3Dプリンター用ガラス繊維
フィラメント材料とは

3Dプリンター用のフィラメント材料の中で、カーボンファイバー配合とともに繊維強化剤として登場しているのがガラス繊維を配合したフィラメント材料です。ガラス繊維は、カーボンファイバーほど剛性はありませんが、同じく強度と剛性、耐熱性に優れ、カーボンファイバー配合材よりも安価です。3Dプリンターの材料では、ナイロンやPETG、PPなどに配合した材料が登場しています。
ガラス繊維とは?
ガラス繊維は、グラスファイバーともいわれ、プラスチックにガラス繊維を混合して固めることでより強度と靭性を高めて使用される材料です。現在ではスポーツ用品やヘルメットなどさまざまな製品に使用されています。
ガラス繊維フィラメントの
注意点や対策も
その一方でガラス繊維配合フィラメントはプリントする際に、課題や注意点などもあり、専用のノズルや機種が限定されます。
今回はガラス繊維配合フィラメントの特長や注意点、おススメ機種やPPの種類についてもご紹介します。
対応3Dプリンターも豊富
ガラス繊維フィラメントに対応した3Dプリンターも最近では徐々に増えつつあります。100万円以下のデスクトップタイプでも利用が始まっています。
3Dプリンターを使用するすべての方々がより良いモノづくりができるようになれば幸いです。
3Dプリンター用ガラス繊維フィラメントの
強みと弱み
3Dプリンター用ガラス繊維フィラメント材料の強みと弱みについて簡単にその特長をご紹介します。
ガラス繊維
フィラメントの強み
1.優れた機械的特性:強度と剛性、耐熱性、耐寒性
ガラス繊維配合フィラメント材料の最大の強みは、優れた機械的特性です。強度と剛性に優れており、耐衝撃性も高いです。また耐熱性にも優れているだけではなく、耐寒性にも優れる材料です。


2.綺麗な表面仕上げ
ガラス繊維配合フィラメントで作られた造形物は、他のフィラメント材料と比べて積層跡が目立ちにくく、全体的に綺麗な表面仕上げが特長です。カラーも黒系が多く、マットな質感が再現できます。
3.寸法安定性
ガラス繊維配合フィラメントは、フィラメント材料があまり吸湿しないため比較的寸法安定性に優れています。フィラメントに配合されたガラス繊維粒子によって強度が増加し、かつ反りや収縮を抑えます。

ガラス繊維
フィラメントの弱み
1.ノズルの摩耗
ガラス繊維配合フィラメントはガラス繊維が配合されていることでフィラメント自体が硬く、通常の真鍮ノズルではノズルそのものが削れて摩耗してしまいます。そのため硬化鋼などの専用ノズルの使用が必須です。


2.ノズルの詰まり
ガラス繊維配合フィラメントはノズル詰まりが起きやすい素材です。一般的なノズル系よりも太い、直径 0.5mm 以上 のノズルを使用すると、ファイバーがノズルの穴を通過しやすく目詰まりする可能性がはるかに低くなります。こちらも専用ノズルの使用が推奨です。
3.脆い可能性(薄い場合)
ガラス繊維配合フィラメントはナイロンやPPなど別の素材に炭素繊維を混ぜていることから、部位、例えば非常に肉厚が薄いなどの箇所をプリントすると脆い可能性があります。(ある程度の厚みがあれば強固です)

ガラス繊維フィラメントの特性一覧
高硬度:硬度が高く、壊れにくい。
耐疲労性:衝撃やねじれ、凍結などに強い。
耐衝撃性:衝撃などに強い特性を持つ。
耐熱性:100℃~200℃以上の耐熱性
耐寒性:-100℃以下の耐寒性
引張強度:引っ張った時にも破れにくい。
靭性・曲げ疲労性:ねじったり曲げたりした時にも壊れにくい。
3Dプリンター用ガラス繊維フィラメントで
できること
ガラス繊維配合フィラメントでできることをご紹介します。高強度かつ高硬度、軽量、高耐熱、耐寒性の特性はいろいろな用途に対応しています。
特殊環境での最終品の
オンデマンド製造
ガラス繊維配合フィラメント材料の優れた物性は、最終品のオンデマンド製造を可能にします。特に高強度や高硬度で、耐熱性、耐寒性が求められるパーツや部品の領域で、金型量産ではなく必要な量をその場で3Dプリントすることに適しています。
小ロット量産
ガラス繊維配合フィラメントを使うことで、小ロット量産もできます。最終品レベルのその物性によって少量しか作らないパーツや部品など、3Dプリントすることが可能です。
製品開発のリードタイム短縮
ガラス繊維配合フィラメントを使うと機能性試験用のプロトタイプ作成に利用が可能です。データから3Dプリントすることで、最短数時間から1日程度で高強度・高剛性パーツがプリントできるため、従来の切削加工に比べて素早く製品開発が実現できます。
製品開発のコスト削減
ガラス繊維配合フィラメント材料を使用すれば、製品開発のコストも削減することが可能です。3Dプリンターでは必要な分しか造形しないため、従来の切削のようなブロック単位のコストはかかりません。

3Dプリンター用ガラス繊維フィラメントで作れるもの
3Dプリンター用ガラス繊維配合フィラメントでは、さまざまなものを作ることができます。ここでは具体的な作れるものについてご紹介します。
最終品パーツ
ガラス繊維配合フィラメントの高い剛性、強度、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性は最終パーツを作ることに適しています。また寸法安定性に優れる材料なため、小さいパーツなどの小ロット量産、製造には最適な素材です。


特殊環境下でのパーツ
ガラス繊維配合フィラメントでは、高い剛性、強度、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性などを持ち、特に耐寒性は-100℃以下の環境デモ耐えうる材料として、特殊環境下でのパーツ製造、試験に最適です。
治工具
ガラス繊維配合フィラメントの高い強度や硬さは、治工具などの作成にも利用が可能です。繰り返し使用するねじれや衝撃に対して優れた機械的物性が最適な効果を発揮します。


機能性プロトタイプ
ガラス繊維配合フィラメント材料の用途として、機能性テスト用のプロトタイプを作ることができます。機能性プロトタイプとは、外観だけのモックアップとは違い、実際に強度、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性などをテストすることができます。
3Dプリンター用ガラス繊維フィラメントの種類
ガラス繊維配合は、ナイロンやPPなどさまざまな素材に配合したものが特長です。

PolyMide PA6-GF(ガラス繊維配合) フィラメント
PolyMide PA6-GFはナイロン6にガラス繊維を配合したフィラメント材料です。強度、耐衝撃性、191℃の熱変形温度(荷重たわみ温度)を誇り、-190℃の耐寒性も備えるフィラメント材料です。
PolyMide PA6-GFのスペック
カラー:ブラック
重量:2kg
フィラメント径:1.75 mm ±0.05 mm
プリント温度:280-300℃
プリントスピード:60mm/s
プリントベッド温度:20-50℃
冷却ファン:OFF

Ultrafuse PP-GF ガラス繊維配合PPフィラメント 750g(BASF)
Ultrafuse PP-GF ガラス繊維配合PPフィラメント 750gはポリプロピレンにガラス繊維を配合することで、PPの持つ強度、耐疲労性に加え耐薬品性や紫外線に強い耐UV性を備えました。
Ultrafuse PP-GF ガラス繊維配合PPフィラメントのスペック
カラー:ブラック
重量:750g
フィラメント径:1.75 mm ±0.05 mm
プリント温度:240℃~260℃
プリントスピード:30mm/S~80mm/s
プリントベッド温度:70-90℃
ガラス繊維配合フィラメント推奨の3Dプリンターとは
ガラス繊維配合フィラメントは専用ノズルが必要で、かつ高い造形安定性が求められるため、推奨機種もある程度絞られます。

OnyxOne (MarkForged)
Markforgedの3Dプリンターはカーボンファイバー配合フィラメント、さらには本物の炭素繊維を強化剤として注入が可能です。OnyxOneは、カーボンファイバー配合ナイロンフィラメントを使用できるデスクトップ型の3Dプリンターです。※繊維強化剤は使用できません。
造形サイズ 320mm x 132mm x 154mm |
対応材料 カーボンファイバー配合ナイロンフィラメント |

Mark2(Markforged)
Mark2は、Markforgedの3Dプリンターの中でも代表的な機種です。Onyxというカーボンファイバー配合ナイロンフィラメントに本物の炭素繊維を強化剤として注入して3Dプリントが可能です。
造形サイズ 320幅 × 132奥行 × 154高さ mm |
対応材料 繊維強化剤入りフィラメント |

Raise Pro3
Raise3Dの代表的3DプリンターがRaisePro3です。RaisePro3は最新のFDM 3Dプリンターで、AI搭載によりプラットフォームのノズル位置合わせを補正、専用ソフトとの高い安定性によって高いプリント性能を誇ります。
造形サイズ 300×300×300mm |
対応材料 PA~カーボンファイバー配合材料まで |

Raise E2CF
RaiseE2はRaise3Dのデスクトップタイプの3Dプリンターです。ABSからPLA、TPUなど幅広い材料に対応しており、専用ソフトウェアとオートキャリブレーション機能によって非常に高い安定性を誇っています。
造形サイズ 330×240×240 mm |
対応材料 PA、PLA、TPU、PCなど |

Creator4S(Flashforge)
Creator4SはFlashforgeが開発する業務用3Dプリンターです。新たに庫内温度の加熱機能を搭載した大型のFDM3Dプリンターで、ナイロン(PA)フィラメントでも30cm近い造形物が3Dプリント可能です。またPA以外にも20種類の材料に対応しています。
造形サイズ 400mm x 350mm x 500mm (ABSはW350mm x D300mm x H350mm) |
対応材料 20種類(PA~カーボンファイバー配合材料まで) |
3Dプリンター用ガラス繊維配合フィラメントの注意点と対策
ガラス繊維配合フィラメントはすでにご紹介した通り、素材そのものが硬く、専用ノズルが必要になります。
対策:専用ノズルの使用
ガラス繊維配合フィラメント専用の鋼でノズル系が0.5mm以上の専用ノズルを使用することで、3Dプリントが可能になります。

推奨:フィラメント除湿ボックスを使用する
ガラス繊維配合フィラメントもナイロンやPPに配合しているため反りの可能性があります。使用する場合には、吸湿対策が必要です。そのためフィラメント除湿ボックスの使用が推奨です。十分に除湿されていない空間や、湿気が多い空間に長期間置いておくと、空気中の水分を吸収してしまい、溶着力が弱くなり、反りが起きやすくなります。
フィラメント除湿ボックス

DryPRO
DryBoxはフィラメント収納ボックスです。内部に乾燥剤を使用することで、効率的に乾燥状態にすることが可能です。また最大48時間の乾燥と庫内加熱機能も搭載し除湿した状態でそのままフィラメントを使用できます。

PolyBox 湿気防止ボックス
フィラメント材料の保管では、PolyMakerが発売しているPolyBoxがおススメです。フィラメント材料を2本まで収納可能で、常に低湿度に保つことができます。また、除湿したボックスから3Dプリンターにセット可能なため、ABSフィラメント材料を使用する場合にはおススメです。

まとめ:最終品製造をもたらす可能性
ガラス繊維配合フィラメントは、高い機械的特性とプリントのしやすさから、最終品製造への用途を実現します。小ロットパーツなどでは、オンデマンド製造を可能にします。
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