3Dプリンターの樹脂材料の価格とは?

3Dプリンターの樹脂材料の価格帯について

3Dプリンターで扱える素材は、さまざまですが樹脂、プラスチックが最も使用される素材の一つです。“樹脂”と一言で言っても、その種類は非常に多く、価格帯も樹脂(プラスチック)の種類、3Dプリンターの種類によって大きく異なります。

そこで今回は、3Dプリンターの樹脂材料の価格帯に焦点を当て、かつ対応している3Dプリンターや使い勝手、できることなどにふれつつ、ご紹介していきたいと思います。

種類別3Dプリンターの樹脂材料の価格帯

3Dプリンターの樹脂材料は大きく分類して4つの種類に分けることができます。各造形方式で使用できる樹脂の種類が異なっており、価格帯だけではなくできることも異なります。

造形方式FDM/FFF光造形インクジェットレーザー焼結
樹脂の種類熱可塑性樹脂UV硬化レジンUV硬化性樹脂熱可塑性樹脂
形状個体(フィラメント) 液体 液体 粉末
主な種類PLAABSPC、PP、TPUナイロンPETG、ウルテム、PEEK、カーボンファイバー配合材などアクリル、ABS
ライク
PPライクPEライク、ゴムライク、高耐熱、シリコーンライクなど
アクリル、ABS
ライク、PPライク、PEライク、ゴムライク、高耐熱、フルカラーなど
ナイロン、TPUなど
特長高強度高精細・滑らか 高精細・滑らか高強度・高精度
後処理サポート除去 洗浄&サポート除去 洗浄&サポート除去粉末除去
注意点反りやすい、湿度対策、ノズルつまり洗浄が必要 洗浄が必要 粉末対策
サポート材モデル材・サポート専用材
(手で取り外し、水溶性)
モデル材 (手で取り外し)サポート専用材
(ウォータージェット)
なし
(サポートはつかない)
材料の価格帯(1㎏目安)2,000円~100,000円程度 2,000円~37,800円程度 58,000円~ 10,000円~
装置の価格帯数万円~5,000万円以上 数万円~200万円以上 400万円~5000万円以上 500万円~

見ていただくとわかる通り、3Dプリンターの樹脂材料の価格帯は非常に幅が広く、1㎏あたり2千円~高いと10万円近い値段がします。この値段の違いはどのような点にあるのでしょうか?

3Dプリンターの樹脂材料の価格の違いとは?

3Dプリンターの樹脂材料もピンからキリで1㎏あたり2,000円以下のものから、1㎏あたり10万円を超えるものもあります。この値段の違いはどのような点にあるのでしょうか?

基本的に前提条件として、3Dプリンターの樹脂材料の値段は3Dプリンター本体の価格に比例します。

テクノロジーの進化で一部の例外はありますが、基本的に3Dプリンターの本体の値段が高くなればなるほど、できることが増え、性能が高くなります。

例えば、、

1㎏あたり2千円以下の樹脂材料が使用できる3Dプリンターは10万円、30万円以下の機種がほとんどです。

この10万円以下の3Dプリンターができることは、批判を恐れずに言えば、「データ通りに大まかにカタチにする」というのが現状です。しかも形にできるサイズや形状はかなり限定されます。

また、プリントが必ずしも毎回成功するわけではありません。

シンプルで小さい形状で、大まかな形だけ見たいというのであれば、低価格な樹脂材料で可能です。

しかし、高強度なものが作りたいとか、高精度なものが作りたい、耐熱性が高いものが作りたい、滑らかなものが作りたい、など、どのようなものを求めるかによって、樹脂材料の価格は大きく異なってきます。

さらに、ミスプリントや失敗が少なく安定してプリントできる機種となると、価格も異なってきます。

樹脂の値段=用途×安定性×大きさ

それでは、各造形方式ごとに樹脂材料別の価格や安定性、特長、大きさをご紹介してまいります。

1㎏あたりの価格帯価格の根拠
低価格用 FDM/FFF 3Dプリンター用フィラメント2,000円~20,000円程度サードパーティ製なため。その分材料と3Dプリンターの相性は機種ごとに異なる。
高価格用 FDM3Dプリンター用フィラメント10,000円~180,000円程度庫内温度の加熱機能があることから、高精度、高強度、大きい3Dプリントが可能なため。
低価格用 光造形3Dプリンター用レジン3,000円~5,000円程度サードパーティ製なため。その分材料と3Dプリンターの相性は機種ごとに異なる。
高価格用 光造形3Dプリンター用レジン18,800円~37,800円材料ごとに造形に最適な調整(温度、粘度、レーザーの当て方)をすべて自動で行うため正確な造形ができる。
インクジェット用 UV硬化性樹脂38,000円~50,000円高精細、滑らかで機種に最適化されているため。
レーザー焼結用 パウダー11,000円~13,500円機種に最適化されており、材料循環率が高い。

FDM/FFFタイプの3Dプリンター用樹脂材料の価格

FDM/FFFタイプの3Dプリンター用樹脂材料の価格は、3Dプリンター本体の価格帯と種類ごとで値段が異なります。ここでは家庭用低価格の樹脂材料と、業務用、工業用3Dプリンターでそれぞれご紹介します。

家庭用・低価格(100万円代以下)のFDM/FFF 3Dプリンター用の樹脂材料

家庭用・低価格3Dプリンターではさまざまな材料が登場しています。ただし3Dプリンターの種類によって、使える材料、使えない材料が異なっています。

種類価格帯(1㎏あたり)対応3Dプリンターの価格帯造形サイズ用途特長・注意点
PLA
2,000円~4,000円程度数万円~小~大大まかな形
試作
植物由来の樹脂。いろいろな種類がある。
ABS2,000円~6,000円程度30万円以上~小~中小さい強度パーツ。試作反りやすく、低価格3Dプリンターではコントロールが難しい。
ASA6,000円~50万円以上~小~中耐候性がある高強度試作、パーツ反りやすく、低価格3Dプリンターではコントロールが難しい。
PETG2,000円~6,000円程度50万円以上~小~中試作、小さい強度パーツプリンターによってコントロールが難しい。
PC
ポリカーボネート
6,000円~50万円以上小~中高強度パーツ、治具など反りに注意。プリンターによってコントロールが難しい。
TPU/TPE(ゴム)7,000円~30万円以上ゴムの試作など。薄さによって硬さが異なるプリントスピードなどコントロールが難しい。
PP7,000円~100万円以上小~中ポリプロピレンの試作、パーツ張り付きにくいため専用吸着シートが必須。
ナイロン9,000円~100万円以上小~中高強度、耐衝撃性パーツ湿気の影響を受けやすい。乾燥が必須。
ガラス繊維配合材料21,800円~100万円以上小~中高強度、耐薬品性、耐UV性パーツ高強度ノズルが必須。
カーボンファイバー配合材料14,800円~100万円以上小~中高強度、耐熱性、耐薬品性高強度ノズルが必須。

業務用(100万円以上)のFDM/FFF 3Dプリンター用の樹脂材料

業務用の3Dプリンターと家庭用3Dプリンターの最大の違いは、庫内温度の加熱機能があるかないかです。業務用と家庭用の最大の違いは「大型でも反らずに正確に高強度に造形できる点」です。業務用はストラタシスのFDM 3Dプリンターが中心になります。

種類価格帯(1㎏あたり)対応3Dプリンターの価格帯造形サイズ用途特長・注意点
PLA10,000円~400万円以上小~大試作大型まで正確に造形できる。
ABS75,000円200万円以上~小~大高強度試作、高強度パーツ。治工具大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度
ASA75,000円200万円以上~小~大耐候性がある高強度試作、パーツ大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度
ナイロン95,000円~1,000万円以上小~大高強度、耐衝撃性パーツ、治工具大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度。
ポリカーボネート80,000円~1,000万円以上小~大高強度、耐衝撃性パーツ、治工具大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度。
TPU(ゴム)100,000円~1000万円以上小~大ゴムパーツ類大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度。
ナイロン12-CF(カーボンファイバー配合)81,000円~1,000万円以上小~大高強度、高剛性、耐疲労性のパーツ、最終品大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度。
ウルテム106,000円~3,000万円以上小~大耐熱・、耐薬品、難燃、静電気防止等。大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度。
アンテロ800175,000円~5000万円以上小~大耐薬品性、低アウトガス大型でも反らずに正確に造形可能。密着性が高く高強度。

光造形タイプの3Dプリンター用樹脂材料の価格

光造形3Dプリンターの材料は、液体状のUV硬化レジンです。紫外線があたることで硬化する特性を持っており、滑らかで高精細な仕上がりが可能です。ただし材料の価格帯も機種ごとで異なっています。日本国内では、Formlabs社のForm3Form2用と、それ以外の低価格機種で材料が異なります。

家庭用・低価格(30万円代以下)の光造形 3Dプリンター用の樹脂材料

光造形でも家庭用・低価格3Dプリンターではさまざまな材料が登場しています。ただし3Dプリンターの種類によって、使える材料、使えない材料が異なっています。また種類も少ないのが現状です。

価格帯(1Lあたり)対応3Dプリンターの価格帯造形サイズ用途特長・注意点
ELEGOO3,000円~10万円以下試作、モックレジンごとのプリント設定ができない
NOVA3D4,000円~10万円以下試作、モックレジンごとのプリント設定ができない
ANYCUBIC4,000円~10万円以下試作、モックレジンごとのプリント設定ができない

光造形 (100万円代以下)の3Dプリンター用の樹脂材料

100万円以下の光造形3Dプリンターでは、FormlabsのForm3、Form3LForm2が代表的です。この3機種は、UV硬化レジンが純正のものになります。上記でご紹介した低価格とは異なり、レジンの温度や粘度、レーザーの当て方がレジンごとに完全にカスタマイズされており、高い安定性を誇ります

種類価格帯(1㎏あたり)対応3Dプリンターの価格帯造形サイズ用途特長・注意点
グレイ18,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大試作
模型
フィギュア
非常に滑らかで高精細
ホワイト18,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大試作
模型
フィギュア
非常に滑らかで高精細
ブラック18,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大試作
模型
非常に滑らかで高精細
クリア18,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大試作
光学モデル
模型
高い透明性。滑らかで高精細。
タフ200021,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大ABSライク
高強度パーツ
機能性試作
治工具
ABSの強度と耐久性を再現。
タフ150021,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大PPライク
高強度パーツ
スナップフィット
治工具
PPの靭性と強度を再現。折り曲げできる。
デュラブル21,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大PEライク
高強度パーツ、スナップフィット、治工具
PEライクで適度な靭性と耐久性を持つ。
ハイテンプ24,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大高耐熱パーツ、試作238℃の耐熱性を持つ。
リジッド400024,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大高強度パーツ、試作ガラス繊維配合で硬い。滑らかなホワイトの仕上がり。
リジッド10K37,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大高強度パーツ、高耐熱パーツセラミック配合で硬い。200℃を超える高耐熱。
フレキシブル80A24,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大ゴムライクパーツ、ゴムの試作ショア硬度80Aの硬さ
エラスティック50A24,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
207万円(Form3L)
小~大シリコーンライク、試作ショア硬度50の硬さ
キャスタブルワックス37,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
鋳造用ワックスモデル本物のワックスを20%配合。しっかり固め
キャスタブル4037,800円26万円(Form2)
64万円(Form3)
鋳造用ワックスモデル本物のワックスを40%配合。柔らかめ

インクジェットタイプの3Dプリンター用樹脂材料の価格

インクジェット3Dプリンターの材料は、液体状のUV硬化性樹脂です。光造形のレジンと同様、紫外線があたることで硬化する特性を持っており、滑らかで高精細な仕上がりが可能です。光造形のさらにハイエンドという位置づけで材料費も高くなります。

PolyJet 3Dプリンター用の樹脂材料の価格

インクジェット方式はストラタシスのPolyJet 3Dプリンターが代表的です。PolyJet方式は単色で材料を使用する場合と掛け合わせて色や硬度を変えて造形することが可能です。

種類価格帯(1㎏あたり)対応3Dプリンターの価格帯造形サイズ用途特長・注意点
硬質材料
グレイ、ブラック、
ホワイト
38,000円~400万円~5,000万円小~大試作
模型
フィギュア
非常に滑らかで高精細
透明・半透明材料43,000円2,000万円小~大フルカラーモデル。試作。非常に滑らかで高精細
他の材料と掛け合わせて使用可能
PPライク45,000円400万円~5,000万円小~大高強度試作
治工具
非常に滑らかで高精細
ラバーライク45,000円400万円~5,000万円小~大ゴムライク試作、ゴムパーツ非常に滑らかで高精細
他の材料と掛け合わせて使用可能
ABSライク50,000円2,000万円小~大ABSライク
高強度パーツ
機能性試作
治工具
樹脂型
ABSの強度と耐久性を再現。
生体適合材料45,000円2,000万円小~大生体適合パーツ生体適合可能

SLSレーザー焼結法の3Dプリンター用樹脂材料の価格

SLSレーザー焼結3Dプリンターの樹脂材料は、ナイロンです。ナイロン12やナイロン11といった樹脂材料が中心で、非常に微細な粉末状の形状をしています。特長は高強度で高精細な仕上がりができ、かつこれまでのFDMや光造形、PolyJet方式とは違い、サポート材がつかないことから綺麗で高強度な仕上がりが可能です。

500万円代のSLSレーザー焼結法3Dプリンター用の樹脂材料の価格

レーザー焼結SLSは、機械の本体価格も2,000万円代する高価格帯でしたが、特許が切れることでFormlabsのFuse 1のような500万円クラスのレーザー焼結法が登場しています。高精度で高強度な造形が可能で、かつ、材料コストも安いのが特長です。

種類価格帯(1㎏あたり)対応3Dプリンターの価格帯造形サイズ用途特長・注意点
ナイロン1211,800円~500万円
(Fuse1)
小~大高強度パーツ、治工具、最終パーツ、アッセンブルモデル高強度、高精細でサポート材がつかない
ナイロン1113,500円500万円
(Fuse1)
小~大高強度パーツ、治工具、最終パーツ、アッセンブルモデル高強度、高精細でサポート材がつかない

まとめ

3Dプリンター用樹脂材料は造形方式で4種類あり、また低価格、高価格で価格帯が全く異なります。他の製品と同様、高いには理由があり、どんな材料でも使用する3Dプリンターに最適化されており、安定したプリントが実現できます。その一方で低価格な材料も用途によっては、コストパフォーマンスに優れた使い方ができます。どのような用途なのかを見極め、最もコストパフォーマンスが高い材料と3Dプリンターを選ぶことが求められます。

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