世界で10人しかいない時計技術トゥールビヨンの3Dプリントで構造を理解

世界で10人しかいない超高性能技術

皆さんはトゥールビヨンという言葉をご存知だろうか。この技術を習得している時計職人は世界でも数える程しかおらず、日本ではたった2名しか存在しない。トゥールビヨンが発明されたのは1801年と言われているが、日本で初めてこのトゥールビヨンの製造に成功したのは浅岡肇氏で、BRUTUS誌で発表したのがつい5年前の2009年だ。浅岡氏の製造するトゥールビヨン搭載の腕時計は年間生産本数10本で、その価格はなんと1本あたり682万5千円。

トゥールビヨンを搭載した腕時計

これほどの高価な価格を付けるトゥールビヨンとは一体どのような技術なのだろうか。トゥールビヨンはもともと懐中時計に備えられていた機構で「機械式時計の姿勢差を克服するための脱進器」だ。

なんのことかよくわからないと思われるが、簡単にご説明すると、機械時計は理想的にはどの向きに置いて使用したとしても、時を刻む針の速度は同じでなければならない。

しかし、実際には部品の重さやバランスなどによって、重力の影響を少なからず受け、置き方によって狂いが出てしまう。この置き方によって生じる誤差を「姿勢差」というが、トゥールビヨンはこの姿勢差を解決し、常にくるわない性能を備えるためのいわば、特別な機構と言える。

その構造は極めて複雑な上、各パーツを一つ一つ精密に作らなければならない。軽い上に高精度なクオリティが要求されるものだ。そのため1本のトゥールビヨンを備えた時計を作るのには非常に長い時間と手間暇がかかる。

その複雑かつ精密さを要求される構造は、到底余人には真似をすることができない技術で、機械時計ブームが起きた1980年代後半においても、「製造できる時計師は世界で10人しかいない」と言われていたほどだ。

トゥールビヨンは時計を狂わせない技術

複雑な構造を理解しカスタマイズの試作に最適

そんな複雑で余人が伺い知ることができない技術トゥールビヨンを1000%に拡大したレプリカを3Dプリンターで作ることによって、構造と仕組みを理解するのを助ける教育教示として提供しようという動きが登場した。

この1000%のトゥールビヨンを作ったのはカリフォルニア大学でコンピューターサイエンスを学び、ニコラス·G·ハイエック時計製造学校で、時計の製造技術を学んだニコラス・マヌッソス氏だ。もともとはエンジニアとして、テクノロジー企業で働いていたが、機械時計の構造に魅せられ時計の製造を学んだという。

今回開発されたこの1000%のトゥールビヨンは、主に時計メーカーや時計技師を対象に販売されており、技師たちがトゥールビヨンを搭載した腕時計を作る際の、試作やカスタマイズ、構造理解という使用を目的としている。下記がニコラス氏が開発した1000%のトゥールビヨンだ。

1000%のトゥールビヨン

1000%のトゥールビヨン動画

3Dプリンターでカスタマイズも可能

解像度は200ミクロン

宝石のような精密なベアリング

素材はPLA樹脂を使用

まとめ

現在この1000%トゥールビヨンを開発したニコラス氏だが、ニューヨークを拠点に活動し、時計コミュニティーや学会などで時計の構造のプレゼンテーションを行い、時計メーカーに導入を図っている。この1000%のトゥールビヨンは、今後期待される教育現場での3Dプリンターの使用そのままだろう。

もちろん、非常に微細であると同時に高精度なパーツを作る技術は一朝一夕には習得することは不可能だ。しかし、その複雑な構造を理解したり、また、時計に応じた試作、カスタマイズなどを行う上ではこれ以上ないくらいこの1000%のトゥールビヨンは適切なのではないだろうか。3Dプリント技術の斬新な使い方といえるだろう。

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