3Dプリンターのランニングコスト:造形方式別

3Dプリンターのランニングコストは何がかかるのか

3Dプリンターは導入した後も、使用量に応じてランニングコストがかかります。材料だけではなく、本体に付属する消耗品や、後処理にかかる溶剤、保守・メンテナンス費用などさまざまなランニングコストがあります。

そこで今回は3Dプリンターを導入した後、どのようなランニングコストがかかり、大まかな費用はどの程度なのかを詳細にご紹介したいと思います。

主なランニングコストの項目

材料費ランニングコストの中心的な費用。材料の種類・3Dプリンターの種類によって異なる。
後処理用溶剤サポート除去や洗浄に使用する溶剤。ランニングコストとしては低い。
その他の消耗品造形に使用するパーツ類。どの3Dプリンターも定期的に交換が必要となる。
年間保守費用初年度は基本的に本体価格に含まれる。次年度以降は年間保守料がかかる。

具体的な個別の材料の価格、3Dプリンターの造形方式などによって異なってくるので、すべてのパターンは個別の3Dプリンターのページ、もしくはお問い合わせいただければと思いますが、ここでは、3Dプリンターを以下のパターンを想定してランニングコストの目安や、なぜこのコストがかかるのかという点をご紹介してみたいと思います。

3Dプリンターのパターン

ランニングコストをシミュレーションする際に、以下の3Dプリンターのパターンを想定して行います。なぜこのパターンかというと、以下のパターンに分けることで、ほとんどの造形ニーズをカバーすることができます。

FDM方式低価格本体価格50万円以下
FDM方式中価格本体価格50万円~200万円程度
FDM方式高価格本体価格200万円~1000万円、1000万円以上
光造形方式低価格本体価格50万円以下
光造形方式中価格本体価格50万円~200万円
インクジェット方式高価格本体価格300万円~1000万円以上
レーザー焼結方式高価格本体価格300万円~

上記の価格表示はあくまでも大まかな目安になります。正確な金額は機種・使用する材料ごとによって見積もる必要があります。

それでは、上記目安に則って、ランニングコストをご紹介しましょう。

FDM方式(低価格):本体価格50万円以下のランニングコスト

FDM方式の3Dプリンターで低価格は非常に多数の機種が登場しています。1台数万円から50万円以下を「低価格」なくくりにしました。

主な機種UPシリーズAFINIAシリーズなど
対応材料PLAが中心、一部ABSに対応
できること試作中心
必要なランニングコスト材料、ノズル、プラットフォームといった消耗品

材料のランニングコスト

50万円以下のFDM方式はPLAフィラメント(一部、ABSフィラメント)が中心になるため、材料も安価なフィラメント材料になります。メーカー純正のフィラメントやフィラメントメーカーの材料が使用できます。

例)材料の価格例

PLAフィラメントの価格約2,000円~5,000円程度(1㎏単位)
ABSフィラメントの価格約2,000円~5,000円程度(1㎏単位)

消耗品のランニングコスト

押出ノズルやプラットフォームなどが使用頻度に応じて交換になります。押出ノズルはフィラメントが詰まったりするため、定期的なメンテナンスと交換が必要。

例)消耗品の価格例

押出ノズルの価格約10,000円~20,000円程度
プラットフォームの価格約数千円程度

年間保守料

低価格な50万円以下のFDM3Dプリンターは年間保守料が本体に含まれているケースが多く、次年度以降は各パーツの有償交換のケースが多いです。交換もユーザー側でパーツを購入し自分でメンテナンスするという方法になります。

FDM方式(中価格):本体価格50万円~200万円程度

50万円~150万円、200万円程度の3Dプリンターを中価格帯に分類しました。このクラスの3Dプリンターになると使用できる材料の種類も増えます。比較的造形の仕上がりも綺麗になります。ただし大きい造形物は反りなどが発生しやすいので、事前に無料テストプリントを利用されることをお勧めします。

主な機種Raise3Dシリーズ、MarkForgedシリーズ、InfinityFUNMATシリーズなど
対応材料PLA、ABS、PC(ポリカーボネート)、カーボンファイバー配合材料など
できること試作、治工具、小さいパーツなど
必要なランニングコスト材料、ノズル、プラットフォーム、年間保守料

材料のランニングコスト

中価格帯のFDM方式は使用できる材料が一気に広がります。材料の価格帯も幅広く、高強度な材料になると1㎏数万円以上もかかります。材料のランニングコストは材料の種類によって異なります。

例)材料の価格例

PLAフィラメントの価格約2,000円~5,000円程度(1㎏単位)
ABSフィラメントの価格約2,000円~5,000円程度(1㎏単位)
PCフィラメントの価格約5,000円程度(1㎏単位)
カーボンファイバー配合ナイロン約10,000円~30,000円程度

消耗品のランニングコスト

押出ノズルやプラットフォームなどが使用頻度に応じて交換になります。押出ノズルはフィラメントが詰まったりするため、定期的なメンテナンスと交換が必要です。

例)消耗品の価格例

押出ノズルの価格約10,000円~40,000円程度
プラットフォームの価格約数千円程度

年間保守料

中価格帯のFDM 3Dプリンターは初年度(ないしは3カ月)の年間保守料は本体に含まれているケースが多いです。次年度以降は別途年間の保証料を契約するという形です。
次年度以降の年間保証料の目安;10万円~100万円程度、メーカーによってことなります。

FDM方式(高価格):本体価格200万円~1000万円以上

本体価格が200万円から1000万円、あるいはそれ以上の価格帯の3Dプリンターを高価格帯に分類しました。このクラスの3Dプリンターになると安定性と精度も各段に増し、FDM方式の課題である“反り”なども抑える機能が搭載されています。

主な機種ストラタシス(F123シリーズFortusシリーズF900など)
対応材料PLA、ABS、PC(ポリカーボネート)、カーボンファイバー配合材料、TPU、スーパーエンジニアリングプラスチックなど
できること試作、治工具、工業用パーツ
必要なランニングコスト材料、後処理溶剤、年間保守料

材料のランニングコスト

高価格帯のFDM方式は使用できる材料が一気に広がると同時に、メーカーが3Dプリンターに最適な材料設計をしているため価格帯も高額になります。ただその分、安定性と強度、精度は中価格帯に比べてはるかに向上しています。材料の消費量は、3Dプリンターのサイズによって異なります。

例)材料の価格例

ABSフィラメントの価格約70,000円程度(1㎏単位)
PCフィラメントの価格約80,000円程度(1㎏単位)
カーボンファイバー配合ナイロン約80,000円程度(1㎏単位)
ウルテム約100,000円程度(1㎏単位)

消耗品のランニングコスト

高価格帯のFDM 3Dプリンターは消耗品として、サポート専用材料とサポート材を除去するための溶剤などがかかります。パーツ類などは年間保守料に含まれています。

例)消耗品の価格例

サポート専用材料の価格約70,000円~80,000円程度(1㎏)
サポート除去剤の価格約7千円~25,000円程度(4.5L~18L)

年間保守料

高価格帯のFDM 3Dプリンターは初年度の年間保守料は本体に含まれています。次年度以降は別途年間の保証料を契約するという形ですが、本体価格によって大きく異なります。

例)次年度以降の年間保証料の例

F120(本体価格148万円)の場合264,000円
F370(本体価格1088万円)の場合990,000円
F900(本体価格5500万円)の場合585万円

光造形方式(低価格):本体価格50万円以下の
ランニングコスト

光造形方式の3Dプリンターの低価格帯は非常に多数の機種が登場しています。1台50万円以下の機種がほとんどで、10万円以下の機種も多数登場しています。アマゾンなどで手軽に購入することができます。

主な機種XYZ、FLASHFORGE、ELEGOO、ANYCUBICなど
対応材料レジン
できること試作、模型、フィギュアなど
必要なランニングコスト材料、プラットフォーム、洗浄用液といった消耗品

材料のランニングコスト

50万円以下の光造形方式は材料も安価なレジンになり、最安では1,000円~6,000円程度(500g)で利用することができます。

消耗品のランニングコスト

光造形3Dプリンターの消耗品のランニングコストは、大きく分類して2種類に分けられます。ビルドプラットフォームやレジンタンクといった直接3Dプリントを行うもので、プラットフォームは、造形物を積層する土台です。レジンタンクはレジンをためるトレイになります。また光造形3Dプリンターは造形後にIPAやアルコールで洗浄を行うため、洗浄液も消耗品になります。

例)消耗品の価格例

ビルドプラットフォーム・レジンタンク約10,000円~20,000円程度
IPA/エタノール/エコタール5,000円~8,000円(14リットル)

年間保守料

低価格な50万円以下の光造形3Dプリンターは年間保守料が本体に含まれているケースが多く、次年度以降は延長保証料、もしくはパーツの有償交換になります。交換もユーザー側でパーツを購入し自分でメンテナンスするという方法になります。

光造形方式(中価格):本体価格50万円~200万円の
ランニングこすと

光造形方式の3Dプリンターの中心的な存在が中価格帯の機種です。価格帯が1台50万円から200万円で、使用できる材料も多岐にわたっており、滑らかさで高精細な質感が特長です。

主な機種Formlabs Form 3Form 3LForm 3B、Form 3BL、BlackRayなど
対応材料UV硬化レジン
できること試作、模型、フィギュア、治工具、歯科用生体適合モデルなど
必要なランニングコスト材料、プラットフォーム、洗浄用液といった消耗品

材料のランニングコスト

中価格帯の光造形方式は材料も特定の用途に特化したレジンが多く、価格帯も10,000円~50,000円程度(1リットル)で利用することができます。

例)材料の価格例

Formlabsスタンダードレジン18,800円(1リットル)
Formlabs タフレジン(ABSライク)21,800円(1リットル)
Formlabsキャスタブルワックス(鋳造用)37,800円(1リットル)

消耗品のランニングコスト

中価格帯の光造形3Dプリンターの消耗品も、大きく分類して2種類に分けられます。ビルドプラットフォームやレジンタンクといった直接3Dプリントを行うもので、プラットフォームは、造形物を積層する土台です。レジンタンクはレジンをためるトレイになります。また光造形3Dプリンターは造形後にIPAやアルコールで洗浄を行うため、洗浄液も消耗品になります。

例)消耗品の価格例

ビルドプラットフォーム・レジンタンク約10,000円~20,000円程度
IPA/エタノール/エコタール5,000円~8,000円(14リットル)

年間保守料

中価格帯の光造形3Dプリンターは年間保守料が本体に含まれているケースが多く、次年度以降は延長保証料、もしくはパーツの有償交換になります。交換もユーザー側でパーツを購入し自分でメンテナンスするという方法になります。

インクジェット方式 高価格:本体価格300万円~1000万円以上

インクジェット方式の3Dプリンターは光造形方式の上位機種という位置づけになります。本体価格が300万円から1000万円、あるいはそれ以上の価格帯があります。このクラスの3Dプリンターになると精度も高精細、滑らかさ、カラー表現が各段に増し、用途も広がります。

主な機種ストラタシス(ObjetシリーズJシリーズ
対応材料UV硬化性樹脂
できること試作、治工具、工業用パーツ、樹脂金型、フルカラー造形
必要なランニングコスト材料、後処理溶剤、年間保守料

材料のランニングコスト

高価格帯のインクジェット方式は使用できる材料が多種多様です。液体状のUV硬化性樹脂で硬質なカラー材料から透明、半透明、高耐熱、さらにはCMYKWを掛け合わせてフルカラーの表現も可能になります。

例)材料の価格例

硬質カラー材料の価格約38,000円~58,000円(1㎏単位)
硬質透明材料の価格約45,000円~64,000円(1㎏単位)
ゴムライク材料の価格約50,000円~64,000円(1㎏単位)

消耗品のランニングコスト

高価格帯のインクジェット3Dプリンターは消耗品として、サポート専用材料がかかります。パーツ類などは年間保守料に含まれています。

例)消耗品の価格例

サポート専用材料の価格約38,000円程度(1㎏)

年間保守料

高価格帯のインクジェット 3Dプリンターは初年度の年間保守料は本体に含まれています。次年度以降は別途年間の保証料を契約するという形ですが、本体価格によって大きく異なります。

次年度以降の年間保証料の例

Objet 30 Pro(本体価格410万円)の場合750,000円
J55(本体価格1260万円)の場合174万円
J850 (本体価格4820万円)の場合462万円

レーザー焼結(SLS)方式 高価格:本体価格300万円~

レーザー焼結(SLS)方式の3Dプリンターはナイロンパウダーにレーザービームを照射して焼結させる3Dプリンターです。本体価格が300万円から1000万円、あるいはそれ以上の価格帯があります。レーザー焼結法は精度と強度を併せ持ち、高精細で最終品などにも利用が可能です。

主な機種Formlabs Fuse 1
対応材料ナイロン12/ナイロン11
できること試作、治工具、工業用パーツ、最終品
必要なランニングコスト材料、年間保守料

材料のランニングコスト

高価格帯のレーザー焼結方(SLS)の材料は粉末状のナイロンです。ナイロンパウダーはキロ当たり1万円程度で利用が可能です。またサポート材が必要なく、材料の再利用も可能で、コストパフォーマンスに優れる製法です。

例)材料の価格例

ナイロン12パウダーの価格約10,000円~(1㎏単位)

年間保守料

高価格帯のレーザー焼結 3Dプリンターは初年度の年間保守料は本体に含まれています。次年度以降は別途年間の保証料を契約するという形ですが、本体価格によって大きく異なります。

まとめ

3Dプリンターのランニングコストは、3Dプリンターの価格帯にほぼ比例するといってもいいでしょう。高額な3Dプリンターであれば、材料と年間保守費用なども比較的高くなります。ただその分、安定して、高品質で、いろいろな用途に対応した造形が可能となります。
何よりもご用途にあったうえで、ご予算に収まる形で造形方式と3Dプリンターを選ばれることが第一です。

また、より用途に応じたより詳細なランニングコストを算出するためには、造形するデータや大きさなどによって正確に見積もることも可能です。是非初期導入コストやランニングコストなど価格面でお困りの場合にはお問い合わせください。