3Dプリンターの木材フィラメント完全ガイド

3Dプリンター用木材フィラメントとは

3Dプリンター用木材フィラメントは、デスクトップタイプや家庭用(低価格)のFDM ® 3Dプリンターの材料として使用することができます。業務用のハイエンド3Dプリンターでは登場していません。

木材フィラメントとは?

木材フィラメントは木の質感の造形モデルを作ることができ、アートやオブジェ、建築モデルなどに最適なフィラメント材料です。

デスクトップ3Dプリンターの可能性は、アートやオブジェ、作品作りなどまでものづくりを広げてことになりますが、木材フィラメントはその象徴的な材料と言えます。

造形後に研磨などを施せば美しい仕上がりが可能です。

木材フィラメントの注意点や対策も

その反面、木材という異素材が配合されている種類は、ノズル詰まりなどが頻繁に起きる可能性があります。

今回は3Dプリンター用木材フィラメントの特長や種類、プリントする際に注意点などをご紹介します。

3Dプリンターを使用するすべての方々がより良いモノづくりができるようになれば幸いです。

3Dプリンター用木材フィラメントの強みと弱み

3Dプリンター用木材フィラメントには2種類あります。第一がPLAフィラメントに本物の木材を配合しているもの。第二がPLAフィラメントのみで“木材調”を表現しているものです。それぞれで強み弱みが異なります。

 木材フィラメントの強み

木材フィラメントは、PLA樹脂をベースに本物の木材粉末を配合しているフィラメントです。従来の切削などで用いられるケミカルウッドをフィラメント化したような材料です。

1.木材調の造形ができる

木材の含有量は、材料の内の30%から40%程度木材が配合されています。(メーカーやフィラメントの種類によって異なる。残りの60%から70%の材料はPLA樹脂)。そのため最大の特長が“木目調”の造形ができるという点です。

2.木の香りがする

本物の木材を配合していることからほのかに木の香りがします。

3.造形後の後加工ができる

造形後にはサンディングで研磨し、塗装などを施すことで美しい質感を表すことができます。

4.PLAと同じ設定でプリントできる(PolyWoodのみ)

PolyMakerのPolyWoodのように100%PLA樹脂で作られており、木材を含まない木材フィラメントの場合は、PLAフィラメントと同じ設定でプリントでき、ノズルつまりを防ぐことができます。

木材フィラメントの弱み

本物の木材粒子が配合されているフィラメントでは、押出ノズルに粒子がたまりやすく、目詰まりを引き起こしやすくなります。

そのため、木材フィラメントを使用する場合にはノズル径が大きいものを使用する必要があります。木材フィラメントのノズル詰まりについては後程詳しくご紹介します。

木材フィラメント材料の特性一覧

木材が30%から40%配合されている

PLAのみで木材風のフィラメントもある

木目調・木質の質感ができる

木の香りを含む

サンディングや塗装で美しい表面仕上げが可能

3Dプリンター用木材フィラメントでできること

3Dプリンター用木材フィラメントを使用すれば、外観が木の質感を持つモデルを作ることができます。また、本物の木材を含有するフィラメントで作られた造形モデルはサンドペーパーなどを用いて研磨することで、滑らかな表面処理が可能です。

汎用的なオブジェクト

3Dプリンター用木材フィラメントは、木の質感をもつさまざまなオブジェクトを作ることができます。アート、教育モデル、ワークショップなど3Dプリントを身近に感じる汎用的な用途に使用できます。


DIYオブジェクト

木材フィラメントはDIYにも最適です。木目調の美しい質感や手触り、PLA樹脂と木材による環境に優しい材料、本物の木の香りによって、家庭用の装飾品などDIY用のオブジェクトに適しています。


建築モデルのパース・
プロトタイプ

木材フィラメントは独得の質感から、建築モデルのパースやプロトタイプを作るのにも使用することができます。特に木造建築物の質感などを再現するのにも最適です。

3Dプリンター用木材フィラメントで作れるもの

3Dプリンター用木材フィラメントの主な用途として、木材の質感が求められる模型や、おもちゃ、アート、小物、装飾品などを作ることができます。

植木鉢・ガーデニング

木材フィラメントは、木の質感をリアルに再現できることから、ガーデニングの用途にも利用できます。本物の木材粉末を配合したフィラメントで植木鉢などを作ることもできます。こちらはPolyMakerのPolyWoodで作った植木鉢です。


スマートフォン用スピーカー

木材フィラメントでは、家庭用の小物やアイテムを作ることもできます。こちらはスマートフォン用のパッシブアンプです。

PolyMakerのPolyWoodで作られたスピーカーです。PolyWoodは本物の木材を含まずPLA樹脂のみで木の質感を表しているので、ノズル詰まりもなく、安定して木の質感の造形モデルを作ることができます。


花瓶

木材フィラメントで作れるものの一つに花瓶もあります。木材という自然由来の素材や木材ならではの質感は、花などを飾るのにも最適です。こちらは、PolyWoodでプリントされた花瓶です。


建築モデル

木造建築などのモデルやパースなどの3Dプリントにも木材フィラメントは最適です。写真はPolyWoodで作られた木造の家のプロトタイプです。

3Dプリンター用木材フィラメントの種類

3Dプリンター用木材フィラメントは家庭用(低価格)3Dプリンターでの使用が一般的です。デスクトップタイプなど、家庭用(低価格)3Dプリンターの木材フィラメントは、さまざまな種類が登場しています。

基本的にPLA樹脂をベースに開発されており、に本物の木材粉末が30%程度含有されているものと、100%PLA樹脂で作られている材料に分かれます。

PolyWood (PolyMaker製)

木材フィラメントの代表的な存在がPolyMaker社のPolyWoodです。PolyWoodは、100%PLA樹脂によって作られたフィラメント材料です。

一般的な木材フィラメントは、本物の木材粉末が配合されていることによってノズル詰まりが起きる可能性があり、その課題をPLA樹脂のみで生成することで克服しています。

PLAフィラメントと同じ設定でプリントが可能で、比較的大きい造形モデルもプリント可能です。

PolyWoodのスペック

重量:600 Kg
フィラメント径:1.75 mm ±0.05 mm
プリント温度:190℃~210℃
プリントスピード:50mm/s
プリントベッド温度:40℃~50℃
冷却ファン:ON


Raise3D 合成木質フィラメント

Raise3D合成木質フィラメントはPLA樹脂をベースに竹の粉末を約10%配合したフィラメントです。他の木質樹脂よりも薄い茶色が特長で、研磨や塗装などの後加工にも優れています。

Raise3D 合成木質フィラメントのスペック

フィラメント径: 1.75mm
推奨プリント温度:190~210℃
推奨プリント速度:60mm/s
造形プレート:40-60℃


Premium PLA木材 (AFINIA)

木材フィラメントは、デスクトップタイプのAFINIA 3Dプリンター専用材料でも登場しています。AFINIAのWoodフィラメントは、PLA樹脂をベースに木材粉末を配合したスペシャルフィラメントです。

本物の木材の質感が再現でき、木の香りが漂うフィラメント材料です。造形後は、サンディングの研磨や、塗装などがおこなえ、高い質感の木材モデルを作ることができます。

Preimum PLA木材のスペック

フィラメント径: 1.75mm ±0.4mm
推奨プリント温度:190~240℃
推奨プリント速度:15mm/s
造形プレートの加熱:なし

木材フィラメント推奨の3Dプリンターとは

木材フィラメントは熱収縮によって反りが発生しやすいフィラメント材料です。そのため多くの3Dプリンターが木材フィラメントに対応しているとはいえ、反りの影響で大きい造形物が難しい傾向にあります。

Creator4S(Flashforge)

Creator4SはFlashforgeが開発する業務用3Dプリンターです。新たに庫内温度の加熱機能を搭載した大型のFDM3Dプリンターで、ナイロン(PA)フィラメントでも30cm近い造形物が3Dプリント可能です。またPA以外にも20種類の材料に対応しています。

造形サイズ 400mm x 350mm x 500mm
(ABSはW350mm x D300mm x H350mm)
対応材料 20種類(PA~カーボンファイバー配合材料まで)

RaisePro3

Raise3Dの代表的3DプリンターがRaisePro3です。RaisePro3は最新のFDM 3Dプリンターで、AI搭載によりプラットフォームのノズル位置合わせを補正、専用ソフトとの高い安定性によって高いプリント性能を誇ります。

造形サイズ 300×300×300mm
対応材料 PA~カーボンファイバー配合材料まで

Raise E2

RaiseE2はRaise3Dのデスクトップタイプの3Dプリンターです。ナイロン(PA)からPLA、TPUなど幅広い材料に対応しており、専用ソフトウェアとオートキャリブレーション機能によって非常に高い安定性を誇っています。

造形サイズ 330×240×240 mm
対応材料 PA、PLA、TPU、PCなど

 3Dプリンター用木材フィラメントの注意点と対策

3Dプリンター用木材フィラメントを使用する際にはいくつかの注意点があります。具体的にはノズル詰まりといった不具合を発生させる可能性があります。

100%PLAフィラメントで構成されているPolyWoodなどではノズル詰まりの心配はありませんが、その他の木材粉末が配合されている木材フィラメントは、ノズル詰まりが頻繁に起きる可能性があります。

ノズル詰まり

木材フィラメントの不具合として代表的な症状がノズル詰まりです。木材フィラメントには本物の木の粒子が配合されているため、プリント中にノズルの奥深くまで粒子が入り込み、詰まってしまい正常に押出ができなくなってしまいます。


対策:

木材フィラメントでより良いプリント性能やノズル詰まりを解消するための対策は以下の通りです。

大きいノズルを使用する

一般的な押出ノズルは、0.3mmや0.4mmですが、本物の木材が配合されているフィラメントを使用する場合には直径0.5mm以上のノズルを使用することをおススメします。

また、0.5mm以上のノズルを使用することで、ノズル詰まりは大きく減らすことができますが、定期的にノズル内に形成された粒子による詰まりを取り除く必要があります。

フィラメント吸湿ボックスを使用する

木材フィラメントも、よりよいプリント結果やノズル詰まりを防止するためには湿度からの吸湿を防ぐことが大切です。そのためプリント中だけではなく保管中もフィラメント吸湿ボックスなどを使用して、乾燥した状態をキープする必要があります。

フィラメント除湿ボックス

DryBox

DryBoxはフィラメント収納ボックスです。内部に乾燥剤を使用することで、効率的に乾燥状態にすることが可能です。また最大48時間の乾燥と庫内加熱機能も搭載し除湿した状態でそのままフィラメントを使用できます。

PolyBox 湿気防止ボックス

フィラメント材料の保管では、PolyMakerが発売しているPolyBoxがおススメです。フィラメント材料を2本まで収納可能で、常に低湿度に保つことができます。また、除湿したボックスから3Dプリンターにセット可能なため、ABSフィラメント材料を使用する場合にはおススメです。

まとめ

3Dプリンター用木材フィラメントを使用することで、アートや置物、模型などのさまざまな用途に3Dプリンターを使用することができます。また100%PLAフィラメントで構成されているPolyWoodなどを使用すればノズル詰まりの心配もなく快適に3Dプリントを行うことができます。木材フィラメントは用途に合わせて選択したい材料の一つです。

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