光造形3Dプリンターの価格帯と選び方

光造形3Dプリンターの価格帯

光造形方式は3Dプリンターの代表的な造形方式の一つです。液体のUVレジンに紫外線を当てながら1層ずつ硬化させていくタイプの3Dプリンターで、主にSLAとDLPの二種類に分類されています。特長として両者とも滑らかで高精細な仕上がりができるという点があります。また3Dプリンターの造形方式の中では、開発が進んでいる機種の一つで、進化した方式も登場しています。

光造形の種類と価格帯

光造形3Dプリンターの価格帯の特長は、非常に幅広い価格帯を持っています。
日本の国内ではFormlabsのForm3Form2が圧倒的なシェアを誇っていますが、最近では特に10万円以下の光造形3Dプリンターもアマゾンなどで人気です。

一方ハイエンドな高価格帯もありますが、基本的に価格と機能は比例します。

区分け 低価格 中価格 中高価格 高価格
価格帯 10万円以下 20万~100万円 100万円以上~500万 1000万円以上
造形サイズ 小~中 中~大 中~大
自動化 なし Formalbsは自動化
※機種によって異なる
Formalbsは自動化
※機種によって異なる
機種によって異なる
プリント設定 調整が手間
安定性が低い
簡単
※機種によって異なる
簡単
※機種によって異なる
簡単
※機種によって異なる

10万円以下の光造形3Dプリンターの価格一覧

最近では10万円以下の光造形方式の3Dプリンターが多数登場しています。価格帯は最も安価な機種で2万円~3万円程度ですが、基本的に10万円以下の機種の違いはほとんどありません。メーカーは中国製が多く、ほとんどがDLP方式です。ELEGOOやANYCUBIC、NOVA3Dといったメーカーになります。

機種名 ELEGOO Saturn 3Dプリンター ANYCUBIC Photon Mono X ANYCUBIC Photon Mono ANYCUBIC Photon Mono SE NOVA3D ELFIN3 MINI NOVA3D BENE4 MONO
メーカー ELEGO ANYCUBIC ANYCUBIC ANYCUBIC NOVA3D NOVA3D
造形方式 DLP DLP DLP DLP DLP DLP
造形エリア 192×120×200
mm
192×120×250 mm 130×80×165 mm 130×78×160
mm
120×65×150 mm 130×80×150 mm
対応材料 UV硬化レジン
(スタンダードタイプが4、5種類)
UV硬化レジン
(スタンダードタイプが4、5種類)
UV硬化レジン
(スタンダードタイプが4、5種類)
UV硬化レジン
(スタンダードタイプが4、5種類)
UV硬化レジン
(スタンダードタイプが3種類)
UV硬化レジン
(スタンダードタイプが3、4種類)
レジンの自動補充 なし なし なし なし なし なし
レジンの加熱 なし なし なし なし なし なし
専用ソフトウェア なし なし なし なし なし なし
接続性 LAN USB / Wifi USB USB / Wifi WiFi、LANケーブル、USB WiFi、LANケーブル、USB
製品保証 1年 不明 不明 不明 1年 1年
レジンの価格帯 1,800円~3,000円程度 2,000円~3,000円程度 2,000円~3,000円程度 2,000円~3,000円程度 2,000円~3,000円程度 2,000円~3,000円程度
製品サポート 不明 不明 不明 不明 不明 不明
本体価格(税別) 54,900円 85,900円 36,999円 54,999円 20,999円 69,900円

低価格10万円以下の光造形3Dプリンターのレビュー

10 万円以下の光造形3Dプリンターは、プロジェクターを照射して積層するDLPタイプの機種になります。価格帯ごとでの性能の違いはほぼありません。
一般的に解像度という言葉をつかいますが、これはプロジェクターの照射性能なため仕上がりにはあまり影響を与えません。

10万円以下の光造形3Dプリンターの限界

上記であげた10万円以下はソフトウェアもすべてオープンソースのものを利用するため専用ソフトがないため、その機種のハードウェアに合った造形モデルごと最適なプリント設定を行うのに試行錯誤が必要です。また中価格帯や高価格帯とは違い、レジンの温度を保つ加熱機能や粘り気を均一にするりコーティング機能、材料ごとのレーザーの当て方、レジンの自動補充という機能は搭載しておらず、再現性を探るのに多少苦労します。

例)ANYCUBIC Photon Monoレビュー

具体例としてANYCUBIC Photon Monoでの使用レビューを下記のご紹介しています。機械構造も非常にシンプルで、特別な機能(レジンの自動補充、加熱機能、プリント設定など)はありません。

大きい造形モデルは造形が難しく、2回に1回は失敗します。また、ソフトウェアが純正ではないため、サポート材の付け方なども試行錯誤が必要です。失敗した場合、なぜ失敗したのかという原因を探るのに何度かプリントのトライが必要です

機械構造 シンプル。タンクとプラットフォームの取り付けのみ
マニュアル 日本語マニュアル無(英語、中国語)
接続性 USBデバイス
プリント設定 純正ソフトが無いため、CHITUBOXを使用。ハードとの連携が不十分なためサポート設定をかんで行うしかない
安定性 低い:2回に1回は失敗し、ビルドプラットフォームに積層されずレジンタンクにはりつく。
小型の造形物(直径20㎜程度)であれば成功するが30mm以上では失敗する。
価格 36,999円

結論:10万円以下の光造形3Dプリンター

10万円以下の光造形3Dプリンターは非常に手ごろな価格だが、プリント安定性が低く、造形できるサイズにも限界があるため実用性が乏しいと思われます。試行錯誤を行って、小さい造形物を低コストでプリントするということのみであれば機能しますが、試作や高強度な材料、ゴムライクの材料、フィギュアなどの細かくて綺麗な造形には不向きです。

20万円~100万円の光造形3Dプリンターの価格一覧

光造形3Dプリンターである程度安定して造形したり、一般的な硬質材料以外に、高強度やゴムライク、鋳造用などいろいろな用途で使用したい場合ですと、20万円から付属品も含めて100万円程度の光造形3Dプリンターがお勧めです。特にこの価格帯ではFormlabsのForm3Form3BForm2といった機種が人気で、圧倒的なシェアを誇っています。

機種名 Form3 Form3B Form2 ProJet 1200 Hunter ノーベル 1.0A
メーカー Formlabs Formlabs Formlabs 3Dsystems Flashforge XYZプリンティング
造形方式 LSF LSF SLA SLA DLP SLA
造形サイズ 145×145×185 mm 145×145×185 mm 145×145×175 mm 43×27 ×150 mm 120×67.5×150mm 128× 128×200 mm
対応材料 UV硬化レジン
(18種類)
UV硬化レジン
、22種類・歯科用生体適合材対応
UV硬化レジン
(18種類)
UV硬化レジン
(3種類)
UV硬化レジン
(3種類)
UV硬化レジン
(8種類)
レジンの自動補給 あり あり あり なし なし なし
レジンの加熱 あり あり あり なし なし なし
専用ソフト あり あり あり あり あり あり
接続性 Wifi、USBケーブル、LAN Wifi、USBケーブル、LAN Wifi、USBケーブル、LAN USB/Wifi Wifi、USBメモリ、USBケーブル WiFi、LANケーブル、USB
製品保証 2年 2年 3カ月 不明 1年 1年
レジン材料の価格帯 18,800円~37,800円 18,800円~53,000円 18,800円~37,800円 不明 3,000円~11,000円程度 15,000円~30,000円程度
製品サポート あり あり あり あり あり あり
本体価格(税別) 641,000円 699,000円 263,000円 4,900ドル(540,000円) 315,000円 約200,000円

20万円~100万円の光造形3Dプリンターの価格一覧

20万円~100万円の光造形3Dプリンターは、光造形3Dプリンターの中で最も多く販売実績を誇る価格帯です。特にFormlabsのForm3、Form2が圧倒的な市場シェアを持ち、全世界で8万台以上の導入実績をほこります。日本国内でもこの価格帯ではほぼ独占に近い導入実績をほこっています。

Formlabsかそれ以外か

まさにFormlabsかそれ以外といっても過言ではない人気を誇っていますが、その最大の理由が高品質と手軽さを両立した点に凝縮されています。他の光造形3Dプリンターとは違い、レジンの補給、レジンの温度や粘り、レーザーの当て方がすべて自動化されており、誰がプリントしても同じクオリティの造形が実現可能です。また材料が18種類以上もそろっており、カートリッジを差し替えるだけで、設定は不要。いつも完璧なプリントを提供してくれるためです。

Form3

Form3はFormlabsの4代目の機種として光造形3Dプリンターの中でも高いクオリティ、安定性、造形精度、材料の多様さなど1台でさまざまな用途に利用が可能です。従来のSLA方式を進化させたLFS方式を採用し、造形精度の向上とサポート除去の簡単さを実現しました。また1台で18種類の材料が使用でき、試作から模型、高強度パーツ、機能性プロトタイプ、フィギュア、治工具、ジュエリー鋳造用まで幅広い用途に対応しています。

Form3B

Form3Bは、Form3と同じ性能を持ち、かつ4種類の歯科技工向けのレジンが使用できる3Dプリンターです。歯の模型を作るモデルレジンから、手術時のガイドとして人体に触れても大丈夫なサージカルガイドレジン、実際にマウスピースとして口の中に入れられるBioMedクリアレジン、さらには歯の型を取ることができるカスタムトレイレジンまで、生体適合材料が豊富です。

Form2

Form2は現在生産を中止していますが、メーカーの方で中古のパーツを新品に入れ替えしたリフロービッシュ品の販売を行っています。Form3が登場したとはいえForm2も同じくForm3と同じ18種類の材料に対応しており、高品質で滑らかな造形が可能です。材料の自動補給やレジンの加熱なども自動で他の同価格帯と比べても優れた品質を提供してくれます。

ProJet 1200

ProJet 1200は光造形の開発元である3Dsystemsが提供する光造形3Dプリンターです。3Dsystemsはハイエンドな高価格機種が中心ですが、デスクトップタイプとしてジュエリー用材料を中心に利用が可能です。

画像出典:3Dsystems

Hunter

HunterはデスクトップタイプのFFF3Dプリンターで人気のFLASHFORGEが提供するDLP方式のデスクトップタイプの光造形3Dプリンターです。機械的な構造は10万円以下のDLP方式と同じで、自動化はされていません。

画像出典:FLASHFORGE

ノーベル 1.0A

ノーベル 1.0Aは台湾の3DプリンターメーカーXYZprintingの光造形3Dプリンターです。ノーベル 1.0AはSLA方式ですが、構造は10万円以下の光造形3Dプリンターと同じで、自動化はされていません。

画像出典:XYZprinting

自動化されているかどうかが選ぶポイント

20万円から100万円代の光造形3Dプリンターを選ぶ際のポイントが“自動化されているかどうか”です。光造形方式は液体状のUVレジンに紫外線を照射しながら硬化させていきます。

レジンは硬化に最適な温度や粘り気が決められており、この温度設定や粘度をどうやって最適な状態にするか、またレーザーの当て方がどのように最適化されているかが高品質な造形には欠かすことができません。

この自動化に徹底してこだわった機種がForm3、Form3B、Form2であり、ユーザーは材料をセットするだけで設定を行う必要はありません。また、レジンの補充も自動で行ってくれるため、材料切れや入れすぎによる漏れなどの心配もありません。この簡単さ、手軽さが光造形3Dプリンターを選ぶ際の重要なポイントになります。

100万円~500万円以下の光造形3Dプリンターの価格一覧

100万円から500万円以下の光造形3Dプリンターになるとハイエンド機種の入り口になり中高価格に分類されます。このクラスになると自動化はもちろんのこと、造形サイズなども大型化されてきます。このクラスではForm3の大型造形ができるForm3Lがおすすめです。Form3の安定性をそのままひきつぎ、さらには15種類の材料にも対応しており、光造形では初の大型造形を実現しました。

機種名 Form3L
造形方式 LFS
造形エリア 300×225×200 mm
対応材料 UV硬化レジン(16類)
特長 簡単・使いやすい。高い安定性。大型造形
製品保証 無償保証:2年間、3年目延長保証
本体価格(税別) 2,070,000円

Form3L

300万円以下の光造形3Dプリンターでは、FormlabsのForm3Lがおすすめです。Form3Lは光造形では大型の300×200×225(mm)の造形サイズを実現し、大型の造形物を一体で3Dプリントすることができます。またForm3が持つ安定性と正確さはそのままに、16種類もの材料が1台で使用することが可能です。

1000万円以上の光造形3Dプリンターの価格帯

光造形3Dプリンターは1000万円以上の価格帯になると最終品レベルの造形が可能です。また造形スピードも速い機種や小ロット量産にも使用できる高価格機種が存在します。ただし、機能や性能と価格は比例関係にあり、精度と大型造形などになると5,000万円をこえます。

機種名 ProJet® 6000/7000 ProX™ 800 ProX™ 950
メーカー 3Dsystems 3Dsystems 3Dsystems
造形方式 SLA SLA SLA
造形サイズ 250×250×250mm(6000)
380×380×250mm (7000)
650×750×550mm 1500×750×550mm
対応材料 UV硬化性樹脂
(8種類;スタンダードから高強度まで)
UV硬化性樹脂
(15種類:スタンダードから高強度まで)
UV硬化性樹脂
(15種類:スタンダードから高強度まで)
特長 高精細&高強度。簡単な後処理。高い安定性 高精細&高強度。簡単な後処理。大型造形。高い安定性 高精細&高強度。簡単な後処理。大型造形。高い安定性
本体価格(税別) 185,000ドル~
(20,000,000円~)
499,999ドル~
(55,000,000円~)
499,999ドル~
(55,000,000円~)

ProJet® 6000/7000 3Dsystems

1000万円以上のハイエンドな光造形3Dプリンターのメーカーといえば3Dsystemsです。その中でも最もコンパクトな機種の一つがProJet® 6000と7000です。ABSライクやPCライク、ゴムライク、高耐熱、ジュエリー鋳造用といった多彩な材料にも対応しており、造形サイズは6000が250×250×250mm、7000が380×380×250mmと大型造形が可能で、非常に高精細な造形ができます。

画像出典:3Dsystems

ProX™ 800/ ProX™ 950 3Dsystems

3Dsystemsのハイエンド機で最上位機種の一つがProX™ 800です。ProX™ 800は、650×750×550mmもの大型造形サイズを持っており、材料もABSライクやPCライク、ゴムライク、高耐熱、ジュエリー鋳造用、歯科用と幅広くあらゆる用途に対応しています。
またProX™ 950はさらに、Prox800の倍近い造形サイズである1500×750×550mmもの大きさが可能です。

画像出典:3Dsystems

まとめ:光造形3Dプリンターの価格帯の傾向

光造形3Dプリンターは価格帯によって傾向が大きく異なっています。
何を造形したいのか、どの点を重要視するのかによって選択は大きく異なってきます。

また基本的に価格は安定性や性能に比例するので、低価格だからといってもプリント安定性が低く、造形の失敗がつづけば、そもそも道具としての役割を果たしていません。こうした点から1台数十万円以上の機種で、安定性が高い機種をお勧めします。そのうえで用途にあった機種を選ばれることをお勧めします。