金属の積層3Dプリントと6軸加工の融合。自由な形を造形できるMultiFabシステム

進む金属素材の3Dプリント開発

SLSレーザー焼結法の特許切れによって、一躍注目が集まる金属の3Dプリンター。金属加工技術は鋳造や鍛造、圧延といった伝統的製造技術が主流であるが、こうした製造技術は巨大な設備と長年蓄積されたノウハウが必要である。そのため誰もが簡単に利用できるわけではなく、製品や用途によって使用が選ばれることになる。

しかし、特許切れなどによって金属の3Dプリンターが普及するようになれば、製品開発の幅がより拡大し、イノベーションを起こす可能性が高まるだろう。3Dプリント技術で使用できる素材が拡大するということは、ものづくりの選択肢を広げ、同時に製品の機能やデザインのパワーアップを可能にするのだ。

このように注目が集まる金属の3Dプリンターだが、特許切れしたレーザー焼結以外の手法も実は密かに開発が進んでいる。

例えばGEは、独自にレーザー焼結とは異なる金属加工技術の開発に取り組み始めている。以前もご紹介したコールドスプレー技術や、電子ビーム製法などだ。こうした製法が進むことで、使用できる材料や作れるパーツの幅も拡大することになるだろう。

そのような中、新たに画期的な金属加工技術の開発が進んでいる。それはまさに金属のFDM3Dプリントとも言ってもいい製造方法だといえよう。しかも6軸に回転させることにより、自由自在に金属造形を可能にしてくれる。

本日は、新たに開発が進むレーザーベースの6軸金属3Dプリント製法MultiFabシステムをご紹介しよう。

レーザー溶接の積層と6軸加工の融合。MultiFabシステム

この6軸の金属3DプリントMultiFabシステムを開発するのは、アメリカテキサス州ダラスにある南メジスト大学の研究チーム。

直接金属蒸着技術と呼ばれ、粉末状の金属パウダーをレーザーで固めながら積層していく方式。いわばレーザクラッディングと溶接、多軸加工を融合した製造技術とも言える。6軸ロボットや5軸高速マシニングセンタをベースに、FDMのように金属素材を積層しながらパーツを生成していく。

仕組みはFDMがフィラメント状の樹脂を熱で溶かしながら積層するのと同様、金属粉末を抽出しレーザーで溶接しながら積層していく方法だ。また、一般的なFDM3Dプリンターとは違い、金属の溶接という特性を活かし、軸を回転させることで、さまざまな方向から金属パーツの追加を可能にしてくれる。

下記の動画は、このMultiFabシステムを使って、スクリューを造形する動画だが、レーザー溶接と、多軸加工の特長が最大限示されている。はじめに一般的なFDM3Dプリントのように、縦に金属粉末を積層して固めた後、軸を変えて金属パーツの側面にスクリューの羽の部分を造形している。

ちなみにこのMultiFabシステムでは金属素材以外にもセラミックに対応しているとのこと。

MulitFabシステム動画

6軸で側面にも造形可能

積層スピードも速く、微細な幾何学的特徴を表現可能

このMultiFabシステムはレーザー技術による金属溶接と、6軸のCNCマシニングの融合とも言える新たなシステムだ。この技術は今から遡ること10年以上前、2003年に開発者であるラドヴァン教授により特許出願された、金属粉末をプールして制御し溶接する技術がベースになっている。

この金属粉末の制御技術によって、金属の微細な幾何学的特徴を表現することが可能になり、材料特性を最大限発揮することができる。また、金属粉末のレーザー溶接であることから体積速度が格段に早く、金属パーツの試作製造がより迅速に行うことができる。上記の6軸による加工と積層のスピードが合わさることで、さまざまな金属パーツを迅速に生成するという特徴を持つマシーンというわけだ。

MultiFabシステム動画2

マシニングとの融合

まとめ 金属加工に革新を与える可能性

このMultiFabシステムは現在開発中の段階だが、これまでの金属加工を変える画期的な製法だといえよう。マシニングセンタは、削り出して加工する製造技術だが、この多軸性を素早い積層溶接と組み合わせることで、造形できる形状を飛躍的に高めている。

また、マシニングとは違い、ベースとなる金属パウダーを必要に応じて溶接していくため材料の無駄がない。例えばMultiFabの動画で紹介されているようなスクリューを作る場合、従来の製法では鋳造によって製造されるが、鋳造の場合一般的にはベースとなる木型を作り、さらにその木型を砂型で囲んで焼結、始めて金属を流し込むことができる。

この従来のプロセスでは、3Dデータを作った後、マシニングで木型を削り出し、その後砂型を製造し鋳造という工程になるが、MultiFabシステムは3Dデータからダイレクトに作れるため飛躍的に製造プロセスを早める事になる。またリードタイムの短縮だけではなく、木型や砂型を作る加工費や材料費をなくし、コストも一気に圧縮することができるだろう。

もちろん、作る製品やパーツによって加工方法は異なるが、MultiFabシステムの精度で機械的特性が担保されれば、金属加工に革新を与えるかもしれない。今後の開発状況が気になるところだ。

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