3Dプリンター用フィラメント材料とは
3Dプリンター用フィラメント材料とは、FDM®(熱溶解積層法)3Dプリンターの専用材料です。金型などで使用されている熱可塑性樹脂で、加熱すると柔らかくなり、冷えると固まるという特性を利用して造形します。
形状は直径1.75mmと2.85mmの2種類で、糸状の形をしています。押出ノズルに挿入することで、加熱されて柔らかくなり、押し出されて積層されます。
もともとFDM®(熱溶解積層法)という製法は、ストラタシスが開発した造形技術で、フィラメント材料はFDM 3Dプリント専用の材料です。その後2009年にFDM®の特許が失効することで、FDM3Dプリンターの開発が進み、フィラメント材料もさまざまな種類が登場しています。
3Dプリンター用フィラメント材料の特長
3Dプリンター用フィラメント材料の特長は、金型で使用することができるほとんどの熱可塑性樹脂を使用することができる点です。
一般的なABS樹脂などをはじめ、ポリカーボネートやナイロンなどの高機能なエンジニアリング・プラスチックもフィラメント化されています。豊富な種類のおかげで、フィラメント材料はさまざまな目的に使用することができます。
豊富な種類が登場
3Dプリンター用フィラメント材料はほとんどの熱可塑性樹脂が登場しています。
従来はABS樹脂とPLA樹脂が2大フィラメントとして有名でしたが、エンジニアリング・プラスチックのポリカーボネートやナイロン、ゴム・エラストマー材料である熱可塑性ポリウレタン、またペットボトルなどに使用されているPETGなど、さまざまな種類が続々と3Dプリンターで扱えるようになっています。
また、ABS樹脂とPLA樹脂をベースにしたフィラメント材料もさまざまなバリエーションが登場してきており、PLA樹脂の弱点を克服した高強度なPLAフィラメントや、反りなどをすくなくしたABSフィラメントなども開発されてきています。
こうした多彩な熱可塑性樹脂がフィラメントとして使用できるのも大きな特長といえます。
エンジニアリング・プラスチックも登場
エンジニアリング・プラスチックは、通常のプラスチックとは違い、高温下などの過酷な環境下においても、優れた強度や耐久性を発揮する材料のことです。
3Dプリンター用フィラメント材料でも、こうしたエンジニアリング・プラスチックが登場してきています。
特に、強度と耐久性に優れるポリカーボネート(PC)や、靭性があり耐摩耗性や耐衝撃性、疲労性に強いナイロンフィラメントなどの登場は、デスクトップで高品質なものづくりを可能にしてくれます。
また、最近ではスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるエンプラを超える素材も登場しています。スーパーエンプラは、ウルテムやPEEKといった耐熱性が200度を超える材料や、金属の代替品として期待されるカーボンファイバー(炭素繊維)も登場しています。
水溶性サポート材で高い運用性
デスクトップタイプのFDM (熱溶解積層法)3Dプリンターの課題の一つが、造形後のサポート材の取り外しです。
特にシングルヘッドといわれる押出ノズルが1本しかないタイプの3Dプリンターでは、造形するフィラメント材料がそのままサポート材として使用されるため、プリント後の取り外しが難しい傾向にありました。
しかし、デュアルヘッド専用ですが、取りはずしやすさに特化したサポート材専用のフィラメント材料の登場によって、FDM 3Dプリンターの造形も快適になりつつあります。
特に水で簡単に溶けて取り外せる水溶性サポート材は、造形後のストレスを軽減するだけではなく、造形物も綺麗に仕上げることが可能です。
3Dプリンター用フィラメント材料の種類
3Dプリンター用フィラメントにはさまざまな種類が登場しています。材料特性もさまざまで下記はその特性をまとめた一覧になります。
特長 | 最適な用途 | 注意点 | |
ABS | 強度が高く丈夫 | 冶具・工具 最終品 | 反りやすい |
PLA | 植物由来、プリント安定性にすぐれる | 試作品・ラピッドプロトタイピング | 脆く壊れやすい 熱に弱い |
強化PLA | 高い耐久性を持つ | 耐久性が求められる試作品 | 熱に弱い |
PETG | 高強度と高いプリント性の両立 | 高衝撃または高応力部品 | 糸引きが起きやすい |
ASA | 耐候性に優れる | 外装、カバーなど | 乾燥が必要 |
ポリカーボネート(PC) | 硬くて耐衝撃性にすぐれ壊れにくい | 硬質部品、高強度なパーツ | 高温 反り 剥がれにくい |
ナイロン | 高強度、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性にすぐれる | インパクトやストレスに強い部品 オールラウンド | 簡単に水を吸う 吸湿するとミスが起きる |
ゴム (TPU) | 柔軟性にすぐれ高い引張強度を誇る | 柔軟性、耐衝撃性が求められる部品 | 専用ノズルが必要 プリント設定の細かい調整 |
PVB | PolySherと併用で滑らかな表面を出せる | 滑らかな作品 | 乾燥が必要 |
木材 | 木材の質感、木の香り | アート、建築模型、作品作り | ノズル詰まり |
金属 | 金属調の質感 | アート、模型、作品作り | ノズル詰まり |
サポート用 | サポート専用で除去が楽 | サポート材 | 乾燥が必要 デュアルヘッドのみ対応 |
水溶性サポート用 | 水に溶かしてサポート材を外すことができる | サポート材 | 乾燥が必要 デュアルヘッドのみ対応 |
鋳造用 | 鋳造用のワックスモデルが作れる | 鋳造用ワックスモデル | 乾燥が必要 |
ABS フィラメント
ABSフィラメントは3Dプリンター用フィラメント材料の中において、最も有名で汎用性が高い材料の一つです。
もともとABS樹脂は、日用品や家電製品、自動車用パーツ、治具など幅広い工業製品の材料として使用されてきました。そんなABS樹脂が3Dプリンター用フィラメントで使用できることで、製品開発やものづくりの幅は驚くほど広がります。

ABSフィラメントの特長と用途
ABSフィラメントの特長は、強度と耐衝撃性、耐熱性に優れる点です。引張強度や曲げ強度などに優れており、靭性も高いことから耐衝撃性に優れています。また耐熱性も高く種類によっては、荷重たわみ温度が約90℃近くまであります。
こうしたABSフィラメントの高い物性はさまざまな用途を可能にします。日用品から家電製品の筐体など、一定の強度が求められるパーツや機能性試験のためのプロトタイプにも向いています。
また、製造現場で使用される治具、取り付け具、工具などにも最適な材料です。更に、一部最終品パーツとしても利用されています。

Polylite ABS (PolyMaker製)
PolyLite ABSは、フィラメントメーカーのPolyMakerが提供するABSフィラメントです。
PolyLite ABSは、ABSフィラメントの造形持の課題であった反りを極力抑えるように設計されたフィラメント材料です。反りとは、プリント中に造形モデルが反ってくる症状で、熱収縮性が高いABS樹脂で起きます。
PolyLite ABSはその反りを抑え、尚且つABSフィラメント特有のプリント中の臭気を抑えることに成功しました。また物性も優れており、耐久性、耐衝撃性、耐熱性に優れています。
PolyLite ASA (PolyMaker製)
PolyLite ASAは、耐候性に優れるASA樹脂のフィラメント材料です。ASAは、ABS樹脂のB(ブタジエンゴム)の代わりにA(アクリレート)を用いた材料です。
合成ゴムは耐候性が低く劣化が早いため、アクリレートを配合することで、ABS樹脂の耐久性に加え耐候性が付与されたフィラメント材料です。更に耐光性にも優れており、ASAフィラメントを用いれば、野外で使用できるパーツや、野外での機能性を試験するプロトタイプも作ることが可能です。
UP 専用ABSフィラメント
UP3Dプリンター専用ABSフィラメントは、UP 300、UP BOX+、UP mini2ESのUPシリーズの3Dプリンター純正フィラメントです。
UP 3Dプリンターに最適化されたフィラメントで高品質で積層跡が目立たない造形を実現します。ABS樹脂の強度と耐久性、耐衝撃性も備えており、UP 3Dプリンターとセットで使用することをお勧めします。
AFINIA バリューABSフィラメント
3DプリンターメーカーであるAFINIAの純正フィラメントです。AFINIAは、デスクトップタイプの熱溶解積層法(FDM)3Dプリンターで、それに最適化されたABSフィラメントです。バリューABSフィラメントは、低価格ながら安定したプリントが可能です。
AFINIA プレミアムABSフィラメント
同じく3DプリンターメーカーであるAFINIAの純正フィラメントのひとつがプレミアムABSフィラメントです。ABS樹脂の持つ靭性を更に向上させ、高耐久を実現したフィラメント材料です。
エンジニアリング用や機能性プロトタイプの造形に最適です。また、造形後のプレートからの剥離や、サポート材の除去もしやすいプレミアムなABSフィラメントです。
AFINIA プレミアムプラスABSフィラメント
プレミアムプラスABSフィラメントは、ABS樹脂のそりを抑え、大きい造形モデルの作成を可能にするABSフィラメントです。また、ABSの靭性を向上させ、高耐久を実現しました。
大きいパーツから、エンジニアリング用や機能性プロトタイプの造形に最適です。また、造形後のプレートからの剥離や、サポート材の除去もしやすくなっており、プレミアムなABSフィラメントです。
ABSフィラメントの注意点
ABSフィラメントを取り扱う際の最大の注意点が反りです。ABS樹脂は温度変化による熱収縮性が他の材料に比べて高く形状によっては、プリント中に造形物が反る可能性があります。
特に造形プレート(プラットフォーム)との設置面積が多かったり、湿気が多い環境だと反りやすくなります。対策としては、ABSフィラメントを十分乾燥させた状態で使用することが必要です。
乾燥についてはフィラメント専用の除湿ボックスpolyboxなどがおすすめです。また造形プレートとの設置面積を小さくしたり、プリントするモデルの方向を変えたり、モデルを分割するなどを試みることで解消する場合があります。

PLA(ポリ乳酸)フィラメント
PLAフィラメントも3Dプリンターフィラメント材料の中で最も広く使用されている材料です。
PLA樹脂はもともと石油由来のABS樹脂の代替品として開発されたプラスチック材料で、コーンなどを原料にした植物由来の樹脂です。PLAフィラメントの最大の強みが、優れたプリント安定性です。
ミスなく素早く形にするには最適な材料です。その一方で作られた造形物は壊れやすく、熱に弱いです。
しかし、最近では開発が進んでさまざまな種類のPLAフィラメントが登場しています。

PLAフィラメントの特長と用途
PLAフィラメントの特長は、優れたプリント安定性です。迅速なプロトタイプを指すラピッド・プロトタイピングという言葉を象徴する材料です。
例えばすぐさま 安定して3Dデータから形にできるため、製品開発における試作品作成には最適です。PLAは、ABSフィラメントのように反りが無く、大きい造形モデルも素早く形にできます。
またPLAフィラメントは非常に硬い特性を持っています。その一方で耐衝撃性は低く、壊れやすいという性質を持っています。まさに迅速に形状確認を行いたいときに重宝するフィラメント材料です。
こうした特長からPLAフィラメントの主な用途は試作品、プロトタイプの作成が最適です。また安定したプリント性能は学校や教育現場での3Dプリントの実演に適しています。
さらにPLAフィラメントは強度に優れる種類などが登場しており、治具や機能性試験にも使用できるものもあります。

PolyLIte PLA (PolyMaker製)
PolyLite PLAは、高品質なPLAフィラメントです。PolyMakerの独自技術であるバイオポリマーの開発技術Jam-Free™テクノロジーによって、ノズル詰まりを劇的に防止しました。
また一般的なPLAフィラメントよりも高い耐熱温度を実現し、ガラス転移温度で61℃、ビカット軟化温度63℃を実現、強度に優れた特性と共に、プロトタイプから模型まで幅広い用途に使用することが可能です。
PolyMax PLA (PolyMaker製)
PolyMax PLAは、PLAフィラメントの弱点である耐衝撃性を強化した材料です。独自のナノ補強技術によって、ABS樹脂に匹敵する耐衝撃性を実現しました(耐衝撃性はPolyLite ABSが12.6 ± 1.1 kJ/m2、PolyMax PLAが12.2±1.03 kJ/m2)。
この耐衝撃性と高強度に加え、PolyMax PLAはPLAフィラメントの優れたプリント性能を併せ持ち、反りなどが無く大きい造形モデルも正確にプリントすることが可能です。
一般的な試作品から機能性プロトタイプまで、幅広い用途に利用が可能で、ラピッド・プロトタイピングを正確に実現します。
PolyWood PLA (PolyMaker製)
PolyWood PLAは、100%PLA樹脂で、木の質感を再現したフィラメント材料です。一般的な木材フィラメントは、PLA樹脂に木の粉末を配合して作られています。
本物の木材の質感が出せて、木の香りがするのが特長ですが、その一方で、配合された木の粒子がノズルに入り込み、ノズルつまりを起こしやすいフィラメントです。
PolyWoodはこうした木質フィラメントの問題点を解決するために開発されたフィラメント材料で、一切木の粉末は配合せず、PLA樹脂のみで木の質感を再現することに成功しています。PolyMakerがほこるJam-Free™テクノロジーによって、ノズルつまりを無くし、スピーディに木質の造形が可能です。
UP専用PLA フィラメント
UP専用PLAフィラメントは、UP 300、UP BOX+、UP mini2ESのUPシリーズの3Dプリンター純正フィラメントです。
UP 3Dプリンターに最適化されたフィラメントでPLAフィラメントの特性である強度と、優れたプリント性能により、ラピッド・プロトタイピングを実現します。UP 3Dプリンターとセットで使用することをお勧めします。
AFINIA Premium PLAフィラメント
Premium PLAはAFINIA 3Dプリンター専用のPLAフィラメントです。AFINIA H800+や、AFINIA H400+に最適化されたフィラメント材料です。ノズル詰まりをすくなくし、大きい造形モデルも安定してスピーディにプリントできる性能を実現しました。こちらもラピッド・プロトタイピングを実現するフィラメント材料です。
PLAフィラメントの注意点
PLAフィラメントで作られた造形モデルは、熱に弱くお湯などでも簡単にやわらかくなります。また衝撃に弱く硬い反面壊れやすい特性を持っています。用途としては最終品や強度が求められるパーツではなくプロトタイピングに特化した材料と言えるでしょう。
ポリカーボネート(PC)フィラメント
ポリカーボネート(PC)フィラメントは、エンジニアリング・プラスチックであるポリカーボネート(PC)のフィラメント材料です。
ポリカーボネート(PC)は工業製品では人気の材料です。高強度な上に光沢がある美しい質感からiPhoneの筐体などにも使用されたことがあります。
このポリカーボネートが3Dプリンター用フィラメント材料になることでものづくりの幅が大きく広がります。

ポリカーボネート(PC)フィラメントの特長と用途
ポリカーボネート(PC)フィラメントの特長は、高強度と耐衝撃性です。またエンジニアリング・プラスチックとして耐熱性にも優れており、荷重たわみ温度は100℃を超えます。過酷な環境でも強い物性を発揮することから、さまざまな目的で使用することができます。
ポリカーボネート(PC)フィラメントの用途は、主に強度や耐久性試験などの機能性プロトタイプや、生産現場における治具、取り付け具、工具などに最適です。
また優れた強度と耐衝撃性から最終品のパーツ製造にも真価を発揮します。非常に幅広い用途に活用できるフィラメント材料です。
PolyLite PC (PolyMaker製)
PolyLite PCは、PolyMakerが提供するポリカーボネート(PC)のフィラメント材料です。優れた強度を持ち、引張強度は62.7±1.3MPa、曲げ強度は100.4±2.7MPaという強靭さを誇ります。
また、耐熱性にも非常に優れており、軟化温度が119℃と高く、エンジニアリング・プラスチックの性能をそのまま発揮できます。更にPolyLite PCは、ポリカーボネートの持つ透明性を再現したフィラメント材料で、半透明の光沢がある表面が特長です。
PolyMax PC (PolyMaker製)
PolyMakerはもう1種類、ポリカーボネート(PC)フィラメントを提供しています。それがPolyMax PCです。PolyMax PCも、優れた強度と靭性を持ち耐衝撃性にすぐれています。
もちろん耐熱性も併せ持っており、荷重たわみ温度も117度の高温を誇ります。こちらも引張強度は59.7±1.8MPa、曲げ強度94.1±0.9MPa、更にはシャルピー耐衝撃性が25.1±1.9KJ/m2です。カラーはブラックとホワイトで、ポリカーボネートならではの光沢がある美しい表面が特長です。
ポリカーボネート(PC)フィラメントの注意点
ポリカーボネート(PC)フィラメントをプリントするためには非常に高温な設定が求められます。
PolyMakerの2種類(PolyLite PCとPolyMax PC)は、ABS樹脂と同じ250℃~270℃程度の温度で使用できますが、フィラメントの種類によっては、290℃~300℃程度の高温が求められる場合があります。
また、造形プレートの加熱も必要です。更に、ポリカーボネートはプラットフォームからの着脱がしにくい傾向にあり、3Dプリンターの種類によっては着脱を容易にする専用シートの使用が推奨される場合もあります。
また反面大きい造形モデルになると反りやすく、3Dプリンターの性能にあった細かい設定が求められます。
PETGフィラメント
PETGはポリエチレンテレフタレート(PET)の強化材料です。フィラメント材料としてのPETGも高強度を誇っており、最も使いやすい材料の一つです。
因みにPETはペットボトルの材料として使用されるほか、優れた透明性から容器や入れ物、カバーなどの材料として使用が盛んです。
一方で、PETGフィラメントは、PETの透明性を引き継ぎながら、ABS並みの強度とPLAのプリント性能を併せ持つ新たな材料として注目されています。

PETGフィラメントの特長と用途
PETGフィラメントは、ABSフィラメントとPLAフィラメントの強みを合わせたような材料です。ABSの持つ強度と耐久性、耐熱性を備えながら、同時にPLAフィラメントの持つプリント安定性を実現しました。それによって造形時における反りなどを少なくし、安定して高品質な仕上がりを可能にします。
PETGフィラメントは、この安定性と高い物性から幅広い用途に使用することができます。半透明な見た目は透明性が求められるカバーや流体構造が確認できる造形物などに使用できます。
また、カラーバリエーションも豊富で、優れた強度は治具や機能性プロトタイプ、スナップフィットなどの道具にも利用が可能です。
PolyLite PETG (PolyMaker製)
PolyLIte PETGは、PolyMakerが販売するフィラメント材料として、優れた物性とプリント安定性を持っています。
同じくPolyLiteシリーズであるPolyLite ABSやPolyLIte PLAと同じ価格(¥4,479税込み)で利用できることから、コストパフォーマンスに優れるフィラメント材料です。
引張強さは31.9±1.1MPa、曲げ強度は53.7±2.4MPa、耐熱温度も84℃を誇ります。
PolyMax PETG (PolyMaker製)
PolyMax PETGは、PolyLIte PETGよりも強度と耐衝撃性が強化された材料です。PolyMakerのナノ補強技術によって強化されたフィラメント材料で、こちらも優れた機械的特性を有し、同時にプリント性能も高い材料です。
引張強度は31.7±0.1MPa、曲げ強度は58.3±4MPaで、シャルピー衝撃強度は9.7±2.6(KJ/m2)です。治具や機能性プロトタイプなどより物性が求められる造形に最適です。
PETGフィラメントの注意点
PETGフィラメントの注意点は、造形中に糸引きが起きやすいという点があります。糸引きとは蜘蛛の糸のように、造形モデルにフィラメントの細い糸がつく症状です。
PETGフィラメントは、吸湿性が高く、ノズルの温度やプラットフォームのベッド温度も繊細なコントロールが必要です。ノズル温度が高すぎると糸引きが置き、低すぎるとフィラメントが硬くなり詰まる可能性があり、使用3Dプリンターの種類によって詳細な設定が求められます。
ゴム・エラストマー(TPU)フィラメント
ゴム・エラストマー(TPU)フィラメントが利用できるのもFDM 3Dプリンターの大きな特長です。
熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースにしたフィラメント材料で、さまざまな硬度の材料が登場しています。ゴム・エラストマーフィラメントを利用することで、柔軟性が求められるパーツや試作品の作成ができます。
その一方で、TPUフィラメントのコントロールは非常に難しく、専用押出ノズルが必要になったり、使用する3Dプリンターを選びます。

ゴム・エラストマー(TPU)フィラメントの特長と用途
ゴム・エラストマー(TPU)フィラメントは、柔軟性に優れ、引張強度に優れる材料です。また繰り返し曲げ伸ばしできるため、耐摩耗性や耐衝撃性にも優れています。さまざまなショア硬度があり、フィラメント材料の種類によって異なります。
ゴム・エラストマー(TPU)フィラメントは、柔軟性、引張強度、耐摩耗性などを活かし、柔らかい製品の試作品や機能を確認する機能性プロトタイピングに使用することができます。
ホースやカバー、キャップなどの工業製品から、シューズの靴底やサンダルなど、一般消費者向け製品のプロトタイプにも利用が可能です。
PolyFlex TPU95 (PolyMaker製)
PolyFlex TPU95は、ゴム・エラストマーのフィラメント材料です。熱可塑性ポリウレタン(TPU)をベースにしたフィラメント材料でショア硬度95Aの柔軟性を持ち、元の3倍以上の長さまで伸ばすことができます。
カラーはブラック、ホワイト、イエロー、オレンジの4色がラインナップされており、さまざまな柔軟性のある造形に利用が可能です。
ゴム・エラストマー(TPU)フィラメントの注意点
ゴム・エラストマー(TPU)フィラメントは、フィラメント自体も柔らかいことから、ノズル詰まりや、造形物がプリント中に歪むという不具合が発生します。
フィラメントが柔らかいため押出ギアに巻き込まれてしまいます。対策としてはプリントスピードを遅くすることが必要です。3Dプリンターの種類によって異なりますが、20mm/sから40mm/sが理想的です。
また、フィラメントスプールの位置を調整し、フィラメントが引っ張られて伸びるのを防ぐことも硬化があります。更にノズルの太さも太いもの(ノズル径0.5mm)が歪みを抑えるのに理想です。
ナイロンフィラメント
ナイロンフィラメントはエンジニアリング・プラスチックであるナイロンポリアミドのフィラメント材料です。
強靭で優れた強度と耐衝撃性、耐熱性に優れる材料で、あらゆる用途に利用できる万能材料です。これまでは業務用(ハイエンド)3Dプリンターのみでしか利用できませんでしたが、近年フィラメント材料の開発がすすみ、デスクトップタイプの3Dプリンターで利用することが可能です。

ナイロンフィラメントの特長と用途
ナイロンフィラメントの特長は、非常に強靭な物性です。靭性の高さから引張強度や耐摩耗性、耐衝撃性にも優れた性能を発揮します。また、エンジニアリング・プラスチックとして高い耐熱性を誇り、高温下の環境化でも優れた強度と耐久性を発揮できます。
こうしたナイロンフィラメントの強靭な性能によって、その用途は非常に幅広く、あらゆる用途に使えるオールマイティな材料と言えるでしょう。
機能性が求められるプロトタイプから、より強靭性が求められる治具、更には最終品の製造など、さまざまな用途にその性能を発揮します。また、軽くて丈夫な性能は、金属パーツの代替品としても使用が期待されます。
PolyMide COPA (PolyMaker製)
デスクトップタイプのFDM 3Dプリンターで使用できるナイロンフィラメントはそこまで多くはありません。
その代表的な存在がPolyMakerが開発するPolyMide COPAです。PolymakerのWarp-Free™テクノロジーで製造されたフィラメント材料で、エンジニアリング・プラスチックの性能を発揮します。
ベースはナイロン6と、ナイロン6.6で構成されている材料で、強度と靭性に加え、フィラメント材料としては最高温度ともいえる180℃の耐熱性を備えています。
180℃の耐熱性は、他のエンジニアリング・プラスチックの中でも高く、多彩な用途に使用することができます。主に、強靭さが求められる治具や機能性プロトタイプ、更には最終品まで利用が可能です。
ナイロンフィラメントの注意点
ナイロンフィラメントは、フィラメント材料の中でも極めて吸湿性が高く、常に乾燥した状態を保つことが求められます。
簡単に空気中の水分を吸収してしまうため、十分に除湿した状態で保管しないとすぐにミスプリントを引き起こします。プリント接着性が低下したり、ノズルからフィラメントが飛び出てしまう不具合が起きます。
そのため、保管中もプリント中も、可能な限り除湿した状態でナイロンフィラメントを使う必要があります。理想は相対湿度が20%以下の状態で使用するのがベストです。
PolyMakerではフィラメント乾燥ボックスであるPolyBoxを推奨しています。
サポート材専用フィラメント
サポート材専用フィラメントを使用することで、デスクトップのFDM 3Dプリンターをより快適に使用することができます。
サポート材専用フィラメントはデュアルヘッド(押出ノズルが2本ある)3Dプリンターでの使用を想定しています。しかし、サポート専用を使用することで造形後の後処理を飛躍的に効率化してくれます。

サポート材専用フィラメントの特長と用途
サポート材専用フィラメントの最大の特長は、サポート材を手で簡単に取り外せたり、水に溶かして取りはずすことができる点です。
例えば押出ノズルが1本の3Dプリンターでは、サポート材の造形も、使用しているフィラメント材料と同じ材料で作ります。
そのため、材料の種類や造形モデルの形状によっては、造形モデルとサポート材がくっついて一体化してしまい、取りはずすのが事実上不可能、もしくは困難な場合があります。
また、中空の形状やラティス構造のような造形モデルに穴が空いている形状では、内部のサポート材を取り外すことが難しいケースがあります。
こうした造形モデルの場合もサポート材専用フィラメントであれば、簡単に取り外すことが可能です。こうしたサポート材の簡単な取り外しは造形モデルの破損も防ぎ、快適でストレスフリーなプリントライフを実現します。
PolySupport (PolyMaker製)
PolySupportは、PolyMakerが提供するサポート材専用フィラメントです。
手で簡単に取り外すことができるブレークタイプのサポートフィラメント材料で、デュアルヘッドの3Dプリンターで使用することができます。
また取り外しは簡単ですが、同時に造形モデルをしっかりと支えることができる強度も保つことができるのです。
PolySupportはPLAフィラメントやポリカーボネート(PC)、PVB、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、ABSなどのサポート材として使用することができます。
PolyDissolve (PolyMaker製)
PolyDissolveは、PolyMakerが新たに開発したサポート材専用フィラメントです。最大の特長が水溶性を実現したことで、水につけることで溶かして取りはずしが可能で、造形モデルの表面を傷つけることなく綺麗に取り外しが可能です。
PLA、PETG(ポリエチレンテレフタレート)、PVB、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、ナイロンといったフィラメントのサポート材として使用することができます。ポリカーボネート(PC)とABSには対応していません。
サポート材専用フィラメント材料の注意点
水溶性のサポート材フィラメントは、水に溶けるという性能を発揮するためには乾燥した状態を保つことが求められます。
例えばPolyMakerが提供するPolyDissolveは、乾燥設定は80℃で12時間乾燥する必要があります。また、プリント中も乾燥ボックスのPolyBoxと一緒に使用することを推奨します。フィラメントが十分に除湿されていないと、溶けにくくなったりします。
金属配合フィラメント
金属配合フィラメント材料は、PLA樹脂をベースに、銅やアルミといった金属パウダーを配合したフィラメント材料です。
この金属配合フィラメントは、あくまでも金属っぽい見た目を再現したフィラメント材料で、物性はプラスチックです。そのため金属として利用することはできません。
アートやフィギュア、模型など金属調の見た目を作りたい造形モデルに使用されます。

金属配合フィラメントの特長と用途
金属配合フィラメントの特長は、金属粉末を配合したことによる金属調の見た目です。主に銅やアルミなどの見た目が再現できます。ただし金属としては使用することができないため、主な用途としては、アートや模型などに使用されます。
AFINIA スペシャルフィラメント
AFINIA 3Dプリンター用のスペシャルフィラメントとして、金属配合フィラメントが利用することができます。
アルミと銅の2種類があります。ベースはPLA樹脂で、そこにアルミ粉末と、銅の粉末を配合して作られています。置物や模型などの造形モデルに使用することができます。
金属配合フィラメントの注意点
金属配合フィラメントは、本物の金属が粉末状にして配合されているため、粒子がノズルに詰まってノズル詰まりを頻繁に起こします。
FDM 3Dプリンターの押出ノズルは、ギアが回転してフィラメントを引き込み押し出すため、このギアの部分や、ノズルの奥深くまで金属の粒子が入り込んでしまいます。
対策としてはノズルのサイズが大きいモノ、0.5mm以上のものを使用することで多少軽減することができます。
木材配合フィラメント
木材フィラメント材料は、本物の木材が配合されたものと、PLA樹脂で木の質感を再現したものがあります。
本物の木材が配合されたフィラメント材料は、PLA樹脂にパウダー状にした木を配合したもので、木の質感を表現できると同時に、木の香りがします。
一方、PLA樹脂のみの木材フィラメントは、PLA樹脂のみで木の質感を実現しているため、ノズル詰まりなどの不具合の心配がありません。
木材フィラメントの特長と用途
木材フィラメント材料は、木の質感を出すことができます。また配合する木の種類によっても見た目が異なります。
質感はざらざらとした手触りで、木の香りが漂います。主な用途としては、こちらもアートや模型などが代表的で、建築モデルなどを作るのにも利用が可能です。
PolyWood (PolyMaker製)
PolyWoodは、PolyMakerが提供する木材調のPLAフィラメントです。本物の木材は配合されておらず、あくまでもPLA樹脂のみで木の質感を再現しています。ただ、PolyMakerの特別な発泡技術を使用して作られているため、完全にPLA樹脂のみで木材の質感を表現しました。
これにより木材配合フィラメントで起きるノズル詰まりを無くします。また、PolyWoodは特別なプリント設定は必要なく、PLAフィラメントと同じ設定でプリントすることが可能です。
AFINIA スペシャルフィラメント(木材)
AFINIA 3Dプリンターで使用できるスペシャルフィラメントとして木材配合フィラメントがあります。PLA樹脂をベースに木のパウダーを配合して完成させたフィラメントです。
これにより本物の木の見た目と、木の香りを実現しました。またAFINIA スペシャルフィラメントは、造形後にサンディングなど研磨を施すことで美しい見た目を実現することができます。
木材配合フィラメントの注意点
木材配合フィラメントの最大の注意点はノズル詰まりです。本物の木の粉末が配合されているため粒子が押出ノズルのギアや、ノズルの奥まで詰まってしまい、頻繁にノズル詰まりを引き起こします。
対策としては、ノズル径が大きいサイズ0.5mm以上の押出ノズルを使用し、なるべく定期的にノズルのギアなどを掃除することをおススメします。
鋳造ワックスモデル用フィラメント
ワックスモデル用フィラメントは、ロストワックス鋳造(インベストメント鋳造)で使用されるワックスモデルを作るためのフィラメント材料です。
これまで、ロストワックス鋳造用の3Dプリンター用材料は、光造形法で利用できるレジンが一般的でしたが、新たにPolyMakerがPolyCastといわれるワックスモデルを作れるフィラメント材料を発表しています。

ワックスモデル用フィラメントの特長と用途
ワックスモデル用フィラメントは、FDMやFFF 3Dプリンターでワックスモデルの代替品を作ることができるフィラメントです。
従来、ロストワックス鋳造(インベストメント鋳造)のワックスモデルは、シリコーン型や木型で作られるのが一般的でしたが、近年光造形 3Dプリンターを初め、3Dプリンターで作る取組が広まってきています。
ワックスモデル用フィラメントは、FDMやFFF 3Dプリンターで利用が可能です。
PolyCast (PolyMaker製)
PolyCastはPolyMakerが開発したワックスモデル用のフィラメント材料です。独自の「Ash-Free™(Polymaker社特許技術)」によって、ロストワックス鋳造(インベストメント鋳造)に求められる焼失性を実現。
残留物を残すことなく綺麗に焼失し欠陥のない金属部品が可能になります。またFDM 3Dプリンターでは、積層跡が残るのが最大の欠点ですが、PolyCastは、PolyMakerが提供する表面研磨機「Polysher」と併用することで積層跡をなくし表面を滑らかに仕上げることが可能です。
そのためPolyCastは比較的大きい金属パーツの鋳造に最適です。
ワックスモデル用フィラメントの注意点
PolyCastは、湿気に敏感なフィラメントです。容易に空気中の水分を吸収してしまうため、常に乾燥した状態で保存することが必要です。
吸湿したPolyCastは、造形モデルの品質だけではなく、造形後の鋳造プロセスにも影響します。ベストは相対湿度20%以下の環境で保管し使用もPolyBoxなどの除湿ボックスを使用するのが理想です。
PolySherで表面を研磨し鋳造性能をUP
PolyCastで作られた造形モデルは、PolyMakerの専用研磨機PolySherを使用することで、造形後の積層跡を無くし、驚くほど滑らかな表面を作ることができます。積層跡がない滑らかな表面は鋳造に最適な性能を発揮します。
PVB(レイヤーフリーフィラメント)
FDMの家庭用(低価格)3Dプリンターは積層跡が造形物に残るのが一つの課題とされています。この積層跡は、材料によってはサンディングやコーティングなどによって滑らかにすることが可能ですが、手軽に積層跡を消すことができるフィラメント材料が登場しています。

PVBレイヤーフリーフィラメントの特長と用途
レイヤーフリーフィラメントは、造形後に専用の研磨機器を使い表面を滑らかでつるつるにすることが可能です。そのためより高精度な試作品や、アート、模型などに使用することができます。
PolySmooth (PolyMaker製)
PolySmoothはPolyMakerが提供するレイヤーフリーフィラメントです。造形後に、PolySherという専用のアルコール研磨機器を使い、造形モデルの積層跡を磨き上げ、つるつるで滑らかな表面を実現することが可能です。
PolySmoothはカラーバリエーションも豊富で、一般消費財の高精度なプロトタイピング、アートやおもちゃ、置物などに最適なフィラメントです。
PVBレイヤーフリーフィラメントの注意点
PolySmoothは、吸湿性が高く空気中の水分を簡単に吸収します。そのため使用する際には十分に除湿した状態を保つことが必要です。除湿されていないとミスプリントや造形精度が落ちることがあります。
PolySherで研磨し表面を滑らかに
PolySmoothは、PolyMakerの専用研磨機PolySherを使うことでアルコールをミクロン単位で噴霧して研磨し、驚くほど滑らかな仕上がりを実現できます。
まとめ
FDM 3Dプリンターの特許が失効することで、デスクトップタイプの3Dプリンターでも高品質な造形ができるようになってきています。
造形安定性が高まると同時に、フィラメント材料のバリエーションも豊富になり、デスクトップでさまざまなモノが作れるようになります。
特にフィラメント材料の特長が金型と同じ材料が使用できる点にあり、将来もっともFDMの精度が向上すれば、1個単位から最終品レベルが作れるようになるでしょう。
そうした点からフィラメント材料とデスクトップ3Dプリンターは大きな可能性を秘めています。