプリンターの方が高額です。また、大きくなればなるほど、大きいものを正確に造形するために、3Dプリンターは安定性を保つための仕組みが求められます。また3Dプリンターは機種と材料の種類によってできる造形サイズがことなります。

例えばFDM方式ではPLAフィラメントは大きい造形物ができたとしても、ABSは反ってしまい庫内温度の加熱機能が搭載されていない3Dプリンター以外、大型の造形物ができないなどの制約があります。

保守・保証料

3Dプリンターの価格帯には保守・保証料も大きな影響を与えています。基本的に3Dプリンター本体の価格が高額な機種は保守・保証料がかかり、年間保守費用も本体価格に比例します。

造形方式別、価格の基準

造形方式別で価格は異なるのでしょうか?大きく分類すると次のような表になるかと思います。

FDM方式

FDM方式は滑らかさが求めあれる造形向きではなく、工業用製品のパーツや、一定の強度が求められるプロトタイプ、最終品の製造に使用できます。価格帯は10万円以下から5000万円以上まで幅広いです。低価格な機種は小さいものを1種類の材料でしか作ることができません。また数百万円以上の機種から安定性が高くなります。FDM方式の価格については別途ご紹介します。

光造形法

光造形方式は滑らかさや高精細さを表現するのに向いている3Dプリンターです。価格帯は10万円から数百万円まではばひろいです。世界的にはFormlabsのForm3、Form3Lが圧倒的なシェアを占めています。手ごろな価格帯に加え、1台で豊富な材料ラインナップに対応しており、使い方も簡単で一定の品質が出せるのが理由です。光造形法式の価格については別途ご紹介します。

インクジェット方式

インクジェット方式は1台あたり数百万円から数千万円になります。光造形法の上位機種という位置づけで、滑らかさや高精細さなどが光造形よりも優れ、ハイエンドな機種ではフルカラー造形も可能です。またサポート材なども専用材を使用するため、後処理や仕上がりも綺麗です。インクジェット方式の価格については別途ご紹介します。

レーザー焼結法

レーザー焼結法はナイロンや金属粉末にレーザービームを照射して焼結し物体にする造形方式です。サポート材がつかない点や粉末材料が再利用できるなど、高強度な造形物を作れることから重宝されています。しかし、数千万円クラスの高額な機械で導入するためのハードルも高いです。ただ2014年に特許が失効することで、FormlabsのFuse 1のように、数百万円クラスの低価格機が登場しています。

まとめ

3Dプリンターの価格帯はさまざまですが、選ぶ基準を絞ることで、最適な機種やメーカー、材料が絞り込まれます。基準が絞り込めれば、初期導入コストやランニングコストなどもより具体的に算出することが可能です。

アイ・メーカーでは、貴社の状況に応じた最適な3Dプリンターを具体的に根拠を示してご提案いたします。是非、メール・お電話でお問い合わせください