大型3DプリンターBigrep。コストパフォーマンスとスピードを両立

大型造形に対応した3Dプリンターとは?

3Dプリンターで、大型サイズの造形に対応した機種は限定されている。3Dプリンターの特長である積層造形は、積み上げて形にすることから造形物が大きくなればなるほど、スピードと安定性が重要になる。また大型の3Dプリンターは価格が高額になる傾向にあり、大きい造形物を一体で作る機種は限定的だ。

例えば1メートルクラスのサイズを一体で造形しようとすると、現状日本国内で利用できる機種はかなり限定されてしまう。また価格も高額で、導入へのハードルが非常に高くなってしまう。
手軽に、スピーディに大型な造形モデルを見たいというニーズにこたえることができる3Dプリンターの選択肢は少ないのが現状だ。

しかし今回ご紹介するドイツの3DプリンターBigrepは、従来の大型造形3Dプリンターに比べ、スピーディに手ごろな価格で形にできるコストパフォーマンスに優れる大型造形機だ。

BigRep大型3Dプリンター
BigRepでは大型の試作品を素早く3Dプリントすることができる。

Bigrep”大型試作“に特化

Bigrepは2014年設立のドイツの3Dプリンターメーカーだ。熱溶解積層法(FDM®)の造形テクノロジーを利用し、大型と高速3Dプリントを利用した3Dプリンターメーカーだ。

これまでFDM、もといFFF方式を利用した3Dプリンターは数多く開発されてきたが、この方式で大型クラスの造形ができるメーカーは、FDMの開発元であるストラタシスのF900とBigrepの機種が代表的といえるだろう。

Bigrepは、F900と比べた場合、より低コストで、大型の造形モデルが作ることができるいわば、“大型試作”に特化したメーカーだといよう。因みに、下記は大型造形に特化した3Dプリンターの比較表だ。

大型3Dプリンターの比較

機種名Bigrep OneBigrep StudioF900Masivit
造形方式熱溶解積層法熱溶解積層法熱溶解積層法GDP(ジェル硬化)
造形サイズ1005×1005×1005(mm)1000×500×500 (mm)914×609×914(mm)1170×1450×1800 (mm)
対応材料

PLA(アンチバクテリア・ライトウェイト)・PLX(PLA高速造形)・PROHT(ABSライク)・HI-TEMP(高耐熱性)・TPU・PVA・BVOH 

 

PLA(アンチバクテリア・ライトウェイト)・PLX(PLA高速造形)
・PROHT(ABSライク)・HI-TEMP(高耐熱性)・HI-TEMP CF(高耐熱性カーボン入り・ASAライク)・ABS・ASA・PET-CF・PA6/66・PETG・TPU・PVA・BVOH 
ABS/ASA/PC/ナイロン/ナイロン-CF/ウルテムUV硬化ジェル
用途・特長1,000万円~1,000万円~5,000万円~5,000万円~
ランニングコスト高 

上記の比較表にあるように、1メートルクラスの大型造形ができる機種は極めて限定的だ。また、Bigrep以外の機種は、用途が最終品や、大型が求められる展示会・サインディスプレイに特化しており、手軽に試作品としてコストパフォーマンスが高く造形できる機種ではない。

大型の試作を素早く・低コストで

Bigrepの最大の特長である大型試作の造形だが、それでは実際にどのぐらいのコストと時間で作ることができるのだろうか。Bigrepは他の大型3Dプリンターに比べて材料費も各段に安く試作にかかるランニングコストも大幅に抑えることができる。

BigReo3Dプリンター大型試作

サンプル例1:バイオニックプロペラ

サンプル例の一つがプロペラの試作だ。このプロペラは大きさXYが989mm、Z軸が186mmの大きさを誇る大型プロトタイプである。下記はこの造形データをプリントした場合のランニングコストや造形時間、材料消費量だ。積層ピッチは600ミクロンで、造形時間は約127時間(5日間分)かかる。

形状のみの確認であれば、反りも少なく大きい造形物でも安定するPLAフィラメントがおススメだ。その場合は1グラム当たりの材料単価が8円で、材料使用量は9194g、トータルモデルコストは68,955円になる。

BigRep3Dプリンター大型プロペラ
BigRep3Dプリンターで造形されたバイオニックプロペラ

サンプル例2:エアレスタイヤホイール&タイヤ

お次にご紹介するのはエアレスタイヤのホイールとタイヤのプロトタイプだ。タイヤの量産は基本的に金型で行われるが、デザイン検証にはBigrepはまさに最適な3Dプリンターである。

ホイールの場合サイズはXYが410mm四方、Z軸が70mmほどの大きさになる。最も安価なPLAフィラメントでは400ミクロンで造形時間が38時間(約1日半)、1グラムあたりの材料コストが8円で、トータル11,235円となる。

一方、タイヤ本体は、XYが524mm、Z軸が140mm、タイヤに最適なゴム材料であるTPUフィラメントでは、400ミクロンの積層ピッチで約157時間(6.5日)、1グラム当たりの材料単価が14円で、トータル37,679円だ。

サンプル例3:トポロジーチェア

最後にご紹介するのがトポロジーチェアといわれる椅子のサンプルだ。この椅子はトポロジー最適化によって椅子としての強度を保ったまま、デザインを軽量化されたもので、プロトタイプだ。321mm×336mm×470mmで、400ミクロンのPLAフィラメントで、27時間で作ることができる。1グラム当たりの材料単価が8円で、トータル14,243円の材料コストがかかる。

BigRep3Dプリンター試作品
BigRepで造形されたト歩ロジ―最適化された椅子

多彩な大型用途に対応

Bigrepは上記でご紹介したプロトタイピングの用途以外に多彩な大型造形の用途に対応している。例えば、本国であるドイツでは、プロトタイプ以外に、実際に走るバイクのパーツをBig Repで作ったパーツを組み合わせている。

また、自動車メーカーであるフォードでは自動車の組み立て治具をBig Repで作っている。

Bigrepを使用することで、これまで造形後に接着などのアッセンブル加工をしなければならなかったものを一体成形することによってコストを削減し、かつリードタイムを大幅に短縮することが可能となる。

二つのラインナップ

Bigrepには現在日本で2つのラインナップを提供している。大型のBigrep OneとBigrep Studioだ。

Bigrep ONE

Bigrepの機種のうち、大型で基本となる機種がBigrep ONEだ。最大造形サイズは1005×1005×1005mmの大きさを誇る。0.6mm、1 mm、2mmの3種類の大型ノズルを誇り、積層ピッチは最大1.4mmの高速造形が可能。大型と同時に高い安定性を誇り、24時間から数日間にわたっての稼働ができる。

Bigrep Studio

Bigrep Studioは、Bigrep Oneとは違い、周囲が筐体で覆われたタイプの3Dプリンターで、ビルドプラットフォームの加熱など、より密閉した空間で安定したプリントが可能となる。

また造形サイズはBigrep Oneよりも小さくなる(1000×500×500 mm)が、PLAやTPUに加えてカーボン製の材料やABS/ASAといった強度の高い材料も使用することができる。

まとめ

既にご紹介した通り、1メートルクラスの大型サイズのモデルが作れる3Dプリンターは、現在数機種しかないのが現状だ。これまでは機械自体も高額で、材料費などのランニングコストも高額であったがBigrepをつかうことで、より低コストでかつスピーディにデザインを形にすることができる。

また、強化PLAやTPUのように、特殊な用途にも対応した材料が対応していることで、機能性プロトタイプや治工具といった分野も一体成形を行うことが可能となる。大きい製品のコストとリードタイムを短縮し、製造プロセス全体をよりよくしてくれる。