完全に透明な3Dプリントの開発
樹脂の3Dプリンターの魅力の一つがプラスチック素材の種類の多さだ。3Dプリンター用のフィラメント材料は多彩な種類が利用できる。ABSフィラメントからPLAフィラメント、ナイロンフィラメント、ポリカーボネートフィラメント、PETGフィラメント、ゴム(エラストマー)フィラメントなど、これまで金型でしか使用できなかった素材をダイレクトに作ることができる。製法によって使用できる素材、使用できない素材はあるが、こうした樹脂素材のバリエーションの多さは、プロトタイプから機能性や質感を確認できるというメリットを与えてくれる。
この3Dプリンターで使用できる素材は今も開発が進み、さまざまな新素材が登場しつつある。たとえば導電性のフィラメントや、炭素繊維のものなど、ある意味3Dプリンターの素材開発は、ものづくりのバリエーションを拡大するものとして期待が高まる。そのような中、これまでない素材として開発が期待されるのが完全に透明な3Dプリント材料の開発だ。
これまで多くのプラスチック素材が3Dプリント用に登場しているが未だかつて完全な透明性を実現したものはない。そのような中、光学レンズの3Dプリント製造を行うLUXeXceLが新たに透明材料のためのベンチマークレポートを発表した。透明性を測る基準として一つは光の透過率があるがLUXeXceLが独自開発したPrintoptical技術では他社の追随を許さない高い透過率が照明されている。
透明プラスチックの3Dプリントの光透過率と黄色度の他社比較
LUXeXceLについては度々ご紹介してきたが、光学レンズなどの3Dプリント製造を行うメーカーだ。光学レンズはカメラなどに使用されるレンズで光をどれぐらい透過できるかが性能に大きく影響してくる。このLUXeXceLが提供するPrintoptical技術では全く後加工することがなく96.9パーセントの光透過率を実現することが可能だ。
今回発表されたのは、各3Dプリント製法ごとの光透過率の実験と、黄色度の指数だ。光透過率は言うまでもなく、どのぐらい光を通すことができるかという数値。この数値は高ければ高いほど光を通すということを示す。一方で黄色度とは、無色や白色からどのぐらい黄色になっているかを示す数値。
いわば、黄色度はどれだけ黄色に変わっているかを示す指数、黄変度レベルによってプラスチックが光や熱などでどれだけ劣化されているかという評価に用いられる。今回LUXeXceLが行った実験では、自社のPrintoptical技術、Polyjet、MJM(マルチジェットモデリング)、SLA、の4種類の製法、8パターンで比較したもの。
この他社比較の実験なら以前も行ってLUXeXceLは発表しているが、今回作られるものは、これまでの光学レンズ形状のものではなく、30mm×30mm×2mmの板状のもの。これによってこれまでの単純な光学レンズを超える、透明3Dプリントの可能性が見えそうだ。
板状でもガラスばりの光透過率、劣化はほぼなし
この実験結果を示すデータが下記のグラフである。左側からPrintoptical技術、Polyjet、MJM(マルチジェットモデリング)、SLAの順番で、MJMでは、Frosted UltraとFrostedという2種類、SLAでは、コーティングと研磨、コーティングだけ、何もしないSLAの3種類になる。
結果は一目瞭然で、やはり板状にしてもPrintoptical技術の光透過率がダントツでガラス並の90.9パーセントの透過率を保っている。次に高いのがSLAのコーティングのみのもの。87.7パーセントで比較的高い。このSLAでは研磨したものもほぼ変わらず87.4パーセントの透過率だ。またストラタシスのPolyjetも87.3パーセントとSLAのコーティングとほぼ変わらない数値を出している。
一方、プラスチック素材の劣化を示す指数である黄色度の変化で見てみると、驚くべきことにLUXeXceLのPrintoptical技術では0.2パーセントとほぼクオリティになんの影響も与えていないことがわかる。一方、SLAやPolyjetでは2.2パーセントから11.0パーセントと、若干の影響が見られる。MJMマルチジェットでは結果から透明素材の製造には適していないことが伺える。
まとめ 仕上がりの精度、劣化などを示すことで実用性に結びつく
このLUXeXceLが行う実験は二つのことをしめしていると言えるだろう。第一に、光学レンズや球体状のものだけではなく、板状のものでもLUXeXceLはガラス並みの光透過率を誇る物を作りだすことができる。また第二に、他社の製法と比べ、LUXeXceLのPrintoptical技術ではほぼ素材が劣化することがなく完成品を作り出すことができるという点だ。
この素材の劣化や耐久性に関する尺度が実は、3Dプリンターに求められている一つの精度であり、プロトタイプの製造の域を出ない理由の一つでもあると言える。メーカーも自社の製造に使用したいと思っても、耐久性や機械的な特性などで、すぐに壊れたり劣化したりする製品は作るたくないのが当然だ。
一方でこれまで3Dプリンターの可能性を示す例として形状ではさまざまな試みや提案が行われてきたが、仕上がりの精度、いわば劣化しない部分や従来の製法と比べても品質に遜色がないという点はあまり公表されてこなかったと言える。しかし、今回LUXeXceLが行った発表のように機能性(透過率と劣化に関する)が一目瞭然であればさらに利用範囲が拡大することになるのだろう。
そうした点から言うとこのLUXeXceLのPrintoptical技術は単に透明素材ができるというだけではなく、より具体的な製品開発において、より実用的な透明素材が使用できるということをしめしている。
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