3Dプリンター用ASAフィラメント材料とは
3Dプリンター用ASAフィラメントは、ABSの弱点である耐候性を備えたフィラメント材料です。ABSの耐衝撃性や強度、耐熱性に加え、耐薬品性も備えています。さらにABSほど反りの心配がなく、プリント安定性に優れる材料です。
ABSよりも安定性に優れるフィラメント
3Dプリンター用材料としては最も初期からあるフィラメント材料で、さまざまなFDM (熱溶解積層法)3Dプリンターで使用されます。特にデスクトップ型の3Dプリンターが登場してからは、最も安定して使用されるフィラメント材料です。
ASAフィラメントのすべてをご紹介します
今回は3Dプリンター用ABSフィラメント材料について、できることや作れるもの、特長や特性、更には代表的なおススメのABSフィラメントについて、幅広くご紹介したいと思います。
3Dプリンターを使用するすべての方々がより良いモノづくりができるようになれば幸いです。
3Dプリンター用ASAフィラメントの強みと弱み
ASAフィラメントの強み
1.耐候性・耐UV性
ASAフィラメントの最大の特長が耐候性・耐UV性になります。ABSのブタジエンゴムを変更することで、紫外線でも劣化せず野外などの環境においても使用することができます。また耐薬品性や耐水性にも優れています。
2.優れた機械的特性
ASAフィラメントはABS同様、優れた機械的特性を持っています。耐衝撃性や強度に優れています。野外で使用することを想定した機能性パーツや高強度な試作の3Dプリントに最適です。
3.プリント適正
ASAフィラメントは、ABSよりもプリント安定性に優れており、ABSと比べて反りなどが少なく綺麗な造形ができます。
ASAフィラメントの弱み
1.温度管理
ASAフィラメントは、プリント時に適切な温度管理が求められます。温度設定が適切ではないと、層間接着性が悪くなったり、造形モデルに日々が入る場合があります。そのため、造形プレートの加熱や周囲が密閉された3Dプリンターでの使用をおススメします。
2.若干の反り
ASAフィラメントはABSよりもプリント安定性がUPしたとはいえ、若干の反りが出る場合があります。ビルドチャンバーの加熱やしっかりとした乾燥などが必要です。
3.臭い
ASAフィラメントの課題として、ABSと同様に造形中に独得の臭気がします。
ASAフィラメント材料の特性一覧
耐候性：紫外線に強く野外での使用ができる。
耐久性：長く劣化せずに安定して使用することができる。
耐熱性：高温の環境（70℃～100℃程度）での環境にも強い。
耐衝撃性：衝撃などに強い特性を持つ。
耐薬品性：酸やアルカリなど薬品による変化が少ない。
引張強度：引っ張った時にも破れにくい。
靭性・曲げ疲労性：ねじったり曲げたりした時にも壊れにくい。
3Dプリンター用ASAフィラメントでできること
ASAフィラメントでできることをご紹介します。ASAフィラメントは、FDM®(熱溶解積層法)タイプの3Dプリンターの材料として野外向けの用途に使うことができます。
野外向け製品の製品開発の効率化：リードタイムの短縮
ASAフィラメントでできることの第一として、製品開発の効率化があげられます。具体的には製品開発にかかるリードタイムの短縮です。
機能検証：ASAで耐紫外線検証
第二に、3DプリンターでASAフィラメントを材料を使うことで実際に野外で使用するものや耐紫外線性の機能検証を行うことができます。最終品と同等の素材で検証すれば開発期間が短くなります。
パーツの軽量化
ASAフィラメントを使ってできることとして、パーツの軽量化を実現できます。ASAはABSと同じく、耐衝撃性や強度に優れることから、強度を保ちながらパーツの軽量化などにつなげることができます。
オンデマンド製造
ASAはABSと同様に耐衝撃性、耐久性、強度、耐熱性など優れた物性を持っています。こうした物性から最終パーツのオンデマンド製造も可能です。
3Dプリンター用ASAフィラメントで作れるもの
3Dプリンター用ASAフィラメントでは、さまざまなものを作ることができます。ここでは具体的な作れるものについてご紹介します。
機能試作（プロトタイプ）
3Dプリンターの最も一般的な用途がプロトタイピングでの利用ですが、ASAでは耐紫外線や耐薬品性などの機能試験用の試作を作ることができます。
野外向けや特殊環境下での冶具・工具・取付具
ASAフィラメントの耐紫外線性、耐薬品性と強度は、野外など特殊環境下での治具や工具、取り付け具を作ることができます。
野外向けなどのボルトナットやねじにも最適
ASAは強度や耐久性、靭性に優れるABSの特性に加え耐UV性、耐薬品性から特殊環境でのボルトナットやネジなどの工具類にも最適です。
野外向けなどの最終品パーツ
ASAは野外など紫外線の環境下で使用される最終パーツも作ることもできます。ABSの高強度、耐衝撃性が最終品にも活かされます。
3Dプリンター用ASAフィラメントの種類
ASAフィラメント材料が使用できる3Dプリンターは、FDM（熱溶解積層法）タイプの3Dプリンターです。FDM（熱溶解積層法）は、加熱すると柔らかくなり、冷えると固まる性質を持つ熱可塑性樹脂を材料とする3Dプリンターです。
ASAフィラメントは比較的ノズル温度が高温なため、対応している3Dプリンターを使用します。
PolyLite ASA
PolyLite ASAはABSの耐久性に耐候性が加わったフィラメント材料です。カバーや自動車外装部品、建材、屋外用品など野外で使用する製品の3Dプリントに最適です。
PlyLite ASAのスペック
カラー：ブラック、ホワイト
重量：1 Kg
フィラメント径：1.75 mm ±0.05 mm
プリント温度：240℃～260℃
プリントスピード：30mm/S～50mm/s
プリントベッド温度：75℃～95℃
Ultrafuse ASAフィラメント 750g（BASF）
Ultrafuse ASAフィラメントは、ABSの耐久性に耐候性が備わったASAフィラメントです。耐薬品性なども備えています。
Ultrafuse ASAのスペック
カラー：ブラック、ナチュラル
重量：750g
フィラメント径：1.75 mm
プリント温度：260℃～280℃
プリントスピード：30mm～60mm/s
プリントベッド温度：110℃
Raise3D純正 プレミアムASAフィラメント 1kg (Raise3D)
Raise純正プレミアムASAフィラメントは、Raise3Dが販売するRaisePro3、RaisePro2、RiaseE2、などの3Dプリンターに対応したASAフィラメントです。高い安定性を誇り高強度な造形が可能です。
Ultrafuse ASAのスペック
カラー：ブラック、ホワイト、グレイ
重量：1kg
フィラメント径：1.75 mm
Flashforge ASAフィラメント 500g/1kg (Flashforge)
Flashforge ASAフィラメントはFlashforge専用のABSフィラメントです。Creator3ProやCreator4Sというエンジニア系3Dプリンターの3Dプリンターで使用できます。
Flashforge ASAのスペック
カラー：ブラック
重量：1kg
フィラメント径：1.75 mm
ASA推奨の3Dプリンターとは
ASAフィラメントは熱収縮によって反りが発生しやすいフィラメント材料です。そのため多くの3DプリンターがASAに対応しているとはいえ、反りの影響で大きい造形物が難しい傾向にあります。
Creator4S（Flashforge）
Creator4SはFlashforgeが開発する業務用3Dプリンターです。新たに庫内温度の加熱機能を搭載した大型のFDM3Dプリンターで、ASAフィラメントでも30cm近い造形物が3Dプリント可能です。またASA以外にも20種類の材料に対応しています。
| 造形サイズ 400mm x 350mm x 500mm （ABSはW350mm x D300mm x H350mm） |
| 対応材料 20種類（ASA～カーボンファイバー配合材料まで） |
RaisePro3
Raise3Dの代表的3DプリンターがRaisePro3です。RaisePro3は最新のFDM 3Dプリンターで、AI搭載によりプラットフォームのノズル位置合わせを補正、専用ソフトとの高い安定性によって高いプリント性能を誇ります。
| 造形サイズ 300×300×300mm |
| 対応材料 ASA～カーボンファイバー配合材料まで |
Raise E2
RaiseE2はRaise3Dのデスクトップタイプの3Dプリンターです。ASAからPLA、TPUなど幅広い材料に対応しており、専用ソフトウェアとオートキャリブレーション機能によって非常に高い安定性を誇っています。
| 造形サイズ 330×240×240 mm |
| 対応材料 ASA、PLA、TPU、PCなど |
耐候性と機械的特性で幅広い用途に
ASAフィラメントは、ABSの強度や機械的特性に加え、耐候性も併せ持つことで幅広い用途に使用が可能です。外環境で使用するプロトタイピングから治具、工具など、ものづくりの可能性を大きく広げてくれることでしょう。
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