レーザー焼結SLS 3Dプリンターの価格と選び方

レーザー焼結SLS 3Dプリンターの価格帯

レーザー焼結SLS 3Dプリンターは、高精度と高強度を両立した造形方式です。もともとアメリカで開発された造形技術ですが、2014年に特許が失効することによって低価格化が進んでいます。ただし実機として使用が十分可能なレーザー焼結3Dプリンターは最近(2021年)になってようやく登場しています。本稿では、レーザー焼結 SLS 3Dプリンターの価格帯別についてご紹介をしたいと思います。

SLSレーザー焼結法の価格の区分け

SLSレーザー焼結法の価格帯は大きく分類して2つに分かれています。

第一が2,000万円以上のハイエンド機です。

第二が500万円くらすのベンチトップ型といわれる価格帯です。

もともとハイエンド機しかありませんでしたが、FormlabsのFuse 1やLisaという機種が登場し、低価格化が進んでいます。

低価格ベンチトップ型ハイエンド型
造形サイズ165×165×300(㎜)300×300×300(㎜)以上
材料の種類ナイロン、TPUナイロン、繊維強化ナイロン、カーボンファイバー配合ナイロン、ポリスチレンなど
設備3Dプリンター&後処理機のみ防塵・防爆対策が必要。場合によっては工事が必要
価格約200万円~500万円約2,000万円以上

ナイロンと金属で価格帯が異なる

SLSレーザー焼結3Dプリンターにはナイロンパウダーと金属粉末の2種類の材料が使用できます。価格帯でもナイロン粉末に対応した機種よりも金属粉末が使用できる機種の方が高価格帯になります。
H2 SLSレーザー焼結3Dプリンター価格一覧表
下記は代表的なSLSレーザー焼結3Dプリンターの価格表になります。

500万円以下のSLSレーザー焼結3Dプリンター

500万円以下のSLSレーザー焼結3Dプリンターでは、FormlabsのFuse 1、ポーランドのLisa、Lisa Proが登場しています。

Fuse 1LisaLisa Pro
メーカー名FormlabsSINTERITSINTERIT
造形サイズ165×165×300(mm)150×200×150 (
mm)
Flexa 110×160×250(mm)
PA 90×120×230(mm)
対応材料ナイロン12/ナイロン11ナイロン12/TPUナイロン12/TPU
リサイクル率30%~50%
新パウダー混合によってすべて使える
別途後処理機による別途後処理機による
後処理Fuse Sift
自動でふるい分け・リサイクル
別途用意が必要別途用意が必要
本体価格
(税別)
2,585,000円(Fuse 1)
1,369,000円(Fuse Sift)
6,990USD
(約770,000円)
※日本での価格は販売代理店に問合せ
17,990USD
(約2,000,000円)
※日本での価格は販売代理店に問合せ

Formlabs Fuse 1

FormlabsのFuse 1は、SLSレーザー焼結法のベンチトップタイプです。2017年から開発が進み、2021年6月から出荷開始となりました。従来の高価格帯であったレーザー焼結法に比べてはるかに低コストな導入コストとランニングコストを実現し、高強度かつ高精度な造形を実現しました。

また後処理機であるFuse Siftによって造形後に手間であったパウダー除去が簡単になり、再利用するパウダー混合も自動で行ってくれます。材料はナイロン12とナイロン11の二種類の高強度材料に対応し、エンボス加工やデボス加工、穴あけなど非常に精密な造形も可能。最終品の小ロット量産を実現します。

SINTERIT Lisa

Lisaは、2018年度に登場したデスクトップ型のSLSレーザー焼結3Dプリンターです。従来の概念を覆す非常にコンパクトな大きさの3Dプリンターで、価格もアメリカで6990ドル(日本での価格は販売代理店に問合せ)で、SLSとは思えないほど低価格です。

卓上で手軽にナイロン12とTPUの高品質な造形ができることが売りです。その反面、材料であるナイロンパウダーの後処理が手間で、クリーニングなどの後処理にかなりの時間を要します。FormlabsのFuse Siftのように専用の自動後処理機が無いため、実質的にリサイクルができません。

SINTERIT Lisa Pro

Lisa Proは、LisaのグレードがアップしたSLSレーザー焼結法です。ナイロンとTPUの2種類に材料に対応しており、高品質で高強度な造形が可能です。Lisaよりも若干大きい筐体で、17,400ドルの低価格を実現しました(日本での価格は販売代理店に問合せ)。ただ造形後の後処理は各自で後処理機を導入しなければ、パウダーの除去や再利用が難しい機種です。

1500万円以上のSLSレーザー焼結3Dプリンター

ここからはハイエンドな従来型のSLSレーザー焼結3Dプリンターの価格帯をご紹介します。1500万円以上の価格帯で、機器だけではなく防塵、防爆用の改築なども必要になるので、3Dプリンター本体以外のコストがかかります。

ハイエンド機は、主にレーザー焼結の開発元をベースにした3Dsystemsとレーザー焼結法で世界最大の市場シェアを持つドイツのEOSが中心です。

Formiga P100P 396sPro 60
メーカー名EOSEOS3Dsystems
造形エリア200×250×330 mm340×340×600 mm381×330×460 mm
対応材料ナイロン、ガラス繊維配合ナイロン、アルミ配合ナイロンなどナイロン、ガラス繊維配合ナイロン、アルミ配合ナイロン、カーボンファイバー配合ナイロンなどナイロン、繊維強化材、Flexなど
後処理別途用意が必要別途用意が必要別途用意が必要
設備必要必要必要
本体価格175,000 USD
(約1,900万円~)
※日本での価格は販売代理店に問合せ
303,000 USD
(約3,300万円~)
※日本での価格は販売代理店に問合せ
182,000 USD
(約2,000万円~)
※日本での価格は販売代理店に問合せ

EOS Formiga P100

EOSはドイツのレーザー焼結3Dプリンターで世界最大のシェアを誇る企業です。SLSを代表するメーカーで、Formiga P100は同社のラインナップの中でも小型機に位置するSLS 3Dプリンターです。小型機ながらもガラス繊維配合ナイロンやアルミ配合ナイロンなど複数の高強度材料に対応したハイエンド機にふさわしい機種です。

EOS P396

EOS P396は、EOSのSLSレーザー焼結3Dプリンターの中でも、ハイエンドクラスの3Dプリンターです。造形サイズは340㎜×340㎜×600㎜の大型に加え、対応材料も非常に豊富です。ナイロンも通常のナイロンのほか、ガラス繊維強化ナイロンやカーボンファイバー配合ナイロン、アルミ配合ナイロンに加え、難燃性ナイロンやポリスチレンまで対応しています。まさに最終品製造、オンデマンド製造のためのSLS 3Dプリンターです。

3Dsyastems sPro 60

3Dsystemsのレーザー焼結3Dプリンターは買収した世界初のレーザー焼結法のメーカーDesk Top Manufacturing (DTM) Corpをもとにした機種です。中でもsPro 60は、最大長さ330mmの中型サイズのSLS 3Dプリンターで、ナイロン11からナイロン12、さらにはゴムのエラストマー材料まで使用することができます。

ハイエンドと低価格なSLSレーザー焼結法3Dプリンターの違いとは?

上記でご紹介してきたように、ハイエンドタイプと低価格タイプでは価格帯の差が大きく10倍から20倍以上異なります。その違いとはどのような点が挙げられるのでしょうか?

防塵・防爆対策の設備改築の費用

ハイエンドタイプと低価格タイプの最大の違いが3Dプリンター以外の設備投資がいるかどうかです。ハイエンドタイプは窒素ガスを使用し、粉塵対策や防爆対策などを施さなければならないため、1階の工場そのものを改築するなどの作業が必要になります。

年間保守料

ハイエンドタイプと低価格タイプでは年間保守料が大きく異なります。基本的に年間保守料は本体価格に比例するため、機種によっては、ハイエンドタイプ1台の年間保守料で、低価格タイプが購入できる金額になる場合があります。

材料の多様性

その一方で、ハイエンドタイプは低価格タイプにはない価値を持っています。その代表が材料の多様性です。基本的に現在登場している低価格タイプのSLSレーザー焼結法が使用できる材料はナイロンが1種類~2種類です。

一方、ハイエンドタイプは繊維強化ナイロンやカーボンファイバー配合ナイロン、アルミ配合ナイロンなど、より高強度な材料が使用できます。

まとめ

SLSレーザー焼結3Dプリンターはこれまでハイエンドな工業用の代表的な造形機とされてきましたが特許切れによる低価格化が進み、FormlabsのFuse 1や、ポーランドのLisaなど500万円以下の価格帯が登場し始めています。

こうしたベンチトップ型、デスクトップ型といわれるレーザー焼結3Dプリンターは造形物が十分ハイエンドに匹敵する強度を持っています。これにより、従来一部の企業でしか利用することが出来なかった最終品製造や小ロット生産というビジネスの展開方法がさまざまな企業でも利用が可能です。