光造形3DプリンターForm3レビュー【機能編 メッシュBOX : グレイレジン】

光造形3DプリンターForm3レビューの機能編です。
Form3で機能性のある造形を3Dプリントするとどのような仕上がりになるのか?
造形の機能性はどこまで表現されるのか?
を検証していきます。

今回の機能編は、「メッシュBOX」です。
前回のレビューに続いて今回も3Dプリンターで機能性のあるBOXを3Dプリントしてみます。
今回のBOXは中身が透けて見えるメッシュタイプのBOXです。開閉する蓋付きのタイプです。
蝶番と呼ばれる開閉する為の部品がついていることで開閉します。
更に閉じた蓋を、固定された留め具で固定できる構造になっています。メッシュ構造を3Dプリントするとどのようなテクスチャで3Dプリントされるのかも気になります。
表面の仕上がりのディティール以外にも機能性についても検証していきたいと思います。

プリントする形状とサイズ

こちらは3DプリントするBOXの3Dデータになります。
3Dデータは、Blenderという3Dソフトを使用して作製しています。 
今回3DプリントするBOXは、身と蓋のパーツが蝶番で繋がっています。
蓋を閉じて固定する留め具までが全て一体でプリントできる3Dデータになっています。
蝶番部分が回転して動く構造になっています。
今回のBOXは、大きいサイズの3Dプリントです。大きい物を3Dプリントした場合の検証もしていきます。

サイズ : 108.7mm(縦)×112.3mm(横)×89mm(高さ)

蓋は、開いている状態の3Dデータでプリントします

使用する光造形3Dプリンターと材料

今回使用する光造形3Dプリンターは、Form3です。
Form3は、高精細、滑らかな仕上がりが特徴の反転方式の光造形3Dプリンターです。
ソフトは、Form3の専用ソフトウェア PreFormを使用します。
PreFormでは、プリントするデータ、プリント方向、サポートの付け方を設定することができます。
光造形3Dプリンター用の材料はForm3専用スタンダードレジンのグレイレジンを使用します。

3Dプリントで検証したい内容

【検証1】クリアランスの影響と蓋の機能性

今回3DプリントするBOXには、蓋を開閉する機能と蓋を留め具で固定するという2つの機能がついています。開閉する為の機能として、身と蓋の間に蝶番をつけています。蓋に付けている留め具が身の溝にパチンとはまることで蓋を閉めて固定できる構造になっています。3Dデータ上では一体型の造形になっている為、事前に3Dデータ上で、動かせるように十分なクリアランスを取ってデータを作成しています。
クリアランスに関しては以前、機能編「クリップ」のレビューで検証しています。詳しくは、そちらのレビューをご覧下さい。
今回も同様に、3Dプリント後のクリアランスの影響に関しても検証していきたいと思います。

それでは、クリアランス部分を見てみましょう。こちらが、3Dソフトで作成した3DデータPreFormでの3Dデータになります。
パーツの繋ぎ目部分にクリアランスを取っています。
今回プリントする3Dデータでは、約2.5mm〜3mmクリアランスを取っています。
この内容で正常に動かせるのかどうかを検証していきます。

もう一つが蓋の開閉の機能性についてです。蓋に直角についた留め具が身の溝にピッタリはまるかどうかも検証していきます。

Blenderという3Dソフトの画面
クリアランス拡大部分
PreFormでのプリント画面

【検証2】表面ディティールの仕上がり

検証二つ目の内容は、機能性のある造形を3Dプリントした場合の表面ディティールの仕上がりです。
3Dデータの造形がどこまで表現できているのかを検証していきます。

PreFormのプリント設定

サポート設定と積層ピッチ

サポート設定は、直付プリント(サポート設定なし)
積層ピッチは、50ミクロン
でプリントしていきます。

こちらがPreFormでのプリント画面になります。
この内容で3Dプリントをしていきます。
蓋についている留め具が直付でプリント面に貼り付いています。
こちらの影響も結果で確認していきましょう。

PreFormのプリント画面

プリント時間 レイヤー数 ボリューム Total材料コスト 1個あたりのl材料コスト
13h45m 891層 105.79ml 1個=1,989円 1個=1,989円

プリント結果

それでは、クランプのパーツ別にプリント結果を見ていきましょう。

【検証1】クリアランスの影響と蓋の機能性 結果

[クリアランスの影響と蓋の開閉機能 結果]

まずは、クリアランスがどのように3Dプリントできているのかを見ていきます。

●3Dデータ通りにプリントできている。一体型でのプリントは成功した。
●クリアランス部分は問題無く、蓋の開閉もスムーズにできる。
●蓋についた留め具もそのままプリントできて、身にもピッタリはめることができる。
●クリアランスの幅も余裕があり、しっかりと固定されていて外れない。

蓋の開閉機能を検証してみました。
スムーズに開閉できます。

【検証2】表面ディティールの仕上がり 結果

それでは、クリップの全体の仕上がりを見ていきましょう。

●3Dデータ通りに全体的に滑らかにプリントできている。
●メッシュ部分が高精度にプリントできている。しっかりと抜けている。
●蓋の閉まり具合がピッタリで、蓋と身の間も隙間なく造形ができている。
●直付部分のメッシュが潰れてしまった。レジンが埋まってしまった。
●直付部分の蓋の留め具の先端が少し広がってしまった。
●直線の角の精度がとてもきれい。
●BOXの内側の仕切りもきれいに3Dプリントできている。

[寸法結果]

サイズ : 108.7mm(縦)×112.3mm(横)×89mm(高さ)

3Dプリント後のサイズ
縦 : −0.7mm
横 : +0.6mm
高さ : −0.3mm

縦と横、高さに歪みがでました。

機能編バックル付 3Dプリントまとめ

今回は、機能編ということでメッシュをテーマに光造形3Dプリンターで3Dプリントしてみました。
検証結果をまとめると、

●機能性に関して
クリアランスの影響のある蓋付BOXを一体型で3Dプリントしました。クリアランス部分の動きを考慮して3Dデータを作成しましたが、今回の検証では機能に問題なく3Dプリントができました。蝶番部分のクリアランスが8個付いていましたがどれも問題無く機能しました。BOXの機能である蓋の開閉もスムーズにできました。
直付部分に蓋の留め具がくる状態でのプリントでした。
一部が広がりましたが蓋と身がしっかりはめりました。

●表面のディティールの仕上がり
全体的に3Dデータ通りにとても高精細で滑らかな造形に仕上がりました。メッシュも綺麗な凹凸で3Dデータ通りにプリントできています。BOXとして、清度の高い造形に仕上がりました。
更に今回は、大きな造形を3Dプリンターでプリントしてみましたが、小物と変わらずとても高精細にプリントできることが分かりました。直線の多い造形でしたが角の精度も良く3Dプリントできています。

今回の3Dプリントの結果は、グレイレジンの持つ滑らかで美しい表面と、高精細なディティール表現が良く出ている結果になりました。機能性に関しては、クリアランスも問題無くプリントできた良い検証結果になりました。また、グレイレジン以外の材料にtough 2000 ResinというABSの強度を再現したものや、ポリプロピレンの靭性を再現したTough 1500、その中間で適度な曲げ強度があるデュラブルなど、曲がりにくく硬くて頑丈な材料があります。
用途や造形の表現に合う最適な材料で、機能を生かした造形に仕上げられるように検証をしていけたらと思います。

比較として、前回のレビュー機能編 バックル付BOXも参考にしてみて下さい。