BlenderとZbrushを併用してフィギュア服を立体化する

BlenderとZbrushを併用した「厚みつけ」と「穴閉じ」 

それでは3DプリンターのForm3でフィギュアを造形するために、さらにモデルを修正していきましょう!

今回ご紹介しているハッカドール2号の服は立体には見えますが、実際は厚みのない板ポリゴンの服です。
「厚み」がないと言うことは、本質的には「完全立体」でありませんので、3Dプリントすることができません。
今回はこの「立体」と「厚み」に関して、解決していきたいと思います。

BlenderとZbrushという2種類のソフトを単体で使うのと、連携で使うのとでは、作業効率や作業手順がまた変わってきます。

以前の講習で解説致しました「胸から首」の部分や、「靴」に関してもその作業方法は一例であって、決してすべてでも正解でもありません。
おそらく、作業する人の数と同じだけの方法と正解があると思います。
その中でも、比較的スタンダードであろうと思われる手法をご紹介するように心がけております。
どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、今回はBlenderとZbrushの連携によって効率化できる作業を考えたいと思います。
その視点で「服」部分の「立体」と「厚み」つけの作業を考えていきたいと思います。
(なおこの後の講座で、Zbrush単体で同じ服の立体化をおこなった記事も掲載していきます。お好きなほうで、作業を進めてみてください)

BlenderへのOBJデータ読込

今回は、ハッカドール2号の3Dデータのうち、服のデータのみを個別に読み込んで作業を行いました。
もしハッカドール2号全身を読み込んでの場合は、服のレイヤーのみを表示して頂ければ同じです。

個物に分かれている場合は、服部分のOBJデータをBlenderへ読み込みましょう。
Blenderの「メニュー/ファイル/インポート」からWavefront(.obj)を選択して、ハッカドール2号の服の3Dデータを読み込んで下さい。

3Dデータの形状を確認

読み込んだ服の3Dデータのレイヤーを確認すると、服の前と後ろでオブジェクトがレイヤー別に分かれていることが確認できます。

フィギュアのオブジェクトを一体化

この分かれた前と後ろのオブジェクトを結合して、一体化しましょう。
まず2パーツにわかれた2レイヤーを、「Ctrl」を押しながらクリックして選択してください。
そして「Ctrl+J」を押すとレイヤーが一体化され、1レイヤーにまとめられます。

ここでの注意点ですが、これではまだ1レイヤーにまとまっただけで、2パーツだったオブジェクトはそのまま分かれたままだという点です。
ハッカドール2号の服の脇の下あたりの接合ポイントが、二重ポイントのままになっているのです。
この脇の下の接合ポイントを、マージして完全に一体化しましょう。

「編集モード/点選択」状態にして「A」キーを押してすべてのポイントを選択して、「M」キーを押してください。
「マージパネル」が現れますので「距離で」を選択してください。
これで、完全に一体化した服ができました。

フィギュアの服を上下に分割

次に一体化した服を、今度は上下に分割します。

ここでちょっと考えておきたい点があります。
それは、次章で詳しくお話しようと思っている「分割」にも関わってくる部分でもあります。
実は、服は「厚み」だけでなく「立体物」としても考えて作成や修正する必要があります。
今回の服では、スカート部分は「厚み」のみ必要ですが、その上の腹部から胸にかけては「厚み」ではなく「立体物」にしておかなければなりません。
 具体的には、下図の赤いライン部分より下は「厚み」のみ、ラインの上部分は「立体物」つまりポリゴンが閉じた状態にするということになります。
 ですので、黒いパンツの腹部に見える身体の「おへそ」ですが、3Dプリントの視点で考えると立体化で消える部分(不要な部分)と言うことになります。

それでは上下に分割するために、まず胸から腰あたりのポリゴンを選択する作業を進めましょう。
服の胸から腰あたりを選択してから、「編集モード/面選択」にしてスカートの切れ目の少し上までを枠の表示を見ながら選択します。

もしオレンジ色の選択に漏れがある場合は、Shiftを押しながらポリゴン面をクリックして選択(追加も削除も可能)してください。

選択後に「P」キーを押すと「分離」パネルが表示されますので、「選択」を選択してください。

すると、一体化していた服が上下で分割されます。
右上のレイヤーパネルで確認すると、レイヤーが分かれていることが確認できます。

Blenderで服に厚みをつける

それでは上下に分けた服のうち、まず先に下側のスカートに厚みをつけましょう。 

スカートオブジェクトを選択してから、「モディファイアプロパティ」パネルにて「モディファイアを追加」選択ボタンを開き、「ソリッド化」を選択してください。 

適用されたソリッド化モディファイアのパネルにて、「幅 0.05m」に調整してください。
そうするとスカート部分に厚みが付きますので、そのままにしておいてください。

Blenderで胸を立体化する

今度は上側の胸の加工をしますので、レイヤーにて目玉マークをクリックして胸部分を表示し、同じく目玉マークをクリックしてスカート部分を非表示にしてください。

左上のモードを「編集モード/辺選択」の状態にしてください。
服に大きく開いている開口部は、上部の胸側と下部の腰側に2か所あります。
まず、どちらかの開口部の任意の「1辺」を選択し、「ループ選択/辺ループ」を選択してください。
すると開口部の辺が、一周選択されます。
今回は、まず上側の胸の開口部からふさぎたいと思います。

この状態で、上部のボタン群から「面/フィル」を選択してください。

胸部分の大きな開口部に、自動的に一発で面が張られます。

もう一方の下部の腰の大きな開口部も、同様に辺を選択してから面を張って穴を完全にふさいで立体化してください。

これで、胸部分を完全な立体に、スカート部分には厚みをつけることができました。

Zbrushでの胸の加工

ここから先は、Zbrushにインポートして作業したいと思います。

 BlenderからOBJ形式で「選択オブジェクト」をエクスポートして、その後Zbrushの「メニュー/ファイル/インポート」からインポートしてください。
板ポリゴンの服がインポートされますが手動での表示となりますので、画面のどこかでドラッグアンドドロップしオブジェクトを表示させてから、上部ボタンの「Editモードボタン」を押してEditモードにしてください。

右パネルにある「ポリグループ/自動グループ」を選択して、下図のように表示を変えてください。(色は適当で良いです)
この服はまだ上部胸部分と下部のスカートは一体化していませんので、このようにポリグループも分かれた状態になるわけです。

「サブツール/分割/グループ分割」にて、サブツールを分けて2レイヤー状態にしてください。

「アンドゥが不可能な操作です」等の確認画面が出ますが、そのまま「OK」を押してください。

サブツールが2レイヤー化して、完全な別オブジェクトになりました。

胸部分のみを表示してください。
ポリゴンがカクカクしていますね、ディバイドをかけてなめらかにしましょう。
ところがディバイドをかけますと、下図のように腹部あたりのエッジがスムースがかかって壊れてしまいました。

「Ctrl+Z」のアンドゥで1回戻って、腹部エッジの壊れた部分を保護するために「ジオメトリ/クリース(折り目)/クリース 70」を設定します。
これで、先ほど壊れた部分は保護されてディバイドされずに、エッジがそのまま生かされます。

それでは、「ジオメトリ/ディバイド」を2回かけて、下位削除しておきましょう。
これで「Zリメッシャー」がかけられる状態になっています。

それでは胸部分の加工の最後として「Zリメッシャー」をかけておきましょう。

Zbrushでのスカートの厚み加工

それでは、右側パネルのサブツールパネルの目玉マークをクリックして、スカート部分だけを表示しましょう。

先ほどの胸部分でいきなりディバイドするとエッジ部分が壊れたので、今回は胸部分と同じく「ジオメトリ/クリース(折り目)/クリース 45」をスカート部分に設定します。
これでスカート末端のエッジが保護されて、そのままの形状を保ちます。

「ジオメトリ/ディバイド」を2回かけて、下位削除してしまいましょう。

ここでは「ダイナメッシュ」を解像度224でかけましょう。
この解像度は、テストして試行錯誤して得た数値です。

Zbrushで分かれた服パーツを統合

サブツールパネルにて、「サブツール/結合/下のサブツールと結合」で、分かれたパーツを統合させて1レイヤーにまとめます。
ですがまだこの状態では、胸とスカートは別々で一体化していません。

さらにここで「ダイナメッシュ」を解像度224でかけます。

そうしますと分離していたスカートと腹部が、ダイナメッシュ機能で一体化接合させてしまうことができました。
もし接合部の腹部に接合跡が見える場合は、「Shift」を押しながらスムージングをかけるとその跡は消えます。

胸部分が立体化し、スカート部分は厚みがつき、服の完全立体化したパーツが完成しました!

この章のまとめ

BlenderとZbrushを連携させての「厚みつけ」と「穴閉じ」をおこないました。
ハッカドール2号の各パーツの形状によっては、Blender単体あるいはZbrush単体のほうが効率が良い場合と、BlenderとZbrushとを連携させたほうが効率が良い場合とが出てきます。
この辺りを見極めて効率の良い近道を見つけ出すことも、大事な創作作業のひとつだと思います。